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第壱部-Ⅴ:小さな箱庭から
51.水蛟 心を救うもの
紫鷹殿下の膝に抱かれて、日向様は小栗(おぐり)の話を全て聞かれていた。
歩行の負荷による関節の炎症で熱が出たこと。
もともと傷ついていた血管や神経が、炎症に伴う腫脹で圧迫され障害を受けたこと。
炎症は収まったが、血流と神経の阻害で、足の動きが悪くなっていること。
治療法を探してはいるが、必ず治せると確約はできないこと。
今は、炎症を繰り返さないことと、そのための体作りが大切なこと。
運動は必要だが、制限も必要なこと。
「わかった、」
日向様は、すべてを静かに聞いて、最後に小さくうなずかれる。
じっと何かを耐えるような表情がつらかった。
「じゃあな、日向。俺は行くが、絶対無理はするな。痛かったら、萩花(はぎな)か水蛟(みずち)にすぐ言え。」
「うん、」
「中庭に行ってもいいが、温かくして行けよ。上着だけじゃなく帽子もかぶれ、」
「わかった、」
「薬はちゃんと飲めよ。水分も忘れるな、食事は、」
「行くぞ、」
「とや、行ってらっしゃい、」
「うん、ひな。行ってきます、」
心配性の殿下が、相も変わらずグダグダと出ていかないのを、藤夜(とうや)様が引きずっていく。
朝食後に日向様の診察に付き添い、小栗の話を一緒に聞いて、歩行訓練まで付き合っていたから、もう間もなく昼食の時間。
いつも思うけれど、日向様がいらしてから、殿下の学院の単位は大丈夫なのかしら。
まだあと3年あるとはいえ、卒業できるのかしら。
「はぎな、鳥のずかん、よむ、」
「どちらがいいですか。」
「すずめの、」
部屋の入口まで殿下を見送った日向様は、不安定な足取りながらも、自分の足でソファまで歩いた。
萩花様が鳥の図鑑を持ってくる間、考え込む表情はしても、痛みに顔をゆがめたりはしない。
鳥の図鑑が置かれると、すぐに嬉しそうな表情になって、ページをめくった。
「お、お、る、り、これは紫?」
「そうですね。大瑠璃はどちらかというと紫を帯びた青色ですが、紫色に近い個体もいますよ、」
「こ、る、り、も?」
「ええ。」
本当に鳥がお好きねえ。
誕生日にもらった図鑑はあっという間に覚えてしまって、いつの間にか新しい図鑑が増えた。
主に紫鷹殿下と萩花様が持ってくるのだけれど、ほかにも離宮の者たちが、競うように持ってくるから、本棚が一つ新設された。
今は鳥に限らず、いろいろな図鑑がずらりと並んでいて、日向様は毎日嬉しそうに開いている。
でもやっぱり、鳥が一番お好きなんですよね。
ここのところ毎日同じ図鑑だもの。
「つくる、はどうする?」
「作る、ですか?」
「青巫鳥(あおじ)のブローチと同じように、大瑠璃のブローチを作りたいということではないかと、」
「ああ、なるほど、」
萩花様もまだまだですねえ。
さっきから日向様はずっと、胸につけたブローチを手でなでていらっしゃるのに。
「日向様のブローチは職人が作ったものですが…、」
「つくる、」
「ご自分で作りたいということですよね?」
「うん、」
「これは木を彫って作られたものですが、ご自分でとなると、最初は粘土あたりがいいのではないでしょうか、」
「ねんど、」
「粘り気のあるやわらかい土です。土をこねて、大瑠璃の形を作り、固めればブローチになります。粘土なら庭師がすぐに用意できると思いますが、」
「やる、」
水色の瞳が、キラキラと宝石のように輝いた。
あらまあ、可愛らしい。でも最近は、憂いが混じるせいか、お美しい、と見惚れてしまうことが増えた気がする。
「承りました。官兵(かんべ)、」
萩花様が部屋の外に向かって声をかけると、了承する声がした。
官兵さん、いらしたんですか。そして、庭師のもとに走りましたね。
日向様に新しく護衛が付くと聞いたときは、とてもとても心配だったけど。なんだかんだ便利でいいですよねえ。
「またどうして、鳥のブローチを、」
「無粋ですよ、萩花様、」
「え、」
本当にまだまだですね、萩花様。
ここしばらく、日向様は毎日、鳥の図鑑をめくって何かを一生懸命に探していたでしょう。
ようやく見つけたんですよ。求めていた鳥が。
それで、紫がいいんです。
「日向様、大瑠璃の目はどうしますか?紫色の目にするなら、石を手配させますよ、」
「する、」
「萩花様、確か無色の煌玉(こうぎょく)は、最初に込めた魔力に反応して色に染まると聞きました。日向様にもできますか?」
「え、はい。もちろん、日向様ならできますが…。」
まん丸な目。
そんなに驚かなくてもいいのに。
隣の日向様が、嬉しそうに真似して、とても可愛らしいのに、見えていませんね。もったいない。
「紫になるように教えてあげてください。日向様の大事な贈り物ですから、」
「あ、はい、」
「ああ、青空(そら)。無色の煌玉を取りに行ってほしいのだけど、」
ちょうど入ってきた青空に事情を話して、官兵と同じように走らせる。
萩花様がぽかんとする横で、日向様が同じように口を開けて、可愛らしかった。
楽しそうで、何よりです。
日向様は、熱が下がって、ベッドやソファへ移動できるくらいには、歩けるようになった。
毎日数回、お散歩のおねだりもするし、お勉強や魔力制御の鍛錬も熱心にされる。
それでも、隠れ家にこもる時間は増えたし、おしゃべりの途中で急に静かになって、考えこむことも多かった。夜はまだうなされる。
昨晩も、夜番だった宇継が、何度も日向様を隠れ家から出してあやしたと聞いている。
そのせいで、やっぱり俺が一緒に寝てやるからと、紫鷹殿下が騒いだのは今朝のことだ。
本当にあの皇子様は、何かにつけて、日向様を囲い込もうと画策するんだから、困ってしまうわ。
ご自分の体調は省みない。その愛情の深さには感心するのだけど。
その愛情が、不安や恐怖に呑まれそうになる日向様を掬いあげて、笑顔にさせていることも。
だから、紫が、いいんですよね。
「ブローチができたら、お包みする袋も紫でご用意しましょうか。薄い紫の袋に、濃い紫のリボンは素敵ですよ、」
「うん、紫がいい、」
「ご用意いたしますね、」
「あ、なるほど。誕生日ですか、」
萩花様。ようやくですか。
優秀だと聞いておりましたのに、本当にまだまだ!
日向様は、誕生日を祝ってもらえたことが嬉しかったんです。
紫鷹殿下の誕生日が近いと聞いて、プレゼントを一生懸命考えたんです。
きっと紫鷹殿下は、プレゼントなんかなくても、日向様がお祝いするだけで喜ぶでしょうけれど。
日向様は、はじめてお祝いすることが、楽しみで仕方ないんです。
特に今は、日向様の心が弱っている。
歩けたものが歩けなくなって、したいことができなくなって。
その心を守ってくれる殿下に、自分の手でお祝いできることが、日向様にとって、どれほど嬉しいか。
その気持ちがわからないなんて、本当にまだまだ!
「水蛟さんは、本当によく日向様を見ているんですね、」
萩花様の黄色い目が細くなって、隣の日向様がまた真似をする。
ようやくわかりましたか。
私は萩花様より長く日向様にお仕えしているんですから、わかりますとも。
あと、プレゼントを差し上げないと、あの馬鹿皇子は、「プレゼントは日向がいい、」とか阿呆なことを言いだすに決まってるじゃないですか!
そんなこともわからないなんて、本当に萩花様はまだまだですね!
歩行の負荷による関節の炎症で熱が出たこと。
もともと傷ついていた血管や神経が、炎症に伴う腫脹で圧迫され障害を受けたこと。
炎症は収まったが、血流と神経の阻害で、足の動きが悪くなっていること。
治療法を探してはいるが、必ず治せると確約はできないこと。
今は、炎症を繰り返さないことと、そのための体作りが大切なこと。
運動は必要だが、制限も必要なこと。
「わかった、」
日向様は、すべてを静かに聞いて、最後に小さくうなずかれる。
じっと何かを耐えるような表情がつらかった。
「じゃあな、日向。俺は行くが、絶対無理はするな。痛かったら、萩花(はぎな)か水蛟(みずち)にすぐ言え。」
「うん、」
「中庭に行ってもいいが、温かくして行けよ。上着だけじゃなく帽子もかぶれ、」
「わかった、」
「薬はちゃんと飲めよ。水分も忘れるな、食事は、」
「行くぞ、」
「とや、行ってらっしゃい、」
「うん、ひな。行ってきます、」
心配性の殿下が、相も変わらずグダグダと出ていかないのを、藤夜(とうや)様が引きずっていく。
朝食後に日向様の診察に付き添い、小栗の話を一緒に聞いて、歩行訓練まで付き合っていたから、もう間もなく昼食の時間。
いつも思うけれど、日向様がいらしてから、殿下の学院の単位は大丈夫なのかしら。
まだあと3年あるとはいえ、卒業できるのかしら。
「はぎな、鳥のずかん、よむ、」
「どちらがいいですか。」
「すずめの、」
部屋の入口まで殿下を見送った日向様は、不安定な足取りながらも、自分の足でソファまで歩いた。
萩花様が鳥の図鑑を持ってくる間、考え込む表情はしても、痛みに顔をゆがめたりはしない。
鳥の図鑑が置かれると、すぐに嬉しそうな表情になって、ページをめくった。
「お、お、る、り、これは紫?」
「そうですね。大瑠璃はどちらかというと紫を帯びた青色ですが、紫色に近い個体もいますよ、」
「こ、る、り、も?」
「ええ。」
本当に鳥がお好きねえ。
誕生日にもらった図鑑はあっという間に覚えてしまって、いつの間にか新しい図鑑が増えた。
主に紫鷹殿下と萩花様が持ってくるのだけれど、ほかにも離宮の者たちが、競うように持ってくるから、本棚が一つ新設された。
今は鳥に限らず、いろいろな図鑑がずらりと並んでいて、日向様は毎日嬉しそうに開いている。
でもやっぱり、鳥が一番お好きなんですよね。
ここのところ毎日同じ図鑑だもの。
「つくる、はどうする?」
「作る、ですか?」
「青巫鳥(あおじ)のブローチと同じように、大瑠璃のブローチを作りたいということではないかと、」
「ああ、なるほど、」
萩花様もまだまだですねえ。
さっきから日向様はずっと、胸につけたブローチを手でなでていらっしゃるのに。
「日向様のブローチは職人が作ったものですが…、」
「つくる、」
「ご自分で作りたいということですよね?」
「うん、」
「これは木を彫って作られたものですが、ご自分でとなると、最初は粘土あたりがいいのではないでしょうか、」
「ねんど、」
「粘り気のあるやわらかい土です。土をこねて、大瑠璃の形を作り、固めればブローチになります。粘土なら庭師がすぐに用意できると思いますが、」
「やる、」
水色の瞳が、キラキラと宝石のように輝いた。
あらまあ、可愛らしい。でも最近は、憂いが混じるせいか、お美しい、と見惚れてしまうことが増えた気がする。
「承りました。官兵(かんべ)、」
萩花様が部屋の外に向かって声をかけると、了承する声がした。
官兵さん、いらしたんですか。そして、庭師のもとに走りましたね。
日向様に新しく護衛が付くと聞いたときは、とてもとても心配だったけど。なんだかんだ便利でいいですよねえ。
「またどうして、鳥のブローチを、」
「無粋ですよ、萩花様、」
「え、」
本当にまだまだですね、萩花様。
ここしばらく、日向様は毎日、鳥の図鑑をめくって何かを一生懸命に探していたでしょう。
ようやく見つけたんですよ。求めていた鳥が。
それで、紫がいいんです。
「日向様、大瑠璃の目はどうしますか?紫色の目にするなら、石を手配させますよ、」
「する、」
「萩花様、確か無色の煌玉(こうぎょく)は、最初に込めた魔力に反応して色に染まると聞きました。日向様にもできますか?」
「え、はい。もちろん、日向様ならできますが…。」
まん丸な目。
そんなに驚かなくてもいいのに。
隣の日向様が、嬉しそうに真似して、とても可愛らしいのに、見えていませんね。もったいない。
「紫になるように教えてあげてください。日向様の大事な贈り物ですから、」
「あ、はい、」
「ああ、青空(そら)。無色の煌玉を取りに行ってほしいのだけど、」
ちょうど入ってきた青空に事情を話して、官兵と同じように走らせる。
萩花様がぽかんとする横で、日向様が同じように口を開けて、可愛らしかった。
楽しそうで、何よりです。
日向様は、熱が下がって、ベッドやソファへ移動できるくらいには、歩けるようになった。
毎日数回、お散歩のおねだりもするし、お勉強や魔力制御の鍛錬も熱心にされる。
それでも、隠れ家にこもる時間は増えたし、おしゃべりの途中で急に静かになって、考えこむことも多かった。夜はまだうなされる。
昨晩も、夜番だった宇継が、何度も日向様を隠れ家から出してあやしたと聞いている。
そのせいで、やっぱり俺が一緒に寝てやるからと、紫鷹殿下が騒いだのは今朝のことだ。
本当にあの皇子様は、何かにつけて、日向様を囲い込もうと画策するんだから、困ってしまうわ。
ご自分の体調は省みない。その愛情の深さには感心するのだけど。
その愛情が、不安や恐怖に呑まれそうになる日向様を掬いあげて、笑顔にさせていることも。
だから、紫が、いいんですよね。
「ブローチができたら、お包みする袋も紫でご用意しましょうか。薄い紫の袋に、濃い紫のリボンは素敵ですよ、」
「うん、紫がいい、」
「ご用意いたしますね、」
「あ、なるほど。誕生日ですか、」
萩花様。ようやくですか。
優秀だと聞いておりましたのに、本当にまだまだ!
日向様は、誕生日を祝ってもらえたことが嬉しかったんです。
紫鷹殿下の誕生日が近いと聞いて、プレゼントを一生懸命考えたんです。
きっと紫鷹殿下は、プレゼントなんかなくても、日向様がお祝いするだけで喜ぶでしょうけれど。
日向様は、はじめてお祝いすることが、楽しみで仕方ないんです。
特に今は、日向様の心が弱っている。
歩けたものが歩けなくなって、したいことができなくなって。
その心を守ってくれる殿下に、自分の手でお祝いできることが、日向様にとって、どれほど嬉しいか。
その気持ちがわからないなんて、本当にまだまだ!
「水蛟さんは、本当によく日向様を見ているんですね、」
萩花様の黄色い目が細くなって、隣の日向様がまた真似をする。
ようやくわかりましたか。
私は萩花様より長く日向様にお仕えしているんですから、わかりますとも。
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