第八皇子は人質王子を幸福にしたい

アオウミガメ

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第弐部-Ⅰ:世界の中の

85.日向 はじめてのおでかけ

馬車に乗った。二度目の馬車。

一度目は、人質になるために。
二度目は、あおじのねぐらとうさぎを探すために。

しおうが抱っこして馬車に乗った時、体がふるえた。
しおうが、やめようか、って言ったけど、あおじのねぐらが見たかったから、しおうにぎゅってして、馬車に乗った。

カタカタ揺れて、怖いのに、温かくて。
寝たら、いつの間にか、森に着いた。

木がいっぱい。
上を見たら、青空がちょっとしか見えない。
でもそのちょっとが、きらきらしててきれいだった。

うさぎがいた。
小さいうさぎ。子うさぎ。
あずまがつかまえて、僕もさわった。
小さいのに、ふわわふで、温かくて、びっくりした。

僕は、あじろと二人で、うさぎをいっぱい描く。
あじろは、ふわふわの毛がどんな風にはえてるかまで描くが良い。すごい。
僕もあじろみたいに、描きたかったけど、またしおうが、どくそうてき、って言った。
だから僕はおこったのに、しおうは、あはは、って笑う。



「まあまあ、日向さんはどうしたの。そんなにむくれて、」



野原に行ったら、すみれこさまが、みずちたちとご飯をならべてまってた。
僕はおこったから、しおうじゃなくて、はぎなに抱っこしてもらう。

「日向の絵が独創的でいい、って褒めたんですけどね。」
「あらまあ、日向さんは何を描いたのかしら、」
「うさぎ。僕は、あじろみたい、に描きたい、のに。どくそう、てきが、いや、なのに、」
「それを分かってて言うなら、しおうさんが悪いわねえ、」
「しおうが、わるい、」

しおうは困った顔になる。
僕はまだおこったから、うつぎに手を洗ってもらったら、すみれこさまの膝にのぼった。

「なあ、日向、ごめんって。謝るから、こっち来て、」
「やだ、」
「本当にごめん。日向が傷ついたって、よく分かった。もう言わない。だからお願い、」

ゆらゆら、ってしおうの紫色の目が揺れる。
泣くかな、って思ったらちょっとそわそわになった。
すみれこさまに、どうする?って聞いたら、好きにしていいんですよ、って笑う。

「日向がいないと、寂しい、」

しおうの眉がうんと下がって、本当にさびしいの顔になった。
お腹の中がもうそわそわでいっぱいになって、座ってるができなかったから、しおうのとこに行く。

「ぎゅって、して、」
「いいの、」
「する、の、」
「うん、分かった。ごめんな、」
「ちゅうも、」
「うん、」

あらあら、ってすみれこさまが笑った。とやは、甘すぎるよ、ってあきれる。あじろは、へえええって言って、真っ赤になった。

みんなでご飯を食べた。
箱に、おにぎりがいっぱい。いろんな味があるよ、ってみずちが言う。
ぜんぶ食べたいって言ったら、しおうが「さけ」をくれた。すみれこさまが、「たらこ」をくれて、とやが「あおな」、あじろが「うめ」、はぎなが「こんぶ」、あずまが「あぶらみそ」をくれる。

「どれがいい、」
「とやの、」
「ほらな、やっぱり。ひなは青菜が好きだと思った、」
「くっそ、」

口が悪いですよ、ってすみれこさまがしおうを叱って、おもしろかった。
しおうがふてくされるから、しおうの口にあおなを入れる。
しおうは、こうしたらきげんがなおるって、僕は分かる。

「とやの、おいしい、ね、」
「青菜な、」
「あおな、」

おかずもいっぱい食べた。おやつはりんご。うさぎのりんご。
りんごもしおうの口に入れる。

食べたら、ぴーって、あおじが鳴いた。
いつものあおじと、ほかに5わ。

「しおう、あおじ、いっぱい、」
「ねぐらが近いからな、」
「ねぐら!」

あじろを見たら、目がきらきらしてて、すぐにさがしたいって顔になる。
しおうがいいよ、って言うから、あずまが抱っこして、あじろといっしょにあおじを追いかけた。

森より小さい木がいっぱい。やぶ、って言う。

草もいっぱい、葉っぱもいっぱい。
あずまがぎゅってしないと、僕はたぶん、やぶは歩けなかった。
それくらい草も葉っぱもいっぱいで、びっくりした。

こちらです、ってはるみが指さす。

葉っぱがいっぱいしげったところに、枝が丸く集まってるのがあった。
ぴーぴーって、小さいあおじが鳴いてる。
あずまが僕をおろしたら、大きいあおじが、僕の頭に飛んできた。
いつものあおじ。僕のあおじ。

「あおじの、家?」

聞いたら、ぴーってあおじが鳴く。
あおじの家族?って聞いたら、またぴーって鳴いた。

うれしくて、ふわふわして、ほろり、の涙が出た。
しあわせの涙。

あじろがびっくりしたけど、あおじの巣を描こうって言ったら、笑っていっしょに描いた。

あおじの巣は細長い葉っぱと茎と枝がいっぱいくっついて、まん丸。
はんしょくきに、めすのあおじが巣を作って、卵をうむって、あじろが教えた。
巣の中の小さいあおじは、卵から生まれた。
僕のあおじよりちょっとだけ小さいあおじが来て、あじろの頭に乗る。あおじの番い。


「あおじも、つがい、がいた、」
「へえ、俺たちと同じ?」
「うん、あおじは、つがいは一わ。ちがう鳥もいるけど、あおじは一わ。」
「同じだなあ、」


帰りの馬車で、しおうに言ったら、しおうは紫の目をうんと細くした。きれい。
膝に乗って、今日みたことをいっぱいしゃべる。

森の中の光がきれいだった。こもれびって言う。
しおうが、僕の名前とおなじだよって教えたも、うれしかった。
うさぎ、怖くなかったかな、僕はうれしかったけど、そわそわしたかもしれない。
はじめて外で食べたご飯は、いつもよりうんとおいしかった。
また食べたいって言ったら、しおうはまた来ような、って笑う。
あおじの巣を描いたって見せたら、いいな、って言って、しおうはぎゅってした。


「もう怖くない?」
「何が?」
「分からないならいいよ。日向が楽しそうで嬉しい、」
「たのしい、また行く。」
「うん、何回でも行こうなあ、」


しおうがうれしそうで、ちゅうってするかな、って思ったら、ちゅうってした。
ふわふわになって、僕はまた寝たけど、夢の中でもしおうとうさぎを追いかけた。


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