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第弍部ーⅤ:二人で歩く
200.紫鷹 日向の喜びと枷
馬車を降りて小さな手を握ると、日向はしばらくの間、俺の手をいじくり回すのに忙しかった。
「しおうが握ったら、僕の手がなくなる、ね、」
小さな日向の手だ。
俺が握れば指先がちらりと覗くだけで、互いに手を繋いでいると言うよりは、ほとんど俺が日向の手を掴んでいるのに等しい。
それが不満だっただろうか。そう思って顔色を伺えば、日向は安心するんだと言ってふにゃりと笑った。
初めての場所なのに、俺が日向の手を全部包んでいるから、温かくて安心するんだと。
「いいね、いいね、」
そう言って手を揉んだり、指を絡めたりするから、頭が沸騰しそうだったよ。
何だ、その顔。顔中で俺のことが大好きだと語っているじゃないか。
満足げに頬を上気させたかと思えば、口を開いて、あはっ、と短く笑う。水色の瞳は飴玉のようだ。とろとろに溶けて、真っ直ぐ俺しか見ていなかった。
おかしなことを教えるな、と日向が傍に抱えた本に、何度も思ったんだけどな。
今日だけは感謝してやってもいい。
「最初は、ね、町を歩く。町は思い出があるから、あると王子と、さあらは思い出を話して、歩いた、」
ようやく日向が歩き出したのは、ひとしきり俺の手をこねくり回して満足した後だ。
俺の手をしっかりと握り歩き出すと、反対の腕に抱えた本の通りにデートを遂行するんだと話す。
日向の手には少し大きな本だから歩きにくいだろうに。馬車に置いてくるか俺に渡すかすればいいものを、自分で持つんだと離さなかった。
まあ、大事なデートの指南書だもんな。
疲れたら、日向ごと抱えればいいいか。
「だから、ね。しおうは、指をさして、思い出を話す、」
「ん、了解。他にご要望は?」
「んーと、あの、ね。しおうは、町に来たことがある、ますか、」
見上げた水色が、本の中の令嬢の台詞を吐くから、思わず笑った。
本当に本の通りにやるつもりなんだな。
「あるよ。学院の帰りに藤夜と二人で護衛を巻いて出かけたこともあるし、夜中に離宮を抜け出して徘徊したこともある、」
「とやとでーと?」
「違う違う!気色悪いことを言うな。俺たちのは子どもがやるいたずらとか、反抗期とか、そんなのだよ、」
「はんこうき、」
そうだよ。俺も色々あったからな。
当時は、それが母上や離宮に対する意趣返しだった。今考えればただの子どもの駄々だと分かるから、あまり思い返したいものでもないが。
だが、俺を見上げた水色の瞳はキラキラと輝き出して、続きを期待する。
「どこ、行った、…ましたか!僕も、しおうが、行ったが、見たい、…です!」
本の中の令嬢を真似るせいで、可笑しな口調だなあ。
それでいて、心底俺の話を聞きたいと請う顔で見上げてくるから、堪らず頬が緩む。
「お前は本当に俺のことが大好きだなあ、」
「うん、」
「母上にも毎日聞いてるだろ?姉上には手紙まで書いて俺の話を強請ったって聞いたけど、」
「しじゅは面白い話が、いっぱいある。しおうがとやに負けて、離宮の隅っこで泣いたも、教えた、」
「何でそんな話ばかり、」
「しおうの話は、全部聞く。僕だけ、昔を知らない、は悔しい。僕のなのに、」
これだもんなあ。
じっと俺を見上げて、嘘偽りのない瞳で言う。
少し頬が膨れるのは、本当に悔しいからだろう。何だ、その顔。可愛いな。
素で本の中の令嬢と同じことをするんだから、嫌でも阿瑠斗(あると)王子の気持ちが分かったよ。
これは落ちる。
多分、俺は今、酷くだらしない顔を晒しているんだろうな。
あちこちから飛んでくる視線は、身を潜めて警護に当たる護衛や草のものばかりじゃない。
いくら変装したってバレるのは想定内だが、向けられる視線は驚きとか畏怖とか皇子に向けるものではなくて、小さな恋人に鼻の下を伸ばした男への呆れだ。
自覚はあるよ。
でも、仕方ない。
何と言っても、デートだからな。
「馬の蹄の形をした看板があるだろ。馬具の店なんだが、あそこにはよく世話になったよ、」
「ばぐ、」
手を引いて懐かしい工房を見せてやれば、日向は本を抱えた腕を前に出し足を開いて馬に乗る仕草をする。そうだよ、馬につける装具や乗馬の時の装備品の店だ。
夏休みに入ってから、日向は初めて一人で仔馬に乗ったもんな。乗馬服を着て、小さな仔馬の上にちょこんと座って緊張していた姿があんまり可愛いものだから、俺も侍女も護衛たちも悶絶した。
「離宮には専門の職人がいるから必要ないんだけどな。皇家の印も、兄姉と揃いの装具も嫌でさ。あそこに通い詰めて俺だけの馬具を作ったの、」
「僕も、作る?」
「んー、あまり大声じゃ言えないけど、離宮の職人が一流だと今ならわかるよ。正直、日向のは離宮の職人に任せたい。仔馬に乗った時も、日向の体にぴったりだったろ、」
「しおうは、失敗?」
「競技に出たけど、散々だった。俺も馬も装具がしっくりこなくて、全然走れないの、」
「しおうが、失敗!」
途端に日向は、足をあげて踊り出す。
どうしてこうも毎回、俺が泣いた話や失敗談に大喜びするかな。
「しおうも、失敗がある!僕と一緒!お揃い!」
そうだと知ってるから、複雑なんだよ。
格好良い俺に惚れろよ、と思う一方で、失敗一つでこんなに大喜びさせられるのは俺だけだと言う自負もあるから、怒れやしない。
財布を忘れて困った時の話には、日向は声を立ててけらけら笑った。
普段は財布なんて持たないから、町に出始めたばかりの頃はよくあった。藤夜と二人で食事をした後で、揃って財布がないことに気づいたんだ。皇子が無銭飲食だなんて噂が巡れば、皇家の威は地に落ちる。反抗心はあっても、責を負う覚悟はなかった頃だから、この世の終わりかと言うほど狼狽えた。
結局、見かねた幸綺(こうき)が姿を現して代わりに支払ってくれたわけだが。
「お金を払わない、は、叱られる?」
「叱られるだけで済めば良いけどな。法律に反することだから罰も受ける、」
「ほうりつ、ばつ、」
「国が決めた決まり事な。そう言う決まり事を破ると罰がある。道徳にも反するから、信頼も失うな、」
「どうとく、しんらい、」
「他人が嫌がることをすると、皆の心が離れていくんだ。そう言う決まり事の一つがお金を払うことなの、」
「はりまが、怒ったやつ、」
「そ、」
顔は笑ったままだったが、繋いだ手に力が籠ったから、嫌なことを思い出させたかもしれない。
だが、安心させるつもりで水色の頭を撫でると、日向はすりすりと寄ってきて甘えた後、他には、と続きを聞きたがった。
まだ手に籠る力は抜けていないから思うところはあるんだろう。だが、最優先はデートらしく、日向は水色の瞳でじっと強請る。だから、俺もそれに応えて色々喋った。
「俺が転んで棚の上のやつをひっくり返した店があるんだけど、見てみる?」
「見る、」
「ガラス製のランプを扱う店だからな。全部落として、悲惨なことになった、」
「ガラスは、落ちたら割れる、」
「そ。全部割ったの。これは流石に母上が来て謝ったよ。それで、俺と藤夜は謹慎処分な。一月の間、文官の仕事を手伝わされた、」
「あはっ、」
店の前に連れて行くと、日向はガラス窓に張り付いて中を覗き、声を立てて笑う。
ガラス製のランプがずらりと並ぶのを見て、俺がどんな大失態を晒したか想像できたのだろう。ぴょんぴょんと跳ねて、何度か窓に頭をぶつけた。
だが、入ってみるかと聞けば、途端に険しい形相だ。
自分も同じ失敗をやらかすと思ったかな。
足を踏ん張って腰を引き、俺の手を引っ張って、絶対に入らないんだと全身で抵抗してみせる。
だから結局、店には入らず仕舞い。
歩き出すところっと表情を変えてご機嫌になった日向を連れて、ただ話しながら町の中を歩いた。
その足が止まったのは、ちょうど噴水の湧く広場に入った時だ。
「日向?どうした?」
繋いだ手が急に動かなくなって振り返ると、小さな水色の頭はそっぽを向いて固まっている。
人出が多い場所だから怖かっただろうか、あるいは歩かせすぎて足が痛み出したかもしれない。そう思って顔を覗き込むと、水色の瞳が何か一点を見つめて動けずにいるのに気がついた。
その視線を追って、なるほど、とすぐに納得したよ。
「日向、言ってごらん、」
「……何もない、」
「何もないってことはないだろ。何か気になったんだろ、」
屈んで顔を覗き込み促すと、日向はちらりと俺を見はしたが、すぐに元の場所へと視線を奪われる。
頭が小刻みに揺れるのは、多分こちらを振り返ろうとするからだろう。そのくせ、上半身は視線の先に向かって飛び出しそうなほど前のめりだ。足に至っては、右足は俺に向くくせに左足はそっぽを向いておかしな格好になっていた。
本当は、今にも視線の先に飛びついていきたいんだろうに。
できないのは、その腕に抱える教本のためか。
「日向、」
「だいじょぶ、何もない。でーとの続き、」
「俺の思い出は十分話したろ。今度は日向の番だ、」
動けない日向に代わって、視線の先に回ってやると、日向は顔をくしゃりと歪めて苦悶の表情を見せる。
「ちがう、僕の思い出はない。だから代わりに、しおうがやる、」
「うん、俺の話はいくらでも話してやるよ。それは心配しなくていい。そうじゃなくて、俺は日向が何に気を取られたのかが知りたいんだよ、」
「何もない。でーとをやるから、引っ張って、」
俺が頭を振ると、日向は泣き出しそうな顔になって俺を睨んだ後、本を抱えた腕を振り上げた。
役立たず、と自分の足を叩こうとするから、受けとめてやる。すると湧き上がる感情を向ける矛先を無くしたのだろう。堪えていたものが溢れるように、小刻みに震え出した。
「大丈夫だ、日向。我慢しなくていい、」
「ちがう、我慢ない、でーとする、だいじょぶ、」
「ん、分かってるから、」
本の通りにデートがしたいんだよな。
日向が知るデートは、その本だけだから。
でも、視線の先に予定外のものが現れて、体は正直に捕らわれたから困ったんだよな。
日向はもう自分の好きなものが分かるから。
生き物やブランコに飛びついていくみたいに、本当は飛びつきたい。
だが、本に書かれた通りの決まり事を守って正しいことをしないと、日向は不安になる。
ちゃんと分かるよ。
「阿瑠斗王子と沙安良と、同じことだよ、」
押さえた腕を撫でて本を指してやると、日向は水色の瞳を大きく見開いた。
同じだと言われても分からないよな。
日向はまだ目的と方法の違いが分からない。分からないから、本に書かれた方法じゃなきゃ気が済まないし、その通りにできなければ仲間はずれになると思ってしまうーーーブランコで危険なことをして亜白(あじろ)が去ったように、順番を守れなくて播磨(はりま)に叱られたように。
デートは、そんな決まり事じゃないんだけどな。
それも日向にはまだ分からないから、こんな風に固執する。
いいよ、それはゆっくり学んでいこう。
でも、デートだ。
日向が分からないなら、俺が笑わせてやる。
それも大事な大事な決まり事だ。
「沙安良は、王子が珈琲屋を気にしたのを見て、王子が珈琲を好きだと初めて知ったろ。その時、どうだった?」
「……嬉しかった、」
「何でか分かる?」
「……王子の好きが分かるが、さあらは嬉しい、」
「ん、そうだな。それがデートの醍醐味だ、」
「だいごみ、」
「一番楽しいって意味な。町を歩いて思い出を語るのも、お互いを知りたいから語るんだ。だから思い出がなくたって、王子の気になるものが知れたら、沙安良は嬉しい、」
囚われた先を遮るように水色の瞳を見つめてやれば、日向は大きく開いた瞳で俺を見て、怒ったような泣いたような複雑な顔をする。それからぎゅっと目を瞑った後、今度は縋るような瞳で俺を見た。
「……犬がいる、」
「うん、」
「…犬に行きたく、なったは、でーとと、同じ?」
「そうだよ。せっかくデートに来たんだ。俺は日向が何に気を取られたのかが知りたい、」
「犬に、行きたい、」
日向の視線の先で、店番の犬がちょこんと座ってこっちを見ていた。
あれに気を取られたんだとは、すぐに分かったよ。
でも、日向の口から聞きたかった。
「今度は、日向が連れて行ってくれるか。俺はついてくから、」
「しおうが、僕に、ついてくる、」
「そ、阿瑠斗王子のことは沙安良が連れていったし、沙安良は阿瑠斗王子が連れていったろ、」
王子と令嬢という理由を与えてやると、険しかった表情がだんだんと緩んで、再び光を灯す。
おかしな形で固まっていた体も、もぞもぞと動き出すと、俺の手を強く握って引いた。それに俺がついてくると分かると、途端に輝くような笑顔になる。
それから後は、もう一目散だ。枷が外れたように飛び跳ねると、犬が座る店先へと俺の手を引いて駆けて行った。
「犬!しおう、あっち!犬がいる、」
「分かったから、少し落ち着け。足が痛むぞ、」
「犬!早く!あっち!あっち!」
ぴょんぴょんと跳ねる背中を追いかけるのは、新鮮だった。
いつもは腕の中だからな。
既視感があるとしたら、日向が帝国に来た日に母上に手を引かれて離宮に向かった姿だが、あの時は俺が先を歩いていたし、日向は俯いて周囲を見ることさえできなかった。
ああ、まずいな、何か泣きそうだ。
大きくなったよな。
ガリガリなのは確かだが、背は確実に伸びたし、肉だってついた。
繋いだ手も、骨と皮しかなかったのが、今はずっと握っていたいくらい柔らかくなった。
自分の好きなことも分かって、我が儘が言えるようにもなっただろ。
そんなことさえ日向は初めてだから、欲を抑えきれずに突っ走ることもあるけど、我慢も覚えたな。
小栗とな、最近の日向が特に決まりにこだわるのは、日向が俺たちの中で生きようと努力してる証だろうと話してるんだよ。
尼嶺での15年の間、一人で生きて来た日向だ。
誰より生きる術に敏感で、今もまだ闘ってるんだろう。
でもそれが、日向一人で生きるところから、俺たち皆と生きるところに変わって来たんだと。
一人で隠れ家にいたのにな。
今はこうして、俺と一緒に町の中を駆ける。
夢みたいで、小さな背中を眺めるうちに目頭さえ熱くなってきた。
犬にたどり着く前に日向の膝が折れて、夢のような時間は終わってしまったが、俺が抱え上げて走ってやれば、日向は声を立てて笑い、早く早くと囃し立てる。
「でーとって、いいね、」
驚愕する店主に断って犬を撫でさせてもらうと、日向は再び蕩けたようにふにゃふにゃ笑って言った。
「どこが良かった?」
「しおうが、僕についてくる、」
「デートじゃなくたって、どこだってついてくんだけどな、」
「いつもは、抱っこ。抱っこじゃなくて、一緒に歩くが、いちばんいい、」
「だな。俺もそう思った、」
お揃い!と飛び跳ねた日向に犬がじゃれつくと、日向はまた声を立ててけらけら笑う。
その声を聞いたら、俺はもう胸の中が温かくも熱くもなって、全身何かに満たされていくのを感じたよ。
ーーーそれは、幸せという。
ただ歩いて、喋って、店に寄る。
それだけのことなのにな。
それがこんなにも幸せだなんて、俺は初めて知ったよ。
「しおうが握ったら、僕の手がなくなる、ね、」
小さな日向の手だ。
俺が握れば指先がちらりと覗くだけで、互いに手を繋いでいると言うよりは、ほとんど俺が日向の手を掴んでいるのに等しい。
それが不満だっただろうか。そう思って顔色を伺えば、日向は安心するんだと言ってふにゃりと笑った。
初めての場所なのに、俺が日向の手を全部包んでいるから、温かくて安心するんだと。
「いいね、いいね、」
そう言って手を揉んだり、指を絡めたりするから、頭が沸騰しそうだったよ。
何だ、その顔。顔中で俺のことが大好きだと語っているじゃないか。
満足げに頬を上気させたかと思えば、口を開いて、あはっ、と短く笑う。水色の瞳は飴玉のようだ。とろとろに溶けて、真っ直ぐ俺しか見ていなかった。
おかしなことを教えるな、と日向が傍に抱えた本に、何度も思ったんだけどな。
今日だけは感謝してやってもいい。
「最初は、ね、町を歩く。町は思い出があるから、あると王子と、さあらは思い出を話して、歩いた、」
ようやく日向が歩き出したのは、ひとしきり俺の手をこねくり回して満足した後だ。
俺の手をしっかりと握り歩き出すと、反対の腕に抱えた本の通りにデートを遂行するんだと話す。
日向の手には少し大きな本だから歩きにくいだろうに。馬車に置いてくるか俺に渡すかすればいいものを、自分で持つんだと離さなかった。
まあ、大事なデートの指南書だもんな。
疲れたら、日向ごと抱えればいいいか。
「だから、ね。しおうは、指をさして、思い出を話す、」
「ん、了解。他にご要望は?」
「んーと、あの、ね。しおうは、町に来たことがある、ますか、」
見上げた水色が、本の中の令嬢の台詞を吐くから、思わず笑った。
本当に本の通りにやるつもりなんだな。
「あるよ。学院の帰りに藤夜と二人で護衛を巻いて出かけたこともあるし、夜中に離宮を抜け出して徘徊したこともある、」
「とやとでーと?」
「違う違う!気色悪いことを言うな。俺たちのは子どもがやるいたずらとか、反抗期とか、そんなのだよ、」
「はんこうき、」
そうだよ。俺も色々あったからな。
当時は、それが母上や離宮に対する意趣返しだった。今考えればただの子どもの駄々だと分かるから、あまり思い返したいものでもないが。
だが、俺を見上げた水色の瞳はキラキラと輝き出して、続きを期待する。
「どこ、行った、…ましたか!僕も、しおうが、行ったが、見たい、…です!」
本の中の令嬢を真似るせいで、可笑しな口調だなあ。
それでいて、心底俺の話を聞きたいと請う顔で見上げてくるから、堪らず頬が緩む。
「お前は本当に俺のことが大好きだなあ、」
「うん、」
「母上にも毎日聞いてるだろ?姉上には手紙まで書いて俺の話を強請ったって聞いたけど、」
「しじゅは面白い話が、いっぱいある。しおうがとやに負けて、離宮の隅っこで泣いたも、教えた、」
「何でそんな話ばかり、」
「しおうの話は、全部聞く。僕だけ、昔を知らない、は悔しい。僕のなのに、」
これだもんなあ。
じっと俺を見上げて、嘘偽りのない瞳で言う。
少し頬が膨れるのは、本当に悔しいからだろう。何だ、その顔。可愛いな。
素で本の中の令嬢と同じことをするんだから、嫌でも阿瑠斗(あると)王子の気持ちが分かったよ。
これは落ちる。
多分、俺は今、酷くだらしない顔を晒しているんだろうな。
あちこちから飛んでくる視線は、身を潜めて警護に当たる護衛や草のものばかりじゃない。
いくら変装したってバレるのは想定内だが、向けられる視線は驚きとか畏怖とか皇子に向けるものではなくて、小さな恋人に鼻の下を伸ばした男への呆れだ。
自覚はあるよ。
でも、仕方ない。
何と言っても、デートだからな。
「馬の蹄の形をした看板があるだろ。馬具の店なんだが、あそこにはよく世話になったよ、」
「ばぐ、」
手を引いて懐かしい工房を見せてやれば、日向は本を抱えた腕を前に出し足を開いて馬に乗る仕草をする。そうだよ、馬につける装具や乗馬の時の装備品の店だ。
夏休みに入ってから、日向は初めて一人で仔馬に乗ったもんな。乗馬服を着て、小さな仔馬の上にちょこんと座って緊張していた姿があんまり可愛いものだから、俺も侍女も護衛たちも悶絶した。
「離宮には専門の職人がいるから必要ないんだけどな。皇家の印も、兄姉と揃いの装具も嫌でさ。あそこに通い詰めて俺だけの馬具を作ったの、」
「僕も、作る?」
「んー、あまり大声じゃ言えないけど、離宮の職人が一流だと今ならわかるよ。正直、日向のは離宮の職人に任せたい。仔馬に乗った時も、日向の体にぴったりだったろ、」
「しおうは、失敗?」
「競技に出たけど、散々だった。俺も馬も装具がしっくりこなくて、全然走れないの、」
「しおうが、失敗!」
途端に日向は、足をあげて踊り出す。
どうしてこうも毎回、俺が泣いた話や失敗談に大喜びするかな。
「しおうも、失敗がある!僕と一緒!お揃い!」
そうだと知ってるから、複雑なんだよ。
格好良い俺に惚れろよ、と思う一方で、失敗一つでこんなに大喜びさせられるのは俺だけだと言う自負もあるから、怒れやしない。
財布を忘れて困った時の話には、日向は声を立ててけらけら笑った。
普段は財布なんて持たないから、町に出始めたばかりの頃はよくあった。藤夜と二人で食事をした後で、揃って財布がないことに気づいたんだ。皇子が無銭飲食だなんて噂が巡れば、皇家の威は地に落ちる。反抗心はあっても、責を負う覚悟はなかった頃だから、この世の終わりかと言うほど狼狽えた。
結局、見かねた幸綺(こうき)が姿を現して代わりに支払ってくれたわけだが。
「お金を払わない、は、叱られる?」
「叱られるだけで済めば良いけどな。法律に反することだから罰も受ける、」
「ほうりつ、ばつ、」
「国が決めた決まり事な。そう言う決まり事を破ると罰がある。道徳にも反するから、信頼も失うな、」
「どうとく、しんらい、」
「他人が嫌がることをすると、皆の心が離れていくんだ。そう言う決まり事の一つがお金を払うことなの、」
「はりまが、怒ったやつ、」
「そ、」
顔は笑ったままだったが、繋いだ手に力が籠ったから、嫌なことを思い出させたかもしれない。
だが、安心させるつもりで水色の頭を撫でると、日向はすりすりと寄ってきて甘えた後、他には、と続きを聞きたがった。
まだ手に籠る力は抜けていないから思うところはあるんだろう。だが、最優先はデートらしく、日向は水色の瞳でじっと強請る。だから、俺もそれに応えて色々喋った。
「俺が転んで棚の上のやつをひっくり返した店があるんだけど、見てみる?」
「見る、」
「ガラス製のランプを扱う店だからな。全部落として、悲惨なことになった、」
「ガラスは、落ちたら割れる、」
「そ。全部割ったの。これは流石に母上が来て謝ったよ。それで、俺と藤夜は謹慎処分な。一月の間、文官の仕事を手伝わされた、」
「あはっ、」
店の前に連れて行くと、日向はガラス窓に張り付いて中を覗き、声を立てて笑う。
ガラス製のランプがずらりと並ぶのを見て、俺がどんな大失態を晒したか想像できたのだろう。ぴょんぴょんと跳ねて、何度か窓に頭をぶつけた。
だが、入ってみるかと聞けば、途端に険しい形相だ。
自分も同じ失敗をやらかすと思ったかな。
足を踏ん張って腰を引き、俺の手を引っ張って、絶対に入らないんだと全身で抵抗してみせる。
だから結局、店には入らず仕舞い。
歩き出すところっと表情を変えてご機嫌になった日向を連れて、ただ話しながら町の中を歩いた。
その足が止まったのは、ちょうど噴水の湧く広場に入った時だ。
「日向?どうした?」
繋いだ手が急に動かなくなって振り返ると、小さな水色の頭はそっぽを向いて固まっている。
人出が多い場所だから怖かっただろうか、あるいは歩かせすぎて足が痛み出したかもしれない。そう思って顔を覗き込むと、水色の瞳が何か一点を見つめて動けずにいるのに気がついた。
その視線を追って、なるほど、とすぐに納得したよ。
「日向、言ってごらん、」
「……何もない、」
「何もないってことはないだろ。何か気になったんだろ、」
屈んで顔を覗き込み促すと、日向はちらりと俺を見はしたが、すぐに元の場所へと視線を奪われる。
頭が小刻みに揺れるのは、多分こちらを振り返ろうとするからだろう。そのくせ、上半身は視線の先に向かって飛び出しそうなほど前のめりだ。足に至っては、右足は俺に向くくせに左足はそっぽを向いておかしな格好になっていた。
本当は、今にも視線の先に飛びついていきたいんだろうに。
できないのは、その腕に抱える教本のためか。
「日向、」
「だいじょぶ、何もない。でーとの続き、」
「俺の思い出は十分話したろ。今度は日向の番だ、」
動けない日向に代わって、視線の先に回ってやると、日向は顔をくしゃりと歪めて苦悶の表情を見せる。
「ちがう、僕の思い出はない。だから代わりに、しおうがやる、」
「うん、俺の話はいくらでも話してやるよ。それは心配しなくていい。そうじゃなくて、俺は日向が何に気を取られたのかが知りたいんだよ、」
「何もない。でーとをやるから、引っ張って、」
俺が頭を振ると、日向は泣き出しそうな顔になって俺を睨んだ後、本を抱えた腕を振り上げた。
役立たず、と自分の足を叩こうとするから、受けとめてやる。すると湧き上がる感情を向ける矛先を無くしたのだろう。堪えていたものが溢れるように、小刻みに震え出した。
「大丈夫だ、日向。我慢しなくていい、」
「ちがう、我慢ない、でーとする、だいじょぶ、」
「ん、分かってるから、」
本の通りにデートがしたいんだよな。
日向が知るデートは、その本だけだから。
でも、視線の先に予定外のものが現れて、体は正直に捕らわれたから困ったんだよな。
日向はもう自分の好きなものが分かるから。
生き物やブランコに飛びついていくみたいに、本当は飛びつきたい。
だが、本に書かれた通りの決まり事を守って正しいことをしないと、日向は不安になる。
ちゃんと分かるよ。
「阿瑠斗王子と沙安良と、同じことだよ、」
押さえた腕を撫でて本を指してやると、日向は水色の瞳を大きく見開いた。
同じだと言われても分からないよな。
日向はまだ目的と方法の違いが分からない。分からないから、本に書かれた方法じゃなきゃ気が済まないし、その通りにできなければ仲間はずれになると思ってしまうーーーブランコで危険なことをして亜白(あじろ)が去ったように、順番を守れなくて播磨(はりま)に叱られたように。
デートは、そんな決まり事じゃないんだけどな。
それも日向にはまだ分からないから、こんな風に固執する。
いいよ、それはゆっくり学んでいこう。
でも、デートだ。
日向が分からないなら、俺が笑わせてやる。
それも大事な大事な決まり事だ。
「沙安良は、王子が珈琲屋を気にしたのを見て、王子が珈琲を好きだと初めて知ったろ。その時、どうだった?」
「……嬉しかった、」
「何でか分かる?」
「……王子の好きが分かるが、さあらは嬉しい、」
「ん、そうだな。それがデートの醍醐味だ、」
「だいごみ、」
「一番楽しいって意味な。町を歩いて思い出を語るのも、お互いを知りたいから語るんだ。だから思い出がなくたって、王子の気になるものが知れたら、沙安良は嬉しい、」
囚われた先を遮るように水色の瞳を見つめてやれば、日向は大きく開いた瞳で俺を見て、怒ったような泣いたような複雑な顔をする。それからぎゅっと目を瞑った後、今度は縋るような瞳で俺を見た。
「……犬がいる、」
「うん、」
「…犬に行きたく、なったは、でーとと、同じ?」
「そうだよ。せっかくデートに来たんだ。俺は日向が何に気を取られたのかが知りたい、」
「犬に、行きたい、」
日向の視線の先で、店番の犬がちょこんと座ってこっちを見ていた。
あれに気を取られたんだとは、すぐに分かったよ。
でも、日向の口から聞きたかった。
「今度は、日向が連れて行ってくれるか。俺はついてくから、」
「しおうが、僕に、ついてくる、」
「そ、阿瑠斗王子のことは沙安良が連れていったし、沙安良は阿瑠斗王子が連れていったろ、」
王子と令嬢という理由を与えてやると、険しかった表情がだんだんと緩んで、再び光を灯す。
おかしな形で固まっていた体も、もぞもぞと動き出すと、俺の手を強く握って引いた。それに俺がついてくると分かると、途端に輝くような笑顔になる。
それから後は、もう一目散だ。枷が外れたように飛び跳ねると、犬が座る店先へと俺の手を引いて駆けて行った。
「犬!しおう、あっち!犬がいる、」
「分かったから、少し落ち着け。足が痛むぞ、」
「犬!早く!あっち!あっち!」
ぴょんぴょんと跳ねる背中を追いかけるのは、新鮮だった。
いつもは腕の中だからな。
既視感があるとしたら、日向が帝国に来た日に母上に手を引かれて離宮に向かった姿だが、あの時は俺が先を歩いていたし、日向は俯いて周囲を見ることさえできなかった。
ああ、まずいな、何か泣きそうだ。
大きくなったよな。
ガリガリなのは確かだが、背は確実に伸びたし、肉だってついた。
繋いだ手も、骨と皮しかなかったのが、今はずっと握っていたいくらい柔らかくなった。
自分の好きなことも分かって、我が儘が言えるようにもなっただろ。
そんなことさえ日向は初めてだから、欲を抑えきれずに突っ走ることもあるけど、我慢も覚えたな。
小栗とな、最近の日向が特に決まりにこだわるのは、日向が俺たちの中で生きようと努力してる証だろうと話してるんだよ。
尼嶺での15年の間、一人で生きて来た日向だ。
誰より生きる術に敏感で、今もまだ闘ってるんだろう。
でもそれが、日向一人で生きるところから、俺たち皆と生きるところに変わって来たんだと。
一人で隠れ家にいたのにな。
今はこうして、俺と一緒に町の中を駆ける。
夢みたいで、小さな背中を眺めるうちに目頭さえ熱くなってきた。
犬にたどり着く前に日向の膝が折れて、夢のような時間は終わってしまったが、俺が抱え上げて走ってやれば、日向は声を立てて笑い、早く早くと囃し立てる。
「でーとって、いいね、」
驚愕する店主に断って犬を撫でさせてもらうと、日向は再び蕩けたようにふにゃふにゃ笑って言った。
「どこが良かった?」
「しおうが、僕についてくる、」
「デートじゃなくたって、どこだってついてくんだけどな、」
「いつもは、抱っこ。抱っこじゃなくて、一緒に歩くが、いちばんいい、」
「だな。俺もそう思った、」
お揃い!と飛び跳ねた日向に犬がじゃれつくと、日向はまた声を立ててけらけら笑う。
その声を聞いたら、俺はもう胸の中が温かくも熱くもなって、全身何かに満たされていくのを感じたよ。
ーーーそれは、幸せという。
ただ歩いて、喋って、店に寄る。
それだけのことなのにな。
それがこんなにも幸せだなんて、俺は初めて知ったよ。
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