【BL】異世界転移したら猫獣人の国でした〜魔石食べたらチートになりました〜

アベンチュリン

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視察③

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「本日は後任のランボルドも同行させてもらいます」
 ライナルト様から紹介されたその青年は髪は短髪に切り揃えられ身綺麗なスーツを纏った謹厳実直きんげんじっちょくそうな人だった。
 互いに「宜しくお願いします」と声を掛け合い握手をする。

 三人でイースタンに赴いている。

 まずは町長への挨拶。

「お初にお目にかかります、セオドール王子妃のルカと申します」

「この度はご結婚おめでとうございます、私は町長のボルドーと申します」

 町長は大分やつれた表情の紳士だった。他の二人も挨拶を交わし、本題へと移る。

「先日、街を視察させてもらったのですが、復興改善の必要があると思い、今回僕が復興を担当させていただければと宰相様と相談しました。改善すべき箇所をリストアップしましたのでお目を通していただければ幸いです」

 羊皮紙三十枚にもなった改善案を手渡す。町長は眼を細めて「ああ、ありがたい」と声を漏らしながら羊皮紙に釘付けになる。

「ひとつお尋ねしたいのですが、孤児への炊き出しは週二回になったのは何か理由があるのでしょうか?」

 そう僕が問うと、町長は不安気な表情を浮かべる。

「領主のペドリーニ侯爵様に租税も払わない浮浪者に施しをする必要はないと言われ、それでも懇願して週二回になりました」

 町長は領主に報告したライフラインの補修や他の案件についても話してくれた。
 やはり領主より国から出てる予算が回ってきていないようだった。
 孤児グループの窃盗が頻繁にあるため、この街の商売人や大人達の大半は他の街に移り住んでしまったらしい。

 僕は憤りを覚えて、握りこぶしに力が入る。ライナルト様は事の次第に、うすうす気づいていたようだった。
 
 町長は改善策に全面的に協力してくれる事になった、労いの言葉をかけると「やっと希望の光が見えてきた」と水分を含んだ瞳で言い握手をして別れた。



 ペドリーニ侯爵邸に到着した。門構えもしっかりしていて、庭園も広く、邸宅はムデハル様式、ゴシック様式、マヌエル様式の3つの建築様式で建てられていると侯爵より自慢げに語られる。
 いち侯爵が持てる邸宅ではないなと感じた。
 ペドリーニ侯爵(エキゾチックショートヘア種)は恰幅が良く繁殖期の蛙のような腹の持ち主で、酷薄そうな顔をしていて鼻持ちならない。 

 僕達は客間に通された。各々挨拶をすませると、今度は室内に飾られている装飾品自慢が始まった。

 話を遮ぎるようにライナルト様が切り出す。

「先日ペドリーニ様の領土内イースタンに視察に行ったのですが、改善復興が必要と判断し改善策を纏めて来ました」

 町長に渡した物と同じ内容の羊皮紙を渡すと視線はさまよい、苦虫を潰したような顔つきになる。

「いやぁ~、あの街は駄目ですよ、大人はいないし租税は取れないし……テコ入れするだけ無駄ですよ~」侯爵は薄ら笑いを浮かべ嘯く。

「僕から質問宜しいですか?孤児達への炊き出しは毎日と国から指示があるのに週二回になったのは何故なのですか?」

「街の補修はまだしも、孤児なんて勝手に移り住んで……町民とも言えないじゃないですか、この街はね、財政も圧迫してて慈善事業なんかする余裕はないんですよ」

 侯爵の心無い言葉に、黙っていられなくなった僕はドンッ、と机を拳で叩くと侯爵は座ったまま蛙が如く跳びはねた。

「テコ入れって何なんですか?街の補修も孤児への炊き出しも貴方の責務ではないんですか!実際に病に侵されたり、命を落としてる人もいるんですよ!」

 大きな声に怯んだ領主。

 まだ言い足りないと言葉を模索していると、ライナルト様に制止され「皇族たるもの侯爵貴族と上手く立ち回らなければなりません」と耳打ちをされて、ライナルト様が話し出す。

「お言葉を返すようで申し訳ないのですが、国からの予算は補修費、福祉事業費(孤児食糧支援)等それぞれの明細を金額と共に出しておりますが、指示通りに国費が使用されていないのならば大問題ですね……その国費は何処に消えたのでしょう」

「ちゃんと明細通りに使っている!……しょ、証拠はあるのかね?」

「ええ、先ほど町長より町費の明細を預かってきております。国の帳簿と照合すれば……」

 帰り際、町長にお願いしていたのはこれだったのか、それも今回は町長領主ともアポを取らずの訪問だった。証拠隠滅を阻止する為なのか……ライナルト様の策略に感服すると同時に、敵に回したら末恐ろしいと感じた。
 
 領主の顔は青ざめた、覇気のない声で。

「……それで私にどうしろと?」

「断罪……、するには証拠集め等、手間が掛かりますので……私も忙しい身ですし。この際帝都近隣の領土は全てご返還いただき、改めて北方領土アルタミスの領主を勤めて頂くのは如何でしょうか?」

 アルタミスは一年の中で夏以外は雪深い地方で、ある意味左遷のようなものだ。

 領主は足踏みをして暫く考えこむ。猫の仕草のような猫爪で喉をカッ、カッ、カッと掻いて。

「……はいはい、わかりました!辺境伯になれば良いんだろ!」

 自暴自棄になって承諾を得る、それでも断罪で牢屋に入るよりは断然マシだと思う。
 この案件はライナルト様がいなければ纏まらなかっただろう。

 帰りの馬車に乗り込んでから、ライナルト様はやれやれと深い溜め息を溢し、やっと肩の荷がおりたようだった。

「それでイースタンの邪魔者は退散できましたが、ルカ様が領主を勤めて頂くということで宜しいですか」

「えっ?えっ!?領主ですか」眼を白黒させながら訊く。

「領主の席は空いてしまいますし、これから候補を立てて……なんてのんびりしてると改善策は一向に進みませんよ」

 はぁーと長い溜め息をつく、ライナルト様は話しを続ける。

「他の領主を立てても、同じ熱量でやってくれるとは限りませんし、ルカ様ご自身でやられた方が連携も取れてスムーズに事が運ぶかと……」

「はぁーー、わかりました。僕が領主となりましょう」

 なんだかイースタンを押し付けられたようにも感じたが、あの街でやりたい事が山のようにあるし改善策を考えてくれたのは、ほぼライナルト様なので頭が上がらない。

 そして僕はイースタンの領主となった。
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