【BL】異世界転移したら猫獣人の国でした〜魔石食べたらチートになりました〜

アベンチュリン

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ラファエル×レオ編

レオの決意

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 最後の客が帰り、ドアサインを『closed』へ反す。
 ふっ、と転移の気配を感じる。松葉杖をついた大柄のオスが近づいてきた。
 目を眇めてよく見ると、それはラファエルだった。
 レオは顔を綻ばせる。

「あ、ラフィー。ちょうどいま店を閉めようと……、ちょ、どうしたのその脚!?」

 瞠目したレオは、松葉杖をついていたラファエルの脇下に肩を入れて、松葉杖を持ち店へ入る。

 詳細を聞いても「魔物討伐でやられた」としか教えてもらえず、核心はつけなかった。

 ラファエルは騎士時代には左眼を失い、亡くなった団員の角膜を魔法移植して、両眼ともに問題なく視力は回復している、がしかしだ。

 現在は皇帝の地に即位しているにも関わらず片脚を失くすなど…………。ありえないだろう、この国の近衛騎士はどうなっているんだ‼︎
 
 考えていたら段々と腹が立ってきた、獅子の歯噛みが止まらない。
 レオは苛々と人差し指でカウンターを鳴らした。
 臍を決めて、ラファエルを見据え、カウンターを拳で叩き発声する。
 
「俺、ラフィーの側妃になる!」

 そして近衛騎士や関係者に進言してやる!…………だってそうしなければ、このお人好しの皇帝が、そのうち命まで奪われるかもしれない、そんなの耐えられない、愛しい人が。
 最近まで、本気になったら別れると決めセリフのように吐いていた俺が。
 ラファエルから「レオを側妃に迎え入れて、夜毎愛したい」とかいう甘い科白に対しても「面倒はイヤだ」と躱していた俺が、キジトラ種ゆえの警戒心も皆無になっていた。

 レオは上目遣いに強い視線を浴びせた。
 ラファエルは水気を含んだ瞳で、眦に朱を注ぎ。

「やっと、……やっと決心してくれたのか‼︎」

 ラファエルは大きな体で男泣きに泣いて、レオをカウンター越しに抱き寄せた。
 こんなに喜んで貰える……とは予想はついていたけれど、大変なことを言ってしまった。
 肩越しにレオは苦虫を潰したような顔をした。

「それで婚約者はどうするんだ?」
 
 腕を解いたラファエルは問う、レオの顔が陰る。

「そう……、それも肩付けなきゃね」
 
 レオは遠くを見つめて嘆息した。

      ☆

 実家のビスカルディーニ家の応接室は華美過ぎずセンスの良い調度品が設えてある、懐かしさもあり、心が落ち着く。
 年の離れた弟は、久々に会えた兄と両親が何やら難しい話をしているのが気になって、チラチラと扉を開けて聞いているようだった。
 両親に婚約破棄と側室の旨を伝えると、父は「跡継ぎはどうするんだ!」と怒気を含んだ声をあげて、俺は何も返せず俯くことしか出来ずにいた。
 その時、小さい弟は父に縋りついた。

「父上、兄上を許してやってください!僕がシャトーを継ぎますから!」

 齢十歳の小さな体は少し震えながらも、父の袖をしっかりと握って離さなかった。
 硬くなっていた父の表情が、徐々に綻んでゆく。

「はー、わかったよマルコ。……レオ、けじめはちゃんとつけなさい」

 レオ「はい」と返事をして、父は弟の頭をひと撫でして退室する、その背中は小さく寂しそうに見えた。
 レオは小さい弟を抱き上げて「マルコ、ありがとう」と抱きしめた。シャトーを宜しく頼むと願いを込めながら。

      ☆

 ステフォール侯爵家、応接間にてメリルと両親に婚約破棄を告げる。
 侯爵は憤怒し、夫人は泣き出した。小さい頃から良くして貰ったのに……胸が痛い。

 メリルは堪えているのか俯いたままだった。

「もうわかったから帰ってくれ!」と侯爵に追い出され、メリルは正門まで見送ってくれた。
 
「それで誰なの? レオに覚悟をさせた人は……」
 
 メリルは、か細い声で聞いた。
 皇帝の名を告げると、メリルの脚はカクッと倒れそうになりながら、しっかりと脚に力を入れて立つ。

「そんなっ……そんなの敵うわけない。……ずっと解ってたわよ!レオが……突っ込むより、突っ込まれるほうが好きだって!」
 
 メリルは諦めがつくように、生粋のお嬢様育ちに不相応な、ありったけの暴言を吐いたのだとわかり、レオは小さく吹き出した後、寂しげな笑顔を浮かべる。

「全部俺が悪いんだ。メリルならきっと……」
 
 レオが言いかけた時、メリルの瞳から涙が溢れた。

「……愛したメスはメリルだけだったよ」
 
 そう告げたレオは背を向いて、泣き崩れたメリルを振り返らずに屋敷を後にした。


      ☆


 学院時代から文武両道なレオは、妃教育をさくっと終わらせた。
 側妃の婚姻の儀式は、親族のみ参加の晩餐会と神殿で行われる皇族即位式のみ。
 
 陛下は豪奢な金装飾と、光沢の刺したダークグレーの生地で誂えた燕尾服、佳人は陛下に合わせた金装飾を上品に誂えたワインレッドのドレススーツを纏っていた。
 佳人は皇帝に手を引かれホールの螺旋階段を降りる。
 ホールの紳士淑女は色めき立ち、皆、うっとりと眺めている。

 晩餐会はつつがなく執り行われた。
 ルカ達が挨拶へ来て祝辞を執り、こっそりレオに耳打ちする。

「随分、あっさりとした式だね」
「側妃ならこんなものだよ、儀式を全くやらない妃だっているし。陛下はもっと豪華にしたかったみたいだけど、やっかみは受けたくないしね」

 レオは目配せをして、微笑む。そんな姿も美しく誇らしかった。
 昔のままの話し方にルカの心はほっこりする。
 側妃だからか、猫耳は片方の月の印のみだった。

 粛々と進行した晩餐会は、宴もたけなわに締められた。


 
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