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リンドブラッド
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人助けをして捕縛されたと思ったら、今度は専属の魔導士になる事を要求された。
人生というのは、本当に何が起こるか分からない。
私にそのような要求を突き付けてきた男は、リンドブラッドと名乗った。
鎧の胸元に刻まれた紋章の国、ギルガロッソの第八王位継承者らしい。
彼は今、魔物に占拠された炭鉱が豊かな里であるピーリエンを手中に納めるべく、前線に出てきたという。
末席ではあるが、王位継承者がこんな所にいるのは珍しい。
本人は趣味だと言うが、その中には爪弾きも含まれていそうだ。
その証拠に、彼の配下には国に所属している兵士が殆どおらず、付近で集めた腕っぷし自慢の猛者や、彼を慕って集まったという有志達で成り立っている。
「奴らは良いぞ。金さえ払えばそれなりに良い仕事をしてくれる。無論、金に正直な分油断は出来んがな。駒として扱うには丁度良い」
育ってきた環境故の疑心暗鬼か防衛か。
リンドブラッドは事もなくそう笑う。
「それで?賢者よ。貴様はいくら積めばその首を縦に振る?」
彼は自己紹介を簡単に済ませ、早速交渉に入ってくる。
冗談じゃない。国に、しかも軍事国家に関わるなんてまっぴらだ。
「恐れながら殿下。先程も申したように、私が扱う粗末な魔法では貴方の期待にはとてもお答え出来ません。精々薪を燃やすので精一杯です」
「うちには火を起こすのに道具を要する者ばかりだ。それだけの能力でも使い方次第で脅威と成りうる」
相手が皇族という事で今までより言葉を選んで拒否してみるも、結果は変わらず。
あれやこれやと理由を付けて断ろうとしてみるが、全てあれやこれやと言い返される。
やれやれ。これじゃ拉致があかない。……いっそ逃げようか。
今までの会話で、ここには魔法を扱える者が皆無であるという事は理解した。
疲れるのであまりやりたくはないが、ここに来るまでに撒いた証を拠点として空間移動をしていけば、上手く逃げられるかもしれない。
でもまだ、カメリアを見つけてないんだよな。私一人なら適当に逃げても問題ないけど、カメリアを探すのに時間がかかれば、彼女に危険が及びかねない。
どうしたものかと思案していると、リンドブラッドが大きく溜め息をつく。
「ふん。貴様もなかなかどうして、頑固よな。金で解決出来ないのであれば、別の手段を取る事も可能だぞ?」
「……と、言いますと?」
「従わないのであれば、貴様のツレの無事を保証しない」
「人質のつもりですか?」
にやりと意地悪く笑うリンドブラッドに対して、私の声は一段と低くなり、自然と軽蔑の目を向ける。
こうなる可能性は十分にあった。
出来れば穏便に済ませたいが、彼が強硬手段に出るのであれば、こちらも容赦はしない。
「もし貴方がそのような愚行に走るのであれば、残念ですが貴方の命はそこまでだとお思い下さい」
「言うではないか。敵地のただ中で、未熟者が俺を殺すと?」
「私を賢者と言ったのは貴方ですよ?」
「認めたな」
「さあ?どうでしょう。ご想像にお任せします」
最後はお互いに無言で圧をかけていく。
私の周りの兵士達がどよめき、武器をこちらに向けてくる者もいるが気にも止めない。
そんな物は脅威でも何でもない。
目の前の男さえ負かせてしまえば、こちらの勝ちだ。
無言の戦いの末、折れたのはリンドブラッドだった。
「分かった。では内容を変えよう。貴様を専属にする件は一旦破棄する。その代わり、仕事を依頼したい」
いや、そのまま諦めて欲しいんだけど。
そう口から零しそうになるが、その言葉は何とか呑み込む。
「それでしたら、伺いましょう。ですがその前に、連れの娘を返して頂きたい。でないと状況が今までと変わりませんからね」
「それはこちらの話を聞いてからでもいいだろう?」
条件を呑むまで人質を返さない気だな。まあ、王族が野良の魔法使いを見逃す筈無いか……。
「……どうぞ」
ふてくされた態度で先を促すと、リンドブラッドは勝ち誇ったように鼻で笑う。
「先にも話した通り、俺達は今、ピーリエンの里に蔓延る魔物の掃除をしている。が、予想以上に苦戦していてな。そこで賢者よ。貴様の力を借りたい」
内容は今までと何も変わらない。
ほんの少し、対応が軟化しただけ。
「そこに巣くう魔物がどのような物かは存じ上げませんが、力押しでは攻略出来ない相手、というわけですか?」
寄せ集めの部隊で戦いを挑むような男だ。
余程頭が切れるか、力自慢かのどちらかで、今回の相手はそれが通用しないと考えるのが普通だ。
その予想は当たっていたようで、リンドブラッドも満足げに微笑む。
「話が早いな。奴らには物理的な攻撃が殆ど通用しない。となればここは、魔法の力が必要だと思ってな。丁度魔法使いを探していたんだよ」
「本国に要請すればよろしいのでは?。野良の魔法使いを見つけるなんて、簡単では無いでしょう」
「兄上達の息が懸かった連中など、近くに置いておけん。俺はともかく、ここにいる連中にも被害が及びかねん」
なるほど。やはり国内に味方は無し、か。……一応、慈悲の心はあるみたいだな。
ほんの少し、彼に対する印象が和らいだ瞬間かもしれなかった。
「分かりました。それなら早速、その里の様子でも見に行ってみましょうか」
「報酬の話はしなくて良いのか?」
私が拘束を解くようにと手錠が嵌められた両腕を持ち上げると、リンドブラッドはそう首を傾げる。
忘れていた。これは立派な依頼だった。
「私は賃金を要する旅や暮らしをしていませんから、そうですね……。情報を提供していただきたいです」
「情報か。どのような物だ?」
「人と魔族が共存している国や村を探しています」
「人と魔族が、共存……?」
「はい。それはもしかしたら、存在しないかもしれません。ですが各地に足を運んでいる貴方なら、近しい場所を訪れているかもしれません」
私は、いくつかある旅の目的の一つを取り出し、彼に伝える。
人間とコボルトの混血児であるカメリアが、安心して暮らせる場所を探している。
それを聞いたリンドブラッドは暫く顎に手を置いて考える。
「分かった。その答えは、仕事が終わった後に答えるとしよう」
「よろしくお願いします。それで、そろこそろこれを外して欲しいのですが」
再び両腕を持ち上げて主張するが、彼はただ、にやりと笑うのみ。
「様子見するだけならば、拘束を解く必要は無かろう?」
どうやら彼の慈悲は、まだ私には向けられないようだ。
今の私の心情を現すかのように、じゃらりと、虚しい鎖の音が部屋に響いた。
†
ジャラジャラと五月蝿い音を立てながら、数人の兵士に囲まれて森の中を歩く。
「ジャラジャラとうるせーな。もっと静かに歩けよ」
後ろからついてくる男が、手に持つ槍の石突き部分で私の背中をごすごすと小突いてくる。
その度に両手に嵌められた手錠の鎖がテンポよく鳴り響く。
「そう思うなら小突くのを止めてくれるかな?そもそも、依頼人を拘束したまま働かせる君達の上司がどうかしているよ」
度重なる不遇な扱いに苛立ち、若干口調を荒らげる。
「当たり前だろ?お前があいつら蹴散らせると決まったわけじゃないし、このまま逃げるとも限らないんだからな」
「失礼だな。連れを置いて逃げるわけないだろ」
「どうだか。口先だけの奴はいくらでもいるからな。それに、お前見るからに強そうには見えねーもん」
「ははっ。そりゃ賢者様に失礼だろ」
私の横を歩いていた男が横槍を入れ、どっと全員が笑い出す。
面白くないのは私だけ。
はぁ。これだから頭の悪い連中は嫌いなんだ。
「いやでもタロンより弱そうじゃん?」
「でも犬っころは追っ払ってたんだから、タロンよりはマシだろ」
タロン?犬?
「そのタロンっていうのは、昨日私が助けた男性の事かい?彼はどうなったんだ?」
今の話の内容からすれば、まず彼で間違い無い。
あれからどうなってしまったのだろう。
「あいつなら調教係をクビになって、配給に回されたよ」
「調教?」
予想しなかった単語が出てきて、思わず首を捻る。
「ああ。あいつ牧羊犬とかの調教士だから魔獣の調教係やってたんだけど、手懐けるどころか襲われて一人で逃げちまったんだよ。んで、危ない所を兄さんに助けられたってわけ」
「なるほど」
身なりからして奴隷かとも思っていたが、どうやら違ったようだ。
「しかし魔獣を手懐けるなんて、随分無茶をするね」
「頭も初めての挑戦だったみたいだぜ。タロンに謝ってたからな」
「へえ……。使える物は何でも使う性質ってわけか。君達は何であの人に仕えているんだ?」
単純に芽生えた質問を投げかけると、先導していた男が振り向き答えた。
「そりゃお前、俺達の里を取り返す為だよ」
「俺達の、里?」
「ああ。ピーリエンは俺達の里で、ここにいる連中は皆、炭鉱で働いてた。けど突然、魔族達に里を奪われ、物盗り同然だった俺達を拾ってくれたのが頭さ」
「頭は大した戦闘技術も持たない俺達を雇うだけじゃなく、俺達の家族全員の面倒を見てくれてるんだ。全員に役所を与え、それに見合った報酬をくれる。慈悲深い方だ」
男達は口々に上司を褒め称えていく。
適材適所。人は誰しも得手不得手がある。
リンドブラッドは人の長所を見つけ、生かすのが上手いようだ。
そうやって彼の軍事力は成り立っているわけか……。なる程。なかなか強力だ。
「見えたぜ。里の入口だ」
そうこうしている内に目的地に着いたようだ。
私達は森の茂みに身を隠しながら、里の様子を伺う。
ほんの少し観察していると、里の中からぞろぞろと魔物達が出てくるのが見えた。
「あれは……」
どんな凶暴な魔物が住み着いたのかと身構えていたがその姿を目にした時、拍子抜けしてしまった。
「何笑ってんだよ。怖くてイカレたのか?」
思わず笑い出してしまった私を見て男に引かれるが、そんな事は気にせずに立ち上がる。
「彼らなら私よりも適任者がいる。拠点に戻ろう」
「はあ?あ、お前手錠!いつの間に」
今頃気付いたのか、男は私の両手が自由になっている事に気づき驚くが、私はさっさと踵を返し、元来た道を戻って行く。
「帰り道まで背中を小突かれちゃ堪らないからね。ほら、置いて行くよ~」
人生というのは、本当に何が起こるか分からない。
私にそのような要求を突き付けてきた男は、リンドブラッドと名乗った。
鎧の胸元に刻まれた紋章の国、ギルガロッソの第八王位継承者らしい。
彼は今、魔物に占拠された炭鉱が豊かな里であるピーリエンを手中に納めるべく、前線に出てきたという。
末席ではあるが、王位継承者がこんな所にいるのは珍しい。
本人は趣味だと言うが、その中には爪弾きも含まれていそうだ。
その証拠に、彼の配下には国に所属している兵士が殆どおらず、付近で集めた腕っぷし自慢の猛者や、彼を慕って集まったという有志達で成り立っている。
「奴らは良いぞ。金さえ払えばそれなりに良い仕事をしてくれる。無論、金に正直な分油断は出来んがな。駒として扱うには丁度良い」
育ってきた環境故の疑心暗鬼か防衛か。
リンドブラッドは事もなくそう笑う。
「それで?賢者よ。貴様はいくら積めばその首を縦に振る?」
彼は自己紹介を簡単に済ませ、早速交渉に入ってくる。
冗談じゃない。国に、しかも軍事国家に関わるなんてまっぴらだ。
「恐れながら殿下。先程も申したように、私が扱う粗末な魔法では貴方の期待にはとてもお答え出来ません。精々薪を燃やすので精一杯です」
「うちには火を起こすのに道具を要する者ばかりだ。それだけの能力でも使い方次第で脅威と成りうる」
相手が皇族という事で今までより言葉を選んで拒否してみるも、結果は変わらず。
あれやこれやと理由を付けて断ろうとしてみるが、全てあれやこれやと言い返される。
やれやれ。これじゃ拉致があかない。……いっそ逃げようか。
今までの会話で、ここには魔法を扱える者が皆無であるという事は理解した。
疲れるのであまりやりたくはないが、ここに来るまでに撒いた証を拠点として空間移動をしていけば、上手く逃げられるかもしれない。
でもまだ、カメリアを見つけてないんだよな。私一人なら適当に逃げても問題ないけど、カメリアを探すのに時間がかかれば、彼女に危険が及びかねない。
どうしたものかと思案していると、リンドブラッドが大きく溜め息をつく。
「ふん。貴様もなかなかどうして、頑固よな。金で解決出来ないのであれば、別の手段を取る事も可能だぞ?」
「……と、言いますと?」
「従わないのであれば、貴様のツレの無事を保証しない」
「人質のつもりですか?」
にやりと意地悪く笑うリンドブラッドに対して、私の声は一段と低くなり、自然と軽蔑の目を向ける。
こうなる可能性は十分にあった。
出来れば穏便に済ませたいが、彼が強硬手段に出るのであれば、こちらも容赦はしない。
「もし貴方がそのような愚行に走るのであれば、残念ですが貴方の命はそこまでだとお思い下さい」
「言うではないか。敵地のただ中で、未熟者が俺を殺すと?」
「私を賢者と言ったのは貴方ですよ?」
「認めたな」
「さあ?どうでしょう。ご想像にお任せします」
最後はお互いに無言で圧をかけていく。
私の周りの兵士達がどよめき、武器をこちらに向けてくる者もいるが気にも止めない。
そんな物は脅威でも何でもない。
目の前の男さえ負かせてしまえば、こちらの勝ちだ。
無言の戦いの末、折れたのはリンドブラッドだった。
「分かった。では内容を変えよう。貴様を専属にする件は一旦破棄する。その代わり、仕事を依頼したい」
いや、そのまま諦めて欲しいんだけど。
そう口から零しそうになるが、その言葉は何とか呑み込む。
「それでしたら、伺いましょう。ですがその前に、連れの娘を返して頂きたい。でないと状況が今までと変わりませんからね」
「それはこちらの話を聞いてからでもいいだろう?」
条件を呑むまで人質を返さない気だな。まあ、王族が野良の魔法使いを見逃す筈無いか……。
「……どうぞ」
ふてくされた態度で先を促すと、リンドブラッドは勝ち誇ったように鼻で笑う。
「先にも話した通り、俺達は今、ピーリエンの里に蔓延る魔物の掃除をしている。が、予想以上に苦戦していてな。そこで賢者よ。貴様の力を借りたい」
内容は今までと何も変わらない。
ほんの少し、対応が軟化しただけ。
「そこに巣くう魔物がどのような物かは存じ上げませんが、力押しでは攻略出来ない相手、というわけですか?」
寄せ集めの部隊で戦いを挑むような男だ。
余程頭が切れるか、力自慢かのどちらかで、今回の相手はそれが通用しないと考えるのが普通だ。
その予想は当たっていたようで、リンドブラッドも満足げに微笑む。
「話が早いな。奴らには物理的な攻撃が殆ど通用しない。となればここは、魔法の力が必要だと思ってな。丁度魔法使いを探していたんだよ」
「本国に要請すればよろしいのでは?。野良の魔法使いを見つけるなんて、簡単では無いでしょう」
「兄上達の息が懸かった連中など、近くに置いておけん。俺はともかく、ここにいる連中にも被害が及びかねん」
なるほど。やはり国内に味方は無し、か。……一応、慈悲の心はあるみたいだな。
ほんの少し、彼に対する印象が和らいだ瞬間かもしれなかった。
「分かりました。それなら早速、その里の様子でも見に行ってみましょうか」
「報酬の話はしなくて良いのか?」
私が拘束を解くようにと手錠が嵌められた両腕を持ち上げると、リンドブラッドはそう首を傾げる。
忘れていた。これは立派な依頼だった。
「私は賃金を要する旅や暮らしをしていませんから、そうですね……。情報を提供していただきたいです」
「情報か。どのような物だ?」
「人と魔族が共存している国や村を探しています」
「人と魔族が、共存……?」
「はい。それはもしかしたら、存在しないかもしれません。ですが各地に足を運んでいる貴方なら、近しい場所を訪れているかもしれません」
私は、いくつかある旅の目的の一つを取り出し、彼に伝える。
人間とコボルトの混血児であるカメリアが、安心して暮らせる場所を探している。
それを聞いたリンドブラッドは暫く顎に手を置いて考える。
「分かった。その答えは、仕事が終わった後に答えるとしよう」
「よろしくお願いします。それで、そろこそろこれを外して欲しいのですが」
再び両腕を持ち上げて主張するが、彼はただ、にやりと笑うのみ。
「様子見するだけならば、拘束を解く必要は無かろう?」
どうやら彼の慈悲は、まだ私には向けられないようだ。
今の私の心情を現すかのように、じゃらりと、虚しい鎖の音が部屋に響いた。
†
ジャラジャラと五月蝿い音を立てながら、数人の兵士に囲まれて森の中を歩く。
「ジャラジャラとうるせーな。もっと静かに歩けよ」
後ろからついてくる男が、手に持つ槍の石突き部分で私の背中をごすごすと小突いてくる。
その度に両手に嵌められた手錠の鎖がテンポよく鳴り響く。
「そう思うなら小突くのを止めてくれるかな?そもそも、依頼人を拘束したまま働かせる君達の上司がどうかしているよ」
度重なる不遇な扱いに苛立ち、若干口調を荒らげる。
「当たり前だろ?お前があいつら蹴散らせると決まったわけじゃないし、このまま逃げるとも限らないんだからな」
「失礼だな。連れを置いて逃げるわけないだろ」
「どうだか。口先だけの奴はいくらでもいるからな。それに、お前見るからに強そうには見えねーもん」
「ははっ。そりゃ賢者様に失礼だろ」
私の横を歩いていた男が横槍を入れ、どっと全員が笑い出す。
面白くないのは私だけ。
はぁ。これだから頭の悪い連中は嫌いなんだ。
「いやでもタロンより弱そうじゃん?」
「でも犬っころは追っ払ってたんだから、タロンよりはマシだろ」
タロン?犬?
「そのタロンっていうのは、昨日私が助けた男性の事かい?彼はどうなったんだ?」
今の話の内容からすれば、まず彼で間違い無い。
あれからどうなってしまったのだろう。
「あいつなら調教係をクビになって、配給に回されたよ」
「調教?」
予想しなかった単語が出てきて、思わず首を捻る。
「ああ。あいつ牧羊犬とかの調教士だから魔獣の調教係やってたんだけど、手懐けるどころか襲われて一人で逃げちまったんだよ。んで、危ない所を兄さんに助けられたってわけ」
「なるほど」
身なりからして奴隷かとも思っていたが、どうやら違ったようだ。
「しかし魔獣を手懐けるなんて、随分無茶をするね」
「頭も初めての挑戦だったみたいだぜ。タロンに謝ってたからな」
「へえ……。使える物は何でも使う性質ってわけか。君達は何であの人に仕えているんだ?」
単純に芽生えた質問を投げかけると、先導していた男が振り向き答えた。
「そりゃお前、俺達の里を取り返す為だよ」
「俺達の、里?」
「ああ。ピーリエンは俺達の里で、ここにいる連中は皆、炭鉱で働いてた。けど突然、魔族達に里を奪われ、物盗り同然だった俺達を拾ってくれたのが頭さ」
「頭は大した戦闘技術も持たない俺達を雇うだけじゃなく、俺達の家族全員の面倒を見てくれてるんだ。全員に役所を与え、それに見合った報酬をくれる。慈悲深い方だ」
男達は口々に上司を褒め称えていく。
適材適所。人は誰しも得手不得手がある。
リンドブラッドは人の長所を見つけ、生かすのが上手いようだ。
そうやって彼の軍事力は成り立っているわけか……。なる程。なかなか強力だ。
「見えたぜ。里の入口だ」
そうこうしている内に目的地に着いたようだ。
私達は森の茂みに身を隠しながら、里の様子を伺う。
ほんの少し観察していると、里の中からぞろぞろと魔物達が出てくるのが見えた。
「あれは……」
どんな凶暴な魔物が住み着いたのかと身構えていたがその姿を目にした時、拍子抜けしてしまった。
「何笑ってんだよ。怖くてイカレたのか?」
思わず笑い出してしまった私を見て男に引かれるが、そんな事は気にせずに立ち上がる。
「彼らなら私よりも適任者がいる。拠点に戻ろう」
「はあ?あ、お前手錠!いつの間に」
今頃気付いたのか、男は私の両手が自由になっている事に気づき驚くが、私はさっさと踵を返し、元来た道を戻って行く。
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