俺ログその後の恋愛模様

獅子十うさぎ

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カイト×ユメナ再会



「は?クレハちゃんと??」

夜、ゲームをしようと温人の部屋に入った海斗が受けた報告。
無論海斗は困惑である。

「いやいやいや、ちょっと待った。クレハちゃんってNPCだろ?何で現実世界で会えてんの?実はプレイヤーだったとか??」

「や、なんか紅葉の叔父さんがBTO作ってた会社の人らしくて…紅葉をモデルにして作ったNPCがあのゲーム内のクレハだったらしい」

「マジ!?え、あの美少女に実在のモデルが居るとか…しかも現実世界で会えたとかもう急展開過ぎて頭がついていかねぇ…!!」

「俺も自分の身に起こった事だけど信じられないわ。紅葉に会えた事も紅葉ん家に行けた事も連絡先交換できた事も」

「は!!?」

聞き捨てならない言葉が聞こえ、海斗の声量がレベルアップ。

「待て待て待て!は!?紅葉ちゃん家!?あの見た目そのままって事はとんでもない美少女だろ!?相当モテるだろうに何をどうしたらお前が出会った初日に家に行くとかいう展開になるんだよ!?」

「遠回しに貶してくんな!事実だけど!」

言わずもがな温人も海斗もフツメンである。

「それがさ、死んだフリ婆さん居るじゃん?あのおばあさんを毎回送り届けてんのを紅葉も時々目撃してたらしくて…で、結構前から俺と仲良くなりたいと思ってくれてたんだって」

「なん…だと!?」

ついに海斗は膝から崩れ落ちた。
と言っても座椅子からだが。

「嘘だろ…相手がNPCの時なら分かるけど、デイ爺の時と同じ事が現実でも起こるなんて…。死んだフリ婆さんが美少女好感度上げる仕組みだっただと…!?」

「明日から海斗も死んだフリ婆さんの話し相手するか?」

「いやそれは無理」

「無理は失礼だろ」

例え美少女と仲良くなれるとしても、死んだフリ婆さんの長話に付き合うのは海斗にとって地獄の所業なのだ。

そんな海斗を見ながら、温人は改めるようにして口を開いた。

「それでさ…海斗に1つ相談があるんだけど」

「聞きたくない。嫌な予感しかしない」

「ヴァーミリオンハーツさ、紅葉も一緒にやっちゃダメか?」

「聞けよ」

紅葉の事を考えると思考がそちらを優先してしまい温人も海斗の扱いが雑になるらしい。

因みにヴァーミリオンハーツとは2ヶ月半前から2人がプレイしている新作のフルダイブ型VR MMO RPGだ。

「お前な!BTOの時でさえお前らがイチャイチャウフフしてんの見て爆発しろと思いながらプレイしてたんだぞ!?あの時は相手がNPCだからまぁ良しと思ってたけど、同じプレイヤーとイチャイチャしてんのを我慢して見てろってのか!?」

「や、だってさ、ゲーム機とかあるけどやった事なくてわからないから一緒にやってほしいって言われたら…助けてあげたくなるじゃん?」

「くそぅもう惚気てやがる!!」

悔しげに床を拳で殴りつける海斗。
温人の部屋は2階なので下の階にいる親達が驚いているかもしれないがお構いなしだ。

と、海斗が急にユラリと体を起こした。
その様子に温人も我に帰って嫌な予感を覚える。

「よぅし分かった。一緒にやってやっても良い」

「え、本当か?」

「ただし!紅葉ちゃんにもう一人女の子連れてきてもらえ!でなきゃ俺もやってられん!!」

「は!?」

その条件には流石に温人も焦る。

「合コンじゃねぇんだから、数合わせとかおかしいだろ!?大体紅葉に何て言えば良いんだよそれ!?俺の印象悪くなったらどうすんだ!」

「知るか!適当に自分も友達とやってるから紅葉ちゃんも友達誘ったら良いとか何とか言え!」

「うわ本気だコイツ。つーか、心の天使はどうしたんだよ?」

心の天使とは無論ユメナの事である。

「会えねえんだからしょうがないだろ…!ゲームはやってる筈だけど、広大なマップだわ職業によってスタート地点の国も違うわで全然発見できない上にリアルの連絡先知らねえし…!」

「それは知ってるけど…あ、名前で検索掛けたらどうだ?」

「とっくの昔にやってるっての!けど同じネームの人いっぱい居て絞り込めなかったんだよ…!」

正確には全く同じ表記ではプレイ出来ないが、平仮名だったり漢字だったりスペルだったりで同じ名前のプレイヤーが混在しているのだ。

あまりの海斗の嘆きっぷりに、流石に温人も不憫に思えてくる。

「…わかった。紅葉に一応伝えてみるよ。けど、期待はするなよ?」

「お前は俺の最高の親友だ」

「うわ嬉しくねえ」

と言いつつも元気になった親友を前に、温人は紅葉へと相談の連絡を入れるのだった。



*******



「うーん…」

紅葉は悩んでいた。
というのも、温人から紅葉も友達を1人誘ったらどうかという連絡を受けたからだ。

「ねぇ、ヴァーミリオンハーツって知ってる?」

「え、何それ?」

一応友達に声を掛けてみるが、知らない上に説明しても興味が無さそうな反応ばかりだ。

「誰かやってる人居ないかな…」

学校の廊下を歩きつつ、ポツリと独り言をこぼす。
因みに紅葉が通っているのは女子校である。

と、1人の同級生が横を通り過ぎた。

「!」

その子が鞄に付けているキーホルダーを見て、思わず目を剥く。
気付けば声を掛けていた。

「あ、あの!ちょっと良い?」

「え!?わ、私ですか?」

そう応えたのは夢菜。
海斗の心の天使、その人である。

因みにその時の夢菜の心境は『びび美少女に話しかけられた…!!』だ。

「遠坂さん…だったよね?その…キーホルダーってヴァーミリオンハーツのよね?もしかしてやってるの?」

ゲームの内容もよく分かってない紅葉がそのキャラを覚えていたのは、大好きなコーギーにそっくりだったからである。

因みにこの時の夢菜の心境は『美少女が私の名前を覚えてくれてる…!!』だ。

「え、は、はい!もしかして桐山さんも?」

「ううん、まだやった事はなくてこれからプレイしてみようかなって思ってるんだけど…その、もし良かったら一緒にやってくれないかな?知り合ったばっかりの友達とやるんだけど、その人にもう1人誘ったらって言われてね。でも、他にそのゲームやってる人知らなくて…」

「あー…そうですよね。私の友達とかも、乙女ゲームとかばっかりでオンラインゲームは誰もやってなくて」

「乙女ゲーム?」

「いえまぁ知らないなら良いです」

紅葉はこっちの世界の人間では無いと瞬時に悟った夢菜。
何事も無かったように話を戻す。

「今のお話ですけど、(美少女からのお誘いなのだから当然)良いですよ。私も一緒に遊べる人が居たら良いなって思ってたので」

「本当!?ありがとう!じゃあ早速今日にでもどうかな?」

「はい、ぜひ!」

そうして紅葉と夢菜は約束と共に連絡先を交わした。
夢菜が心の中で『美少女の連絡先ゲットしちゃったぁー!!!』と絶叫してたのは秘密である。

紅葉は新たな友達ができた事を喜びながら、温人に連絡を入れたのだった。



*******



「お前は俺の最高の親友だ」

「いやもうそれいいわ」

温人からの報告を受けて海斗は喜びに打ち震えた。
因みに毎度の如く居るのは温人の部屋である。

「え、因みにどんな子?」

「合コンか!同じ高校の子だってしか聞いてないわ!」

「紅葉ちゃんの友達ならきっと可愛いな」

「それは…まぁ、そうかもだけど」

もし合コンならば女は自分よりブスしか連れてこないという事を2人は知らない。

「で、紅葉ちゃんは今どんな状況?」

「その友達に教えてもらいながらやって、取り敢えずチュートリアルは終わったっぽいぞ。て言ってもまだ始めたばっかりで国の移動とかは出来ないから、俺らから会いに行く形になるな」

「だろうな。場所は?」

「ドラグナーズグロール国のクラウディアベールだって」

「おぉ、やっぱ紅葉ちゃんはクノイチか」

職業ごとにスタート地点が変わるので、直ぐにピンとくる海斗。
温人も頷いて答える。

「そうらしい。一応7時頃にさざれ石前に集合って事にしてる」

「よくぞやってくれたぞ親友よ。早速ログインしようではないか」

「キャラ変わってんぞ」

ウキウキの海斗と、なんだかんだでソワソワしている温人は直ぐ様ヘッドギアを被りログインを開始した。


*******



ところ変わってドラグナーズグロール国、クラウディアベール付近のフィールド。

「は!」

そこでクレハ達はクエストのモンスター狩りをしていた。

「わぁ、凄いクレハちゃん!初心者とは思えない動きですよ!」

「そうかな?きっとユメちゃんのお陰よ。失敗しても直ぐ回復してくれるから安心して戦えるもの」

(性格も良くて運動神経も良い美少女とか推せる…!!)

ユメナにとってクレハは心の中のアイドル的存在になっている。

因みにゲームをする上で苗字呼びなのもおかしいと、名前呼びに変更した2人。
クレハに至っては愛称呼びである。

「あ、そろそろ時間ですよ。クエストのノルマもちょうど達成しましたし、移動しましょう」

「え!?もうそんな時間!?夢中になっちゃった…」

「ふふ、わかります」

雑談をしつつ、街に戻ってクエスト報告をし集合場所に向かう2人。
石の前まで来た所でユメナが思い出したように聞いた。

「そういえば、これから来る人ってどんな人なんですか?」

「えっと、1人はアヒト君っていう私達と同じ歳の黒髪の男の子よ。もう1人はその友達なんだけど、私も初めて会うからまだよく知らないの」

「え!?これから来る人達って男の人なんですか!?」

「あれ?ごめん、言ってなかったっけ」

「初耳ですよぅ。友達って言うからてっきり女の子かと…。どど、どうしよう」

急に慌てふためくユメナ。
それを見てクレハも焦る。

「も、もしかして男の人苦手だったりする?それなら無理して会わなくても…」

「いえ、苦手っていうか…普段男の人と話す事が無いので、テンパっちゃって上手く話せなくて…」

「そうなの?ごめんね、よく知らないからこういうオンラインゲームって男女関係なく皆んな一緒に遊んでるのかと思っちゃって…」

「そういう人の方が多いと思います。私はつい逃げちゃって、前のゲームでも女の子とばっかりパーティー組んでて…。人助けで色んな人と集まった時だけは男の人だらけのパーティーでしたけど」

「その時はどうだったの?」

「えと、中心になってた人が気にかけてくれたのかよく話しかけてくれて…その人とだけはちゃんと話せた気がします」

もちろんカイトの事である。
ユメナはカイトが自分を気にかけてくれたのだと思っているが、実際は2割が気遣い8割が下心だ。

「そうなんだね。その人とは一緒にやらないの?」

「前のゲーム終わっちゃってから会えてないんですよ。このゲームもやってる筈なんで、偶然会えたりしないかなと思ってはいるんですけど」

落ち込むように言うユメナの様子を見て、「おや?」と勘づくクレハ。

「え?え?もしかしてそういう?やだ、ユメちゃん可愛い…!早く会えたら良いね!」

「や、違…!ととととにかくっ、今はこれから来る人達ですよ!あっ、そうだコレなら!」

メニューから装備欄を開き、とある物を取り出すユメナ。
そのユメナの手にしている物を見てクレハの目が点になる。

「え?ウサギの被り物?」

「はい!これを被れば少しは緊張も和らぐかと!」

そう言いながらスポリと被り、ユメナの頭がウサギと化す。
クレハは『さすがにそれはどうなんだろう…』と思いつつも、それでユメナの気持ちが楽になるならと一緒にいる事の羞恥心を覆い隠した。




同じ頃、アヒトとカイトはクラウディアベールへ転移してきていた。

「結構距離あったから高かったな。また金稼がないと…」

「流石に国越えテレポートは痛いな」

テレポートは距離によって掛かるコストが変わってくる。
懐に打撃はあるが、一瞬で移動できるのはやはり便利だ。

「ところで…それ何?」

アヒトは半分呆れた様子でカイトの顔を見る。
アヒトの方へ顔を向けたカイトの頭はウサギと化していた。

「相手の子が緊張してるかもしれないだろ?これで緊張を解してやろうかと思ってな」

「いや逆に怖いわ。ドン引きするんじゃね?」

「何をぅ!?お前の救出メンバー集まった時、全員この状態だったんだぞ!?」

「俺の救出隊ってそんなヤバイ集団だったの!?」

謎ウサ信教が一時トレンドだった事をアヒトは知らない。

「まぁ良いや…もう待ってるだろうから早く行こうぜ」

「おうよ」

「マジでそのまま行くの?」

「おうよ」

アヒトはドン引きしつつも「まぁカイトだしな…」と諦めてウサギ男を引き連れ待ち合わせ場所に向かう。
が、その場所まで行き更に驚愕する事になる。

((向こうにもウサギ頭が居る…!!))

これには流石のカイトも動揺。
因みにユメナも動揺。
否、アヒトもクレハも含め全員が動揺した。

そこで外すわけにもいかず、取り敢えず被ったままでアヒトとカイトは2人に近づく。

「ア…アヒト君、来てくれてありがとう」

「いや、俺も一緒にやりたかったし」

必死に動揺を隠しながらクレハとアヒトがまず挨拶する。
その横で、カイトがいち早く気付いた。

(ん!?)

例え顔を隠していても隠しきれない豊満な体。
ウサギの被り物から出ている見覚えのあるおさげ髪。

「え!?あれ!?」

そして発せられたカイトの声を聞き、ユメナの方も気付いた。

「え!?」

2人は同時に被り物を外し、お互いの顔を凝視する。

「ユメナちゃん!?」
「カイトさん!?」

初めて会った時と同じくウサギ頭での再会という謎の奇跡。
互いに一番会いたかった相手を前にして、二人ともただただ頬を染めた。

そんな二人の様子を見て、アヒト達が混乱したのは言うまでもない。


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