天に届け

天馬るか

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第1章 噛み合わない歯車

第2話 高校生活

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 朝からうるさい親を追い払い、俺はゆっくりと学校に向かった。2学期が始まったのに真夏かよと思うほど暑い。出来るだけ日陰を探し酩酊して歩く俺は一見泥酔したおじさんに見えるだろうかと、くだらないことを考えながら足を進めていく。校門をくぐるとランニングの掛け声や野球部のキャッチボールの音が聞こえる。あとはみんなが仲良さそうに話す声と。
 そんな中、俺は誰とも話さずに教室へ直行。1学期よりか2学期になってクラスがうるさくなったような気がする。夏休みを挟むと、みんなの距離は一気に近くなった。多分、共通の部活や一緒にいるメンバーと思い出を重ねていくことでどんどん仲良くなっている証拠だと思う。
 そして、もうすぐあるビックイベント、体育祭のためにみんなは色んなアイディアを出し合って、話し合って時にぶつかって青春しているようだった。そんな姿を視界に入れることもなく教室の1番奥の最後尾に座って、ぼーっとジリジリと暑い外を眺めていた。
「おっっっっはよぉぉ!!」
 ちいさいやつが走ってきて前から俺の机に両手をついた。
「・・・うっさい」
「ごめん!身体に響いた?」
「いや、シンプルにうるさい」
「え、それ、シンプルに傷つく」
 そう言って大きな声で笑ってるのは、同じクラスの長谷川京介。京介は小学校からの幼なじみ。天真爛漫で、明るくて人懐っこい性格だ。俺とは全く違うキャラクターでもはや尊敬に値する・・・とか本人に言ったら調子に乗りそうだからやめとこっと。俺は京介が前のやつの席にすわったことを確認し、座り直して身体を前に倒し寝る体勢に入った。
「えーーーーー、寝るのぉぉぉ!?」
「まじでうるさい。寝るの。ほっといて」
「もぉ・・・昼は相手してよぉ?」と落ち込み拗ねながら自分の席に戻った京介。『お前と付き合ってねーよ。』心の中でそう突っ込んで、俺は目を閉じた。授業開始まであと20分はある。ちょっとでも寝よう。

 眠くて重過ぎる体を起こし、何とか授業を受けて、やっと今昼休みになった。
「ひかぁ!めしぃ!!」
 ほんとうるさいわ。お前はワンピースのルフィかよ。『絶対うるさいって思ってるでしょ!』って顔して笑いながら、俺の前で弁当を広げて食べ出した。せめて俺が弁当を広げるまでは待てよ。また、心の中で突っ込んで、俺も弁当に箸を入れる。基本的に、俺らの会話は京介の一方通行で8割以上は俺の知らないアニメの話だ。俺は、うん、へぇ、しか話してない。知らないアニメの話をされてうん、と、へぇ、以外の返しをどうすればいいのか誰かほんとに教えて欲しい。
「そろそろこのアニメ見たくなってきたでしょ!?」
 前のめりでキラキラした顔で尋ねてきた京介にそう言われたから、しっかりと否定しておいた。

「あれ?もう食べないの?」
「うん、もう食べれない」
「相変わらず少食だなぁ」
「ねぇ、あとこれ食べて」
「え!いいの!?」
「うん」
 残して帰ると、はる君が悲しい顔するから。蓋を閉めたけどもう一度開けた。
「食べ終わったらカバンの中入れといて」
「うん!・・・てかどこか行くの?」
「保健室行ってくる」
「え、大丈夫・・・?」
「うん。じゃ」
 そう言って1人で保健室に向かった。
 
ガラガラガラ

「おう、どうした?」
 うちの高校の保健室の先生は、珍しく男の人だ。この人の名前は、清水先生。爽やかすぎる顔面と高身長に加えて、優しい優しい保健室の先生とは手に入れるものは全部手に入れたんじゃないかと思うほどだ。もちろん、女子からの人気は凄まじい。
「めし中だった?」
「そうだけど、大丈夫、どうした?」
「そこで寝ていい・・・?」
 俺が簡易ベッドを指差すと、少し先生の顔つきが変わった。
「しんどいの?」
「まぁ・・・少しだけ・・・?」
「お父さんにれんら、」
「ちょ、やめて、連絡しないで、大丈夫だから。」
「・・・・・・」
 じっと俺を見つめた清水先生。
「寝たら治る。お願い、連絡しないで、」
「んー、今どんな状態か教えてくれるなら、」
「ちょっと息苦しいだけ。昨日、夜中に発作が起きて眠れなかったから、ねむいの。ほんとにそれだけだから」
「どれぐらいの発作?」
「小さいのだよ。薬飲めば治るやつ」
「発作があった事お父さんは知ってるの?」
「いや、わざわざ起こすほどの事でもない軽いやつだよ。だから知らない」
「軽くても重くても、ちゃんと発作があった事は言わないと」
何馬鹿正直に言ってんだ俺。
「今日学校帰って、ちゃんと昨日の夜の発作の事をお父さんかお兄ちゃんか樹くんに話すって約束できるのなら、ここで寝ていいよ、」
 少し近づいた先生に俺は怖気て下がる。
「それでも隠すって言うんだったら、俺が今から電話してお父さんに迎えに来てもらう」
「だめ。言うから・・・」
 完全に劣勢だと思った俺は渋々その条件を飲んでしまった。すると先生は少し笑ってベッドを用意してくれた。お世辞でも快適だと言えないベッドではあるけど、教室で顔を伏せて寝るよりかは身体がマシだ。先生はできるだけ暗くしてくれて、俺が寝れるように配慮してくれた。
 時々、先生目当てに来た女子たちが騒いでたけど、今日は体調が悪い子がいるからって追い返してくれた。優しいなぁと思ってると、俺はいつの間にか寝ていた。

 予鈴が聞こえると先生が入ってきて、「戻れるか?」と聞いてきたので頷き保健室を後にした。
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