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第14話『俺、もやしを守る宣言をする!』
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天井を見ながら、俺はダラダラと寝転がっていた。
最近気づいたことがある。
――あのシミ、顔に見えるんですけど?
しかも、めっちゃ苦しそう。
(……いや、怖っ)
家賃が安いからって理由で住んでるけど、たまに壁からカツンって音がするし……これ、シミの怨念とかじゃないよな?
「……もやしは分けてやらんからな」
シミを睨みながら、俺は宣言した。
と、そのとき――
ガチャ!
「潤様っ! 新しい悪事の情報を持って参りました!」
ドアを勢いよく開けて、ノアがずいっと前へ詰めてくる。
……いや、なにその“褒めてほしいです”みたいな顔。
ピシッと背筋伸ばして、微笑みながら上目遣いって、なにその営業スマイル。
「……一応聞くけどさ、悪事って……例えば?」
「はい。最近、自己啓発セミナー――『メンタルサクセス塾』という団体が流行しているようなのですが……参加者の様子が、どうも普通ではないのです」
セミナーか……俺とは無縁の世界やな。
というか、名前からしてもう胡散臭さMAXなんですけど?
「で、どんな噂よ?」
「“変な呪文を叫ぶ”“笑顔で怒鳴る”“夜の講義が終わらない”など、様々です。正直、完全にアウトな雰囲気です」
「それ、噂っていうかもうホラーだろ……」
「百聞は一見にしかずです! 潤様、今から現場を見に――」
「行きたくなーーーーーい!!!」
なんかテンプレ化してきたけど! 毎回これなのなんなの!?
――ガチャ!
「潤くん! ウチな、めっちゃおもろいネタ持ってきたんやけど……って、ノア?」
……おっ! セミナー回避チャンス来た!?
「潤様は、私とともに正義の鉄槌を下しに行く最中です。ご退場願えますか?」
「なんやて~? ウチのネタの方が絶対おもろいって!
しかもな、その悪事の被害者と、会う約束まで取ってん♪」
……はい、詰みました。
ノアの強制出動 vs カエデの被害者直撃。
どっち選んでも、面倒なやつ~~~~~~~~~!!!
「……わかったわかった。とりあえず、被害者の話を聞こう。現場突撃よりは……まだマシだから……」
ノアが膝をつき、顔を伏せる。
一方カエデは、勝ち誇ったように腕を組み、ニッコリ。
その背中から聞こえたのは、関西弁の「勝ったで」のオーラだった。
* * *
待ち合わせのファミレスにて。
現れたのは、ふわっとした雰囲気を持つ、優しげな若い女性だった。
(……この人が、被害者?)
「は、はじめまして……白瀬エンリです……」
「あなたが……その、被害に?」
「いえ……その……私が家庭教師をしている生徒が、“あのセミナー”に通い始めてから、少しずつ変わってしまって……」
言葉を選ぶようにして、彼女はゆっくり語る。
「“何をやっても上手くいかない”“あの人の言う通りにすればいい”“もう先生はいらない”……そう言って、私との関係も切ろうとして……」
その瞳に、じわりと涙が浮かんでいた。
「それで、うまくいってるんか? その子は」
「いいえ……学校にも行かず、家に引きこもってばかりで……。
私、助けたいんです。本当は、あの子……努力家で優しい子なんです」
震える声。その想いはまっすぐで、嘘も誇張もない。
心から、本気でその生徒を救いたいって気持ちが伝わってきた。
(……これって、完全にアウトなやつやん)
「潤様っ! 今からセミナーへ行きましょうっ!」
「潤くん、お願い! ウチらが一緒に入ると目立ってまうし、ウチとノアで外から見張っとくから! 潜入は任せたで!」
……ですよねー。
「潤さんが……ついてきてくださるんですか?
……心強いです。一人で行くのは、少し怖くて……」
彼女が俺を見上げた。
困ったような、それでも信じてくれているような、弱いけど優しい目で。
「わかった、わかりました。行きますよ!」
こうして、俺とエンリは――
自己啓発セミナー《メンタルサクセス塾》へ、潜入することになった。
後書き
【あとがき小話】
作者『花粉がやばいって……目と鼻が終わってるんだけど』
潤『知らんがな。てか俺の世界でも春は地獄なんだけど? くしゃみでスキル暴発しそうになったわ』
作者『それもう設定崩壊しない?』
潤『いやマジで、才能奪ってる場合じゃないのよ。
花粉からマスク奪わせてくれ。ついでに鼻も閉じたい』
作者『お前のスキル、そういう使い方じゃねえよ』
潤『てかさ、ヒロインの誰も鼻すすってないの納得いかないんだけど』
作者『ノアは絶対しないな』
潤『……あいつ、完璧すぎて怖いわ』
作者:pyoco(鼻詰まり中)
最近気づいたことがある。
――あのシミ、顔に見えるんですけど?
しかも、めっちゃ苦しそう。
(……いや、怖っ)
家賃が安いからって理由で住んでるけど、たまに壁からカツンって音がするし……これ、シミの怨念とかじゃないよな?
「……もやしは分けてやらんからな」
シミを睨みながら、俺は宣言した。
と、そのとき――
ガチャ!
「潤様っ! 新しい悪事の情報を持って参りました!」
ドアを勢いよく開けて、ノアがずいっと前へ詰めてくる。
……いや、なにその“褒めてほしいです”みたいな顔。
ピシッと背筋伸ばして、微笑みながら上目遣いって、なにその営業スマイル。
「……一応聞くけどさ、悪事って……例えば?」
「はい。最近、自己啓発セミナー――『メンタルサクセス塾』という団体が流行しているようなのですが……参加者の様子が、どうも普通ではないのです」
セミナーか……俺とは無縁の世界やな。
というか、名前からしてもう胡散臭さMAXなんですけど?
「で、どんな噂よ?」
「“変な呪文を叫ぶ”“笑顔で怒鳴る”“夜の講義が終わらない”など、様々です。正直、完全にアウトな雰囲気です」
「それ、噂っていうかもうホラーだろ……」
「百聞は一見にしかずです! 潤様、今から現場を見に――」
「行きたくなーーーーーい!!!」
なんかテンプレ化してきたけど! 毎回これなのなんなの!?
――ガチャ!
「潤くん! ウチな、めっちゃおもろいネタ持ってきたんやけど……って、ノア?」
……おっ! セミナー回避チャンス来た!?
「潤様は、私とともに正義の鉄槌を下しに行く最中です。ご退場願えますか?」
「なんやて~? ウチのネタの方が絶対おもろいって!
しかもな、その悪事の被害者と、会う約束まで取ってん♪」
……はい、詰みました。
ノアの強制出動 vs カエデの被害者直撃。
どっち選んでも、面倒なやつ~~~~~~~~~!!!
「……わかったわかった。とりあえず、被害者の話を聞こう。現場突撃よりは……まだマシだから……」
ノアが膝をつき、顔を伏せる。
一方カエデは、勝ち誇ったように腕を組み、ニッコリ。
その背中から聞こえたのは、関西弁の「勝ったで」のオーラだった。
* * *
待ち合わせのファミレスにて。
現れたのは、ふわっとした雰囲気を持つ、優しげな若い女性だった。
(……この人が、被害者?)
「は、はじめまして……白瀬エンリです……」
「あなたが……その、被害に?」
「いえ……その……私が家庭教師をしている生徒が、“あのセミナー”に通い始めてから、少しずつ変わってしまって……」
言葉を選ぶようにして、彼女はゆっくり語る。
「“何をやっても上手くいかない”“あの人の言う通りにすればいい”“もう先生はいらない”……そう言って、私との関係も切ろうとして……」
その瞳に、じわりと涙が浮かんでいた。
「それで、うまくいってるんか? その子は」
「いいえ……学校にも行かず、家に引きこもってばかりで……。
私、助けたいんです。本当は、あの子……努力家で優しい子なんです」
震える声。その想いはまっすぐで、嘘も誇張もない。
心から、本気でその生徒を救いたいって気持ちが伝わってきた。
(……これって、完全にアウトなやつやん)
「潤様っ! 今からセミナーへ行きましょうっ!」
「潤くん、お願い! ウチらが一緒に入ると目立ってまうし、ウチとノアで外から見張っとくから! 潜入は任せたで!」
……ですよねー。
「潤さんが……ついてきてくださるんですか?
……心強いです。一人で行くのは、少し怖くて……」
彼女が俺を見上げた。
困ったような、それでも信じてくれているような、弱いけど優しい目で。
「わかった、わかりました。行きますよ!」
こうして、俺とエンリは――
自己啓発セミナー《メンタルサクセス塾》へ、潜入することになった。
後書き
【あとがき小話】
作者『花粉がやばいって……目と鼻が終わってるんだけど』
潤『知らんがな。てか俺の世界でも春は地獄なんだけど? くしゃみでスキル暴発しそうになったわ』
作者『それもう設定崩壊しない?』
潤『いやマジで、才能奪ってる場合じゃないのよ。
花粉からマスク奪わせてくれ。ついでに鼻も閉じたい』
作者『お前のスキル、そういう使い方じゃねえよ』
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