『才能奪って成り上がる!無職の俺がヒロイン達と社会を支配するまで』

pyoco

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第27話『俺、週末に地雷を踏む』

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ユズハという後輩ができて、数日。

俺は淡々と仕事をこなしていた――つもりだった。

 

「せんぱ~い♪ 今週末って、ヒマですよね~?」

 

(いや“ですよね~?”じゃねぇよ!!) 

心を読まれたみたいでちょっとムカついたけど、悲しいかな事実だった。

 

「いや、すっげー忙しいけど? で、なに?」

 

「えぇ~!? 先輩、予定あるんですかぁ!? ごめんなさい、空気読めてませんでした~!」

 

急にしょんぼりしながら肩落とすユズハ。

……なんか、小動物みたいで罪悪感すごい。ずるい。絶対わざと。

 

「……まぁ、可愛い後輩の頼みなら、ちょっとくらい時間空けてやるか?」

 

そう、俺って優しい先輩。

 

「ふふっ、やっぱり~♪ 実は“予定あるフリ”してたの、バレバレでしたけど~?」

 

(ギクッ)

 

うっそだろ!? 今のも演技!? てか、しょんぼりフェイク!?

おい、どんだけ小悪魔性能高いんだこの後輩!!

 

「じゃあ、駅前に土曜の昼集合で~。楽しみにしてますね、せ・ん・ぱ・い♪」

 

(あれ? なんで俺、断れなかったんだ……?)

 

 

* * *

 

そして――土曜日。

 

目を覚ました俺は、違和感に気づいた。

……てか、誰かの気配が――

 

「潤様、おはようございます。朝ごはん、準備できておりますよ?」

 

「潤君~、早く起きてや~。うち、今日ヒマやねん。お出かけせぇへん?」

 

「潤さん……週末ですし、ゆっくり癒しの時間、過ごしませんか?」

 

(なぜか俺の部屋にヒロイン三人揃ってるーーーッ!?)

 

ノア、カエデ、エンリ。トリプル包囲網。俺の私生活、どこまで浸食されてんだ!?

 

「潤様、まさか今日は……私以外と会う予定など、ありませんよね?」

 

ノアの“ニコッ”が、もはや警告ランプ。

 

「潤君、もしかして女の子とデートとか言わんよなぁ~?」

 

カエデの笑顔の下にあるのは、関西の殺意。

 

「潤さん……癒しを拒絶するということは、心が乱れている証拠です」

 

エンリはいつも通り優しいけど、それが逆に怖い。

 

(この空気……絶対に“YES”を言っちゃいけない雰囲気!!)

 

「ご、ごめん!! 実は今日、会社の後輩と予定があってぇぇぇ!!」

 

ピキッ、と三人の表情が止まった。

 

「後輩、とは……女性ですか?」

 

「ピチピチの新入社員ちゃんやろなぁ~。潤君、モテモテやもんなぁ~?」

 

「尾行ですね。場合によっては、浄化も視野に」

 

三者三様、全員“覚悟”完了してる。

やべぇ、ほんとに命が惜しい!!

 

「い、行ってきまーす!!」

 

全力で逃走。靴も靴下も片方ずつ履いたまま、家を飛び出した。

 

背中から「潤様」「潤君」「潤さん」の三連コンボが飛んでくる。振り向けない、振り向いたら終わる。

 

――その頃、残された三人。

 

「……あの顔は、確実に“浮気顔”でした」

ノアが静かに断言。

 

「うちの潤君が他の女にええ顔してるとか、見逃せへんな……」

カエデの笑顔が少し裂けた。なにそれ怖い。

 

「観察と対処……ですね」

エンリが眼鏡をクイッと上げた(※眼鏡はしてない)。

 

ヒロイン三人、無言でうなずく。

 

「――尾行、開始です」

 

“極秘監視任務:葉山潤追跡作戦”、発動――!!

* * *

駅前。

俺は息を整えながら、集合時間より10分早く現地入りしていた。

 

(……いや、別に楽しみにしてたとか、そういうんじゃねぇからな!?)

 

あれだけの包囲網から命からがら逃げてきたんだから、仕方ないだろ。

むしろ戦争終わった兵士の気分。

 

「せんぱ~い♪ お待たせしました~!」

 

明るい声とともに、ユズハがひらひら手を振って登場。

制服じゃなくて私服――
しかもちょっとだけ“あざと可愛い”方向に振ったコーデ。

 

(な、なんか……攻めてきてる!?)

 

「先輩、もしかして……そんなに早く来たの、私とのデートが楽しみすぎたからだったり?」

 

「ち、違ぇし! たまたまだ! 偶然通りかかっただけだし!!」

 

「ふふっ、言い訳が童貞っぽいですね~」

 

(うるせぇ!!)

 

そのまま自然に並んで歩きながら、ユズハがポンと手を合わせて、

 

「えーっと、今日の目的地はこっちで~す♪」

 

着いたのは……映画館だった。

 

「まさか……映画観るのか?」

 

「はいっ。観たいのあったんですよ~。一人で行くのもアレだったんで……先輩を巻き込んじゃいましたっ!」

 

「……なに観るんだよ」

 

「これですこれ!」

 

指差した先に書かれていたタイトル――

 

『ミッチー☆夢の国の王様』

 

(ミッチー!?)

 

パネルには着ぐるみ風の王様キャラと、ファンシーな背景。

周囲は完全にキッズと親御さん、たまにカップル。男一人とか存在してない。

 

(いやまぁ、意外と可愛い趣味してんじゃん……)

 

――と、入場するまでは思ってた。

 

 

* * *

【上映後】

 

「なにあれ!? いや、なにあれぇぇぇぇッ!!?」

 

シアターから出てきた俺は、青ざめた顔で震えていた。

 

「ふふっ、せんぱ~い。あのシーンで目つぶってましたね? ミッチー王が腕もがれるとこ」

 

「そりゃ目もつぶるわ!! 夢の国っていうか、悪夢の国だったぞ!?」

 

マスコットがチェーンソーで敵の内臓ぶちまけながら「友情って素晴らしいよね☆」とか言ってんの、もはやホラーだろ。

 

「……あっ、ミッチー、最後に“裏切り者は排除する”って言ってたとこ、めっちゃ名言でしたね~」

 

(こっわ!! この子、サイコか!?)

 

脳内に「ヒロイン警戒度:+5」の表示が出た気がした。

 

 

そのまま外に出て、ふぅ……と息をついた俺の袖を、ユズハがそっと引っ張る。

 

「ねぇ、せんぱい。今日このあと……お家行ってもいいですか?」

 

「へっ!? い、家って、俺んち!?」

 

「はい~。ほら、さっきの映画でちょっとメンタル削れちゃって……癒しが欲しいな~って♪」

 

(いやその映画選んだのお前だろ!!)

 

「だ、大丈夫だろ!? てか、俺んちとか別に癒される場所じゃ――」

 

「え~……じゃあ、癒してくれないんですか? 私、潤先輩のこといっぱい観察したかったのにな~……」

 

 

(あざとい! 圧が強い! でも断れない!!)

 

「しょ、しょうがねぇな……じゃあちょっとだけ、な?」

 

「やったぁ~! じゃ、れっつ・ごー! 観察タイムスタートですっ♪」

 

腕にぴとっとくっついてくるユズハ。

 

その様子を――ビルの影からガチ見している、三人のヒロインの姿があることを、このときの俺はまだ知らなかった。

 

 
後書き




【あとがき小話】

作者『ふふ……潤様……お疲れでしょう?
お膝、空いておりますよ……お側で、ずっとお支えいたします……(低音でドヤ顔)』

潤『……』

作者『ノアのモノマネ、どう!? めっちゃ似てない!?』

潤『いや、何その“うっすい機械ボイス”。誰?ってなるわ』

ノア『……作者様』

作者『ッ!?』

ノア『……今のは、私の“ものまね”ということで……よろしいのでしょうか?』

作者『あっあのっ、違うんですこれはそのっ、リスペクトというかっ、ノア愛が溢れすぎてついっ……』

ノア『……潤様に対して、あのような……“機械的で棒読みな愛情表現”をされると……
正直、腹立たしいです』

潤『怖ぇぇぇぇ……目が笑ってねぇぇぇぇ……』

作者『すみませんでしたァァァァァ!!』

 

作者:pyoco(もう二度とノアの声真似はしません)
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