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社会人編
春へ続く光
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アウレアの会議室には朝の光が射し込み、磨かれた窓ガラスを照らしていた。
神埼の机ではコーヒーの湯気がゆらめく。
壁のモニターには、ニュースサイトが並ぶ。
見出しには太字で――
「人気モデル蓮、電撃移籍」
「……どこから嗅ぎつけるんだろうねぇ、こういうの。まぁ、うちとしてもそろそろ公表って思ってたから、いいけどね」
社長がカップを傾けながら笑った。
その隣で蓮は書類を持ったまま、目を細める。
「夏に話もらって、悩んで決めて…まぁみんな知らないですよね」
「はは…そうだねぇ。
まぁ、派手な方が夢があるってもんだよ。見出しっていうのは」
「なるほど?そういう感じなんですね……」
優真が苦笑して首を傾げた。
蓮は軽く息を吐き、モニターを見つめる。
「……なら、それでいいか。
どう見えるかより、どう進むかの方が大事だし」
社長が「え!蓮くん、その言葉、記者会見でも使って!」と冗談を言い、蓮は小さく笑った。
――
昼。
アウレア公式サイトに、シンプルな告知が掲載された。
"【お知らせ】
一部報道にありましたとおり弊社所属モデル・蓮はこの春より、ロンドンを拠点とするSOVEREIGN AGENCYと提携し、海外での活動を本格的に開始いたします。
国内でのマネジメントは引き続きアウレアが担当いたします。
新しい挑戦を、あたたかく見守っていただけますと幸いです。
AUREA"
誠実な言葉の重みだけが、確かにそこにあった。
――
数時間後。
各ニュースサイトが更に勢いを増して情報を取り上げた。
《モデル蓮、英ソブリン・エージェンシーと契約》
《AUREA発表 春から海外拠点へ》
《気になる恋人は?蓮、イギリスへ》
「ははっ、恋人は?だって、優真」
給湯室で蓮はスマホ画面をスクロールしながらニュースを追っていた。
「ふふ、おれ、置いてかれちゃう感じなんですかね…?」
優真はコーヒーカップを置くと、隣にいる蓮の胸に頭を預ける。
「ひとりだったら行ってたかな~…行かねぇな?」
蓮は優真の頭を撫でながら微笑んだ。
つい数年前までは彫師としてただ仕事をして、暇を見てフリーランスのモデルをしていた。
それが、優真と出会い、ひょんなことからモデルの露出が増え今に至る。
人生というものは何があるか全く想像がつかないが、隣で笑う優真を見ているとこれでよかったのだと腹落ちする蓮だった。
そして夕方。
AUREA公式アカウントが、短く告知を出した。
"【#REN_Live】
本日22時より、蓮のライブ配信を予定しております。
本人より、皆さまへ直接のご報告があります。
#AUREA #SOVEREIGNAGENCY"
――
夜。
静かなリビングに、モニターの光だけが灯っている。
カメラに視線を合わせ、蓮が口を開いた。
「どうも、蓮でーす」
《レンレン待ってた!》
《今日もビジュ優勝~~》
《黒猫ちゃんは?!》
《イギリス行っちゃうの~?》
《Welcome to England!》
「はは、コメント速いな。待って…」
ゆるく笑い、指で前髪を払う。
モニター越しの視線は、今や世界中に届いている。
「多分もうニュースで見た人も多いと思うけど…
春から、SOVEREIGN AGENCYと提携して海外で活動します」
《おめでとう!》
《ソブリンてリアムいたところだよね?!》
《世界進出!》
「ありがとう。
去年の夏にオファーをもらって、
何度も打ち合わせして、やっと今日、こうしてみんなに話せた感じで、」
蓮は視線を時折外しながら、続ける。
「“電撃移籍”って言われてるけど、実際は一歩ずつ積み重ねてきた結果を見てもらえたって感じです。
まぁ、派手なタイトルつけるのはメディアっぽいけど。
向こうでもね、たま~に配信しようと思ってます。
時差あるから見れる人は見てね~」
《やった!》
《レンレンの“おはよう”聞ける!》
《時差め…》
「ロンドンの空とか、飯の話とか、そういうなんでもない日常もちゃんと共有したい。
それが、いちばん近くに感じてもらえる気がするから」
ふと、指輪がライトを反射して小さく光る。
「……あ、ちなみに俺ひとりでは行かないよ。
荷造り?まだでーす…何持ってけばいいかよく分からんので色々調べるね。
おすすめのものとかある?
服?全部は持ってけないかな~」
《安心した》
《やっぱ一緒に行くんだ!黒猫ちゃん!》
《日本食恋しくなるかな~》
「まぁ、向こう行っても変わらずやっていくよ。
みんなが見てくれてるって思うだけで、背中押される。いつもありがとうございます」
一瞬、カメラの向こうに視線をやる。
その先で、優真が小さく笑って頷いた。
「……あ、なんかしんみりした?
違う違う、別れの挨拶じゃないって。
なので、これからもよろしく」
《ずっとファンでいさせてください!》
《応援してまーす!》
《こちらこそよろしくお願いします(?)》
「ははっ…じゃあ、今日はこのへんで。
またね。おやすみ」
手を振る笑顔が、静かな画面に溶けていく。
配信が終わると同時に、部屋に静けさが戻った。
優真が湯気の立つマグカップを差し出す。
「……おつかれさまです」
「ん。やっと言えたな」
「荷造りに部屋の片付け…なんかまだ先だと思ってましたけどあんま時間ないんですね…!」
「まぁ、使えそうなものとか玲央が引き取りたいって言ってたし、最終的にはなんとかなると思うけど。
まじで…しばらくは向こうだろうからなぁ~」
ふたりは肩を寄せ合いながら、それぞれ新たに始まる生活に思いを馳せた。
神埼の机ではコーヒーの湯気がゆらめく。
壁のモニターには、ニュースサイトが並ぶ。
見出しには太字で――
「人気モデル蓮、電撃移籍」
「……どこから嗅ぎつけるんだろうねぇ、こういうの。まぁ、うちとしてもそろそろ公表って思ってたから、いいけどね」
社長がカップを傾けながら笑った。
その隣で蓮は書類を持ったまま、目を細める。
「夏に話もらって、悩んで決めて…まぁみんな知らないですよね」
「はは…そうだねぇ。
まぁ、派手な方が夢があるってもんだよ。見出しっていうのは」
「なるほど?そういう感じなんですね……」
優真が苦笑して首を傾げた。
蓮は軽く息を吐き、モニターを見つめる。
「……なら、それでいいか。
どう見えるかより、どう進むかの方が大事だし」
社長が「え!蓮くん、その言葉、記者会見でも使って!」と冗談を言い、蓮は小さく笑った。
――
昼。
アウレア公式サイトに、シンプルな告知が掲載された。
"【お知らせ】
一部報道にありましたとおり弊社所属モデル・蓮はこの春より、ロンドンを拠点とするSOVEREIGN AGENCYと提携し、海外での活動を本格的に開始いたします。
国内でのマネジメントは引き続きアウレアが担当いたします。
新しい挑戦を、あたたかく見守っていただけますと幸いです。
AUREA"
誠実な言葉の重みだけが、確かにそこにあった。
――
数時間後。
各ニュースサイトが更に勢いを増して情報を取り上げた。
《モデル蓮、英ソブリン・エージェンシーと契約》
《AUREA発表 春から海外拠点へ》
《気になる恋人は?蓮、イギリスへ》
「ははっ、恋人は?だって、優真」
給湯室で蓮はスマホ画面をスクロールしながらニュースを追っていた。
「ふふ、おれ、置いてかれちゃう感じなんですかね…?」
優真はコーヒーカップを置くと、隣にいる蓮の胸に頭を預ける。
「ひとりだったら行ってたかな~…行かねぇな?」
蓮は優真の頭を撫でながら微笑んだ。
つい数年前までは彫師としてただ仕事をして、暇を見てフリーランスのモデルをしていた。
それが、優真と出会い、ひょんなことからモデルの露出が増え今に至る。
人生というものは何があるか全く想像がつかないが、隣で笑う優真を見ているとこれでよかったのだと腹落ちする蓮だった。
そして夕方。
AUREA公式アカウントが、短く告知を出した。
"【#REN_Live】
本日22時より、蓮のライブ配信を予定しております。
本人より、皆さまへ直接のご報告があります。
#AUREA #SOVEREIGNAGENCY"
――
夜。
静かなリビングに、モニターの光だけが灯っている。
カメラに視線を合わせ、蓮が口を開いた。
「どうも、蓮でーす」
《レンレン待ってた!》
《今日もビジュ優勝~~》
《黒猫ちゃんは?!》
《イギリス行っちゃうの~?》
《Welcome to England!》
「はは、コメント速いな。待って…」
ゆるく笑い、指で前髪を払う。
モニター越しの視線は、今や世界中に届いている。
「多分もうニュースで見た人も多いと思うけど…
春から、SOVEREIGN AGENCYと提携して海外で活動します」
《おめでとう!》
《ソブリンてリアムいたところだよね?!》
《世界進出!》
「ありがとう。
去年の夏にオファーをもらって、
何度も打ち合わせして、やっと今日、こうしてみんなに話せた感じで、」
蓮は視線を時折外しながら、続ける。
「“電撃移籍”って言われてるけど、実際は一歩ずつ積み重ねてきた結果を見てもらえたって感じです。
まぁ、派手なタイトルつけるのはメディアっぽいけど。
向こうでもね、たま~に配信しようと思ってます。
時差あるから見れる人は見てね~」
《やった!》
《レンレンの“おはよう”聞ける!》
《時差め…》
「ロンドンの空とか、飯の話とか、そういうなんでもない日常もちゃんと共有したい。
それが、いちばん近くに感じてもらえる気がするから」
ふと、指輪がライトを反射して小さく光る。
「……あ、ちなみに俺ひとりでは行かないよ。
荷造り?まだでーす…何持ってけばいいかよく分からんので色々調べるね。
おすすめのものとかある?
服?全部は持ってけないかな~」
《安心した》
《やっぱ一緒に行くんだ!黒猫ちゃん!》
《日本食恋しくなるかな~》
「まぁ、向こう行っても変わらずやっていくよ。
みんなが見てくれてるって思うだけで、背中押される。いつもありがとうございます」
一瞬、カメラの向こうに視線をやる。
その先で、優真が小さく笑って頷いた。
「……あ、なんかしんみりした?
違う違う、別れの挨拶じゃないって。
なので、これからもよろしく」
《ずっとファンでいさせてください!》
《応援してまーす!》
《こちらこそよろしくお願いします(?)》
「ははっ…じゃあ、今日はこのへんで。
またね。おやすみ」
手を振る笑顔が、静かな画面に溶けていく。
配信が終わると同時に、部屋に静けさが戻った。
優真が湯気の立つマグカップを差し出す。
「……おつかれさまです」
「ん。やっと言えたな」
「荷造りに部屋の片付け…なんかまだ先だと思ってましたけどあんま時間ないんですね…!」
「まぁ、使えそうなものとか玲央が引き取りたいって言ってたし、最終的にはなんとかなると思うけど。
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