ソードディグアウター

ミゴノ助

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幼年期編

話し合いはディナーのあとで

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 その日、ヴォルナッツ領の住民達は歓喜に湧いていた。
 住民達の頭を悩ませ身体に影響も出始めていた塩不足が解消されたからだ。

 領主の次男リドルが強引ながら持ち帰った塩を生み出す魔剣ロソギノフスは本村の中心、一番行きやすい場所に設置されこの時ばかりは数日間に限り塩換税や送料、手間賃も全て領主持ちで免除されていた。
 この大盤振る舞いに領民たちはこぞって獲物を狩り、または物を持ちより塩へと換えて各家族の体を満たす料理の要として使われていった。
 久しぶりの塩気の多い味に舌鼓を打ち、日頃の営みで失われた物を取り戻すように料理を口にしながら皆一様に領主ジャスと魔剣を使いやすい場所まで移動させた張本人のリドルに感謝と尊敬を送る。



 そんな領民が皆感謝している当人は無理矢理魔剣を掘り出した反動か数日間動くことも出来ないほどの筋肉痛に見舞われベッドの住人と化していた。





「くううううぅぅぅ……。あぐっ、ううぅぅぅ」

 魔剣を掘り出してから数日、体のアチコチに激痛が走り続け獣のような唸り声をあげながらベッドの上から動けないでいた。

(油断した、まさか……1日たってからこんなに筋肉痛が来るなんて……)

 帰ったその日はそんな兆候はなかった。
 鉱夫のガテンな皆さんにもみくちゃにされながら魔剣を持ち帰り、父《ジャス》の指示に従って一番便利の良い場所に埋め直した瞬間に

 なんとか気力でその場に倒れることだけは防いだものの屋敷に帰り着いた途端限界を迎えた。

 ビートが取り巻きの使用人を連れて出迎えと言う体で詰め寄るが、なにかグチグチ宣うがその時には既に脚に力が入らず崩れ落ちていた。

 その後屋敷は騒動に見舞われたとメイから聞いたが、その頃には既に数日前と同じくベッドの住人に逆戻りしており気にしている余裕は皆無であった。

 そして現在……。



「ふぐっつ!痛たた……」

「大丈夫ですか坊っちゃま。まだ休んでいた方がよろしいのでは?」

 魔剣を掘り出してから数日未だに酷い筋肉痛が治まらず、なんとかベッドから降りて歩ける程度までは回復できたものの歩く度に身体中がギチギチと悲鳴をあげて一歩毎に引き攣るような痛みを走らせる。

「そうしたいのは山々なんだけど、これ以上父上から来るように言われてこれ以上引き延ばすのは流石に……」

「それは確かにそうですが」

 メイから心配そうな声があがるがここ数日、執務の合間を縫って見舞いに訪れる父上から動けるようになったら共に食事をするようにと再三申し付けられていたがベッドから動けない状況を利用して逃げ続けていた。
 しかし、こうしてベッドから降りて痛みに苛まれながらでも歩けるようになった今断る口実がなくなり已む無く参加の運びとなってしまった。

「心配しなくても大丈夫だよ、なんとか食堂までは行けそっ、ぃ痛っツゥ!」

 大丈夫、大丈夫と強がりながら一歩を踏み出した瞬間にまたしても痛みが襲い、自分でも解るほどおかしな声が出てしまいよろめいた所をメイに支えられる。

「坊っちゃま、掴まって下さい」

「助かるよ、実を言うと正直まだかなり辛い……」




 なんとかメイに支えられヨロヨロと食堂に着くと既に自分以外の家族は勢揃いし、その後ろには使用人たちがズラリと整列していた。

「よく来れたなリドル。父上の招待を何度も何度も蹴っていたのによくヌケヌケと顔を出せるものだ」

 自分の席に向かうと早速ビートが噛みついて来る。
 流石にいつもほど露骨な罵倒ではなく非礼を咎める形ではあるが父上の前でも俺に対して口撃を止めないのは最早大したものだと思う。

「控えよ、ビート!リドルは無理を押して来たのだ」 

「……はい。すみません、でした」

 父上に叱責され表面上は大人しくしてみせるビートだが、その眼は相変わらずこちらを睨みながら音を立てないようにギリギリの所で歯軋りを堪えている。
 そんな様子を父上は意図して見ないようにヤレヤレと首を振ると此方に視線を向ける。

「辛い所を呼んですまなかったな、しかしあの魔剣の問題はこの地にとっては死活問題であったのだ。それを解決に導いた立役者が不在のまま祝宴を開くわけにもいかなくてな」

 そう言って手をパンパンと叩き合図を出すと使用人たちが次々と料理を運び、あっという間に長テーブルが豪華な料理で埋め尽くされていく。

 そんな映画のワンシーンのような光景に思わず声を失うと父上が続ける。

「本来なら大々的に祝典をあげても良いくらいの功績なのだぞ。
 父としても領主としても助かった」

「いえ、そんなに大したことは……」

 ここまで大掛かりなことをされてしまうと逆に怖くなってしまい、思わず言い淀むが今生の父はメイドにワインを注いで貰い、上機嫌にグラスを揺らし此方を見据える。

「何を言っている、この地にとって塩を生産する魔剣は最重要案件だ。それの問題を解決したのだから平民ならば騎士に……いや、一足飛びに貴族へ成り上がっていてもおかしくないのだぞ!という訳でだ。流石に塩不足の心配がなくなったとはいえ傷は癒えて無いゆえ派手な物は出せぬがそれでも祝いの料理だ、存分に堪能してくれ」

 そう告げられるや否やメイが俺の近くにあったグラスに「果汁水です」と告げながら中身を注ぎ、恭しく差し出してくる。

「あ、ありがとう……」

 言い淀みながら受け取ると同じくグラスを受け取った母上や忌々しそうに此方を睨むビートと共に父上の音頭で乾杯する。


 山菜を使った前菜に四つ物のスープ、川魚のパイに地鶏のソテーと脂が重めではあるものの高級なメニューが続きメインである塩蒸しと呼ばれた魚介と肉に野菜と盛り沢山の具材を塩釜焼きの要領で蒸し固めた物には思わず声が出てしまう程であった。


「さて、コレからの事についてリドルに相談があるのだが」

 そんな料理に舌鼓をうちながら食事を進め、一息着いた頃に父上が切り出す。

「なんでしょうか?」

「お前は聖剣の能力で魔剣を掘り出せた。ならば他にも掘り出せるのではないかと思ってな……」

 そこまで聞いたとき不意にダンッ!という音が食堂に鳴り響く。
 音の方へ眼を向けるとどうやらビートが苛立ちのあまりグラスを食卓に叩きつけてしまったようだ。

「………………失礼、どうやら少し呑み過ぎてしまったようなので先に休ませていただきます……」

 そう言い放ち、グラスを話すとビートは数人の使用人達を連れて食堂を退出していく。

「全くあいつは……まぁそれよりコレからのことなんだがお前には此処を出ていって貰おうと思う」

「了解しまし、………………え?」


 どうやらまだまだ受難は続くようであった。
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