ソードディグアウター

ミゴノ助

文字の大きさ
9 / 20
幼年期編

義兄の実家が面倒過ぎる

しおりを挟む
「それは一体どういうことでしょうか?」

 突然告げられた追い出し宣言に絞り出す用にして出した質問がビートが使用人を連れ出し少しだけガラリとした食堂に酷く大きく響いた。

 自分でも声が震えているのが解る。
 前世でもそこまで優秀だったわけではないが取り立てて不真面目だったということもなく、就職に失敗したものの一人暮らしだったため追い出されることはなかった。


(……なまじ真面目だったせいで変に就職してあぁなったのはおいておくが……いっそのことスパッと辞めて好きなことに打ち込んでいればまた違ったのかもなぁ)

 更に言えば魔剣を掘り出して塩不足を解消したと誉められたばかりで追い出される理由に心当たりが無さすぎる。

「あなた、それでは追い出すようにしか聞こえませんよ。リドルが困惑しているではありませんか」

 そんな状況を見かねたのか母がこちらの言いたいことを代弁してくれる。

「あ、ああ。済まないな、追放という訳では無いし勿論今すぐという訳でもない」

 そう言うと父は残った使用人達に退出するよう命じる。
 ぞろぞろと食堂から出ていくと残ったのは自分を除くと両親、使用人からはただ一人メイだけが同席することを許された。
 そしてすっかり人がいなくなるとメイに一端外にでて聞き耳をたてていないか確認させ、人払いが出来たことを確信すると仕切り直しと謂わんばかりにゴホンっとわざとらしい咳をひとつすると続きを話し始める。

「リドル、お前の聖剣の能力は今までに聞いたことがない。いや、この際だハッキリ言うと特異に過ぎる」

「そう、なのですか?自分以外の物を知らないのでわからないのですが……」

「ああ、剣以外の例えば槍や斧に珍しい所では鎌や棍などがあるがあんなものは特殊もいいところだ。だが同時にひどく有用だ。役に立ちすぎる程にな」

 一拍間を開けてワインで口を湿らす父にこちらは「はぁ」としか返せない。
 確かに ビートあのバカの持っていた剣が普通の聖剣だというのなら確かに別物かもしれない。あの時はじっくり見る余裕など微塵もなかったが思い返してみればあいつにはもったいない位の透き通った刀身であり、此方はツルハシなので物差しにはならないかもしれないが……。

「あの時は私も困り果てていてな。土砂を退けて序でにお前に功績をつけてビートのヤツを大人しくさせてやるつもりだったんだ」

「功績?それが何か関係があるのですか?」

 功績を立てる、というのであれば父自身の口から食事中にも何度か誉められたばかりで余計に訳が解らなくなる。

「あぁ、お前は難題の塩不足を解決したばかりか交通の便のいい場所に供給源を移動させた。その事で領民からビートを押し退けてお前を次期領主にという声が此処まで届くほどにな」

 父曰く、ビートは武芸に秀でて第一子かつ聖剣持ちで害獣や魔物討伐にも積極的に参加する一般的な次期領主というが普通の領民にとっての評価であり、武官や役人達からはともかく領民たちは無難だが自分達には縁遠い人という存在であった。

 そんななか生活に直結する文字通り死活問題を解決してしまったことと鉱夫達に混じって作業を行った時の事が広められたことにより俺の評価がうなぎ登りで跡継ぎに俺をという声が後を絶たないらしい。

「あの……こう言っては何ですが、兄上にそこまで問題が無いのでしたら別段気にしなくてもよいのでは?」

 実際には問題が有りすぎるのだがは黙っておくことにして罰の悪そうに話す父にそう聞くと、代わり今まで黙っていた母が口を開く。

「そこから先は私が説明するわ。ビートはね、貴方とはお母さんが違うのよ」

「そこはまぁ、兄上が嬉々として使ってましたからよ~く知っていますよ。こちらを弄る為に散っっっっ々と言っていましたので」

 卑しい混じった血だの財産目当ての子供だの言われてきたのだ。そこら辺のことは
 身に染みるほど強引に理解させれてきた。


「その……ビートのお母さん『セラ』はこの国でも一、二を争うウェルナー家の血族なのよ。元々ウチはソコに使えていた騎士の家だったんだけど、武勲を認められたのとセラ自身の希望もあってこの人と結ばれてビートが生まれたの」

 顔も知らない父上の前妻さんって予想以上にお嬢様だったんだな。しかもかなりアグレッシブな感じのするタイプの。

「あの、それはわかりましたがなぜ兄上はこんなにもキツくあたるのですか?」

 幾分オブラートに包んだ言い方ではあるものの、恋愛から駆け落ちまがいの結婚をするような母親からどうしてあんな性格になるのかまるで理解できず言いたいことは多々あるものの今は色々と我慢して続きを促す。

「……セラはビートが5歳になる頃に起きたスタンピードで亡くなったの。その時は私も此処の専属傭兵として従軍してたんだけど防ぎきれなくて…………」

 母はそこまで言うと沈痛な面持ちで顔を伏せる。
 よくある話ではある、とは言うものの当事者にとっては割り切れるものではないのだろう。

「あー、その、なんとなくですが、えっと……それでキツく当たって来るという……」

「いやそれもあるが少し違う」

 少しずつ言葉を選びながら当時を思い出す母に声をかけると父がその言葉を否定する。

「あれは私が悪かったのだ……。スタンピードがセラを亡くし、ビートまで喪うのを恐れセラの実家に避難させたのがよくなかった。あの家の悪い所ばかり影響を受けてしまったのだ」

 父が語るには前妻セラの実家は由緒ある名門だがそれ故にプライドが高く傲慢。
 さらに古くから続く家柄のために超のつく保守派なうえ騎士道を重んじ、それを周りにまで強要し騎士以外の傭兵など非正規部隊を見下す風潮に染まっているという。

「ウェルナー家には先代の頃から支援して貰い独立した経緯があるから安易にビートを次期候補から外すわけにもいかん」

 おまけにあの家から来ている使用人達もいるしな、と締め括る。

(使用人達を追い出したのはそのためか)

 どこに目耳があるか解らない状況で確実に大丈夫なのは唯一この場に同席を許されたメイのみらしい





「そういう訳でお前には12歳になったら王都の冒険者養成学校にいって貰いたいんだ」

 12歳……ということは猶予はあと四年くらいか


「此方の都合ですまないがこうしなければ領地は搾り取られ、お前もどういう扱いを受けるかわかったものじゃないんだ」

「わかりました。そういう理由でしたら断る理由もありません」

 実際、領地経営やらドロドロの駆け引きなんて前の人生含めてもやったことがないしそんな息の詰まるような事はやりたくない。

(今生は好き勝手に生きてやると決めたし幸い魔剣掘ってレンタルすれば……。
 ゆくゆくは不労所得で悠々自適の左団扇だ)

「わかりました。でも、代わりと言ってはなんですが魔剣についてちょっとやってみたいことが……」

 出ていく代わりにと考えていた魔剣レンタルのアイデアを父に話す。
 掘り出せるのではないかと言っていたのは他ならない父であるし納得ずくとは言え領地の問題を押し付けられる訳だし面倒な立ち上げや手続きくらいはやってもらってもバチは当たら無いだろう。

「あぁ、それについては私も少し考えていた。戻って来る頃には掘り出した魔剣についてもギルドなり商会なりを設立しておく」

 父の回答に内心ヨシッ!とガッツポーズする。
 儲けを掠められないようにする必要はあるが若くして楽隠居の道が見えたことに表情が崩れそうになる。

(いけないいけない、まだ笑うな。まだ笑ってはいけない、堪えなければ……)

 表情が崩れそうになるのを必死で我慢していると父が口を開く。

「あとは、そうだなお前には自衛できる力を身につけて貰わねばならんな。ビートやウェルナー家が因縁をつけて決闘などに持ち込まれるかもしれんし、何よりお前に生き延びて貰わなければ魔剣についても絵空事になってしまう」

 父が最後茶目っ気をだしながらニシャリと笑い、視線を向ける。
 どうやら鉄火場向けの厳しい苦難が待ち受けているようだ。
 
(楽隠居への道は遠し、か)

 そこまで甘い話はないかとため息が漏れると同時に前世の惰性な覚悟とは違うものが沸き起こってくる。

「では引き続きメイに訓練と教育を……」
「私が直々に鍛えるとするわ」

 父がメイに指示を出そうとした時、唐突に母が割り込み二人の会話を遮って立候補してくる。

「「……エ?!?」」

 話をブチ切られた二人は可笑しな声を出す。
 父は目を丸くし、メイに至っては持っていたトレイを取り落としガラリとした食堂に鈍い音を響かせる。

「奥様が……いえ、#隊長が_・__#指導するというのですか?……」

 心なしか震えた様子のメイが恐る恐るといったように訪ねると母は肉食獣を思わせるような笑みを浮かべ首肯する。

「あの……」

「メイ!貴女は昔やった私直伝特別式の整体で治してあげて、それから貴方……良いわよね?」

 どういう訳か聞こうとしたが怒涛の勢いで話す母上の剣幕に割ってはいることができず、メイに視線を向けても態とらしく反らすか憐れむような目をして首を左右に振るばかりだ。

「あ、あぁ………………宜しく頼む」

 トントン拍子に決まる予定に父は眼を座らせ無言のエールを送ってくる。

 これは…………本当に苦難が来るようだ。


 選択、間違ったかな………………。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

借金まみれで高級娼館で働くことになった子爵令嬢、密かに好きだった幼馴染に買われる

しおの
恋愛
乙女ゲームの世界に転生した主人公。しかしゲームにはほぼ登場しないモブだった。 いつの間にか父がこさえた借金を返すため、高級娼館で働くことに…… しかしそこに現れたのは幼馴染で……?

男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…? 最新章の第五章も夕方18時に更新予定です! ☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。 ※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます! ※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。 ※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...