AVENIR 未来への一歩

RuNext

文字の大きさ
24 / 27

封印された力

しおりを挟む
 ミーアは戦場を脱兎のごとく駆け回り武器を直し、傷を治し、兵士たちを守った。その行いは一国の姫とは思えないほど勇敢なものであり、このおかげもあって兵士たちの士気は下がらずに戦況を維持し続けた。
 空の戦いをほぼ制したことで空中からの攻撃がなくなり、地上部隊はより機敏に入れ替わりながら戦うことができた。
 勝利への光が見え始めてきたところで、カナリアは想像していなかった巨大な魔力反応を感知する。

「なんだこの魔力!? ……いや、この魔力は一度みたことがある。そうだ、巨人の力か!」

 カナリアが伝えるよりも先にミーアたちは昇る朝日に巨大な人影を見た。

「な、なにあれ……。ウィーク! あれはなんなの!!」

 問い詰めるミーアの声など一切聞こえてなかった。

「漆黒の槍が俺を導いている。あいつだ……あいつが王だ!!!」

 ウィークは一心不乱に巨人へと迫った。兵士を蹴散らし巨人へと飛びかかると、巨人は巨大な剣を一振。巨大な斬撃がウィークを襲う。漆黒の槍の力で対抗しようとしたが、力の増幅が間に合わず吹き飛ばされる。

「ウィーク!!」

 黄金の槍の光を放出しウィークを受け止めゆっくりと地上におろす。口からは血を吐き声とも息とも言えない音が口から漏れていた。すぐにマグナが駆けつけ状態を確認すると、内臓が破裂し骨が肺を刺していることが分かった。

「少しだけ時間稼ぎをお願いします!」

 ミーアは戦争で何度も回復やバリアを使った。まだ完全に槍を自分のものにしていないため、力の乱用で徐々に回復時間やバリアの耐久性が落ちていた。そのため、ウィークを瞬時に治すことができない。だが、敵は無慈悲にも迫っている。

「ここが正念場か。あれほどの化け物相手なら、俺の本気を見せてやろう」

 マグナが槍で地面を叩くと、体全身から強力な赤い魔力が噴射される。紅蓮の槍は常に燃えたようにメラメラと魔力を揺らし、マグナの瞳には炎が灯る。

「三騎士、あのでかぶつを倒さなきゃどれだけ兵士を倒したところでこの国は終わりだ。命を燃やす覚悟はできてるな?」
「王国のため、散っていった者たちのため、ミーア様のため、この命を全力で使う!」
「次こそは俺の手で崩壊を防ぐ」
「もう少しだけ本気でやってみるよ。終わればたくさん休めるよね」

 レイは光り輝く翼を、ボルトックは電撃を纏い、ウォースラーは氷の鎧を作り出し、それぞれ最後の戦いへ向けて全力の状態で挑む。

「師匠!」
「ビート、なぜここに」
「あんなの見たら来るしかないでしょ。それに、あいつ止めなきゃ町を守ってたって意味がないし」
「少しでも油断すれば死ぬぞ」
「死ぬ気は毛頭ないって。それに、私だってもう強いんだから」

 紫色の魔力を全身に纏いビートは言った。
 覚悟の決まった目を見てマグナは小さくうなずく。

「俺らで奴を止める。ほかの者はジャクボウ兵士を一歩も町へ通すな!」

 マグナたちと巨人が衝突する。
 ジャクボウ兵士はマグナたちに攻撃しつつも七割の兵士がスバラシアの町に向かって進軍。強化兵士と違い重厚な鎧を身に纏い長槍で叩いても完全に倒すことはできない。同時に強化兵士とは違い不用意な接近をせず確実にスバラシアの兵士を仕留めるため戦略が組まれていた。
 しかし、マグナたちにそれをカバーする余裕はない。三騎士、ビート、マグナが全力を尽くした上でようやく巨人と対等に戦えるのだから。

「我ら三騎士の力を合わせるぞ。――天に輝く三つの綺羅星!」
「一つは空を!」
「一つは海を!」
「そして、大地を!」
『すべての悪を穿つスバラシアの光! 聖なるホーリー三ツ星のトライアングル栄光《ストリーム》!!!』

 三人が槍を巨人へと向け強力な魔法攻撃を放つ。巨人は魔力を込めた剣でそれをガードするが、完全に受け止めきれず体は後ろへと下がっていく。

「私も本気出さないとね。煉獄の因果よ、今こそ罪人の魂を穿て。カオスクライシス!!」

 天高く投げた槍は空間に無数のゲートを開け、そこから鎖に繋がれた槍が無数に巨人を襲う。

「魂の躍動が炎となり万物を食らいつくす。生命の賛歌、フレイムビヨンド!!」

 巨人の周りを炎が包み、火柱となり天高く伸びる。周囲にいる兵士は鎧ごと溶かされ消し炭となる中で巨人はいまだに戦闘を止めようとはしなかった。この戦場で最強の槍使いたちが全力を尽くしても足止めがやっとであり、攻略法などまったく思いつかない。ただ必死に攻撃をし続けた。そうすることでしか未来を勝ち取る方法がないから。
 しかし、進んだジャクボウ兵士たちは次々とスバラシア兵士を蹴散らしこのままでは数分と持たず町へと到達してしまう。

「ウィーク、大丈夫?」
「ミーアのおかげでなんとかな」
「あれがもしかして」
「あぁ、ジャクボウの王だ。体が変わっても伝わる魔力の感覚までは変わらないようだ」
「じゃあ、あいつを倒せばいいんだね」
「殺さなきゃいけないぞ」
「あいつが兵士たちをぞんざいに扱い、こんな悲しい戦いを発生させたのなら、その責任を取らせなきゃ。ウィーク、力を貸して!」
「やってやろう。俺らの力で!」

 ミーアとウィークも巨人と戦おうとし走り出すが、後ろから兵士たちの悲痛の声が聞こえる。物量と防具の差で押されてしまい作戦が機能せず兵士たちは次々とやられていっていた。

「ミーア、どうした」
「た、助けないと!」
「師匠たちだって完全には抑えきれていない。判断を間違えると全滅するぞ」

 巨人の力は想像を超えるものだった。ずっと力を温存してきたマグナや、力を隠してきたビートが本腰入れているというのに、ここまでの戦いで大きな成長を遂げた三騎士が本気で挑んでいるというのに、足止めだけで勝利の兆しはいまだ見えない。
 どちらかを選べばどちらかで確実に死者が出る。究極の選択を迫られていた。

「わ、私は……」

 その時、じっと傍観していた存在が二方向から同時に戦場へと近づいてきていた。

「ミーア! 隠れてたやつがそっちに向かってる!」
「このタイミングで増援!? 私たちにはもうそんな余裕はないのに」

 突如、閃光が走りジャクボウの兵士たちを一層した。さらに巨人へといくつもの魔法が放たれる。何が起きたかわからないスバラシア軍の前に現れたのは、予想外のものたちだった。

「まったく、武器だけじゃさすがに悪いと思って来たけど。まさか、あんなのまで出てくるなんてね。助太刀させてもらうよ」
「ハーバルト王国の第三騎士団……。それにあなたは」
「久しぶりねミーア。崩壊前に会った以来だね」

 ハーバルト王国はかつてスバラシアと同盟を組んでいた国だ。この戦いにおいても武器や物資の支給をしてくれた。そして、第三騎士団の団長を務めるのはミーアの友であるエレナ・ウェンロード。

「本当にエレナなの? 見違えたわね」
「いっぱい訓練して戦うために髪も切っちゃったからね」 
「でも、第三騎士団はお兄さんが務めていたはずじゃ」
「ケガしちゃってね。代わりとして私が来たの。おっと、身の上話はまた今度。これからハーバルト王国第三騎士団と第四騎士団がスバラシア王国の援護をするよ。それに、ミーアを助けてくれるのは私たちだけじゃない」
「えっ?」

 エレナが空に指を向けると、そこには竜騎士たちがやってきていた。

「おーーい! ガルガリアも増援に来たぜ!」
「ガルガリアの天空勇士!?」

 ハーバルト同様に今回の戦いで支援を行ってくれた王国ガルガリア。空での戦いを得意とする天空勇士たちがやってきていた。スバラシアの援護という目的もあるが、同時にジャクボウが空船を開発している国を支配した話を聞きつけ、空の治安を守る者として明確にジャクボウに対し宣戦布告をしたのだ。

「ほら、早く巨人にところへ。私たちじゃあんなでかぶつ倒せないけど、二人がもってるその槍なら人を超えられるんでしょ。兵士や騎士は私たちに任せて」
「えぇ、このお礼はかならず」
「女王になってからたんまりと返してもらうからね~!」

 ミーアとウィークは巨人の下へ向かう。すでに三騎士もマグナたちも疲弊し一つの油断で誰が死んでもおかしくない状況。

「弱い、弱いなぁ~。いや、巨人の力が強すぎるということか。もう槍など必要ないわ! 巨人の力さえあればこの島にある国をすべて納められる。そして、大陸へと進軍するのだ」
「随分と大層な野望を抱いているようだが、お前は槍の力を根本的に理解していない」
「過去の英雄が何をほざくか。貴様もあの槍がなければただの人。所詮は巨人の力の前には無力だ」
「俺の過去を知っているか。確かに当時ほどの力はない。だが、次世代に槍を託したのは無駄じゃなかったさ」

 巨人の肩を二本の槍が貫く。一つは黄金、一つは漆黒。

「貧弱な姫と没落した王子が手を組んだところでこの俺に敵うものかァ!!」

 巨人の体は体内に宿る力で回復していき貫いた箇所は完全に治癒していた。

「俺は貴様を倒すために槍を手にし、一度は殺した。だが、まだ未熟だった俺は完全な消滅ではなく肉体の破壊で終わらてしまった。今回は違う。完全に貴様を消滅させる!」
「あなたが殺したすべての人々、生活を奪われた人々、ぞんざいに扱われた人々。そして、支配欲に飲まれたジャクボウ王国を作った責任。あなたの死をもって償わせるわ!」
「大地に眠る巨人の力をたかだか人が使う武器で勝てると思っているのか。その驕りは正してやらねばな」

 ミーアは槍を掲げ黄金の光を放つ。疲弊していたマグナたちの体も魔力も回復させ最終決戦に挑む。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である

megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

美男美女の同僚のおまけとして異世界召喚された私、ゴミ無能扱いされ王城から叩き出されるも、才能を見出してくれた隣国の王子様とスローライフ 

さら
恋愛
 会社では地味で目立たない、ただの事務員だった私。  ある日突然、美男美女の同僚二人のおまけとして、異世界に召喚されてしまった。  けれど、測定された“能力値”は最低。  「無能」「お荷物」「役立たず」と王たちに笑われ、王城を追い出されて――私は一人、行くあてもなく途方に暮れていた。  そんな私を拾ってくれたのは、隣国の第二王子・レオン。  優しく、誠実で、誰よりも人の心を見てくれる人だった。  彼に導かれ、私は“癒しの力”を持つことを知る。  人の心を穏やかにし、傷を癒す――それは“無能”と呼ばれた私だけが持っていた奇跡だった。  やがて、王子と共に過ごす穏やかな日々の中で芽生える、恋の予感。  不器用だけど優しい彼の言葉に、心が少しずつ満たされていく。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

【完結】異世界で神の元カノのゴミ屋敷を片付けたら世界の秘密が出てきました

小豆缶
ファンタジー
父の遺したゴミ屋敷を片付けていたはずが、気づけば異世界に転移していた私・飛鳥。 しかも、神の元カノと顔がそっくりという理由で、いきなり死刑寸前!? 助けてくれた太陽神ソラリクスから頼まれた仕事は、 「500年前に別れた元恋人のゴミ屋敷を片付けてほしい」というとんでもない依頼だった。 幽霊になった元神、罠だらけの屋敷、歪んだ世界のシステム。 ポンコツだけど諦めの悪い主人公が、ゴミ屋敷を片付けながら異世界の謎を暴いていく! ほのぼのお仕事×異世界コメディ×世界の秘密解明ファンタジー

私と母のサバイバル

だましだまし
ファンタジー
侯爵家の庶子だが唯一の直系の子として育てられた令嬢シェリー。 しかしある日、母と共に魔物が出る森に捨てられてしまった。 希望を諦めず森を進もう。 そう決意するシェリーに異変が起きた。 「私、別世界の前世があるみたい」 前世の知識を駆使し、二人は無事森を抜けられるのだろうか…?

処理中です...