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CHAPTER Ⅰ
第7話 初戦闘
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ぐぅうううゥ!!
グールたちが唸り声を上げた。
かなりの迫力だ。
当たり前だか映画なんかとは全く違って、リアルだ。
だんだんと動きが早くなってきていて、小走りくらいの速度でこちらへグールの群れが向かってくる。
(怖い!)
「佐々木さんは、わたしのそばにいて下さい」
ユウナがそう言うと杖を掲げた。
「火炎槍!」
杖の先から炎が飛び出し、グールを貫く。
「やっぱ情けねーやつだな」
アオイがオレへの侮蔑を忘れずに済ますとユウダイと共にグールの群れに飛び込んでいった。
アオイは長い手足を使い、優美にすら感じる動きで敵を屠っていく。ユウダイは大きな体躯をどっしりと構え素早く槍を振るい、敵を貫いている。
菅原もグールに向けて銃を撃っている。
青白い軌道を描く銃弾でどんどんグールを倒していく。
「チバ、迎撃魔術装置を発動!」
「了解! 3、2、1、発射します!」
チバの足元にある黒い箱から魔方陣のようなものが広がる。そして地面から花火のように光の玉がいくつも飛び上がった。そのまま空中で弧を描くとグールの群れに飛び込み、中で爆発した。
(す、スゴい。こんな目の前で戦闘が始まるとは!)
オレはただただみんなの戦闘の迫力とグールの恐怖に困惑していた。
さっき廃墟で1人で目を覚ましてから、怒涛の展開だ。
「班長! 距離300に敵性反応! 速度からしてE級以上です! 数は30!」
「ちっ、このまま会敵はマズイな! 撤退を開始するぞ! アオイ、ユウダイ! 突っ込み過ぎるなよ!」
アオイとユウダイは目をこちらへ向けて了解の意思を菅原に伝えた。
菅原が手榴弾のようなものを投げるとそれを合図に全員が後退を始めた。
まずはアオイとユウダイが追いかけてくるグールを牽制し、次にチバとユウナが杖を振るってグールを攻撃する。その間にアオイとユウダイはこちらへ走ってくる。菅原も適時、銃を撃ちまくっている。
その繰り返しだ。
動きを視ていると、やはり軍隊とか統率という言葉を連想させる。
きっと、都市という場所には菅原たちのような軍人がたくさんいるのだろう。
しかし、あたりにいるグールの数は一向にに減る様子がない。
「班長! 全力離脱の方がいいんじゃないですか!?」
「ダメだ! 佐々木くんを置いてはいけない!」
「ちっ」
アオイの舌打ちが聞こえた。
(も、申し訳ないが……オレにはどうしようもない)
「班長! さらに敵性反応! 12時方向、300に30体ほどです! これもE級以上です!」
「マズイ! なんとか突破するしかない! みな覚悟を決めろ!」
(このまま進むとまた別の群れがいるってことか!? ヤバいヤバいヤバい!)
後ろから迫るグールの群れとジリジリと距離が詰まって来ている。
その後方に明らかに他のグールより大きい影がいくつか見えていた。
「菅原さん! 後ろに何かデカイやつが来てますよ!」
「なに? チバ、索敵結果を再報告!」
「了解! ……!! 6時方向E級が20体、距離120です!」
「そうか……だが、佐々木くん、よく気付いたな」
「え! いや、これヤバいんじゃないですか!?」
「まだしばらくは大丈夫だ。まだ、しばらくはな」
(……不安になる答えだ)
「各員! 班を分けるぞ! このままだとE級に挟み撃ちにされる! よって、オレとチバ、ユウダイは先行して進行方向の敵を排除する! アオイ、ユウナは佐々木くんと共に遅滞後進を続行してくれ! 反論は許さん!!」
「……っ、了解! くそが!」
「「了解!」」
(アオイだけくそって言ったな)
菅原たち3人が先に走っていった。
そしてすぐに、攻撃の密度な少なくなったこともあり、オレたちにグールの群れが襲いかかってきた。
ぐぅうおおおォ!!
(こ、怖い!! ヤバい! 近い!! もうほんの数メートルの距離だ!)
「おい! 佐々木! お前も何かしろ! 一応武器は持ってんだろ!」
アオイが必死にグールに剣を振りながら叫んだ。
「そ、そんなこと言われても……」
アオイはもう何回かグールから攻撃を受けている。顔には血の筋が流れていた。
ユウナも必死に杖を振っている。さっきから魔法を何回も発射して疲労が蓄積されているのだろう。肩で息をして、限界が近いのが分かる。
「くそが! これは無茶苦茶だ! 班長はこんな指示を出す人じゃない! 何かあるはずだ! 持たすぞ、ユウナ!」
「うん! 分かってる!」
(こ、こんなにふたりが頑張ってるのにオレは見ているだけでいいのか……? 訓練されているって言ってもオレより年下の女の子だろう)
「アオイ! E級が来てる!」
気付くと、さっきのデカイグールがアオイに襲いかかっていた。どうみても2メートル以上ある。
「分かって、らぁ!」
アオイは一刀でそのグールを切り伏せるが、次々にデカいグールがこちらへ襲ってくる。
「うぉぉぉお!」
アオイも必死だ。その間、ユウナも別のグールが大勢向かっている。
そしてとうとうオレにも一体のグールが近づいた。
「うわぁ!」
「佐々木さん!」
オレは必死で逃げ惑うが、だんだんと逃げ場が無くなる。
だが、オレはこのふたりを置いて逃げる、それだけはできないと思った。
オレは怯えて体が震えていた。
「佐々木さん! 戦って下さい! ご兄弟のもとに帰るんでしょう!!このままではやられてしまいます!」
「!!」
ユウナの声にオレは思い出した。
そうだ。
妹弟たちがオレの帰りを待っている。ここで死んだら誰があいつらの面倒を見るんだ。学校を辞めて働きにだって行かなきゃならなくなるだろう。
(そんな思いはさせたくない!させない!)
オレは体の震えが止まった気がした。
(だけど! こんな化け物と戦えるのか!? オレみたいなただのサラリーマンが?)
グゥエオオ!
ガン!
「がっ……!」
とうとうグールの1体に殴りつけられた。かなりの力だ。
(い、痛い! それに、噛みつきとかじゃないんだ……! でも、なんとかしないと! このままじゃ殺される!!)
グウウウ!!
ガン!ガン!
さらに殴りつけられ、腕を掴まれてしまった。
オレはとてつもない激しい恐怖しか感じられない。
「うあああ……!」
オレは走馬灯のように妹たちと弟の顔を思い出していた。
そう言えばさっき夢の中でみんなの声が聞こえた。起きてって。オレに起きて戦えって言いたかったのか?
いや、オレに危険が迫っていることを教えてくれたのか……!? あいつららしいな……。
グールの腐りかけの顔がオレの目の前にある。 オレを掴んでいる腕も泥や血みたいなぬるっとした液体がついていてとてつもなく不快だ。においもヒドイ、吐き気がする。
オレは、ここでこいつに殺されるのか?
オレは……オレはまだ死にたくない!死ねない!!
「うゥおおおォォォォオ!!」
オレは持っていた鉄の棒でグールを力一杯殴った。怯んだグールに向かって鉄棒を何度も叩きつけた。
直ぐにグールは動かなくなった。
飛散したぐちゃぐちゃの体液がオレの体中にまとわりついていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
オレは逃げていた。それに甘えきっていた。
その事実に気付いてしまった。理解してしまった。
だが、ここで戦わないとみんなのもとに帰れない。
覚悟を決めないと帰ることはできない。
グールは元人間だろう。見た目は化け物でも人間だったものだ。オレはそれを鉄の塊でできた棒で叩き潰した。その感触を受け止めながら、兄弟たちがいる現代へ一度決別をした。
まずはこの世界で強くならなければ現代には帰れない。
オレは逃げるのをやめ、覚悟を決めた。
「生き残ってやるよ、このグールだらけの世界で!!」
グールたちが唸り声を上げた。
かなりの迫力だ。
当たり前だか映画なんかとは全く違って、リアルだ。
だんだんと動きが早くなってきていて、小走りくらいの速度でこちらへグールの群れが向かってくる。
(怖い!)
「佐々木さんは、わたしのそばにいて下さい」
ユウナがそう言うと杖を掲げた。
「火炎槍!」
杖の先から炎が飛び出し、グールを貫く。
「やっぱ情けねーやつだな」
アオイがオレへの侮蔑を忘れずに済ますとユウダイと共にグールの群れに飛び込んでいった。
アオイは長い手足を使い、優美にすら感じる動きで敵を屠っていく。ユウダイは大きな体躯をどっしりと構え素早く槍を振るい、敵を貫いている。
菅原もグールに向けて銃を撃っている。
青白い軌道を描く銃弾でどんどんグールを倒していく。
「チバ、迎撃魔術装置を発動!」
「了解! 3、2、1、発射します!」
チバの足元にある黒い箱から魔方陣のようなものが広がる。そして地面から花火のように光の玉がいくつも飛び上がった。そのまま空中で弧を描くとグールの群れに飛び込み、中で爆発した。
(す、スゴい。こんな目の前で戦闘が始まるとは!)
オレはただただみんなの戦闘の迫力とグールの恐怖に困惑していた。
さっき廃墟で1人で目を覚ましてから、怒涛の展開だ。
「班長! 距離300に敵性反応! 速度からしてE級以上です! 数は30!」
「ちっ、このまま会敵はマズイな! 撤退を開始するぞ! アオイ、ユウダイ! 突っ込み過ぎるなよ!」
アオイとユウダイは目をこちらへ向けて了解の意思を菅原に伝えた。
菅原が手榴弾のようなものを投げるとそれを合図に全員が後退を始めた。
まずはアオイとユウダイが追いかけてくるグールを牽制し、次にチバとユウナが杖を振るってグールを攻撃する。その間にアオイとユウダイはこちらへ走ってくる。菅原も適時、銃を撃ちまくっている。
その繰り返しだ。
動きを視ていると、やはり軍隊とか統率という言葉を連想させる。
きっと、都市という場所には菅原たちのような軍人がたくさんいるのだろう。
しかし、あたりにいるグールの数は一向にに減る様子がない。
「班長! 全力離脱の方がいいんじゃないですか!?」
「ダメだ! 佐々木くんを置いてはいけない!」
「ちっ」
アオイの舌打ちが聞こえた。
(も、申し訳ないが……オレにはどうしようもない)
「班長! さらに敵性反応! 12時方向、300に30体ほどです! これもE級以上です!」
「マズイ! なんとか突破するしかない! みな覚悟を決めろ!」
(このまま進むとまた別の群れがいるってことか!? ヤバいヤバいヤバい!)
後ろから迫るグールの群れとジリジリと距離が詰まって来ている。
その後方に明らかに他のグールより大きい影がいくつか見えていた。
「菅原さん! 後ろに何かデカイやつが来てますよ!」
「なに? チバ、索敵結果を再報告!」
「了解! ……!! 6時方向E級が20体、距離120です!」
「そうか……だが、佐々木くん、よく気付いたな」
「え! いや、これヤバいんじゃないですか!?」
「まだしばらくは大丈夫だ。まだ、しばらくはな」
(……不安になる答えだ)
「各員! 班を分けるぞ! このままだとE級に挟み撃ちにされる! よって、オレとチバ、ユウダイは先行して進行方向の敵を排除する! アオイ、ユウナは佐々木くんと共に遅滞後進を続行してくれ! 反論は許さん!!」
「……っ、了解! くそが!」
「「了解!」」
(アオイだけくそって言ったな)
菅原たち3人が先に走っていった。
そしてすぐに、攻撃の密度な少なくなったこともあり、オレたちにグールの群れが襲いかかってきた。
ぐぅうおおおォ!!
(こ、怖い!! ヤバい! 近い!! もうほんの数メートルの距離だ!)
「おい! 佐々木! お前も何かしろ! 一応武器は持ってんだろ!」
アオイが必死にグールに剣を振りながら叫んだ。
「そ、そんなこと言われても……」
アオイはもう何回かグールから攻撃を受けている。顔には血の筋が流れていた。
ユウナも必死に杖を振っている。さっきから魔法を何回も発射して疲労が蓄積されているのだろう。肩で息をして、限界が近いのが分かる。
「くそが! これは無茶苦茶だ! 班長はこんな指示を出す人じゃない! 何かあるはずだ! 持たすぞ、ユウナ!」
「うん! 分かってる!」
(こ、こんなにふたりが頑張ってるのにオレは見ているだけでいいのか……? 訓練されているって言ってもオレより年下の女の子だろう)
「アオイ! E級が来てる!」
気付くと、さっきのデカイグールがアオイに襲いかかっていた。どうみても2メートル以上ある。
「分かって、らぁ!」
アオイは一刀でそのグールを切り伏せるが、次々にデカいグールがこちらへ襲ってくる。
「うぉぉぉお!」
アオイも必死だ。その間、ユウナも別のグールが大勢向かっている。
そしてとうとうオレにも一体のグールが近づいた。
「うわぁ!」
「佐々木さん!」
オレは必死で逃げ惑うが、だんだんと逃げ場が無くなる。
だが、オレはこのふたりを置いて逃げる、それだけはできないと思った。
オレは怯えて体が震えていた。
「佐々木さん! 戦って下さい! ご兄弟のもとに帰るんでしょう!!このままではやられてしまいます!」
「!!」
ユウナの声にオレは思い出した。
そうだ。
妹弟たちがオレの帰りを待っている。ここで死んだら誰があいつらの面倒を見るんだ。学校を辞めて働きにだって行かなきゃならなくなるだろう。
(そんな思いはさせたくない!させない!)
オレは体の震えが止まった気がした。
(だけど! こんな化け物と戦えるのか!? オレみたいなただのサラリーマンが?)
グゥエオオ!
ガン!
「がっ……!」
とうとうグールの1体に殴りつけられた。かなりの力だ。
(い、痛い! それに、噛みつきとかじゃないんだ……! でも、なんとかしないと! このままじゃ殺される!!)
グウウウ!!
ガン!ガン!
さらに殴りつけられ、腕を掴まれてしまった。
オレはとてつもない激しい恐怖しか感じられない。
「うあああ……!」
オレは走馬灯のように妹たちと弟の顔を思い出していた。
そう言えばさっき夢の中でみんなの声が聞こえた。起きてって。オレに起きて戦えって言いたかったのか?
いや、オレに危険が迫っていることを教えてくれたのか……!? あいつららしいな……。
グールの腐りかけの顔がオレの目の前にある。 オレを掴んでいる腕も泥や血みたいなぬるっとした液体がついていてとてつもなく不快だ。においもヒドイ、吐き気がする。
オレは、ここでこいつに殺されるのか?
オレは……オレはまだ死にたくない!死ねない!!
「うゥおおおォォォォオ!!」
オレは持っていた鉄の棒でグールを力一杯殴った。怯んだグールに向かって鉄棒を何度も叩きつけた。
直ぐにグールは動かなくなった。
飛散したぐちゃぐちゃの体液がオレの体中にまとわりついていた。
「はぁ、はぁ、はぁ」
オレは逃げていた。それに甘えきっていた。
その事実に気付いてしまった。理解してしまった。
だが、ここで戦わないとみんなのもとに帰れない。
覚悟を決めないと帰ることはできない。
グールは元人間だろう。見た目は化け物でも人間だったものだ。オレはそれを鉄の塊でできた棒で叩き潰した。その感触を受け止めながら、兄弟たちがいる現代へ一度決別をした。
まずはこの世界で強くならなければ現代には帰れない。
オレは逃げるのをやめ、覚悟を決めた。
「生き残ってやるよ、このグールだらけの世界で!!」
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