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CHAPTER Ⅰ
第50話 S級グール②
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千城は単独の戦闘で最も戦果を出す隊員であり、性格の問題もありずっと1人での討伐任務をこなしてきた人物だ。
リーダー役としてはそれなりに優秀で人望も厚いため、現在は北部支部の支部長の地位に就いている。
だが、こと戦闘となると周りが見えなくなり、のめり込むタイプでもある。死骸の集合体である巨大なグールを殴りつけ、廻し蹴りを加え、もうすでに1体目の巨人は倒しつつある。
激しい攻撃で周りの死骸や地面ごと吹き飛ばしていた。
もし仲間がいたら巻き添えを食っているだろう。
「よし! ますば1体だ!」
千城は早々に巨人を1体撃沈し、さらに後ろに控える十体以上の巨人を見据え嬉々として叫んだ。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
東班もA級部隊としての能力を発揮して、巨人を攻撃している。
班長の東は狙撃手だが、その身体能力により、移動砲台と言うべき攻撃を繰り返している。貫通力の高い弾丸を遠距離から一度に十発以上を放つ。動きは決して早くない巨人は穴だらけだ。
班員の一ノ瀬は拳術士で戦い方は千城と似ている。やや違うのは放出系の攻撃が主体で完全に敵と組み合うことはあまりない。だが、その攻撃力は一発一発が強力であり、上手く当たればB級くらいなら一撃で葬り去るほどだ。
そして、同じ班員の中井は技術力の高い魔術士で、常に空中に浮遊している。そして俯瞰した視界で一ノ瀬や東が危機に陥らないように攻撃魔術、援護魔術を実施している。
3人のコンビネーションで、巨人の1体が倒れるまでには大した時間は掛からなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
オレたちは動体感知を働かせ、怪しい場所を爆撃したりしながら何とか巨人の相手をしていた。
千城や東班と違うのは、巨人はあくまでS級グールを見つける上での障害であり、討伐までは目指していないことだ。
「ちっ、ここも外れよ! 他は!?」
「3時方向! 距離250! 何か反応があります!」
刎野が吹き飛ばした場所に何もないと分かると次の候補を探した。
だが、一向にS級は見つからない。
「くっ、このままでは消耗するだけだ……!」
御美苗も希望の見えない戦いに愚痴をこぼす。
とうとう刎野に直接の提案をぶつけた。
「刎野さん! やはり撤退すべきです! 誰かが犠牲になってからでは遅い!」
刎野は御美苗をチラッと一瞥すると、接近する巨人を見ながら静かに答えた。
「御美苗くん。逃げたいなら逃げればいいわ。私はこの敵を倒す。S級が1体減ればこれから犠牲になる人間を何人救えるか……これはそういう相手よ。私の意見はあなたと逆なの。私はこいつを決して逃がさない」
「……」
御美苗は思い悩んでいるようだ。
おそらくそれは刎野がS級グールの討伐を通して新トウキョウ都市の安全までを見据えている思慮深さへの感銘と共に、自分の実力不足への不甲斐なさだろう。
「……だったら、オレたちだけ逃げるわけには……行きません! まだ戦えます!」
「そう、じゃあ引き続きよろしくね」
御美苗が刎野とやりとりしている間もオレは銃を撃ちまくっている。
セイヤ、ユウナ、アオイと共に1体の巨人を倒すことができた。
「やった!」
「セイ、喜ぶのは早い。まだ後ろに何体も来てるぞ!」
「私達には、5体! 巨大グールが接近してます!」
「うお! 支部長はもうすでに3体倒してるよ!」
この巨大グールは、戦力的にはA級グール程度だろう。索敵の反応もA級だった。
単独ではそこまで手強い訳ではない。だが、倒しても倒しても新しい巨人が湧いてくる。非常に厳しい状況は変わらない。
「結城! オレたちも加勢するぞ!」
そこに御美苗班も戻って来た。
迷いは消えているようだ。
「大丈夫か?」
セイヤが問う。
「心配すんな! もう出来るだけのことをやりきるって覚悟は決めた!」
ドドド!!
御美苗班の集中攻撃が決まり、1体の巨人がまた倒れた。
「まずは、こいつらを討伐するぞ!」
「おお!」
オレたちが激しい戦闘を続けていると、刎野が何かを考えているのが見えた。
「ちょっ! モモさん! モモさんも攻撃してくれ!」
オレが思わず援護を頼むと刎野が巨人に杖を向けた。
かなりの魔素を練り上げているのが分かる。
「神級火炎!」
バアアア!!!
「うおおおお!?」
今までに見たことの無い規模の火炎の波が巨大グールを焼き尽くした。
もの凄い、なんてものじゃない尋常ではない威力の攻撃だ。
今の一撃で4体は巨大グールを倒した。そして地面を埋め尽くすB級グールのの死体もかなりの数、100体以上が焼け焦げている。
「はぁ、はぁ。さ、さすがにここから神級魔術は消耗が激しいわね……」
刎野が空中からオレたちの元へふわりと降り立った。
「すごい……! これが神級……やっぱりモモさんは使えたんですね……」
ユウナが呆然としている。
それだけ高位の攻撃魔術なのだろう。
「さすがモモだ。それに……何か思いついたんじゃないか?」
(え?)
セイヤの言葉の意味がよく分からなかった。
「さっき、考え事をしていただろう。そして何かに気付いた顔をしていたな?」
「……セイヤ、良く見てるわね。そんなにわたしのことが気になるの?」
「ああ、気になるな。S級グールを倒す作戦がな」
(ああ、そういうことか)
「……」
刎野は何かためらうようなそぶりを見せた。
「刎野さん? もし作戦を思いついたなら教えて下さい。オレたちは覚悟は決めましたよ」
御美苗も刎野の言葉を促した。
オレも話すのを何故ためらうのか不思議に思った。どのような方法であれ、逃亡しないのなら、戦うしかないのだから。
「モモ、頼む」
セイヤの言葉に刎野が深く息を吐いた。
「……S級グールや今回の攻撃の目的は何だと思う?」
(?モモさんじゃないのか?)
「それは、モモと我々を倒すことだろう?」
「ええ、敵の目的は、私たち新トウキョウ都市の討伐隊員の殲滅よ。言い換えると新トウキョウ都市の弱体化よ」
「弱体化……?」
「ええ、敵の最終的な目標は新トウキョウ都市の壊滅のはず。その前段階の作戦行動として、私たちのようなS級隊員、A級隊員の殺害を目論んでいるの」
「それは、まあ分かるけど……」
オレはまだ話の論点が見えない。
「では、どうすればS級グールを倒せるのかだけど、それは相手の有利な状況をわざと作って見せるということになるわ」
(いまいちわからん……)
「このグールは、他のグールの死体を操り、私たちの消耗を狙っている。そして、私たちがあえて消耗して向こうから姿を出させるということよ」
「え? でもそれではオレたちはやられてしまうんじゃ……」
「S級戦力として戦える力を残したまま、消耗したように見せるしかないわ」
「それは、どういうことですか?」
「私がわざと魔素を使いきるわ。そして戦線を離脱する」
「な!? 刎野さんが居なくなってはS級は倒せません!」
御美苗も驚きの声をあげる。
「力を残すと言ったでしょう。私は一旦魔素を使いきり、30分で回復してみせる。切り札があるわ」
「モモ……それは危険ではないのか?」
「セイヤ……危険をおかさずには、この相手は勝てない。それに早くしないと千城さんや東班も危ない」
オレは強化視覚で千城を見る。
既に5体目の巨人と戦っているが、それなりのダメージを受けているようだ。
東班も同様だ。5体は巨人を倒しているが、さらに他の巨人に囲まれたまま、必死の攻勢を見せている。
オレたちは合計で20体近い巨人を倒してはいるが、いまだ次々に新たな巨人が生まれて来ている。
「確かにあなた達もかなり危険よ。S級が姿を見せたら時間を稼ぐことに集中して。必ず私が倒して見せる」
「やるしか、ないか……」
セイヤも覚悟を決めたようだ。
「みんな、生き残るわよ」
刎野の言葉に、皆が頷いた。
リーダー役としてはそれなりに優秀で人望も厚いため、現在は北部支部の支部長の地位に就いている。
だが、こと戦闘となると周りが見えなくなり、のめり込むタイプでもある。死骸の集合体である巨大なグールを殴りつけ、廻し蹴りを加え、もうすでに1体目の巨人は倒しつつある。
激しい攻撃で周りの死骸や地面ごと吹き飛ばしていた。
もし仲間がいたら巻き添えを食っているだろう。
「よし! ますば1体だ!」
千城は早々に巨人を1体撃沈し、さらに後ろに控える十体以上の巨人を見据え嬉々として叫んだ。
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東班もA級部隊としての能力を発揮して、巨人を攻撃している。
班長の東は狙撃手だが、その身体能力により、移動砲台と言うべき攻撃を繰り返している。貫通力の高い弾丸を遠距離から一度に十発以上を放つ。動きは決して早くない巨人は穴だらけだ。
班員の一ノ瀬は拳術士で戦い方は千城と似ている。やや違うのは放出系の攻撃が主体で完全に敵と組み合うことはあまりない。だが、その攻撃力は一発一発が強力であり、上手く当たればB級くらいなら一撃で葬り去るほどだ。
そして、同じ班員の中井は技術力の高い魔術士で、常に空中に浮遊している。そして俯瞰した視界で一ノ瀬や東が危機に陥らないように攻撃魔術、援護魔術を実施している。
3人のコンビネーションで、巨人の1体が倒れるまでには大した時間は掛からなかった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
オレたちは動体感知を働かせ、怪しい場所を爆撃したりしながら何とか巨人の相手をしていた。
千城や東班と違うのは、巨人はあくまでS級グールを見つける上での障害であり、討伐までは目指していないことだ。
「ちっ、ここも外れよ! 他は!?」
「3時方向! 距離250! 何か反応があります!」
刎野が吹き飛ばした場所に何もないと分かると次の候補を探した。
だが、一向にS級は見つからない。
「くっ、このままでは消耗するだけだ……!」
御美苗も希望の見えない戦いに愚痴をこぼす。
とうとう刎野に直接の提案をぶつけた。
「刎野さん! やはり撤退すべきです! 誰かが犠牲になってからでは遅い!」
刎野は御美苗をチラッと一瞥すると、接近する巨人を見ながら静かに答えた。
「御美苗くん。逃げたいなら逃げればいいわ。私はこの敵を倒す。S級が1体減ればこれから犠牲になる人間を何人救えるか……これはそういう相手よ。私の意見はあなたと逆なの。私はこいつを決して逃がさない」
「……」
御美苗は思い悩んでいるようだ。
おそらくそれは刎野がS級グールの討伐を通して新トウキョウ都市の安全までを見据えている思慮深さへの感銘と共に、自分の実力不足への不甲斐なさだろう。
「……だったら、オレたちだけ逃げるわけには……行きません! まだ戦えます!」
「そう、じゃあ引き続きよろしくね」
御美苗が刎野とやりとりしている間もオレは銃を撃ちまくっている。
セイヤ、ユウナ、アオイと共に1体の巨人を倒すことができた。
「やった!」
「セイ、喜ぶのは早い。まだ後ろに何体も来てるぞ!」
「私達には、5体! 巨大グールが接近してます!」
「うお! 支部長はもうすでに3体倒してるよ!」
この巨大グールは、戦力的にはA級グール程度だろう。索敵の反応もA級だった。
単独ではそこまで手強い訳ではない。だが、倒しても倒しても新しい巨人が湧いてくる。非常に厳しい状況は変わらない。
「結城! オレたちも加勢するぞ!」
そこに御美苗班も戻って来た。
迷いは消えているようだ。
「大丈夫か?」
セイヤが問う。
「心配すんな! もう出来るだけのことをやりきるって覚悟は決めた!」
ドドド!!
御美苗班の集中攻撃が決まり、1体の巨人がまた倒れた。
「まずは、こいつらを討伐するぞ!」
「おお!」
オレたちが激しい戦闘を続けていると、刎野が何かを考えているのが見えた。
「ちょっ! モモさん! モモさんも攻撃してくれ!」
オレが思わず援護を頼むと刎野が巨人に杖を向けた。
かなりの魔素を練り上げているのが分かる。
「神級火炎!」
バアアア!!!
「うおおおお!?」
今までに見たことの無い規模の火炎の波が巨大グールを焼き尽くした。
もの凄い、なんてものじゃない尋常ではない威力の攻撃だ。
今の一撃で4体は巨大グールを倒した。そして地面を埋め尽くすB級グールのの死体もかなりの数、100体以上が焼け焦げている。
「はぁ、はぁ。さ、さすがにここから神級魔術は消耗が激しいわね……」
刎野が空中からオレたちの元へふわりと降り立った。
「すごい……! これが神級……やっぱりモモさんは使えたんですね……」
ユウナが呆然としている。
それだけ高位の攻撃魔術なのだろう。
「さすがモモだ。それに……何か思いついたんじゃないか?」
(え?)
セイヤの言葉の意味がよく分からなかった。
「さっき、考え事をしていただろう。そして何かに気付いた顔をしていたな?」
「……セイヤ、良く見てるわね。そんなにわたしのことが気になるの?」
「ああ、気になるな。S級グールを倒す作戦がな」
(ああ、そういうことか)
「……」
刎野は何かためらうようなそぶりを見せた。
「刎野さん? もし作戦を思いついたなら教えて下さい。オレたちは覚悟は決めましたよ」
御美苗も刎野の言葉を促した。
オレも話すのを何故ためらうのか不思議に思った。どのような方法であれ、逃亡しないのなら、戦うしかないのだから。
「モモ、頼む」
セイヤの言葉に刎野が深く息を吐いた。
「……S級グールや今回の攻撃の目的は何だと思う?」
(?モモさんじゃないのか?)
「それは、モモと我々を倒すことだろう?」
「ええ、敵の目的は、私たち新トウキョウ都市の討伐隊員の殲滅よ。言い換えると新トウキョウ都市の弱体化よ」
「弱体化……?」
「ええ、敵の最終的な目標は新トウキョウ都市の壊滅のはず。その前段階の作戦行動として、私たちのようなS級隊員、A級隊員の殺害を目論んでいるの」
「それは、まあ分かるけど……」
オレはまだ話の論点が見えない。
「では、どうすればS級グールを倒せるのかだけど、それは相手の有利な状況をわざと作って見せるということになるわ」
(いまいちわからん……)
「このグールは、他のグールの死体を操り、私たちの消耗を狙っている。そして、私たちがあえて消耗して向こうから姿を出させるということよ」
「え? でもそれではオレたちはやられてしまうんじゃ……」
「S級戦力として戦える力を残したまま、消耗したように見せるしかないわ」
「それは、どういうことですか?」
「私がわざと魔素を使いきるわ。そして戦線を離脱する」
「な!? 刎野さんが居なくなってはS級は倒せません!」
御美苗も驚きの声をあげる。
「力を残すと言ったでしょう。私は一旦魔素を使いきり、30分で回復してみせる。切り札があるわ」
「モモ……それは危険ではないのか?」
「セイヤ……危険をおかさずには、この相手は勝てない。それに早くしないと千城さんや東班も危ない」
オレは強化視覚で千城を見る。
既に5体目の巨人と戦っているが、それなりのダメージを受けているようだ。
東班も同様だ。5体は巨人を倒しているが、さらに他の巨人に囲まれたまま、必死の攻勢を見せている。
オレたちは合計で20体近い巨人を倒してはいるが、いまだ次々に新たな巨人が生まれて来ている。
「確かにあなた達もかなり危険よ。S級が姿を見せたら時間を稼ぐことに集中して。必ず私が倒して見せる」
「やるしか、ないか……」
セイヤも覚悟を決めたようだ。
「みんな、生き残るわよ」
刎野の言葉に、皆が頷いた。
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