グールムーンワールド

神坂 セイ

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CHAPTER Ⅲ

第126話 昇級③

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 阿倍野への報告会から2週程が経ち、オレたち結城班は今回、7月期の昇級試験を受けた。
 今回の試験で昇級出来たのは3人で、オレ、ユウナ、アオイだ。

結城セイヤ AA 10ポイント
佐々木セイ AA 10ポイント
月城ユウナ A+ 9ポイント
安城アオイ A+ 9ポイント

 これでオレたちは38ポイント、平均9.5ポイントのA+部隊となった。

 さらにその後、毎月の訓練報告の為に阿倍野の部屋を訪れていた。

「やあ、みんな昇級おめでとう! セイヤはもう一歩だったみたいだね。まあ次でランクアップはほぼ間違いないでしょ、引き続き頑張って!」

 阿倍野はいつも通り明るい声だ。

「ありがとうございます。それでは闘衣の進捗確認、お願いします」

 セイヤ、ユウナ、アオイがそれぞれ魔素を全身に巡らせ、闘衣を発現させた。
 最近は少しずつ視認もできるレベルで全身が淡く光っているのが分かる。

「おおー! 3人ともかなり上達してきたね! 半年足らずで大したものだよ! そろそろ身体能力向上、防御、治癒能力それに魔素回復の速度上昇も実感できてるでしょ」

「はい。阿倍野マスターのお陰です」

「でも、まだまだ千城隊長程じゃないけどよ」

「ああ、もっと努力を重ねなければな」

 ユウナ達の言葉にオレはひとつ疑問を持った。

「え? 千城隊長程じゃってどういうこと?」

「佐々木! やっぱお前は鈍いなー」

「な、何だよ!」

「セイ。千城隊長はこの闘衣纏身能力の達人だ。彼も戦闘中は全身が光に包まれているだろう」

「あ……、そう言えば……」

「佐々木さんはまだ闘衣の訓練は始めてないですからね……」

 ユウナがそう言って微笑んでくれているが、毎度ながら気恥ずかしい。

「もしかしてこれが千城さんの肉体強化の秘密なのか?」

 オレはふと思った疑問を口にした。

 千城は初めて会った時に全身を強化していたが、その時に体が淡く光っていることを思い出していた。
 オレは千城がこの能力によって肉体強化をしているのだと予想したのだ。

「まあ、秘密って程じゃないよ。闘衣を纏えば体が頑強になるからね。肉体強化をしてもケガをしなくなる」

 オレの疑問には阿倍野が答えてくれた。

「ケガ?」

「ああ、佐々木くんは経絡開放者だから実感ないだろうけど、肉体強化して体を動かすとその反動が凄いんだ。拳術士が少ない理由でもあるけど、経絡開放者以外で魔素を込めてそのまま拳や脚で敵を攻撃できる隊員は少ないんだ」

「あれ? 一ノ瀬さんとかは違うんですか?」

「ああ、東班の? 彼女はかなり大きめに魔素を纏わせて攻撃したり、放出攻撃が主だからね。肉体強化はまだ出来ないんじゃなかったかな」

「へえー」

「へえ、じゃねえよ」

 アオイがオレに突っ込みをいれてきた。

「ははは。まあ、だからリンタロウや佐々木くん、それにオレもだけど。結構稀なんだよ。直接肉体でグールに攻撃ができる人間は。これからはセイヤ達もそうなって行くと思うけど」

「我々も、ですか?」

 セイヤが意外そうな顔をしている。

「ああ、次の段階の訓練だね。君たちならもうE級くらいのグールの攻撃ならまず効かないレベルに肉体が活性されている。そこでまずはその闘衣の大きさを広げる訓練を始めてくれ」

「……」

「そうすることによって闘衣がさらに洗練されれば肉体強化も出来るようになるし、さらに基礎能力も上がる。第2段階だね」

「精進します」

 セイヤ達は真面目な顔で阿倍野の話を聞いていた。

「さて、じゃあ佐々木くん。これ」

 阿倍野はいきなりオレに銃を渡してきた。

「うおっ! どこから出したんですか!」

 オレは阿倍野からずっしりとした銃を受け取り手に取った。

「それが佐々木くんの新しい魔銃だよ」

「あ、オレの……」

「うん、今回は宝条さんが特別に作った佐々木くん専用の魔銃だ。それはね、銃術士が扱う物の中でももう最強クラスだよ」

「え! そんなものを!?」

「ああ、君はもうAAランクになっただろう? 扱えるはずだ。経絡対応銃身、魔素無形式入出力対応、各機能付与設定対応、など盛りだくさんだよ。間違いなくS級以上が使うべき代物だ。宝条さんの期待が透けて見えるね」

「……」

(アイちゃんがオレの為に……)

 オレは阿倍野な色々と言っている銃の機能については良く分からないが、宝条がオレの為にこの銃を作ってくれたという、その気持ちだけは良く分かった。

「ありがとうごさいます、これからも頑張ります」

「うんうん。じゃ撃ってみよっか」

 阿倍野が軽く言った。

「え? いきなり?」

「まあ試し撃ち兼、佐々木くんの訓練確認だね。ほら、あの的に向かって撃ってね」

(きゅ、急だな……まあ、仕方ない)

「あそこですね、行きます」

 阿倍野の指示した方向には球体が浮かんでおり、その周りは何か障壁が施されているようだった。

「ああ、全力で撃ってね」

「全力でですか?」

「うん、よろしく」

(まあ、そう言うなら……)

全兵能装甲最大フルアームズ! 三重天狼弾ルミナスセイリオス!!」

ドオオオオン!! 

 オレの放った弾丸は球体を激しく揺らしたが、周りの障壁が弾丸の威力を殺したようで、部屋には一切の影響は無かった。

(凄い! 前の時よりかなり威力が上がっている気がする!)

「おおー、結構凄いね! じゃあもう一発!」

「え?」

「え? もう一発いっちゃってくれる?」

「は、はい。分かりました……」

(何かやっぱ軽いな……)

三重天狼弾ルミナスセイリオス!!」

ドオオオオン! 

 さっきと同じように、激しい衝撃の余波は拡がったが、部屋には影響は無かった。
 セイヤたちはオレの銃撃を改めて間近で見て、少し驚いているようだ。

「ど、どうですか?」

「うんうん、じゃもう一発」

「は?」

「あ、ごめん。撃てなくなるまで続けてくれるかな」

「ええ!?」

「限界まで魔素を使うことで佐々木くんの能力を見るからさ」

「そ、そうですか……」

(あれ、オレ何発撃てるんだ?)

「まあ、やってみるか!」





「うーん、7発、か」

「どどど、どうでしょうか……」

 オレは渾身の銃弾を打ち続けた。
 そして魔素を使い果たし、膝を着いたままで阿倍野に尋ねた。

「まあこんなもんでしょ」

(こ、こんなもんて……)

 オレはガクガクなのだが、阿倍野は軽くそう言った。

「この銃弾は三重出力だね。まずは四重出力も出来るように頑張って」

「は、はい」

「あと、佐々木くんも次の段階に進んでも良さそうだね」

「つ、次?」

「うん、魔素の効率化、多重出力はまあ、それなりになったからね。次は魔素の形態質性変化だね」

(な、何言ってるか全然分かりません……)

「ユウナちゃん、佐々木くんが何言ってるか全然分からないって顔してるから、後で教えてあげてくれる?」

「はい、わかりました」

(やっぱ、顔に出てたか……)

「あと、もうひとつ」

「もうひとつあるんですか?」

「ああ、君はそろそろ新しい魔技を身に付けてくれ」

「それは天狼弾セイリオス以外の技を考えろってことですか?」

「うん。君の天狼弾セイリオスは普通のレベルならかなり強力な技だ。三重出力ならシン級をも上回る。だけど、相手がS級グールとかになると少し心もとないね」

「……」

「この先、四重出力が出来るようになったとしてもS級グールへの完全な決定打にはならないだろう。だから、さらに強力な技を身に付けて、君にはS級隊員を目指して欲しい」

「なるほど、でもどうすれば……」

「それは自分で考えてね」

(やっぱ、そうなるよな……)

 オレたちはそうしてギルドマスタールームを離れ、その後は任務再開を待つばかりとなった。
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