神様はラノベ作家を目指すようです。

智恵 理陀

文字の大きさ
21 / 43
第一部

その21.思っていた天使と違う。

しおりを挟む
「――ふぎっ」

 大鎌はまるでおもちゃのように砕け、俺の拳は彼女の顔面を直撃した。
 それから一回転して後方の壁に叩きつけられた使乃さんは果たして大丈夫なのかな、うん、大丈夫じゃないな。
 自分でも驚いている。
 拳から肩まで、銀に輝く鎧のようなものが施されていた。

「……すごっ」

 自分の手の平を見てみる。
 ごつごつしているも細かに関節部分が設けられていてなめらかに動かせた。
 指先は尖がっていて、突く攻撃も有効そうだ。

「がっ……ふ、はっ……な、なん、なんれす、か……それ、は」

 呂律がうまく回ってませんよ使乃さん。

「俺もよく分からないけど、蔵曾からの贈りもの」

 俺はすぐに蔵曾を抱えた。
 まだ意識があるようで、

「ウルトラ創造神ナックル」
「命名ダサすぎない?」
「傷つく」
「ごめんて」

 むっとしながらも蔵曾は俺の肩を弱々しく叩き、蔵曾は先輩を指差す。

「立ち位置、回収」

 そうだな、回収しておこう。
 今の一撃じゃあ回収にならないのならばもう一度殴る必要があるのかね。

「軽く頭でも叩いて。勝利という形、大事」

 じゃあそうしよう。
 俺は先輩のもとへと歩み寄り、一度蔵曾を床に置いた。

 そんでもって先輩には、
「すいません、ちょっと叩きます」
 反応できないだろうけど、一言言っておく。

 この右腕で攻撃はしないほうがいいな、力の加減が分からないから重傷を負わせてしまうかも。
 さっきだって軽く殴っただけなのにあの威力だ。
 俺は左手で頭にチョップ。

「うっ」

 小さく先輩は声を漏らした。
 すると先輩の体から青白い光が溢れ、俺の体へと移っていった。
 これで立ち位置は回収できた。
 あとは蔵曾と先輩を運ばなくちゃな。
 二人を一度に運ぶのは無理だ、誰かを呼んで先輩を運んでもらおう。
 室内は先輩の結界が張っているはずだったが、薬を打たれたからかいつの間にか結界は解かれていた。
 俺は蔵曾を再び抱えて化学実験室を出るとした、使乃さんは動けない――と思う。

「蔵曾、今病院に連れてくからな」
「病院より、私の使いに」
「使いって言ってもな、誰か分からん。見れば分かるか?」
「うん」

 そりゃ良かった。
 扉に手を掛けて、半分ほど開いたあたりで使乃さんは動かないよな――と振り返るや壁にもたれていたはずの彼女の姿は無かった。

「えっ……?」
「ひはっ」

 その声は、天井から。
 砕けた大鎌の刃をわしづかみで、跳躍していたようで落下と共にその刃を俺へと向けていた――!

「うおっ!?」

 両手が塞がっている、どうしたら――!?
 その一瞬にて。

「はぁあん?」

 空を切る音、頬をかすめてグローブが使乃さんの腹部を直撃した。
 ズドン、ともはや誰かを殴った音とは思えない酷く重い音が届く。

「うごはっ――! ――っ! ――っ!」

 最後は声にならない声を、激痛に顔を歪めて漏らしていた。
 相当……痛そうだ。

「豊中さん……」
「詰めが甘いんだよこのボケが」
「す、すみません……」

 流石にもう使乃さんは動けまい。

「そいつを床において」
「えっ? あ、うん」
「ごめん、怪我した」

 蔵曾は豊中さんに淡々とした口調で言う。

「手間が掛かる神だ」
 ……使いっていうのは豊中さん?

「文句の多い天使」

 天使?
 ……豊中さんが?

「……はぁあん? 何か失礼な事、考えてない?」
「いや! ぜ、全然!」

 だってさあ、豊中さんが天使だって思わないよ。
 言動共に暴力的で肩がぶつかっただけでぶっとばされそうな雰囲気、はぁあん? って威圧的な睨みをきかせてくるわ、どっちかというと悪魔だぜ?
 蔵曾の背中の怪我に触れて光を放って治すところは天使っぽい感じがなんとか伺えるけど未だに信じられない。
 蔵曾が天使だっつーから、天使なんだろうけどさあ。

「回復」

 ものの数秒で完治、非現実的なものが連続で起こりすぎてこれといってリアクションも無く慣れてしまった自分がいる。

「こいつに立ち位置渡さなきゃよかったのにほんとあんたは……。あんな力、消滅させればいいのに」
「やだ」
「馬鹿神め。やっぱり私が立ち位置奪って管理しておけばよかったわ」
「それは駄目」
「馬鹿神め」
「……酷い」

 神様と天使のやり取りとは思えない。
「ほんと馬鹿なんだから」

 馬鹿馬鹿言い過ぎじゃない?
 うん、こいつ馬鹿な気がするけど。

「失った血はちゃんと食事で補いなさい。レバー食え、レバー」
「今夜はレバーで決まり」

 俺も頂こうかな。

「あとはあいつをどうするかねえ」

 あいつとは。
 三人して化学実験室へ視線を投げる。
 腹部を押さえたまま床に額をくっつけて悶絶しているあいつ。

「連行するか」

 そうしたほうがよさそう。
 そうしてもらえると安心するし。

「ふ、は」

 ゆっくりと、使乃さんは立ち上がった。
 嘔吐して、ぐしゃぐしゃになった顔を乱暴に袖で拭き、手にはまだ折れた大鎌の刃を持っていた。

「近づ、くと、この人を殺し、ます」

 厄介である……。
 近くに倒れている先輩を人質にされるのは困った、先輩は今動けないのだから。

「そう。で、あんたは何がしたいわけよ?」

 怯みもせず、豊中さんはため息混じりにそう問う。

「忍野君を、渡しな、さい」
「嫌よ」

「この人が死んでも、構わない、んです?」
「そ、そうだよ! 先輩の命が掛かってるんだぞ!?」

「はぁあん? 別にいいじゃない」
「よくない!」

 何を考えてるんだ君はっ!

「つーかそんな要求が通るわけないでしょ、必死すぎるわよ? それより自分の心配をしなきゃ――ね!」
「何を言――」

 途端に――重低音。
 俺は豊中さんを見ていたはずなのに、彼女の姿は一瞬で消えていた。
 続く重低音。
 その音が聞こえた場所を見ると、豊中さんのグローブが使乃さんの顔面を捉えていた。

「――ってぁ?」
「だから言ったでしょ、自分の心配しなきゃって」

 吹き飛ばされる使乃さんが直視できないくらいに気の毒に思う。
 しかも、吹き飛ばされた先は窓。
 それを突き破って彼女は外へ。

「あー、やっちゃった」
「……やっちゃったじゃないでしょうに!」

 慌てて窓へと俺は駆けつけた。
 転落、転落だよ? 三階から!

「大丈夫よ、人外がこれくらいじゃ死なない。普通の人間ならさっきのボディブローで絶対立てやしないから」

 俺なら確実に立てなかったろうな、立とうとして生まれたての小鹿状態になってそうだ。

「……いない」
「逃げたかな、まだ動けるとはね。まあいいわ、私が目を光らせてる間は襲ってはこないでしょ。あんだけぼこぼこにされてすぐに動けもしないでしょうし」
「それならいいけど」
「あのようなシリアス展開は、いい」
「シリアス展開でまとめちゃうなよ蔵曾」
「一件落着」

 蔵曾は仁王立ちで締めてほっと一息といきたいところだが、それより先輩を運んでやらないといけないのに加えて化学実験室のこの有様、外はガラスが割れた事で騒がしくなってきているので早いとこここから離れるとしよう。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

処理中です...