神様はラノベ作家を目指すようです。

智恵 理陀

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第二部

その42.領収書ください

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「おい」

 わき道から出るや、俺達を待ってましたと言わんばかりに豊中さんが腕を組んで待っていた。
 別に俺は悪い事などしていない、したとすれば……稀少種の頭にチョップを食らわしたくらいだ。
 おっと、蔵曾の頭に拳骨をするのを忘れてたな、今すぐしたいが今はそんな場合ではないようだ。

「何してたの?」
「蔵曾に聞いてくれ」

 何をしてたか、それを全て正確に答えられるのは蔵曾以外にいない。

「……」

 蔵曾は沈黙した。
 日が暮れ始めた橙色の空を扇ぐがなお前、それは豊中さんに喧嘩を売ってる他ならないぞ?

「ノア様、何がありました?」
 蔵曾が口を開かないならと、豊中さんはノアへ問いだした。

「あの、こ、この人に連れ去られたの……」

 ノアの視線は鬼全へ。

「あ、あたしは蔵曾に、ノアを人質に取ればいいって……」

 おい蔵曾、お前を擁護する奴いなくなったぞ。

「最後に、もう一度聞くわ。な・に・し・て・た・の?」

 豊中さんは蔵曾に顔を近づけて、眉間に深くしわをきざんで、殺傷能力があるんじゃないかっていうくらいに蔵曾を睨みつけた。
 蔵曾は視線を豊中さんへ移すが、後ずさりしながら、両手を前に出して言う。

「ラノベの、資料、集め」
「らのべ?」

 鬼全には解らん事情だ。

「ふうん?」
「そう」
「ちょっと、来ようか」

 それはまるで、犯罪者を見つけて交番まで連れて行く警察官のような口調。

「……助けて」

 俺に助けを求められてもな。

「あ、あたしが助ける!」
「はぁあん……?」

 豊中さんは睨みつけてくる。

「と、思った、けど、ちょっと、具合が、悪くなって……」

 効果は抜群だ。
 正しい判断だ、豊中さんに襲い掛かったら今頃夢の中へぶっ飛ばされていたであろう。
 蔵曾を連れて行こうと豊中さんは動くも、その足は二歩で終わった。

「…………これも、関係してる?」

 豊中さんはいきなり構えた、それは敵がいるという合図。
 ……まさか、偽使乃さん?

「違う、立ち位置の変化により、一部の“怪異”が干渉しやすくなった。自然と寄ってきた奴ら」
「なるほどね」
「それに、目的は浩太郎ではなさそう」
「ええ、そのようね」

 何を感じ取っているのかは解らないが兎に角やばそうだ。

「こっちに来な――」

 一瞬だった。

「あ?」

 鬼全の影から狐の仮面が浮かび上がり、それは鬼全の胸へと上ってくると、鬼全は自身の影に沈んでしまった。
 的確な描写だと思う、まさに――沈んだのだ。

「ちょ、えっ!?」
「連れて行かれた……わね」
「何処に!?」
「知らないわよ!」

 豊中さんは携帯電話を取り出して誰かに連絡を取り始めた。
 察するに天使同士?
 この人達って天使らしい力を使うより文明の利器を活用するな。
 いやいやそんな事考えている場合じゃなくてっ。

「ど、どうしよう……?」
「俺にはどうしていいか、解らんぜノア……」

 慌てふためくノアと一緒に慌てふためきたい。
 そうすりゃ何か楽になれそうで。

「私は街全体を今から仲間と共に見回るわ!」
「私も探す」

 なら俺も一緒に探すか……。
 何故に敵を探さなきゃならんのか解らんが、一応この前は理由がどうであれ泊めてもらったし、結構持て成してもらったからな。

「あまり期待はしてないけど、よろしく」
「わ、私も!」
「とても期待しております、ノア様なら必ずやみつけられるでしょう! お願いします!」

 蔵曾とノアとの対応が違いすぎるんですが。

「……」

 なんだかなーみたいな、何か訴えたいような雰囲気で蔵曾は走り去る豊中さんを見つめていた。

「それで、どこをどう探すってんだ?」
「解らない」
「……とりあえずここから動くか」
「賛成」

 無為無策とはいえ、このわき道にいるのも進展がない。
 一度わき道から出て、再び考えるとした。

「あの狐の仮面は何か解るか?」
「……狐狗狸、かも」
「こくり?」
「狐、狗、狸。こくり」

 どっかで聞いた気もしないでもない。

「き、狐の霊を呼び出す降霊術、こっくりさん、当て字で狐、狗、狸っ」
「ああ! こっくりさんか!」

 物知りノア先生、ご丁寧にご説明どうも、なんかすっきりした。

「狐……稲荷神社でも探せばいいのか?」

 いくつか住宅街に稲荷神社がある、街中にはないが小山方向にも一つ。
 候補は四件ほど……だが遠い、走っていくにも距離がありすぎる……。

「そうとも、限らない。神ではなく霊の類である怪異、神社への関連性は、浅い」
「益々どこをどう探せばいいか、解らなくなってきたな……」

 情報が不足しすぎている。

「目的は角?」
「そうかも」
「怪異も金が必要なもんなの?」
「金があれば人間社会に溶け込める」

 そういう目的で金が必要、とな……。
 今思うと鬼全のあの金回りのよさは自分の角を売っていたのかねぇ。
 角欠けてたし。

「目的は鬼全の角で、動機は角を奪って金を得て、人間社会に溶け込みたい、だったらなんかインパクトに欠けるな」
「そう、悪の組織の気配もなく単独。君がもっと凶悪で強力な怪異集団を望めばよかった」
「望むかよ馬鹿」

 けど敵の目的や動機がそうと決まったわけではない。
 命に関わるものだとしたら、早く鬼全を助けなければならない。
 敵を助けようっていうのもおかしな話だが。

「あの、どうせなら、少し街中を探しながら話をするのは?」
「それもそうだな……」

 足を動かそう、最初は周辺を、少しずつ範囲を拡大していく感じで。
 時刻が時刻なだけあって今は学生や社会人の帰宅時間に入っている。
 探し回るにも、人の波が妨害となって探し辛い。

「はぁ……くそっ、全然見つからねえな……!」

 三十分ほど街中を駆け回ったであろうか。
 豊中さんからの連絡も無く、お互い捜索に雲行きが怪しくなってきている。

「神社、行く?」
「行ってみよう!」

 兎に角敵がいそうな場所は虱潰しだ。

「蔵曾、お前は怪異を感知出来たりはしないのかよっ」
「街は怪異が増えつつある、個別に把握するのは無理」

 弱ったな……。
 このままだとただただ時間を垂れ流すだけだ。
 何か進展を起こす情報が欲しい。
 少し遠くへ歩きすぎた、ここからだと小山方向の神社が近いな。
 神社にはタクシーで向かう事となった。
 体力もそろそろ底が見え始めていてね、これは仕方が無い。
 ……運動不足かなぁ。

「領収書ください」

 降りる際にはお前どこの会社員? と言いたくなるやり取り。
 豊中さんに渡すのかな。
 たどり着いた神社は人気も無く、 赤い鳥居は色あせてボロボロ。
 落ち葉は一切無く、管理されてはいるようではあるも建物は今にも崩れそうなくらいガタがきていた。
 見回して、思う。
 見覚えがある――と。

「……昔、一度だけ行った事、あるかも」
「ある、子供の時、浩太郎君に、つれてきてもらった」
「あ、ああ……そうだ、ここで祭り、あったんだったな」

 懐かしい思い出がよみがえってきた。
 本当に記憶がおぼろげなくらい子供の頃だ。
 ノアともわいわい遊んでいた頃だ。
 父さんと母さんとも今と同じように円満な家族だった頃だ。

「懐かしいな」
「うん……」

 あれから俺達は変わった。
 色々と変わって、今俺達は元に戻り始めている。
 ノアとの仲も、家族の和も。

 ――この神社は、元に戻る?

 どうだろうな……。
 手遅れかもしれない、ここ十年ほどで何があったのか解らないがここはもう神社として機能していないんじゃないか。
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