死ねば死ぬほど強くなる不死者は死ぬ方法を探している。

智恵 理陀

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第五章

035 流石に悲鳴を上げる。

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 場所を移して、いつもの洞窟へ。
 今日も準備は怠らず、万全の態勢で龍と対峙する。

「ギョァァァァァア!」
「ちょっ……どうして俺の顔を見るなり悲鳴を……」
「とうとう悲鳴を上げさせるまでに至りましたか……」

 龍は数歩後ずさりして明らかに拒否の姿勢を見せていた。
 俺は黒くカサカサうごくあの虫じゃあないんだぞ、その反応は酷くないかい?

「俺とお前の仲だろー、今日も色々と俺が死ねる方法を試そうじゃないか!」
「ギョァァァァァァァァァア!」
「なんで逃げるんだよ!」
「逃げるのも無理はないと思いますが」

 ハスのため息が聞こえる。
 君も龍も、俺への対応はちょいと見直したほうがいいと思うぞ。
 先回りして龍が奥へ逃げるのを阻止し、両手を広げて威嚇してみた。
 すると今度は入り口側へと逃げていく。

「ハス、そっちに行ったぞ! 気をつけろ!」
「は、はいっ!」

 岩陰からにゅっと頭を出したハスは、龍の位置を確認してとことこと端のほうへと逃げていく。
 前回の天国病事件で得た戦い方――フレイムを自身の後方に放ち前へと飛び出す方法を使ってすぐさまに龍の正面へと飛び出す。

「ふふんっ、どうだ!」
「ギュワッ……」
「うわっ……みたいな反応やめろ」

 心底嫌そうな顔してるなあ。
 龍ってそんなに表情豊かだったかな。
 顔面に飛びついてみると、龍は飛び上がって自らの頭を洞窟の天井へとぶつけてしまった。

「ご、ごめん……」
「あれですね、虫がいきなり顔に向かって飛んでくるのと同じ感じですね」
「俺は虫じゃなくて人なんだけど」
「龍にとっては虫みたいなものですよ私達は」

 大きさ的にはそうかも。
 龍は嫌そうに顔から俺を引っぺがして思い切り地面へと投げつけた。

「痛いっ!」
「だ、大丈夫ですか!」
「死ぬほど痛いけど大丈夫……」
「死ななくてよかったです」
「よくないよ!」

 死にたいんだよ俺は。
 しかし龍関連依頼となるとやっぱり装備品はすぐぼろぼろになるな。
 俺もそれなりに防御をすれば変わるのだろうけれど、防御する意味も今のところはない。
 最終的に、龍は炎を吐いて俺は全身丸焼け。
 意識が途絶えたあたりから、消し炭にされたようだ。

「はわっ……お、お着替えです!」
「ああ、ありがとう」

 また全裸にされてしまった。片手剣は直前で放り投げたおかげで無事だ。折角刃こぼれを直したのにすぐ駄目にしたと知られたら武器屋の親父も起こっていただろう。

「龍は?」
「また奥へと行ってしまいましたよ。素材はある程度回収しておきました」
「これだけあれば十分か。龍と遊んでいるだけで稼げるとはボロい商売だぜ」
「その言葉、冒険者に聞かれたらきっと怒られますよ」

 今日も稼ぎのほうは順調だ。
 ギルドに戻り、報酬を受け取った。午後は何か稼ぎのよさそうな依頼があったら受けよう。
 龍関連の依頼はそこらの掲示板に貼ってある依頼の数倍は報酬が高いので何度も繰り返し依頼をこなしていて十分な蓄えを得られている。
 なので、言っては何なんだが他の依頼が安く見えすぎてしまってあんまり受ける気にもなれないのだ。
 時間効率も龍関連のほうがいい、午前中だけで大体終わるからね。
 しかしそろそろギルドのほうは素材回収の他に、龍退治についての進展はどうかと聞いてきている。
 龍そのものよりも龍が住処にしている洞窟がダンジョンの入り口であるために、いつかは誰かに立ち退きをしてもらわなければならない。
 けれども冒険者達は皆敬遠がち、頼りは俺のみなのだ。
 やろうと思えば、きっといつかはできる。こっちは死なないのだから持久戦を仕掛ければいい。
 しかしほんのり愛着が湧いてきているのもあって退治するのは気が引けるんだよなあ……。
 退治とまでいかなくても洞窟から追い出す程度なら……いや、それでも気が引けるのは変わりない。
 ギルドに何と言われようと、素材回収だけに今は留めておこう。ギルドだって報酬の高い依頼を完了させればさせるほど一部は得られるし評価も上がるのだから文句は無いはずだ。
 次の龍関連の依頼がくるまではまた少し手ごろな依頼を探しつつ、のんびり構えるとしよう。
 それからのんびり過ごして三日後。
 夜の帳が下りた頃、俺達は招待状を手にとある会場の前へと到着した。
 しかしまだ中には入らず、道路を挟んで向かい側から眺める。
 聖地付近にあるその会場は、建物の壁には所々に金の装飾が施されており、上流階級御用達と言わんばかりであった。
 普段着でいいというから来てみたものの場違いなじゃないかと不安になってくる。

「は、入ってよろしいのでしょうかこれは……」
「もう帰りたくなってきた」

 建物をハスと二人で見上げ、四階を見る。
 窓が開けられており中には音楽隊がいるようで、クラシックのような滑らかな旋律が場の雰囲気を作り出していた。

「あ、見てくださいシマヅ様。冒険者らしき人達は本当に普段着のようです」
「おおっ、心強いな」
「他には貴族の方々も続々と入っておりますね」
「心細いなあ……」

 馬車から降りてくるのはタキシードコートを着こなす貴族から、ドレスを着た女性までもいる。
 扇子で顔半分を隠して実にお淑やか。

「あれはもしやクオン様ではないですか?」
「えっ、あ、本当だっ」

 これは好機と言わんばかりにクオンの元へと駆け寄る。
 心細さも一瞬で雲散だ。

「クオン、お前も招待されてたんだったら言ってくれよな~」
「おおシマヅ、来てたのか。いやあ俺じゃなくてシスティアに招待状が届いててさ、こいつ今日まで忘れてたんだよ」
「ふっ、私が五角形ボードだからこそ呼ばれたのよ。同行者をつけてもいいっていうからあんたを連れてきたんだから感謝しなさい」
「絶対一人じゃ心細かったやつ~」
「あぁ?」
「いえ、なんでもありません!」

 ちゃかしてみたら意外と図星だったようで、システィアは俺に殺意を込めた双眸で睨みつけてくる。

 相変わらず刺々しいですねシスティアさん。

「ロッゾじいは来てないの?」
「あの人はこういう食事会は好きじゃないからね。今頃酒場で他の冒険者と飲んでるんじゃないかな」
「俺もそっちのほうに混ざりたいな」
「同感だよ」
「何よ、折角の食事会なんだから行かなきゃ損よ。ここで貴族達と交流して気に入られれば今後のサポートしてもらう事だってあるんだから」
「サポートねえ?」

 食事会で親睦を深めるついでに冒険者達はサポートしてもらうためのアピールの場でもあるという事か?
 別にそういうのはいいから、俺達は端のほうでタダ飯をありつくとしよう。

「ほら、ここでの立ち話も邪魔になるからさっさと中に行きましょう」
「よし、じゃあみんなで行こうか」

 受付へ行くとこれまた綺麗なお姉さんが対応していた。
 招待状を渡すや、彼女は俺とハスを見ては一瞬……眉がぴくりと微動する。

「そちらの方は……」
「俺の連れです」

 彼女はハスの足元を確認する。足枷をしていないのを確認するやすぐに笑顔を浮かべて中へと誘われた。ハスは奴隷じゃないんだからな、まったく。
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