死ねば死ぬほど強くなる不死者は死ぬ方法を探している。

智恵 理陀

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第五章

034 招待状

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「よう、シマヅ」
「やあ、調子はどうだいクオン」

 ギルドへ入るなり早速声をかけてきたのはクオン。
 パニアが抜けて三人パーティとなったものの彼らはこれまで通り依頼をこなしている。

「いつもどおりさ。おっ、そういえば認識票が銀になってるな」
「銀二級になったんだ。クオンのほうは金になってるじゃないか」
「ようやく金三級だ。シマヅにもすぐ抜かれちまうかなあ」
「いやあどうだか」

 龍関連以外にも依頼をこなしていけばおそらくとんとん拍子で上がっていくかもしれない。
 今はまあ、高い報酬のほうを選んで地道にやっていこうとは思っている。

「シマヅは八角形だからどんどん上がれるさ、どこまで上がるのか楽しみだよ。それで、今日は何か依頼を?」
「ああ、龍関連の依頼をまた受けにね」
「あ~あれか。お前らじゃないとあの依頼はこなせないよなあ」
「どうだい、今度一緒に」
「いやいやいや! やめておくよ!」

 両手をぶんぶんと、首もぶんぶんと回して拒否られた。
 一度くらいは龍関連の依頼を受けてみたらいいのに。たまには大勢で龍と戯れてみたいものだな。あいつもさぞかしキレるだろうよ。

「そういえば今日も見たぜ」
「見た? 何を?」
「シマヅとのパーティ申請を提出する奴ら」
「ああ、またか」

 ここ最近、ギルドで依頼の手続きをすると度々申請の書類を渡された。
 直接交渉するところもあれば、受付を通して自分らのプロフィールを載せてアピールする冒険者もいるようだ。
 必要とされている、悪くない気分ではあるが……。

「誰かと組むのは考えないのか? 依頼の幅が広がるぞ?」
「今はあんまり考えてないかなあ。強いて希望があるならクオンのとこ」
「ちょっとそれはやめてよね。そもそも私達とあんたじゃあ受ける依頼が違うんだから。私達は龍関連の依頼は受けるつもりなんかないわよ」

 そうだよね、分かってるよシスティア。
 前にも一度そういう話をクオンとはしたんだ、冗談だよ冗談。そんな拒否られるとちょっと傷つくぞ?
 立ち話も何なので近くのテーブル席へ移動した。
 ギルドは今日も朝から相変わらずの賑わいっぷりだ。すぐにはその賑わいに混じらない日は、彼らの活気を眺めながらここで一杯すするのがちょっとしたルーティンでもある。

「そういえばそっちはパニアが抜けた分の補充はするのか?」
「一応募集はしようと思ってるけど……こいつがうるさくてね」
「何よ」

 システィアの眼光が鋭くなる。

「わしらとしては受けたい依頼が人数を必要とするなら共同依頼を頼めば何とかなるところでもあるしのう」
「もし暇だったら付き合ってくれよな」
「ああ、いいよ」

 前回の共同依頼は大変な事になってしまったが、あれ以来共同依頼はやっていない。
 他の依頼も受けておくべきかな。龍関連の依頼がいつまでもあるとは限らないのだし。

「パニアは指名手配になったけれど、今頃どうしてるのかしら」
「聖火祭での事件は帝国の仕業だと国王が言っておったろう? もう帝国へと逃げたんじゃないかのう」
「しっかし俺達の知らないところですごい事件が起きていたもんだよなあ。シマヅ達が阻止したんだろう?」
「まあ、行き当たり上ね。ハスと王女が一番の貢献者だよ」

 けれどあまりその事については触れなかったな。
 ハスがランハンショウについて知っていて、王女が抗体を作っていなければガルフスディアは全滅だったというのに。
 短時間で抗体を完成させ、しかも魔力に溶け込むよう加工したその技術と知識は誇るべきものだと思うのだが。
 どうしても三角形ボードの持ち主のおかげだったり、科学に頼ったりという事は公にはしたくないようだ。
 それで更に王女は異端者呼ばわりとは、なんともこの国では妙な考えが無意味に漂っていやがる。
 換気が必要だ換気が。

「わ、私は何も貢献していませんよ」
「いやいや、本来なら君が一番に感謝されるべきなんだぜハスよ」
「えー? なんかあったの?」
「実はだね」
「せ、説明しなくても結構ですよ! 皆様がご無事だったのだから良いではないですか!」

 謙虚になりがちなハスだが、ここは誇るべき事であるために俺は三人に件の説明をした。
 ああ、それとランハンショウは毒草と認定されて今は見つけ次第刈られるようになったのだとか。

「――ふぅん、そうだったんだ」
「すごいなハス!」
「隠れた英雄もおったもんだわい」
「はわ……」

 ハスは褒められれば褒められるほど耳がほんのり赤くなっていく。
 可愛い奴め。

「しかしあの時はあんたが天国病に罹ったって聞いて焦ったわほんと」
「いやあご迷惑をおかけしました」
「それどころか国を救ってくれたんだから俺達は感謝すべきだよ」

 ここ最近は感謝されっぱなしだ。
 三日前なんか国王に呼び出されて感謝状やら頂いたし、教皇までも直接会う事が出来て感謝の言葉を述べられた。
 強面の国王はがっしりとした体躯は荘厳さを兼ね備えていてあれは緊張したなあ。
 そんな国王と違って教皇は白髭を蓄えた老人で、どこか落ち着く雰囲気がすっかり緊張をほぐしてくれて、不思議な気分だった。
 ハスに関しては最後まで緊張していて動きもぎこちなかったけど。

「天国病の心配はないとはいえ、今後も帝国が何か仕掛けてくると思うと油断できないよなあ」
「うむ。わしらも帝国に後れを取らぬよう鍛錬し、昇角できるよう信仰も怠らず祈りを捧げねばな」
「――アルヴ様のご加護が今日もございますように」

 ハスが祈りを捧げると三人も同じく祈りを捧げた。
 俺は、紅茶をすすった。
 昇角なんてもうしなくてもいいんでね。口には出せないけど、信仰なんてくそったれからの、アルヴなんてくそったれだ。
 聖火祭で飛び降りた際に見て以降、アルヴはまた出てこなくなったが普段どこで何をしてるんだろう。まあ別にいいか、あんなくそったれ。

「さて、そろそろ準備するかな」
「クオン達はどんな依頼を受けたんだ?」
「今日は森のほうでちょいと魔物狩りと調査をね」
「調査?」
「ああ、最近森のほうで亀裂や穴がいくつか見つかってね。いくつか見て回って何か所あるかとか深さとか報告するだけの簡単な依頼さ。魔物狩りついでにやるから一石二鳥ってわけ」
「おお~、そういう事ね。手慣れてるな」

 龍関連の依頼をするついでに何かできそうなものがあったら俺ももっと依頼を受けてみようかな。

「そりゃあ俺達だってそろそろそれなりの経験者ってとこだからなっ」
「何言ってんのよロッゾじいに全部教えてもらったんじゃない」
「いやはは、それは~……そうだけど」
「そういえばロッゾじいは冒険者としての経験も長いようだけどまだ銀級なのは、何か理由が?」

 彼の首から下げる認識票は銀。
 クオンのパーティの中でも年長者でこれまで冒険者として食っていっていたに違いないのだが、普通にこなしていれば金三級は誰でもいけると聞いたがその辺の差異が気になった。

「ああ、わしは一度冒険者をやめたんでな。まあ大した理由でもない、空いた時間を有効活用したくてまた冒険者に返り咲きじゃ。ちょうどその時クオン達とも出会ったんだったのう」
「たくましいですね。憧れます」
「こんなおいぼれが役に立てればいいが」
「十分役に立ってるよロッゾじい~」

 こうして見るとまるで親子。
 年齢差はあるものの本当に仲のいいパーティだ。
 パニアの奴……こんなにいい雰囲気を作り出すパーティを裏切りやがって。今度会ったら一言何か言ってやらんと気が済まんな。
 クオン一行を見送った後に俺達はいつもの掲示板へ向かった。

「龍関連の依頼は……と」
「あっ、ございますね」
「よ~しよし、龍ちゃんとまた戯れよう」
「ちゃん付けに加えて龍相手に戯れると申すシマヅ様には感服致します」

 今日も意気揚々と依頼書を手に受付へ。
 マルァハさんも朝から元気の出る笑顔でこちらもにっこりしてしまうね。

「おはようございます、いつもの龍関連でございますね」
「ええ、お願いします」
「それとこちらは、シマヅ様へパーティの申請が来ておりますがいかがいたしますか?」
「パーティですか……」

 今日は思った以上に多いな。
 数日ほどギルドへ行かなかった日もあったからか。一応は受け取っておくが……どうしよう。
 脳内で淡く浮かび上がる想像は、四人ほどのパーティで魔物を相手にする――杖を持った魔法士や剣士の俺、後方支援をしているハスにあとは弓を持っている青年と、まさにファンタジーの戦闘シーン。
 今は保留で、と折りたたんでポケットへ突っ込んだ。

「あ、シマヅ様。もう一つございます。食事会の招待状でございます。それも王家からの」
「王家からの?」

 受け取った招待状にはいつだか王女からもらった手紙と同じく王家の封蝋がなされていた。

「他の冒険者達も同じく招待状を貰っております、王家の第一王子エディ様が主催しているのでよろしければ」
「ハス、どうする?」
「私に聞かれても困ります……」

 手紙を開いて読んでもらう。
 食事会は三日後の夜、会費も必要ないとの事。行ってタダ飯にありつけるとあれば、特にこれといった損もない……か。

「じゃあ、行ってみようかな?」
「それではこちらの招待状を裏に記載されている会場へお持ちください」

 裏を見てみる。
 聖都の近くで開催するようだ。希望者がいれば馬車の送迎も行う、と。中々に豪勢な印象。
 ……ちょっと楽しみ。 
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