とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第58話 逆恨み

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 今の状況に理解が出来ず、戸惑う私にルークはその人物に、服装の事を訊ねた。

「何? 俺が王国軍の兵士じゃないと、疑ってるのか? はっ! 正真正銘の王国軍所属兵士だよ!」
「それじゃ、お前は誰なんだ?」
「誰だと? ふざけるなよ。お前の親父が、俺をここに飛ばしたんだ! 名前をお前に言った所でどうなるんだ! 俺を元の場所に戻してくれるのか? 無理だよな! そんな権限お前になんてありはしないもんな! 所詮、第二王子で兄貴に嫉妬しているだけの、子供だもんな!」
「な、何? どういう事?」

 私は戸惑いながらも、その王国軍の兵士はルーク対して怒り散らし続けた。

「いいか、俺はな。王都でエリートの兵士として王国に仕えていたんだよ。なのにある日、お前の親父に呼び出され昇進かと思ったら、左遷みたいなこんな島に飛ばされたんだよ! 理解できるか? 何も悪い事もしてない、エリートの俺がだぞ! あり得ないだろ、納得できなかったよ。だから、俺は復習してやると決めたんだよ、この魔物を使ってな!」

 王国軍の兵士は、そのままこの島に突然現れた魔物は、全て自分が持ち込んだものだと明かした。
 そして、ここで魔物を順調に育て増やして、王都で一気に放ち混乱に陥れようとしていたことまで全て話し出す。

 そんな中で、私たちがこの島に来ると知って計画を変更したと言い、狙いを第二王子であるルークに変えて、初日の事件もこの王国軍の兵士が試運転で放った魔物であると判明する。
 また、あの洞窟で遭遇するように仕掛けていたのも、目の前にいる王国軍の兵士であり、その為にクレイス魔法学院のマイクをカネで買収し、誘導させたと笑いながら話した。
 あの時、この男は近くで見ており、魔物の威力が動きを見て、私への一撃でこの魔物ならルークを殺せると確信したらしい。

「なるほど、親父への逆恨みか。全く、とばっちりもいいとこだ。やるなら、俺を巻き込むなよ」
「うるさい! お前を殺した後は、お前の親父だ。ただ、予行演習が出来たからやっただけだ。てめぇみたいな、青臭くて兄貴にも勝てない、落ちこぼれた奴を相手にしても、何の特にならないが、お前の親父に少しでも傷を負わせられるのならと思って、仕方なく狙ってやったんだ。感謝ぐらいしてくれよ、落ちこぼれ王子」
「お前っ……」

 ルークは、その言葉に何かがぷちんと切れてしまったのか、相手への殺気が溢れ出る。
 私はルークに落ち着く様に言うが、ルークはうるさい! と言って、私を払いのけて立ち上がる。

「お前だけは、ゆるさん……」

 そう言ってルークは、怪我している右肩を上げるが、その腕は震えており怪我した箇所からも、出血し始めていた。

「そんな怪我した体で、何が出るんだ? こっちには、お前が殴り飛ばした魔物もまだ生きてるし、もう1体もいる。もうお前は詰んでるんだよ!」
「黙れ」

 王国軍の兵士は、ルークの言葉にはひるむことなく、鼻で笑う。
 すると王国軍の兵士は、ポケットから笛の様なものを取り出し吹くと、私たちの後ろの瓦礫の奥にいた狼の魔物たちが、その音に反応し遠吠えを上げる。
 直後、簡単には乗り越えられないはずの瓦礫を狼の魔物たちは、飛び越えて来る。
 あっという間に、私とルークの周りは狼の魔物たちに囲まれてしまう。

「これでよ~く分かっただろ? どっちが有利で、どっちが不利かを」
「まさか、この魔物も貴方が操っているの?」
「あぁ、そうだよ。第二王子と一緒にいるお前は、運がなかったな。恨むなら第二王子を恨めよ。あはははははは!」
「……」

 ルークは沈黙したまま、高笑いをする王国軍の兵士を睨んでいた。
 既に私の魔力もほとんど使っている状態で、ルークにいったては怪我もしてる上、全く話を聞いてくれない状態であった。
 正しく絶体絶命の状態に、私たちは立たされていた。
 これは本当にやばい……どうする、どうすればいい……。
 私は完全に追い込まれており、冷静に何かを考える事など出来ず、ただただ焦っていた。

「このまま無駄話をして、誰かが来たら面倒だ。殺せ」

 王国軍の兵士が冷たい目で、そう言い放った時だった。
 突如、私たちと王国軍の兵士の間に1人の人が一直線に振って来て、魔法も何も使用せずに両足で着地した。

「ぐうぅぅ……足にくるじゃねかこれ。ガウェンの野郎、嘘言いやがったな」

 私たちからは後ろ姿で誰か分からなかったが、直ぐにそれが誰か判明した。

「ん? ってぇ!? 何だ、このでかい狼は! あれ、ルークにクリス、ここにって、お前らも何で狼に囲まれてるんだよ!?」
「ト、トウマ?」

 そう私たちの前に現れたのは、トウマであったのだ。

「ちっ、まぁ所詮殺す相手が1人増えただけだ。さっさとヤれ!」

 狼の魔物たちは、一瞬止めていた攻撃を再び再開するが、トウマに続いて上空からガウェンが剣を握って、巨大な狼の魔物目掛けて振り下ろす。
 巨大な狼の魔物は剣で顔面に傷をつけられ、声を上げ後退する。
 同時に、私たちも囲まれた狼の魔物たちに襲われそうになるも、私たちだけを半円形状のドームで覆われ守られた。

「間に合いましたわ! ルーク様! クリス! 無事ですか?」
「ジュリル!」

 私は声が聞こえて来た頭上を見上がると、ジュリルが魔法を使い颯爽に近付いて来ており、私たちを今守ってくれいるのも、ジュリルの魔法だと分かった。

「さぁ、いぬっころさんたち。私の大切な人から離れなさい!」

 ジュリルは私たちに展開させていた、半円形状のドームを外へと広げ、狼の魔物たちを側面の壁へと吹き飛ばした。
 宙から地へと足を着けたジュリルは、すぐさまルークの元に近付き怪我を心配する声を掛けるも、ルークは無視したまま王国軍の兵士をずっと睨んでいた。
 するとトウマもこちらに走って来て、私に声を掛けて来た。

「大丈夫か、クリス」
「あ、あぁ。トウマたちが来てくれて助かったよ。それより、ガウェンが持ってる剣は何?」
「あれか。あれは、魔物撃退用の武器だよ。ジュリルも、それを手首につけてさっきの魔法を使ったんだよ」

 そう言われ、ジュリルの手首を見るとブレスレットをしており、そんな物があるのかと関心した。
 トウマに何故そんな物を持っているのかと問いかけると、志願して捜索隊に入れてもらったので、教員たちの指示で念の為、魔物の出現もあり得ると言われて簡易的な物ではあるが持たされ、私たちを捜索していたらしい。
 捜索中に大きな爆発音と火柱の様なものが見えたので、ここへやって来たと言われた。
 そうか、さっきやったルークとの合わせ技を上に逃がした事が、ここにいるというサインになったんだ。
 私がそう思っていると、ガウェンが剣で巨大な狼の魔物にもう一度振りかかっていた。

「ちっ! 何なんだよ、いきなり数が増えやがって! さっさと片付けろ、お前ら!」

 王国軍の兵士はイラつきながら、魔物たちに指示を出すと巨大な狼の魔物は、ガウェンに襲い掛かるが、それを剣で防ぎ私たちの方へ後退してくる。
 直後、突然上空から雷が、ガウェンに襲い掛かった巨大な狼の魔物に落ちる。
 雷が落ちた音に私たちは驚き、目を一瞬瞑った後開くと、巨大な狼の魔物は丸焦げになり倒れ、王国軍の兵士も何が起こったのか驚いていた。

「何、手間取ってるんだ、ガウェン」
「っ……」

 そう言って上からジュリルと同じようにゆっくり降りて来たのは、ニックであった。
 ニックに言われた言葉にガウェンは、ムスッとした顔をしたが、特に言葉を返す事無く構えていた剣を下した。

「で、そいつが今回の魔物騒動の犯人ってわけか?」

 地面へと降り立ったニックは、残った巨大な狼の魔物の傍にいる王国軍の兵士を見て言葉を発すると、王国軍の兵士は歯ぎしりをして私たちを睨みつけた。

「(何なんだ……何なんだよ、こいつら! 次から次へと湧きやがって! 俺が育てた魔物に恐れるどころか、向かって倒すなんて、想定外だ! くそっ! ……このまま捕まるわけにはいかない。増援が来る前に退散するしかない)」

 王国軍の兵士は、手に持っていた笛を大きく吹くと、私たちの後方から狼の遠吠えが聞こえた直後、数多くの狼が再びこちらに向かって来る音が聞こえた。
 私たちは一瞬後方に気を取られた時に、王国軍の兵士は巨大な狼の魔物に掴まり来た道を走り始め逃げたのだ。
 本当に一瞬の事で、私はこのままでは逃げられると思い追いかけようとした瞬間、既にルークは走り出しており、私たちの前にはいなかった。
 唯一、ルークだけは王国軍の兵士から目を離さずに睨んでいたので、そいつが逃げたのにもいち早く気付き、追いかけて行ったのだ。
 直ぐに私も追いかけようとするが、ニックに止められる。

「あいつは、放って置けばいい。それよりも、お前はこっちを手伝え」
「で、でも、ルークは怪我しているんだ」
「大丈夫だ。俺が1人でここに来たと思ってるのか?」
「え?」
「いいから、お前は今から来る、狼に集中しろ」

 ニックに言われるまま、私はルークの事は後にし、ニックたちとこちらに迫って来ている狼に意識を向けた。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「こいつを残しておいて良かった。ここまで来れば、一旦は大丈夫だろう」

 王国軍の兵士は、掴んでいた巨大な狼の魔物から手を放して、地面に足を着けて今後の事を考えていた。

「さて、とりあえずここから脱出しなければいけないな。さっきの奴らにも顔を見られたし、いずれバレて捕まる。その前に、少数だけでも魔物を持って別の地でやり直すか。大丈夫だ、こいつさえいれば、問題ない」
「何が問題ないんだ?」
「っ!?」

 突然声を掛けられ視線を前に向けると、そこには渓谷の側面の壁に寄りかかり、たばこを吸うタツミ先生がいた。
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