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第92話 大運動会⑫~特殊体質~
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当方は、元々誰とも関わりを持つ気はなかった。
それは当方が特殊体質と呼ばれる人間である為であり、近寄って来る奴はだいたいがその力目当てであるからだ。
特殊体質の人間と言うのは、魔眼や異常なまでの魔力保持者と言った特殊な力を備えた人間の名称だ。
当方は、魔力の吸収と放出が行える体質で、右手で一定範囲の魔力を吸収し、左手では魔力を放出する事が出来るという特殊体質だ。
今では手を握る開くで、自由に操る事が出来ているが基本的には力を抑え込める王国から渡された魔道具を身に付けている。
近年では、特殊体質の人間も少なくなっているが、珍しい為さらわれたり奪い取ったりして人身売買されている事件が発生している。
王国内では特殊体質の人間は保護対象となっており、普通に暮らせるための魔道具も渡され特殊体質の人間は平穏に暮らしているのだ。
そのような事情もあるが、それ以上に当方は、他の人間に興味が一度も湧かなかったからだと今なら分かる。
だが、それを変えてくれたのが寮長である。
あの頃の貴方は、他人から罵倒されようが馬鹿にされようが、一切気にせず心も折れる事なく、知識を漁り身に付けている姿を見続け、周囲がだんだんと貴方の凄さを認め出した。
当方はこの世にそんな人間がいるのだと、初めて興味を持てたのだ。
そして当方は、どんな天才や秀才より、どんだけ強い力を身に付けている奴よりも、貴方の様な負けない心を持ち続ける奴こそが、凄い人間だと気付けたんです。
だからこそ、貴方の傍に居られる副寮長も受け、貴方に一生付いて行こうと当方は決めているのです。
「このような所で、貴方の顔に泥を塗る様な戦いをするわけにはいかない。その為に、この力を全開で使います」
「ぐうぅっ……このままじゃ、魔力切れで動けなくなる……何とか、射程範囲から抜けなくてはいけないわね」
するとスバンは、力を振り絞り自分の前に魔力創造で壁を創りだし、遮蔽物とした。
「無駄な事を」
そう呟いたスニークは、突き出していた右腕を下ろすと、左腕を上げ前と突き出した。
直後、スバンが創りだした壁の中央が破壊するも、その後ろにスバンがいない事に気付くとスニークは、開いて向けていた左手を閉じて腕を下ろす。
「いない? いや、身を伏せて隠れてるのか」
スニークがもう一度左腕を突き出そうとした時、壁の下の部分から小型ゴーレムが創りだされ突っ込んで来た。
すぐさまスニークは、左腕を下げ右腕を突き出すと閉じていた手を開く。
すると、突っ込んで来る小型ゴーレムが徐々に動きが遅くなり、最後には崩れていくとそのタイミングで壁からスバルが飛び出すと、両腕を盾の様にして楕円状にスニークへと突っ込んで行く。
「そっちから突っ込んで来るとはな!」
小型ゴーレムが完全に崩壊したのを確認した後、右手をスバンの方に向ける。
だがスバンは、魔力を吸収されているのにも関わらず止まることなく突っ込んで来た。
「くっ、魔力を両腕に集中させて壁の様にしてるのか。なら」
するとスニークは、右手から瞬時に左手へと切り替えて手を開き、魔力を弾丸の様に飛ばした。
だが、スバンはその攻撃を寸前でかわすとスニークへと踏み込むと、左足蹴りを振り抜くも、スニークは右手でその蹴りを受け止めるとスバンの左足から鎧の様に纏っていた瓦礫が剥がれ落ちた。
「なるほど、そんな蹴りを入れられたが当方もたまらなかった。しかし、その程度予想済みだ」
「まだだ!」
スバンは左足をすぐさま引くと、同じ様に瓦礫を鎧の様に纏った左拳を突き出すも、スニークの右手で瓦礫が剥がされ弾かれてしまう。
しかしスバンはそこから更に、右拳を突き出し始める。
「何度やろうと同じだ。魔力を纏った物は全て吸収できる」
そして3度目の攻撃もスニークは、右手を突き出してスバンの右拳の瓦礫を剥がし防ごうとした。
だが、スバンの右拳の瓦礫を剥がすと、更にその下にも瓦礫で鎧の様に纏っていたのだ。
「(二重っ!?)」
そのままスバンの右拳は、スニークの右手を弾き顎目掛け振り抜かれた。
スニークはスバンの瓦礫を鎧の様に纏った拳をまともに受けてしまい、後ろへと倒れる。
倒れたスニークは、すぐさま立ち上がろうとするも全く体に力が入らず、動くことすら出来ずにいた。
「(まずい、直撃した場所が悪い……脳震盪だ)」
「はぁ……はぁ……貴方が何も疑わずに、右手を出してくれて助かりましたわ。一回限りの作戦、無事に成功できましたよ」
「(くそ、声を出す事すら出来ない)」
すると倒れたスニークにスバンが近付いて行った。
「貴方が最初から本気で向かって来ていたら、私の勝ち目はゼロでした。でも、その耳飾りの音を潰し、貴方の油断があった事でゼロではなくなりました」
そしてスバンは、右手を勢いよく地面に殴りつけ『バースト』の魔法を唱え、倒れ身動きが取れないているスニークを除外へと吹き飛ばした。
そこで第3戦目終了の合図が鳴り響き、空中に勝者の名前が表示される。
大運動会第10競技『代表戦』
第3戦目 勝者 第2学年 スバン
「(負けた。当方が、負けた……原因は当方の油断、そして慢心だ。寮長の言う事を聞かず、相手の力量いや、勝手に下に見下していた。下の奴らに、当方に敵う様な奴はないと)」
スニークは場外に飛ばされ、仰向けの状態で反省をしていると、そこにエメルがやって来る。
「負けたな、スニーク」
「っ!」
「どうせ、まだしゃべれないんだ。僕の独り言を聞いてろ」
その言葉に、スニークは頷いて答えた。
「お前が負けた理由は僕が言うまでもなく、もう分かっているんだろ。それよりも、僕がスバンとお前を戦わせた事についてだ」
スバンはそのまま、スニークに教えていなかった昔話を独り言の様に語った。
それはエメル自身が、まだ同級生たちから馬鹿にされたり、罵倒されていた時にスニークと知り合い、少しずつ認められるようになっていた時の話だった。
その頃は、前寮長に強く寮長をやれと言われ、根負けして受けた頃であり、その時に第1学年時のスバンが話し掛けて来て、自分の様になりたいと言われたとスバンは口にした。
最初は無視をしていたらしいが、何度も来るので適当にあしらっている内に、前寮長やスニークに次いで話す人物になっていた。
そして、最終的にスバンととある約束をしたと言う。
「それが、寮長になりたいならスニークを倒したらな。と約束したんだ」
「なっ! なんて事を約束しているんですか、寮長!」
「お、もうしゃべるのか。まぁ、その時は冗談で言っていたんだが、あいつは本気で受け取ったみたいだけど、そんな機会はないと思っていたんだ。が、偶然にもそんな機会が出来たから、1度くらいやって見るかと思ったんだよ」
「それで最初から本気で行けと言っていたのですか?」
スニークからの問いかけに、「まぁな」と答えるエメル。
その答えに愕然とするスニークに、エメルは特に声を掛ける事無く戻って行った。
「(スニーク、お前もまだまだだった訳だ。さて、スバンの方はどうしたもんかな)」
その後、中央の競技スペースの整備が終了すると、第4戦目の対戦相手が発表された。
大運動会第10競技『代表戦』
第4戦目 第2学年 クリス VS 第3学年 エメル
それは当方が特殊体質と呼ばれる人間である為であり、近寄って来る奴はだいたいがその力目当てであるからだ。
特殊体質の人間と言うのは、魔眼や異常なまでの魔力保持者と言った特殊な力を備えた人間の名称だ。
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そのような事情もあるが、それ以上に当方は、他の人間に興味が一度も湧かなかったからだと今なら分かる。
だが、それを変えてくれたのが寮長である。
あの頃の貴方は、他人から罵倒されようが馬鹿にされようが、一切気にせず心も折れる事なく、知識を漁り身に付けている姿を見続け、周囲がだんだんと貴方の凄さを認め出した。
当方はこの世にそんな人間がいるのだと、初めて興味を持てたのだ。
そして当方は、どんな天才や秀才より、どんだけ強い力を身に付けている奴よりも、貴方の様な負けない心を持ち続ける奴こそが、凄い人間だと気付けたんです。
だからこそ、貴方の傍に居られる副寮長も受け、貴方に一生付いて行こうと当方は決めているのです。
「このような所で、貴方の顔に泥を塗る様な戦いをするわけにはいかない。その為に、この力を全開で使います」
「ぐうぅっ……このままじゃ、魔力切れで動けなくなる……何とか、射程範囲から抜けなくてはいけないわね」
するとスバンは、力を振り絞り自分の前に魔力創造で壁を創りだし、遮蔽物とした。
「無駄な事を」
そう呟いたスニークは、突き出していた右腕を下ろすと、左腕を上げ前と突き出した。
直後、スバンが創りだした壁の中央が破壊するも、その後ろにスバンがいない事に気付くとスニークは、開いて向けていた左手を閉じて腕を下ろす。
「いない? いや、身を伏せて隠れてるのか」
スニークがもう一度左腕を突き出そうとした時、壁の下の部分から小型ゴーレムが創りだされ突っ込んで来た。
すぐさまスニークは、左腕を下げ右腕を突き出すと閉じていた手を開く。
すると、突っ込んで来る小型ゴーレムが徐々に動きが遅くなり、最後には崩れていくとそのタイミングで壁からスバルが飛び出すと、両腕を盾の様にして楕円状にスニークへと突っ込んで行く。
「そっちから突っ込んで来るとはな!」
小型ゴーレムが完全に崩壊したのを確認した後、右手をスバンの方に向ける。
だがスバンは、魔力を吸収されているのにも関わらず止まることなく突っ込んで来た。
「くっ、魔力を両腕に集中させて壁の様にしてるのか。なら」
するとスニークは、右手から瞬時に左手へと切り替えて手を開き、魔力を弾丸の様に飛ばした。
だが、スバンはその攻撃を寸前でかわすとスニークへと踏み込むと、左足蹴りを振り抜くも、スニークは右手でその蹴りを受け止めるとスバンの左足から鎧の様に纏っていた瓦礫が剥がれ落ちた。
「なるほど、そんな蹴りを入れられたが当方もたまらなかった。しかし、その程度予想済みだ」
「まだだ!」
スバンは左足をすぐさま引くと、同じ様に瓦礫を鎧の様に纏った左拳を突き出すも、スニークの右手で瓦礫が剥がされ弾かれてしまう。
しかしスバンはそこから更に、右拳を突き出し始める。
「何度やろうと同じだ。魔力を纏った物は全て吸収できる」
そして3度目の攻撃もスニークは、右手を突き出してスバンの右拳の瓦礫を剥がし防ごうとした。
だが、スバンの右拳の瓦礫を剥がすと、更にその下にも瓦礫で鎧の様に纏っていたのだ。
「(二重っ!?)」
そのままスバンの右拳は、スニークの右手を弾き顎目掛け振り抜かれた。
スニークはスバンの瓦礫を鎧の様に纏った拳をまともに受けてしまい、後ろへと倒れる。
倒れたスニークは、すぐさま立ち上がろうとするも全く体に力が入らず、動くことすら出来ずにいた。
「(まずい、直撃した場所が悪い……脳震盪だ)」
「はぁ……はぁ……貴方が何も疑わずに、右手を出してくれて助かりましたわ。一回限りの作戦、無事に成功できましたよ」
「(くそ、声を出す事すら出来ない)」
すると倒れたスニークにスバンが近付いて行った。
「貴方が最初から本気で向かって来ていたら、私の勝ち目はゼロでした。でも、その耳飾りの音を潰し、貴方の油断があった事でゼロではなくなりました」
そしてスバンは、右手を勢いよく地面に殴りつけ『バースト』の魔法を唱え、倒れ身動きが取れないているスニークを除外へと吹き飛ばした。
そこで第3戦目終了の合図が鳴り響き、空中に勝者の名前が表示される。
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「(負けた。当方が、負けた……原因は当方の油断、そして慢心だ。寮長の言う事を聞かず、相手の力量いや、勝手に下に見下していた。下の奴らに、当方に敵う様な奴はないと)」
スニークは場外に飛ばされ、仰向けの状態で反省をしていると、そこにエメルがやって来る。
「負けたな、スニーク」
「っ!」
「どうせ、まだしゃべれないんだ。僕の独り言を聞いてろ」
その言葉に、スニークは頷いて答えた。
「お前が負けた理由は僕が言うまでもなく、もう分かっているんだろ。それよりも、僕がスバンとお前を戦わせた事についてだ」
スバンはそのまま、スニークに教えていなかった昔話を独り言の様に語った。
それはエメル自身が、まだ同級生たちから馬鹿にされたり、罵倒されていた時にスニークと知り合い、少しずつ認められるようになっていた時の話だった。
その頃は、前寮長に強く寮長をやれと言われ、根負けして受けた頃であり、その時に第1学年時のスバンが話し掛けて来て、自分の様になりたいと言われたとスバンは口にした。
最初は無視をしていたらしいが、何度も来るので適当にあしらっている内に、前寮長やスニークに次いで話す人物になっていた。
そして、最終的にスバンととある約束をしたと言う。
「それが、寮長になりたいならスニークを倒したらな。と約束したんだ」
「なっ! なんて事を約束しているんですか、寮長!」
「お、もうしゃべるのか。まぁ、その時は冗談で言っていたんだが、あいつは本気で受け取ったみたいだけど、そんな機会はないと思っていたんだ。が、偶然にもそんな機会が出来たから、1度くらいやって見るかと思ったんだよ」
「それで最初から本気で行けと言っていたのですか?」
スニークからの問いかけに、「まぁな」と答えるエメル。
その答えに愕然とするスニークに、エメルは特に声を掛ける事無く戻って行った。
「(スニーク、お前もまだまだだった訳だ。さて、スバンの方はどうしたもんかな)」
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