とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第91話 大運動会⑪~鈴の音~

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「そう言えば、聞くの忘れたけどエメル。どうして、彼の相手をスニークにしたんだい? ミカロスは、君が彼の相手をするのが適切だと言ったようだけど、君が強くスニークを押したらしいね」

 オービンからの突然の問いかけにスバンは、「そんな事か」と言って答え出した。

「そりゃな、かなり昔からあいつ等の対戦が決まっていたからだよ」
「?」

 理解出来ない返事にオービンがエメルを見て首を傾げたが、それ以上をエメルは語ることはなかった。

「(さて、どんな戦いになるか見ものだな)」

 その頃、中央の競技スペース上では、スバンとスニークの戦いが既に始まっており、スバンが開始直後から接近戦を仕掛けていた。
 その戦い方は、正しくダンデのスタイルに似ており力で相手を押していく戦い方であったが、スニークはスバンの攻撃をすべて見切っているのか両手で流すように防いでいた。
 するとスバンは、一旦距離をとるように後退するとその場で息を整えだす。
 直後、スバンの両腕に魔力が集中し鎧の様に纏うと、その状態をスニークは直ぐに理解していた。

「魔力の一部集中か。だが、そんな事をしても当たらなければ怖くもない。それに、当たったとしてもそんな粗い魔力集中の威力など、大した事ない」
「言い訳は、言い終わりましたわね!」

 スバンはスニークとの距離を一気に詰めて、再び殴り掛かるもスニークは手で防ぐことなく、まるでスバンの殴る軌道が見えている様に体を避けた。
 しかし、スバンは当たると信じてスニークを攻撃し続けるが、一度もスニークにはかすりもせずある瞬間にスニークは、右足の蹴りをスバンの腹部に叩き込み突き飛ばした。

「ぐっ……やっぱり、ロムロスの作戦通り先に、あの耳飾りを外させないとダメね……」
「……わざわざ、あんな奴に手を使う事もないだろう」

 そんな2人の戦いをエメルは楽しそうに見ていると、それに気付いたダイモンが「お前が笑いながら戦いを見るなんて、何か変だぞ」と呟くと、スバンがバッと振り向く。

「ダイモン、何か言ったか? 僕に向かって気持ち悪いとか言ったか?」
「聞こえてんじゃねぇかよ」
「そうか、言ったのか。この脳筋ヤロウ」
「あぁ? そりゃ、俺様の事かエメル?」

 突然、エメルとダイモンの喧嘩が始まろうとしたが、そこにオービンが仲裁に入って2人を止めて落ち着かせた。
 2人が落ち着いた所で、オービンは唐突にスニークについて問いかけた。

「彼のアレ、凄いね。エメルが考えたのかい?」
「アレって何の事だ?」
「オービンは分かるのか。流石だな」
「??」

 その場のダイモンだけが、2人の会話について行けず首を傾げていた。
 そんなダイモンを見て、オービンはクスッと笑うとダイモンにも分かる様に話を続けた。

「まぁね。国でも最近注目されている分野だし、俺も興味があったからね、音に魔力を込めて使うなんてさ」
「そりゃそうだ。僕だって、スニークがどうしてそれを使える様になったのか、知らないからね」
「使える様になった? もしかして、彼は国が注目する前から使ってたのか?」

 オービンの問いかけにエメルは頷いて答えると、オービンは普通に驚き「凄いな」と声を出した。
 そしてエメルは、スニークから聞いて話しをオービンに対して話し出した。
 スニークは、魔力を自分の耳飾りが出す鈴音に合わせ、周囲に超音波の様に放っているのだ。
 その事により、相手の正確な位置や動きなどを視界だけでなく、音と合わせて放った魔力を感じ取る事で把握・察知をしている。
 また、相手の筋肉の動きや魔力などの動きも魔力量を増やし、音に合わせて放つ事でまさに未来予知をしているかの様に、相手の動作をいち早く知る事が出来ているのだ。
 しかし、どんなに音に魔力を込めて相手の位置や動きを知れた所で、それに対応できる身体能力がなければ無意味であるが、スニークは反射神経を鍛え上げ今の様な使い方をしているとエメルは語った。

「ちなみに、いつから音に魔力を込めて使って使っていたんだ?」
「確か、第1学年の時からとか言ってたな」
「おいおい、マジかよ。スゲーなあいつ。そんなんなら、エメルより寮長向きだったんじゃないのか? 能力的にも、スニークの方がお前より上なんじゃないのか」

 やっと話が理解でき会話に参加して来た途端に、エメルに喧嘩を売る様な事を言うダイモンに、エメルは笑顔のまま振り返った。
 そしてダイモンへと近付くと、人差し指でダイモンの額をグイッと押すように触った。

「おやおや、少し疲れてるんじゃないのか? 黙って座ってた方がいいぞ、ダイモン」
「はぁ? なわけねぇだろうぐわぁよぉ……うぉ? な、なんだぁ。急に体がぁ……」

 突然ダイモンが舌足らずで言葉を発すると、その場で仰向けに倒れた。
 それを見たオービンは、軽く頭を抱え小さくため息をついた。

「おいエメル。そんなのをダイモンに使ってやるな。少しやり過ぎだぞ」
「こいつは少し痛い目見ないと、あの口の悪さは治らないんだよ。少しは考えてから物を言え、脳筋が」

 エメルの言葉に、倒れたダイモンが何かを言っていたが、全く聞き取る事が出来ず本当に話す気があるのかって程に、何を言っているか分からなかった。
 その直後に、中央の競技スペースから大きな爆発音が響いて来たので、オービンとエメルはそちらに視線を戻した。

 中央の競技スペース上では、スバンが戦法を換えスニークから距離を取ったまま、地面から小型のゴーレムを創りだし、魔力質量で魔力を込めて何体もスニークへと突撃させていた。
 スニークは、その小型ゴーレムを足技で蹴り払ったり、吹き飛ばしていたが倒した小型ゴーレムがその場で爆発する仕組みになったので、厄介だなと言う表情をしていた。

「(このゴーレムに居れる魔力量じゃないと思っていたが、そのまま魔法攻撃に使う為だったのか。悪知恵が働くことだ)」

 一旦スニークは、その場で小型ゴーレムを倒すのではなく、移動しつつスバンに接近しながら向かって来る小型ゴーレムを破壊して行った。
 そして隙間を縫うようにスバンへとの距離を詰め、左足の蹴りをスバンの顔面目掛けて振り抜く。

「んっ!」
「やっと捕まえましたよ」

 スバンはスニークの蹴りを左片腕で防ぎつつ、右手でスニークの左足を逃がさない様に掴んでいた。
 その瞬間、スニークはスバンの思う様に動かされたと気付く。
 だが、気付いた時には既に遅く、スバンの背後からずっと待機して小型ゴーレム2体がスバンの背中をよじ登ると、スニークへと飛び掛かり2体とも同時に爆発を起こす。
 直後2人が爆発の勢いで真反対に吹き飛ぶも、両者共魔力分類の質量を応用し自身に魔力を纏い爆発を防いでいた。

「あれでも、防いでしまうとは流石副寮長ですわね」
「くっ……まんまと作戦通りに動いてしまうとは、感情的になり過ぎ……んっ!」

 そこでスニークはある事に気付く。
 それはいつもの癖で、耳飾りに触ろうとした時だった、鈴音をだす箇所が潰されており音が出ない様になっていたのだ。
 スニークはその時、先程の爆発直後に小型ゴーレムの一部を使い、両耳の鈴音が出る箇所を潰したのだと理解した。

「最初から、これが狙いだったのか……貴様」
「えぇ。と言っても、私だけではここまで出来ませんでしたわ。正しく特訓と作戦のお陰ですわ」
「……これは、当方が油断して臨んだ結果か。後で、寮長に謝らなければ」

 そんな事をスニークが呟きながら、片手の黒い手袋に手を掛けそれを取ると、もう片方も取り素手を見せた。
 それを見たスバンは、小さく呟いた。

「やっと外したか。ここからが、勝負ですわね……」
「貴様、名は?」
「スバン」
「スバン……そうか。当方は、貴様を甘く見ていた。寮長の言う通り、始めから本気を出さなかった事を詫びよう。では、勝負をつけようか」

 するとスニークが、スバンに向けて右手を向けた瞬間だった。
 突然スバンが、地面に片膝を付き苦しそうな表情をし出す。

「そのままにしていれば、数分後には勝負がつく」
「(うぅっ……これが、特殊体質と言われるスニーク先輩の力)」
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