とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第95話 大運動会⑮~兄と弟~

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 開始前にオービンがルークに話し掛ける。

「まさか、お前と当たるとはな」
「白々しい。どうせ、こっちの出場順の情報を得て、そっちは当てる相手を決めたんだろ」
「何だ、分かっていたのか。だったら」
「俺は別に、そんな事どうでもいいんだよ。俺は、兄貴とこうやって直接勝負出来る場を、兄貴の方から作ってくれたことに感謝してるんだ」
「感謝?」
「そうだ。こんな大勢の前で、兄貴に勝てば俺の凄さを全員に認めてもらえるからな!」
「なんだお前、まだそんな子供みたいな事を言ってるのか」
「っ!」

 突然オービンの雰囲気がガラッと変わり、威圧感が増しピリピリして来た空気感を肌で感じ、音を立ててごくりと生唾を飲むルーク。

「もしかして、今ので怖気づいたのか? いや、さすがにそれはないよな。なんたって、お前は俺の弟なんだからな」
「うっ! 当たり前だ! 今日俺はあんたを倒して、あんたの醜態を晒してやるんだよ!」
「お前が俺に勝つ? ふっ、馬鹿も休み休み言えよ。落ちこぼれのお前が、俺に勝てる訳ないだろう」
「言いたい事言いやがって!」
「嘘じゃないだろ。それがお前の今の評価だ。それを変えたいなら、簡単だぞ。証明して見せればいいんだよ、お前が俺より強いって事をさ」
「言われずともやってやるよ!」

 すると、『代表戦』第5戦目の開始の合図が鳴り響いた。
 すぐさまルークがオービンへと突っ込んで行くかと思われたが、ルークはその場で深く深呼吸を繰り返していた。
 それを終えるとルークは、オービンへと視線を向けた次の瞬間だった。
 一瞬で、オービンとの距離を詰め右拳に『アイス』の魔法を使い、氷のガントレットを纏い殴り掛かった。
 オービンは左手でルークの右拳を軽々く弾くと、ルークはそのまま左足に『サンダー』を纏わせた蹴りを振り抜いた。
 だが、それもオービンは右腕で防いだ。

 しかしルークの攻撃はそれで終わりでなく、更に右手をオービンの顔の前に突き出し『バースト』の魔法を最大威力で放った。
 周囲は『バースト』の爆発で煙に覆われてしまう。
 すると先にその煙から後退する様に出て来たのは、ルークだった。
 そして徐々に煙が晴れ、露わになったオービンの姿は無傷であり、体の前にうっすらと空気の盾が出来ているのが確認できた。

「(あの一瞬で、空気と魔力を合わせて魔力の盾を創ったのか。そんな芸当が出来るのは、兄貴だけだよ。全くいつ見ても、嫌って程力の違いを見せて来るな)」

 ルークは、すぐさま次の攻撃に移ると、『ブリザード』『サンダー』『フレイム』の魔法融合を開始し、同時に魔力分類の創造・技量・質量も使い一体のドラゴンを創りだし、オービンへと放った。
 その攻撃は、第一期期末試験で見せた物よりも更に威力と精度も増しており、さすがにオービンも無傷じゃ済むようなものでないと誰しもが思っていた。
 しかしオービンは、避ける事すらせずに両手を下から上へとゆっくり上げると背後に、『ブリザード』『サンダー』『フレイム』のそれぞれの魔法を使った3体のドラゴンが瞬時に創りだされる。
 その光景にルークも驚いていると、オービンは更にその3体のドラゴンを一斉に放つと途中で混ざり合い、ルークの放った攻撃を相殺したのだった。

「お前に出来る事が、俺に出来ないと思ったか? 魔法融合に魔力分類の3つ同時使用、出来るのはお前だけじゃない」
「うっ……」

 だが、ルークの目は死んでおらず、一度深呼吸をすると観客や生徒たちも驚くような姿勢を取り始めた。
 それは、子供がよくやる様な銃の様なポーズを右手でとると、左手で右腕を抑えたのだ。
 思いもよらない姿勢に、ざわめくがその中でも一部の人たちは身に覚えがある行動だと思っていた。
 その中には、クリスも含まれておりルークがとった姿勢が、完全に以前アバンと戦った時に見せたポーズそのままであったのだ。
 そしてオービンも、異様な集中力と魔力の流れを感じ取っていた。

「(あの構え。まさか……な)」

 するとルークの銃の様な構えで突き出した、右人差し指に目ではっきりと見える魔力の塊が創りだされる。
 大きさにすると直径1センチ程の球体であった。
 直後ルークは、小さな声で呟いた。

「バン」

 その言葉を発し終わると同時に、右人差し指に出来た魔力の塊がオービンに向かい放たれる。
 その速さは正に弾丸と同じ速度であったが、オービンはもしかしたらと感じ、既に空気と魔力を合わせた障壁を目の前に何枚も展開させていた。
 しかし、ルークの放った魔力の弾丸は、その障壁で止まる事無く貫き続け、最後の障壁も貫きオービンの顔面へと向かう。
 が、障壁でほんの多少スピードと軌道がズレた事もあり、オービンは咄嗟に右に顔を逸らすと魔力の弾丸は頬を擦って行った。

「(まさかルークが、アバンさんの魔力弾丸を使うとは。教えてもらった? いや、そんな事されても教える人じゃないね。てことは、自力で閃き辿り着いたか、何かでアバンさんの魔力弾丸を見て、見様見真似でやったかか)」

 オービンはそんな事を考えていると、小さく笑った。
 一方でルークは、一気に魔力を使った為か肩で息をしていた。

「(うまくいったのに、かわされるとはね。ついてない……さすがに二発目は撃てない。だけど、傷を初めてつけたぞ)」

 ルークも初めてオービンに攻撃を当てられたので、無意識に口角が小さく上がっていた。
 暫く互いに動かず静寂な時間が過ぎると、オービンが擦った頬から垂れて来た血を手の甲で拭き取ると、突然地面に両手を付けた。
 するとオービンは地面から、3つの大きな塊を創りだすとそこから武装状態のゴーレムを3体創造した。

「お前に、これが出来るか?」

 あからさまな挑発だとルークは分かっていたが、こんな所で自分から敵わないと認める訳にはいかないと思いつつも、出来ないとも思っていなかった。
 そしてルークは直ぐに、オービンと同じように地面に両手を付き、同じ手順でゴーレム3体を創り始める。
 だが、オービンの様に同時に3体を創りだすのは難しく時間は少しかかったものの、3体の武装状態のゴーレムを創りだしたのだった。

「はぁ……はぁ……俺だって、兄貴が出来る事くらい出来るんだよ……」

 ルークはそう言いつつも、息切れをしており更には鼻血が出るも、直ぐに手で拭った。

「創っただけじゃ、ただの飾りだぞ!」

 オービンはそう言って、創った3体のゴーレムを同時に操作し、ルークのゴーレムへと突撃させる。
 ルークも呼吸を整えてから、3体のゴーレムを何とか操り対抗するのだった。
 その戦いに、観客も生徒たちも中継を見ている人々も、完全に目が離せない状態になっていた。
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