とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第102話 兄弟の対話

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 私たち3人が医務室へ向かっている途中で、各寮の寮長と副寮長たちがどこかへと向かう姿を目にした。
 その時、一度だけ目線が合ったがすぐに逸らされた。
 どこか表情が暗かった気がしたけど、気のせいか?
 寮長と副寮長たちの雰囲気が気になったはしたが、私は声など掛けずにルークたちと医務室へと向かった。

「……ここにいるのか、兄貴が?」
「あぁ、そうだ」

 ルークは、医務室の扉の前に立つも、扉に手を掛けられずにいた。
 それを見たトウマが、ルークの右肩に手を置いて小声で話し掛けた。

「ルーク、クリスはああ言ってるが、無理をする必要はないぞ」
「トウマ……いや、大丈夫だ」
「売り言葉に買い言葉で、引けないからって言うのはなしだぞ」
「そうじゃない。まぁ、きっかけはそれだが今は緊張してるだけだ」

 それを聞いたトウマは小さく笑う。
 そしてトウマは、ルークの右肩に置いた手で軽く肩をポンと叩き、後ろに下がった。
 ルークは小さく深呼吸した後、医務室の扉に手を掛けて開け、1人で医務室の中へと入っていた。
 私とトウマは、ルークの後は追わずに医務室の外で廊下の壁に背を付けて待っていた。

「なぁ、クリス。あんな強引に引き合わせて良かったのか?」
「良くないかもしれないな」
「おいおい、大丈夫なのかよ」
「でもあのままじゃ、ルークとオービン先輩はずっと話す事なんてないだろうと思ってさ。トウマも何となく分かるだろ?」
「まぁ、分からなくないけども……」
「勝手な解釈だけど、あの2人は今までまともに話してこなかったから、あんな関係になったんだと思うんだ。だから、物凄いお節介だけども、ここで強引にでも話す場を作ってやれば、何か変わるかもって思ってさ」

 その言葉にトウマが何か言い返そうとしたのか、口を開くがすぐに閉じた。
 そのまま私とトウマは、医務室の方を見守る様に見つめた。
 ルークはと言うと、医務室に1人で入り中へと歩いて行くとタツミ先生が医務室に居ない事に気付く。

「……タツミはいないのか」
「誰かまだいるのか?」
「!」

 ルークの発した言葉に、カーテンで囲われた方からオービンの声がして来た。
 その瞬間、ルークは唾を飲み込んだ。
 そしてゆっくりとオービンの声がした方へと、ルークが歩いて行く。

「あれ? 気のせいか?」

 オービンがそう口にした直後に、ルークがカーテンを開けオービンに顔を見せる。
 ルークの顔を見たオービンは、まさかルークが来ているとは思わず驚き、目を見張る。
 その後2人は、固まった様に全く動かず、ただ互いの目を見つめている時間が過ぎて行く。
 すると先に口火を切ったのは、オービンだった。

「まさかお前が来るとはな、ルーク。ビックリし過ぎて声も出なかったぞ。嘲笑いにでも来たか?」
「……」
「……その感じだと、誰かに俺の事を聞いた、もしくは聞かされたな」
「あぁ……クリスとトウマから聞かされた」

 そう言うと、ルークはオービンの方へと少し近付いた。

「全く、黙っていろと言ったのにあいつらは……」
「何で俺に黙ってたんだ、病の事……」

 オービンは、ルークの言葉を聞くと体を起こす。
 その顔はどこか少し嬉しそうな表情をしていた。

「……ふっ」
「な、何で笑うんだよ」
「いや、こうやってしっかり話すのなんていつ以来だろうと思ってな。本当にいい友を持ったな、ルーク」

 優しく笑いけるオービンに、ルークは少し恥ずかしくなり目線をずらした。

「それでさっきの話の続きだが」
「分かってる。黙ってた理由だろ。率直に言えば、俺がお前に言い出せなかっただけだ」
「え?」

 オービンの今の病が判明してのは、第2学年の第三期が始まってすぐ頃だった。
 直ぐに両親に報告した後、密かに回復の可能性があるものを試して行ったが効果はなかったらしい。
 それから一時、自分には暗い将来しかないと落ち込んだと明かす。
 だが、両親たちの言葉で今出来る事を全力でやろうと意識を変えたのだとルークに話した。
 その時にルークには、両親の方から伝えると言われたがオービンが自分で伝えると言って口止めしていたと知る。
 既にその頃から、関係は良くなく話すことすらほぼなかったのにどうしてオービンが自分で伝えようとしたかをルークに話す。

「これをきっかけにして、また昔みたいに話せる様になるかもと思ってたんだよ。今思えば、あり得ない事だが、俺の中では話し掛けるきっかけすらなかったから、これを使わない手はないと思ったんだ」
「何だよ、それ……じゃ、今まで話し掛けて来たのはそれを伝えようとしてなのか?」

 ルークの問いかけに、オービンは頷いて答える。
 そこで今まで、オービンは自分に寄り添おうとしていたのに、ルークはそれを一方的に突っぱねていた事を悔やんだ。
 もしあの時に話を聞いていれば、大運動会であそこまで全力でぶつかり合う事はなかったのではないかと思っていた。
 ルークは、オービンを今の状態にしてしまったのは自分であると思い込んでいた。

「そう言えば、お前は手がかかる弟だったな。こうなったのは、お前のせいじゃない。俺がやりたい事をやった結果だ」
「でも、結局は俺が兄貴に突っかかったからで……」
「ルーク、お前少し気が小さくなったか? この前までとはまるで別人だぞ。もしかして、俺の病を知って丸くなったか? 兄貴思いになったもんだ」

 オービンの言葉にルークは顔を赤くして、「ち、ちげーよ!」と少し前のめりに反論した。
 ルークの慌てた感じに、オービンは楽しそうに笑う。

「何でこんな簡単な事が今まで出来なかったんだろうな……」
「……それは、普通の兄弟じゃなかったからじゃないか」

 その後、2人は問いかけては答えてと言う会話のキャッチボールをゆっくり、今までの時間を埋める様に話し続けた。
 そして1時間後、ルークが医務室から出て来た。

「お前ら、まさかずっと居たのか?」
「俺たちの事より、話したのかオービン先輩と」

 私の問いかけにルークは、今まで見せた事ない優しい表情で「あぁ」と答えて来て、私は何故が心が揺さぶられる。
 私自身でも何故そうなったかのか分からず、右手を胸の前に持ってきて首をひねった。

「その表情だと、いい方向に結果が転んだって所か。良かった、良かった……」

 そうトウマが言った後、視線を落とした。

「どうした、トウマ?」
「いや、やっぱりオービン先輩の病はどうしようもないのかなって、思っちまってさ……すまん。気を落とす様な事言っちまって」
「兄貴はやるべき事をやった結果だと言ってた。それに、まだ死んだわけでもないんだから、いつまでも気にするなと言ってたぞ。他人の事を心配する前に、自分の心配をしろってさ」

 するとルークは、突然私とトウマに頭を下げて来た。
 思いもしない行動に、私たちは驚き互いに顔を合わせてしまう。

「ありがとう。これだけは、しっかりと今伝えておきたかったんだ。それと……これからも、よろしく頼む……」

 恥ずかしそうに言うルークを見て、私たちはニッと笑い小さく声を出して笑った。

「まさか、お前からそんな言葉を聞ける日が来るとは。少しは体を張った意味があったな~」
「ここまでルークの性格が変わるとは。俺と驚きだ。と言うより、少し引くな。変わり過ぎて、怖い程だ~」

 私とトウマは、ここぞとばかりにルークを少しからかう様な言葉を掛ける。
 案の定、ルークは機嫌を損ねそっぽを向いて歩き出してしまう。

「少しでもお前らに心を許したのは、間違いだった。もう知らん」
「おいおい、そんな事で拗ねるなって。悪かったから、もう一度だけさっきの言葉言ってくれよ、親友だろ」
「そんな事知らん」
「恩を仇で返すなんて、ルークは酷いな~少しくらい、優しくしてくれてもいいのにな~」
「クリス、お前なっ」
「うんうん。その方がルークっぽいよ。急に態度が変わるより、少しづつ変えて行く方が良いね。これ、俺かのアドバイスね」

 私が笑いながら思った事をルークに言うと、何故か途中でそっぽを向かれてしまい、少しいじりすぎたかなと私は思った。

「おい、ルークさっきの言葉もう一回言ってくれって」
「知るか。しつこいぞ、トウマ」
「そう言うなよ」

 私たちは、ワイワイと会話をしながら寮へと戻った。
 その頃医務室では、タツミ先生が戻って来てオービンの診察をしていた。

「何だオービン、さっきから妙にニヤニヤしてて変だぞ」
「いやね、良い事があったんですよ。聞きますか、タツミ先生?」
「いや、長くなりそうだから止めとくわ」
「そう言わないで、聞いて下さいよ。俺、いつになく絶好調なんですよ」
「はぁ~全く、お前も普通の18歳の顔をする事もあるんだな。いつも大人ぶってるくせによ」
「今日タツミ先生がいない間に誰が来たと思います? なんとですね……」
「って、聞いちゃいねぇ。分かったよ、少しだけだからな」

 そう言って、タツミ先生は椅子にに深く座りオービンの話を聞き始めるのだった。
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