とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第104話 喧嘩するほど仲がいい?

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 突然教員たちに言い渡されたリレー競争。
 私たちは、何が何だか理解出来ずにいると教員たちが理由を話してくれた。

「この時期は、寮対抗での行事がない為、一部授業を合同で行い対抗戦を行う事になった。毎年この時期は、ダレて引き締まらないお前らの為に用意したものだ」
「なるほど、そう言う事か。確かに寮で争うと言うより、少し前までは協力してたしな」
「別に協力するなと言う事じゃないぞ。そこははき違えるなよ。あくまで互いを意識し、高め合う為だからな」

 教員から勘違いさせない様に指摘が入り、生徒たちもそれをしっかりと受け止めていた。
 大運動会にて第3学年に完敗してから、各生徒たちの意識は変わっていた。
 以前までは、ほとんど他の寮との交流はなかったが、現在では互いに知識や技術を教え合ったりと互いを高め合う状況になっていた。

「でも、何でリレー競争?」
「それはだな、たまには基礎体力で競うのもありだと考えたからだ。魔法や魔力に頼らず己の身体能力を見つめ直す、良い機会にもなるだろうと言う事でな」

 その答えに、生徒たちはブーイングを起こすが、教員は考えを変えはせずに生徒たちを静かにさせた。
 そして各寮の代表生徒に、寮のイメージカラーのバトンを渡し始めとそのまま競技の説明を始めた。
 競技は至ってシンプルであり、4寮が一気に走り出し1周200メートルを1人ずつバトンを繋ぎ走り、最初にアンカーがゴールした寮が1位と言うものであった。
 ちなみに、1位の寮には少ないがポイントも配布されると言われやる気があがる生徒たち。

「では各寮内で出走順を決め、15分後に競技を開始する」

 その後各寮ごとに分かれて、出走順を決め余った時間でバトン渡しの練習を行った。
 そしてあっという間に15分が過ぎ、各寮の第1走者がスタート位置に着く。
 周囲からは各寮を応援する声が飛び交っていた。

「それでは、オンマーク……セット」

 直後、教員の魔道具を使いスタートの合図を鳴らし、一斉に第1走者が走り出す。
 うちの寮の第1走者は、足に自信があるマックスだ。
 他の寮生たちを置いて行きマックスは独走のまま、第2走者のケビンへとバトンを渡す。
 その後は、距離を詰められたり、抜かされたり、抜き返したりと次の走者たちへとバトンが渡って行く。
 そんな中で、走るのが苦手中の苦手であるベックス・モーガン・ピースの走者の所で抜かされてしまい最下位になってしまう。
 そして今は第17走者のニックが、ピースからバトンを受け取り走り出していた。

「よっしゃ、こっから逆転だ! ニック抜かせー!」
「トウマ準備しないのか? 次、お前だろ」
「おっと、そうだった」

 そう言って、トウマがバトンを受け取る位置へと移動していく。

「クリス、見てろよ! お前に上位でバトン渡してるからな!」

 トウマは途中で振り返り、私に大声で叫ぶと足早に向かって行った。
 その頃ニックは、既に半周を過ぎており目の前に3位のエメル寮を捉えていた。
 だが、完全に抜かすことが出来ず、競った状態でトウマにバトンを渡す。
 それを見て私は、スタート位置に向かうとルークに呼び止められる。

「クリス。最悪ドベでも問題ないぞ」
「ふ~ん、それは俺に喧嘩を売ってるのか、ルーク?」

 するとルークは私に近付き、耳元で囁く。

「お前はお嬢様なんだから、無理はするなよ」

 最後に小さく笑われ、私はその言葉にカッチーンと来てルークを両手で押して、指を差す。

「も~うあったまきた! ルークお前! そこまで言うなら、俺が1位でお前にバトン渡してやるよ! 後はゆっくりランニング出来るくらい差をつけてやるよ!」
「おいおい、1人を抜かすのでやっとだろクリス」

 私の頬がピクピクと何度も動き、完全に馬鹿にされていると分かり大声で言い返す。

「じゃ1人でも抜いたら、ピースが勧める超絶高い店の飯奢れや!」
「ふっ、そこは1人とか弱気になるのかよ」
「こ、このー! ルーク! お前最近変わったと思ってたのに、ぜっぜんその嫌な性格は残ってるんだな! 最悪だー! 馬鹿ー! アホー!」
「ほらクリス、早く行かないとトウマが帰って来るぞ」
「うるせぇ! 分かってるわ! おいトウマ! 最下位のまま帰って来い!」

 走るトウマに私が声を掛けると、分けが分からない事に動揺し「何言ってんだよクリス!」と叫び返される。
 私はルークを睨んだ後、顔をすぐ背けスタート位置へと向かった。

「また始まったぞ、クリスとルークのいじり喧嘩。どっちが勝つと思うよ」
「そりゃ、ルークだろ。クリスには悪いが、この勝負ルークの方が有利だしな」
「意外とクリスって線もあるんじゃないのか?」
「いやいや、それはないだろ」

 とリーガやライラックを筆頭に、私たちの言い合いを笑いながら見て談笑していた。
 私がスタート位置へと着くと、隣に居たのはレオンだった。

「やぁ、クリス。まさか同じ走……って、何でそんな怒ってるんだ?」
「別に。レオンには関係ないだろ」
「(何だろ、ジュリル様が怒った時に雰囲気が似てるな……)」

 するとそこに1位のイルダ寮が帰って来て、次にダイモン寮が帰って来てバトンを渡していく。
 そこにエメル寮と競って帰って来たトウマだったが、最後にスピードが落ち最下位でバトンを受け取った。

「すまんクリス! 後頼んだ!」
「任せろ! 見てろよルーク! 見逃したとかで、逃げるんじゃねぇぞ!」

 私はルークの方に大声でそう言ってから、3位のエメル寮を追う。
 半周の所で追いつき、一度抜かすがまた抜かれ返される。
 思ったり200メートルきっつ! 半周過ぎてから一気に疲れが来るなこれ! でも、このままドベで行くわけには行かない! あのままルークに馬鹿にされてたまるか!

 私はルークが上から目線であざけ笑う姿を思い浮かべ、怒りをエネルギーに換えスピードを上げる。
 そして残り50メートルで、再度抜き返すがその時には既に1位と2位が最終走者にバトンを渡していた。
 私は最後の力を振り絞り、エメル寮の走者を引き離し3位でルークの手に叩きつける様にバトンを渡した。

「もー最悪だ! 1人しか抜かせないとか!」
「でも宣言通り1人抜かしたんだ、上出来だ。後は任せろ」

 そう言うとルークが私からのバトンをしっかりと受け取ると、一気に走り出す。
 ルークは驚異的なスピードで2位のイルダ寮に追いつく。

「げっ、もう来たのかよルーク。速すぎでは?」
「ロムロス、もう少し体力を鍛えないと、スバンに抜かれるぞ」

 そう抜かす際にルークは言い残し、2位へと浮上し1位を走るダンデの背後まで追い付く。

「来たなルーク! 今日はこのまま勝たせてもらうぞ!」
「ダンデ。そう簡単に勝たせる訳には行かないな。このまま逆転勝ちするシナリオだからな」
「言うじゃないか。今までの俺だと思わないことだな!」

 そう言うとダンデがスピードを上げる。
 一瞬驚くルークだが、置いて行かれる事無くルークもダンデの後を付いて行き、遂に横に並ぶ。

「ダンデ、俺はこの勝負負けたくないんだ。皆が繋いだこのバトンを1位でゴールに届けるって決めてるからな」
「それは俺も同じだ! 勝つのは俺たちだ!」

 そのままダンデとルークがデッドヒートを繰り広げ、ゴールへの一直線に入る。
 そして最初にゴールしたのは、ルークであった。

「はぁ……はぁ……今回の勝ちは俺だな、ダンデ」
「はぁ……くそ……僅差の負けとは悔し過ぎる」

 するとルークの元に、トウマたちが一気に駆け寄りルークを揉みくちゃにする。
 トウマたちの反応にルークは、嫌がる表情は見せず少し笑いながら抜け出そうとしていた。
 そこに、エメルとロムロスもゴールする。

「いや~今回は負けたが、どこか気持ちが良い負け方だった」
「それはたぶん、ルークが皆への態度が変わったからだろうな。いや、変わったとと言うより、戻ったと言う方が正しいのか?」
「そうね。彼らからするとそれが正しいと思うわ。にしても、ルークも笑ったりするのね。私からするとそこに驚きよ」
「確かに、それには同感だ。意識し出した頃には、いつもどこか見下している感じだったな、あいつは」
「俺はあまり関わらない様にしてから、噂程度でしか知らなかったよ」

 そうして、突然開催されたリレー競争は私たちオービン寮の1位で終了した。
 それを遠くから眺めている1人の女子生徒がいた。

「ふ~ん。彼がオービンの弟か。かなり前とは雰囲気が違うな」

 そこに、ジュリルが通りかかる。

「なっ、何でここにエリス先輩が!?」
「ん? お~ジュリル。珍しいな、お前がこんな所に居るなんて。もしかして、目当ての男でも見に来たか?」
「そそそそ、そん、そんな事ありませんわ。たまたま早く授業が終わったので、散歩していただけです!」
「本当~? まぁ、私としてはどっちでもいいけどね。でも、もし目当ての彼がいるなら早くアタックするのを、おすすめするわ」
「で、ですから違うと言っているではありませんか!」
「ごめんって。でも、先輩のアドバイスは覚えといてね」

 するとエリスは、ジュリルの肩を軽く叩きそこから去って行く。

「……も~エリス先輩は。でも、アタックか……ルーク様も元に戻られたみたいだし、近直あれもあるから実践してみようかしら」

 ジュリルは、遠くからルークの方を見つめて小さく呟くのだった。
 その日の夜、夕飯も食べ終わり自由時間に寮内にある小さい図書館で、本を漁っているとルークが突然やって来る。

「げぇっ、ルーク……お前もここに来るのかよ……」
「その反応はないだろ。と言うか、寮内にあるんだから来るだろ」
「あっそ」

 私は昼間の馬鹿にされた事もあり、冷たい態度で対応しすぐにそっぽを向いて本に視線を戻す。
 すると何故かルークは、私の前の席に座った。

「な、何で前の席に座るんだよ。他にも席があるだろうが」
「いや、それは」

 ルークが答える前に、私は一個隣の席にずれるが、ルークもそれを追うように席をずらして来て、また私の前に座る。

「何で付いてくんのさ。そっちにいればいいじゃん」
「その前に俺の話を」

 そして私はまた、ルークが話している途中で席を変えて逃げるが、ルークはしつこく追って来る。
 もー何なのよ! 昼間馬鹿にしてきて、夜も嫌がらせとか、何考えてるのよルークは!
 私はいい加減にしつこいルークに嫌気が差して、椅子から立ち上がり部屋を出ようと扉へと向かう。
 するとルークが、出て行こうとする私の左手首を右手で掴んで来て、少し引っ張られる。

「えっ」
「少しでいいから、俺にお前の時間をくれ」
「な、何……急に……」
「クリス。お前に伝えておきたい事があるんだ」
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