とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第125話 2人のオービン

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 フェルトの横に立つオービンがルークたちへと話し掛け始めた。

「ルーク、トウマ君、ヒビキ。フェルト君が言っている事は本当だよ。フェルト君は、たまたまここに潜入していて、俺を助け出してくれたんだ」
「どいう事なんだ? もー全く話しについて行けなくなって来た」
「ヒビキがそう言うのも無理ないな。今ヒビキの前にいる俺は、フェルト君が言う通り偽物なんだ。ここの組織のある人物が、俺になり変わって王国を陥れようとしていたんだ」
「!?」

 その言葉を聞き、ルークとトウマが振り返り拘束されているオービンの方を見る。
 オービンは必死に反論しているが、黒いローブを来た奴らによって声を音によって相殺させられており、口だけがただ動いていると言う状態であった。

「このオービン先輩が偽物……」
「兄貴……」

 そこにフェルトが追い打ちを掛ける様に話し出す。

「現に、そこの偽物のオービンは拘束されているだろ。一度捕らえたが逃げ出したんだよ。今じゃ、なり変わった魔法が弱まって声すら出ずに、反論すら出来ない状態だ」
「(違う! そいつが言っている事は嘘なんだ! ……ぐっ、声が出ない以上伝えられないか……どうすればいい)」
「皆直ぐにその偽物から離れるんだ。いつ襲い出すか分からないからね」

 フェルトの傍にいるオービンがルークたちに注意を促しつつ、フェルトたちはルークたちに少しづつ寄り始める。

「こっちが偽物で、あっちが本物? あ~タツミ先生の時みたいじゃねぇか! どうなってんだよ!」
「迷う事はないぞトウマ。俺もいて、オービン先輩もこっちにいるんだ。近くにいる奴が偽物に決まってるだろ」
「フェルト……」

 トウマの心がフェルトの言葉に傾きかけた時、ルークがフェルトに向かって問いかけた。

「フェルト、俺はお前がここに居る事が信じられないし、そっちの兄貴の方が本物と言う理由も信じられない。お前はどうやって傍の兄貴を本物だと見極めた?」
「理由は言ったろ、任務で潜入していたからここに居るんだよ。本物かどうかなんて簡単さ、そこの偽物が俺の目の前でオービン先輩に変わったからだよ」
「それで一度捕まえたと?」
「そうだ。怪しむのも信じられないのも分かるが、俺の事を信じてくれルーク」

 フェルトの言葉にルークは暫く黙った後、もう1つ問いかけた。

「じゃ何故、最初に会った時にそれを言わない?」
「っ……」

 とフェルトが言葉に詰まっていると、傍にいるオービンが代わりに答えた。

「それはその場で話すよりも、確保を優先した方が良いと判断したからだよ。話している内に逃げられるだろ、こんなややこしい話しをしていたら」

 その答えにルークは「確かにな」と呟きそのまま、拘束されている方のオービンの方を向いた。

「(どうする? どうすればこの状況を打破出来る? 声を出すようにする? いや、それだけじゃ難しい……)」
「おいオービン。さっきから何で魔法を使わないんだ?」

 突然ヒビキが口を開き問いかけると、2人のオービンがヒビキの方を向く。
 ヒビキは「奥の方だよ」と付け加えた。

「お前は拘束されてないよな? だったらさっさと力を使えばこんな事になってねぇよな? てかそもそも、お前が誘拐される事自体がおかしいだろ? 何で誘拐されてんだお前?」
「それは……病気のせいなんだ」
「病気?」

 フェルトの傍にいるオービンは、ヒビキに対して自身が抱えている病の事を明かした。
 その上で魔力がまだ戻ったばかりの所を狙われて誘拐されたと話し、これ以上悪化さない為に極力魔法や魔力の使用を控えていると伝える。

「へぇ~だから使わないと……嘘付くんじゃねぇよ、オービン。いいか、お前って奴はなくそが付くほど真面目でお手本みたいな奴だ。それに誰にも弱みを見せない奴で、どんな状況でも自分より他人を心配する奴だ。自分は第一王子だからとか、寮長だからと言わんばかりにな。ましてやこの状況で、病だからと言って無理をしないはずがないんだよ、あのオービンが」
「っ!」
「とは言っても、お前が偽物とも本物とも言えないのに変わりはない。だから一番手っ取り早いのが、当人同士で戦わせる事だな」
「オービン先輩同士で」
「戦わせる?」

 ルークとトウマが口を開くと、フェルトが割って入って来た。

「そんな必要はありませんよ、ヒビキ先輩! こっちにはそいつが偽物だと分かっているのですから!」
「お前らが分かっても、俺たちは知らないしどっちがどっちだか見分けがつかないんだ。そいつが本物なら戦っても問題ないだろ。それとも、はっきりさせたくないのか?」
「そ、そんな事はないですが……無駄に時間を使う必要はないと言うだけです」
「俺たちにとっては無駄じゃないぞ。そうだろ、ルーク、トウマ」

 ヒビキの問いかけにルークは頷き、遅れてトウマも2度頷く。

「(ヒビキ、やっぱりお前は凄い奴だな!)」

 フェルトは少し顔を歪めていると、隣にいたオービンが軽く肩を叩き前に出た。

「ヒビキがそこまで言うならやろうじゃないか。まぁ、結果は分かっているけどね」

 そう言って、フェルトの隣にいたオービンが拘束されているオービンに近付いて行く。
 その時だった、側面の壁の一ヵ所が突然崩れ大きな穴が開いた。
 壁が崩れた音にその場の全員が反応し、その方向を向くと奥から複数の足音が聞こえて来た。

「何だ? 崩れたのか?」
「いや、誰か来るぞ……」

 トウマとルークが呟いた直後、崩れた箇所の穴の奥から現れたのは王国軍の服装をした人物であった。

「広い空間に出ました。ん? 正面に複数の人影を確認。何やら対立している様な雰囲気です」
「対立? 内部で仲間割れでもしたか?」
「そんな訳ないだろう、カビル」
「何だとエス? 可能性としてはゼロじゃないだろうが」

 一番目に現れた王国軍兵士の後ろから、同じく王国軍の服を身に纏った王国兵が2人現れる。
 それは王国軍でサストが隊長を務める部隊の中隊長である、カビルとエスであった。
 その後ろから2名の王国兵が奥から現れる。

「(あれは王国軍。もう来ていたのか)」
「確かあの服装は王国軍……やっぱりあの時の衝撃音は王国軍がやったものだったか」
「王国軍が来たのか!?」
「どこの部隊だ?」

 ルークたち4人はそれぞれに思うことを口にしているが、一方でフェルトは顔を大きく歪めていた。

「(ちっ! 別同隊が居たのか、面倒な事になったな……だが、まだ問題ない。向うも、俺たちの事を分かっていないだろう。ひとまずこの空間に使用した魔法を解除させるか)」

 するとフェルトは小さな音で近くにいた黒いローブを来た奴に合図を出し、ルークたちが先に掛かっていた魔法を解除させて先手を取る様に王国軍へと話し掛けた。

「あっ! 来てくれたんですね! た、大変なんです! オービン先輩が2人いて、どっちが本物か見分ける為に戦う所だったんです!」
「オービンだと? おい、あそこにいる奴今第一王子の名前を言わなかったか?」
「いいましたね。確かに、目の前に第一王子の姿を目視できます。しかも2人も」

 さすがにこの状況に、カビルとエスの班全員驚いていたがすぐにカビルが指示を出した。

「ひとまずこの場にいる全員を確保する。全員その場を動くな!」
「「!?」」

 ルークたちを含め、フェルトもその発言に驚きを隠せずにいると王国兵たちが動き出す。
 するとフェルトが黒いローブを来た奴らと拘束されていないオービンに対して、小さな音で何かを合図を出した。
 直後、拘束されていないオービン以外のフェルトと黒いローブを来た奴らが来た道を戻る為に、走り出す。
 それを見逃さずにエスが指示を出した。

「一人たりとも逃がすな!」

 その指示に2人の王国兵は2人の黒いローブを来た奴らを追い、カビルともう1人の王国兵がフェルトたちの方を追い始める。
 王国兵が逃げる黒いローブを来た奴らの足元目掛けて、動きを止める雷系の魔法を瞬時に放つも黒いローブを来た奴の1人が懐から1枚のシートを取り出し広げると、そこに魔法は吸収されてしまう。
 直後もう1人の黒いローブを来た奴が魔道具と思われる球体を3つ投げつけると、そこから黒い煙幕が飛び出て来て見失ってしまう。

 もう一方のフェルトたちの方は、カビルが快速を飛ばし一番後ろの黒いローブを来た奴に手を伸ばす。
 しかしそいつはカビルの存在に気付き、片手を出して魔法を放とうとするもカビルはそれに直ぐに反応し手で捕らえる事を辞め、足元へのタックルへと変え突っ込み1人の黒いローブを来た奴を押し倒す。
 そして後方から来た王国兵にそいつを任し、もう1人の黒いローブを来た奴を狙い腰に付けていた短棒をワンタッチで槍状の棒へと変化させる。
 そのまま魔力を籠めてから、相手に向けて投げつける。
 狙われた黒いローブを来た奴はかわすも、カビルは魔力制御を使い込めた魔力を引き寄せ始め当てようとするも、フェルトの魔力創造により地面から壁を造られ弾かれてしまう。
 そのままフェルトともう1人の黒いローブを来た奴はその場から逃げてしまう。

「ちっ、逃げられたか。だが、1人は確保した。エス! そっちは問題ないか?」
「ひとまずこちらは反撃なく確保した」

 カビルの問いかけにエスはそう言って返すも、軽くため息をついた。

「さて、これはどうしたものかな……」

 エスは目の前にいるルークたちよりも、オービンが2人いる事に頭を悩ましていたのだった。
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