とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
135 / 564

第134話 ゼログラヴィティ

しおりを挟む
 魔法とは何でも出来てしまう完璧なものではない。
 稀にだが、あり得ない事を実現してしまう事もある為、未だ未知の部分がある力ともされている。
 しかし大半の事象は既に解明されていたり、現在研究されていたりしているものであり、一部では別の現象を組み合わせる事で実現不可能な現象を起こそうとする者もいる。
 そんな者たちの研究内でも研究されているのが、「重力」を操る力である。
 既に「重力」を直接操る力を持つ者がいないと判明しており、過去にもそのような人物がいない事から実現不可能な現象とされていたが、研究者たちの中では一番現象と現象を組み合わせる事で実現可能なのではないかと言われているのだ。
 だが未だにそれを実現させた者はいないとされていたが、今その「重力」を操る力を使って見せた人物が現れた。
 それがアバン・フォークロスであった。

 ロバートは何故、アバンが重力を操る力を使えているのが信じられないのと同時に、どうしてこんな奴が国中の研究者が達成もしていない力を使えているのか不思議で仕方がなかった。

「(私は今、紛れもなく重力によって地面へと押し付けられている。だが、完全に逆らえない訳じゃない!)」

 するとロバートは両手で地面を押しつつ体を持ち上げ始める。
 まさかの行動にアバンも驚くが、更に驚く事が目の前で起こり始めたのだ。
 それはロバートの体の変化であった。
 徐々に体付きが張りのある筋肉質の体へと変化し始め、顔も若返る様にしわも伸び始め、一番は髪の毛が白髪から黒へと変わり伸び始めたのだ。
 そう、ロバートは突然若返り出したのだ。
 そして完全に20代の容姿へと若返り、アバンの重力攻撃中でも完全に立ち上がる。

「なるほど。そう言う事だったか」

 ロバートは、アバンの重力攻撃の謎を解けたのかそう呟き右手に魔力を込めて、おもっいきり振りかぶりアバンに向けて振り抜いた。
 するとその拳から、魔力の拳圧が放たれる。
 その攻撃にアバンは咄嗟に回避行動をとり、ロバートの正面からそれ重力攻撃も中断する。

「お前のその力の正体を見破ったぞ」
「……」
「重力に見せかけたその力、本当は超高風圧で私を押し潰していただけだな。更には、それを重力と思わせる様に手足首に重りを生成し付けたんだろ? 大したもんだ、並みの風の魔法ではあんな芸当出来はしないぞ」

 ロバートの話にアバンは暫く黙ったまま聞いていた。

「種さえ分かってしまえば、どうとでも対応出来る。だが、それを打ち破るには私も隠し溜めていた魔力を開放する必要があった。まぁ、容姿の変化はそれに伴う影響だ」
「言いたい事はそれだけか?」
「ふっ、強がる必要はない。奥の手であった力の秘密もバレてしまったのだ、少しくらい落ち込む時間はとってやる」
「何言ってんだ。あんな副産物が俺の奥の手な訳ないだろう」
「何?」

 まさかの返答に少し動揺するロバート。

「お前が若返ったのには驚いたが、対して脅威でも何でもない。後、俺が研究していたのは「重力」じゃない」
「戯言を抜かすな!」

 ロバートは連続で拳に魔力を込めた拳圧をアバンに向かい放つ。
 アバンは次は避ける事無く、地面から長く丸い棒を瞬時に魔力創造と魔力技量で作り出す。
 そして向かって来る拳圧の魔力の塊を、それで華麗に弾き飛ばし全て弾いた後、アバンはその棒を後方へ捨てロバートに向かい『ガスト』の魔法を打ち放ち後方へと吹き飛ばす。
 吹き飛ばされたロバートはそのまま、宙に見えない球体の様な物の中へと入り込む感覚を感じた。
 直後、ロバートはその場で宙に浮き続けゆっくりと回り続ける事になってしまうのだった。

「なっ、何だこれは!?」
「それが俺の研究成果だ」

 そこにアバンが近付いて来て、宙で大きな見えない球体の中で中心をくるくると回り続けるロバートに話し掛ける。

「研究成果だと!?」
「俺の研究テーマは「無重力」だ。簡単に言えばあんたは今、この星の周りをグルグルと回り続けている状態だ」

 アバンが創り出したのは、無重力状態であった。
 ロバートを地球の周りをまわる物体として捉え、中心にロバートを引き寄せる魔法を創り、ロバート自身にそれに抗う様に飛び出ようとする魔法をかける事で無重力状態を創りだしたのだと語る。
 しかも、それを全て風の力で実現させていると明かす。
 ロバートはその話を聞いても理解出来ずにいたが、アバンもそれを理解してもらおうと言ったわけではなかった。

「まぁ、そんな事はどうでもいい。要は、お前はもう何も出来ないと言うだけだ」

 その言葉を信じないロバートは、その場であがくもただその場を回る事しか出来ずにいた。
 更には魔法も使おうとしても、狙いが定まらず上手く使えなかったのだ。

「くそ! くそ! くそ! 何故だ! 何故、力が上手く使えないのだ!」
「お前は力を出し惜しみし過ぎたんだよ。さっさとその力を使っていれば良かったんだよ」
「黙れ! お前など、一撃で殺せる程の力を私は持っているんだぞ!」
「それこそ、使えなければ意味がない。宝の持ち腐れってやつだ」
「っ!」
「あ、そう言えば知ってたか? 魔力ってのは放つより、込めて直接叩き込んだ方が超絶痛いらしいぞ」

 するとアバンは右拳を力いっぱい握り締め、魔力を込め出す。
 アバンは左手で、ロバートを挑発する様な動作をすると、一気にロバートが背中を押される様に一直線にアバンに向かって吹き飛ばされる。
 向かって来るロバートに対して、アバンはそれに合わせる様に勢いよく右拳を振り抜きだした。
 そして、アバンの拳はロバートの顔面にめり込む様に直撃した。
 それはただの拳からの勢いだけではなく、自身も風に押される様に向かった際の勢いも増されていた為、物凄い威力の拳が叩き込まれていた。
 アバンはそのままロバートを地面へと叩き込み、呟くのだった。

「俺の妹を傷つけた、当然の報いだくそ野郎」

 その後ロバートは完全に意識を失い、その場で伸びてしまう。
 その光景を見ていたルークたちは、呆然としてしまう。
 更に、そこへサストと数名の王国兵もやって来て起こっている状況に驚くのだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...