とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
162 / 564

第161話 テンションの上がる部屋

しおりを挟む
「ふ~何とか間に合った……」
「もう汗だくだよ……」
「何でこんな事に……」

 私とメイナとジェイミは、クレイス魔法学院の宿泊するホテルの大きな会場の入口で壁にもたれ掛かりつつ、ステージ上で話すマーガレットの話を聞いていた。
 会場内には今回学院対抗戦に出場する選手であろう生徒たちが集まっており、周囲にはバイキング形式の食事をこのまま行うのか豪華な食事が用意されていた。
 私はマーガレットの話そっちのけで、近くの机に用意された食事に目を奪われていた。
 わ~美味しそうな物ばかりだな~こんな食事久しぶりに見た。
 すると、背後から襟をメイナが掴んで来た。

「何してるのアリス。今は話を聞きなよ、目を付けられたら面倒でしょ。てか、いつの間に学院服から着替えたの?」
「え? あ~マリアと話す時にちょっと着替えようかなって思って……」
「で、学院服どうしたの?」

 迫って来るメイナに私は目線を逸らしながら答えた。

「マ、マリアに渡したかな~……」
「……ふ~ん。渡したね……」

 物凄く疑いの目でメイナは私の方を見ている感じがしたが、私は全くメイナの方を見ずにいるとそこにジェイミが話し掛けて来た。

「あんまり変に目立つなよ2人共」

 と、次の瞬間だった。

「そこの2人! 聞いてますの?」
「あ~あ……私は関係ないぞ」

 ジェイミは近付こうとしたが、そのまま後退し私とメイナから離れて行った。

「ちょっ、ジェイミ!」
「聞こえてますの? アリスさん、メイナさん」
「は、はい。聞いてますマーガレット先輩!」

 メイナは直ぐに姿勢を正し、大声で答えたが私はただじっと遠くから話し掛けて来たマーガレットの方を見ていた。
 するとメイナは肘で軽くつついて来た。

「ちょっと、アリス。何で黙ってるの? とりあえず答えなよ」
「……あっ、そうだね。すいません、マーガレット先輩!」
「はぁ~まぁいいですわ。皆さんも疲れていると思いますから、後は私が用意させてもらった食事をとって十分に英気を養ってくださいまし」

 そう言うと、マーガレットは話を終えて違う部屋へと向かって行った。
 その姿を見て私とメイナは安堵の息をついた。
 するとジェイミが、飲み物を持って戻って来た。

「お疲れさん。良かったね2人共」

 ジェイミの持ってきた飲み物を私とメイナが受取り、軽く飲んだ。

「本当。どうなるかと思ったけど、何事もなくて良かった。いつもなら、ちょっとしたお説教されるけど今日はどうしたのかね?」
「隣の部屋に、学院対抗戦に出場しない生徒たちもいてそっちにも話に行ったんだってさ。さすが、マーガレット先輩ね。ちょっと口うるさい所はあるけど、いい先輩だよ」

 マーガレット先輩か。
 本当に久しぶりに見たな。
 私はジェイミから貰った飲み物を飲みながら、クレイス魔法学院でのマーガレットの事を思い出していた。

 マーガレット・バレル、第3学年でクレイス魔法学院の顔と呼べる生徒である。
 赤い髪で内巻きと外巻きを交互に繰り返していく巻き方がされているのが特徴的で、ザ・お嬢様と言う雰囲気である。
 学院内では模範的な生徒であり、後輩にも甘いだけでなく厳しくも接するので、少し苦手な人はいるも尊敬できる人は多い。
 また一部からは、好きな男子が他の学院にいると言われているが、その真偽を知る人は少ないらしい。
 クレイス魔法学院に居た時は、そんなに直接関わる機会は少なかったが、話した機会はあったので全く面識がないと言う関係性ではない。
 そんな事を私は思い出しつつ、メイナやジェイミと共にマーガレットが用意した食事を食べながら、久しぶりに雑談をして決起集会は終了した。
 その後私たちは、各自用意されたホテルの部屋へと戻った。
 私は自分がどこの部屋だか分からなかったが、メイナの隣の部屋であったのでそのまま自室へと入り、大きくため息をついた。

「はぁ~何とかなった……メイナには疑われたりしたけど、何とかやり過ごしたし大丈夫だろう」

 そのまま私は部屋にあるベッドに倒れる様にダイブした。

「明日は学院対抗戦か……たぶんマリアの事だし、クリスになってやり過ごしてくれているだろうな。と言う事は、明日また会場で会えるし、そこでまた入れ替われば問題ないな」

 私はそう考えてベッドから起き上がり、部屋に何があるのか色んな所を見回した。
 そして綺麗なバスルームを見つけ、私はテンションが上がった。

「う~~ん最高~! とりあえず今日は、こんな最高な部屋で過ごせるからいいか~明日には全部解決するし、久しぶりにお嬢様を満喫しよ~と!」

 そのまま私は気軽に考えて、バスルームへと入り最高な気分でその日の夜を過ごした。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 次の日、私は部屋に迎えに来たメイナと共に朝食を食べてから、クレイス魔法学院の生徒として学院対抗戦の会場へと向かった。
 そして学院対抗戦の会場に到着すると、そこに大きなコロシアム状の会場があり周囲には数多くの出店が出店していた。

「お~ここが学院対抗戦の会場か。何か、大運動会の時の会場に少し似てるな~」
「大運動会? また変なこと言って、本当に昨日から変だけど大丈夫なの? 後、何か少し口調が男っぽくない?」
「いや~ちょっと昨日本を読んでその影響かな~……それにそこに出て来る場所の名前に似てたからつい……」
「それならいいけど。少しはちゃんとしてよね、アリスも出場選手なんだから」
「あ~そうね」

 そう昨日改めて知ったが、私はクレイス魔法学院内で学院対抗戦に出場する選手に選ばれていたらしい。
 まぁ、さすがに試合前にはマリアと会う時間くらいはあるだろうから、そこで入れ替われば問題ないよね。
 最悪私が出てもいいけど、何も知らない状態で出るより知っているマリアが出た方が疑いも掛けられないし、迷惑もかけないからその方がいいよね。
 その後私たちは会場へと入り、出場選手は一度控室へと案内され開会式が始まるまで、自由時間となった。

 よし、この時間でマリアを探して入れ替わるか。
 私は周囲の目を盗んで、控室から抜け出しマリアを探しに走り出した。
 とりあえず、マリアを探すなら客席の方だよね。
 私は王都メルト魔法学院では、出場選手じゃないしたぶんこの周辺の控室辺りにはいないから、いるなら上の客席か外の選手入口付近だよな。
 ひとまず私は今いる控室辺りから客席に行くには、一度外に出ないといけなかったので選手入口付近を見てから、そのまま客席へと探しに向かう事にした。

「一応入口付近には来たけど、マリアの姿はないな……やっぱり、客席かな?」

 私は少しキョロキョロと周囲を見た後、客席への入口へと向かおうとした時だった。

「あれ? アリス?」

 その呼び掛けに私は足を止め振り返ると、そこに居たのはトウマであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

冷遇されている令嬢に転生したけど図太く生きていたら聖女に成り上がりました

富士山のぼり
恋愛
何処にでもいる普通のOLである私は事故にあって異世界に転生した。 転生先は入り婿の駄目な父親と後妻である母とその娘にいびられている令嬢だった。 でも現代日本育ちの図太い神経で平然と生きていたらいつの間にか聖女と呼ばれるようになっていた。 別にそんな事望んでなかったんだけど……。 「そんな口の利き方を私にしていいと思っている訳? 後悔するわよ。」 「下らない事はいい加減にしなさい。後悔する事になるのはあなたよ。」 強気で物事にあまり動じない系女子の異世界転生話。 ※小説家になろうの方にも掲載しています。あちらが修正版です。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

【完結】転生したら悪役令嬢だった腐女子、推し課金金策してたら無双でざまぁで愛されキャラ?いえいえ私は見守りたいだけですわ

鏑木 うりこ
恋愛
 毒親から逃げ出してブラック企業で働いていた私の箱推し乙女ゲーム「トランプる!」超重課金兵だった私はどうやらその世界に転生してしまったらしい。  圧倒的ご褒美かつ感謝なのだが、如何せん推しに課金するお金がない!推しがいるのに課金が出来ないなんてトラ畜(トランプる重課金者の総称)として失格も良い所だわ!  なりふり構わず、我が道を邁進していると……おや?キング達の様子が?……おや?クイーン達も??  「クラブ・クイーン」マリエル・クラブの廃オタク課金生活が始まったのですわ。 *ハイパーご都合主義&ネット用語、オタ用語が飛び交う大変に頭の悪い作品となっております。 *ご照覧いただけたら幸いです。 *深く考えないでいただけるともっと幸いです。 *作者阿呆やな~楽しいだけで書いとるやろ、しょーがねーなーと思っていただけるともっと幸いです。 *あと、なんだろう……怒らないでね……(*‘ω‘ *)えへへ……。  マリエルが腐女子ですが、腐女子っぽい発言はあまりしないようにしています。BLは起こりません(笑)  2022年1月2日から公開して3月16日で本編が終了致しました。長い間たくさん見ていただいて本当にありがとうございました(*‘ω‘ *)  恋愛大賞は35位と健闘させて頂きました!応援、感想、お気に入りなどたくさんありがとうございました!

【完結】せっかくモブに転生したのに、まわりが濃すぎて逆に目立つんですけど

monaca
恋愛
前世で目立って嫌だったわたしは、女神に「モブに転生させて」とお願いした。 でも、なんだか周りの人間がおかしい。 どいつもこいつも、妙にキャラの濃いのが揃っている。 これ、普通にしているわたしのほうが、逆に目立ってるんじゃない?

処理中です...