とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
169 / 564

第168話 予想もしていなかった展開

しおりを挟む
「……その反応は、もう入れ替わったんだな」
「いやいや、何で普通に会話に入って来てるの!? 分けわかんないんだけど!」

 するとルークが私に変装しているマリアの方を見つめる。

「おいマリア、もしかして話してないのか?」

 それを聞いたマリアは、そ~と目線を逸らしていきそっぽで舌を軽く出した。

「どう言う事なのマリア?」
「はぁ~……お前を信じた俺が馬鹿だった」

 ルークは片手で頭を抱えると、マリアが私の方を向いて軽く咳ばらいをした。

「こほぉん。アリスお嬢様、言い忘れましたが、ルーク様には入れ替わってアリスお嬢様が連れて行かれたあの日の直後、出会っているのです」
「え、私がメイナとジェイミに連れて行かれたあの日?」

 マリアが軽く頷くと、ルークも「そうだ」と答えて来た。
 あの日、私が連れて行かれた後にマリアが、クリスとして1日なり変わろうとしてくれた直後にルークがあの場にやって来たらしい。
 そこでマリアは私であると信じ込ませる為に、クリスとして振る舞ったそうだがルークにすぐに見破られてしまったのだとマリアは語る。
 それを語る時のマリアは、どこかルークの方を見ながらニヤついており、ルークは何故か顔をそっぽに向けていたが少し耳が赤くなっていた。
 ん? どうしてそんな反応をするんだ?
 私は少し首を傾げていると、マリアがそっと小声で話し掛けて来た。

「要するにルーク様は、アリスお嬢様の癖が分かると言う事です」
「な、なるほど……ちょっと怖いなルーク……」

 ルークは私の言葉を聞いた直後、硬直した様に全く動かなかった。
 あれ、何か私変な事言った?

「アリスお嬢様、それが普通の反応だと思いますよ。私も同じことを言いましたので」
「そ、そう?」

 するとマリアがルークの方に近付いて行き何か小声で話し掛けた。

「執着し過ぎると嫌われますよ、ルーク様」
「う、うっせ! 分かってるわ! あれはお前が偽者だと言う理由を言えっていうから答えてだけで」
「はいはい。アリスお嬢様には、詳しく言わないであげてるんですから、勝手に墓穴を掘らないで下さいよルーク様」
「お前な!」

 とルークが振り返りながらマリアに何かを言おうとしたが、既にマリアは私の方へと戻って来ていたので、ルークは言いかけた言葉を止めた。

「と、とにかく。もう終わったならここから出たらどうだ? いつまでも茂みにいたら、逆に怪しまれる」
「確かに、ルークの言う通りかも。マリアも一度出るで大丈夫だよね」
「はい。私の方は問題ありません、アリスお嬢様」

 マリアからの言葉も聞いて、私は一度茂みから出る事に決めルークたちと表通りの方へと歩いて行く。
 その中で私はルークにトウマの事を訊ねた。

「ねぇ、ルーク」
「何だ?」
「えっと、その、トウマの事なんだけど……」

 と、私が少し言い出しずらそうに切り出すと、ルークは私が話そうとした時に被せる様に話し出した。

「知ってるぞ。俺も、あのラーウェンって奴から今日の昼に聞かされた」
「えっ」
「だからお前が聞こうとしている事も何となく分かる……と思う。それに関して俺が言えることは、それがなんだっていう事だけだ」
「ルーク」
「お前だって知ってるだろ、俺とトウマは大喧嘩した仲だぞ。今更、そんな過去の事で関係を切る訳ないし、あんなお節介野郎にもそう言う過去があるのだと知って、安心した位だ。ただ普通に過ごして来たら、俺にあんなお節介出来る訳ないからな」

 ルークの答えに、私は小さく笑ってしまう。

「何で笑うんだよ」
「ごめん。ただ、さすが親友だなって思ってさ。安心しただけ。それに私も、トウマの過去がなんだろうが変わるつもりはないから!」
「そんな宣言しなくても、知ってるよ」

 私はそんなルークの返答に「なんだよその言い方」と笑いながら軽く肩に拳を突き出した。
 ルークはと言うと「殴る事はないだろう」と軽く言いつつ、小さく笑っていた。
 そんな事をしていると、茂みから出て表通りへと私たちは戻って来ていた。

「さて、それでは私はそろそろこの辺で失礼します」
「マリ……じゃなくて、姉さん。もう行っちゃうの?」
「はい。トウマの事も伝えましたし、後はお2人がトウマとどう向き合うか、だと思いますので。それに、私は明日の競技もありますし」
「そうか。アリスは明日の代表者だったな。でも、残念だ。本当のアリスの力が他の学院相手に、どれほどの物か見れるいい機会だと思ったんだけどな。いいのか、クリス?」
「いやいや、だって代表者になったのは俺じゃなくて、アリスなんだし。そんな事言われても、実力に見合わない人が出たら、ほら、あれじゃん……申し訳ないじゃん……」
「確かにそう言う面もありますが、実際の所私はクリスの今の実力に合わせた力を出して勝ち取った代表者であるので、問題はないのですよ。それよりも一番は、入れ替わっている事がバレる事ですね。クリスも分かっているとは思いますが」
「……」

 マリアの発言に、私は少し驚きもしたが黙ったまま何もいう事はしなかった。
 確かにマリアの言う通り、入れ替わっている事がバレれば一大事ではあるが、今更私が代表者として出るのは、例え私の実力に合わせた力で勝ち取ったものだとしてもまた違うことだとも思うし、一番は自分にそこまでの自信が持てなかったのである。
 どの学院でも代表者になる為に、何人とも戦い最終的に勝ち残った人が出る舞台に、いきなり私が横から入れ替わって出るのはずるいのではないかと考えてしまい、ならこのままマリアが私として出た方が一番いい選択と思っていたのだ。

「……まぁ、これもクリスなりに考えてだした結論ですので、私はそれに従いますよ。でも、出るからには勝ちに行きますよ。学院を背負っているので」
「あははは……それは当然の事だね。……でも、やり過ぎないでね」

 私の少し乾いた笑いを聞いたルークは、小さくため息をついた。
 そしてそのままマリアと別れてルークと学院へと帰ろうとした時だった。

「あら? もしかしてルーク様? それにクリスに……確かアリスでしたか? クリスの姉の」

 そこへ突然声を掛けて来たのは、ジュリルであった。
 更にジュリルの後ろには、ウィルとマートルも一緒にいた。

「ジュリル!?」
「ルーク様、どうしてこんな茂み近くで3人と一緒に……もしや! 密談ですか?」
「(変にジュリルって勘がいいんだよな……さて、どうするか)」

 と、ルークがチラッとマリアの方を向くと、マリアは何か思いついたのか少し悪い顔をしておりルークの方を見て不敵に微笑む。

「(? おいおい、何するつもりだ?)」

 その直後、私に扮したマリアが突然ルークの腕に掴みかった。

「ごめんなさい。少し込み入った話をルーク様に聞いていたんです。2人きりで。でも、そこにクリスが割って入って来てしまって」
「えっ」
「はぁ?」
「へぇ?」

 ルーク、私、ジュリルがそれぞれ驚いた反応すると、ジュリルの後ろに居たウィルは言葉を失った様に口を開きっぱであった。
 その直後、私はルークとその腕にくっ付くマリアに向かって大きな声を張り上げた。

「はぁーーー!?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...