とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
173 / 564

第172話 特別枠選手の実力

しおりを挟む
 するとマーガレットは周囲をキョロキョロと見回しだし、誰も居ない事を確認するとマリアへと顔を近付けた。

「別に貴方を疑っている訳ではないのだけれど、昨日のアレは誰にも言っていないのよね?」
「昨日のアレとは?」

 マリアはマーガレットの問いかけに、素直に首を傾げた。
 その反応はマリアにすれば当然であるが、今はマリアではなくアリスとしている為昨日の時点で何かマーガレットとの間に何かあったのだと、直後に理解する。
 一方マーガレットとは、まさかの返答に一時固まるも小声で「エリスとの件よ」と口に出した。

「(エリス……エリス・クリセントですか。なるほど、アリスお嬢様は何かの言い合いの現場を偶然にも目撃したという事ですか。はぁ~ことごとく凄い所に出くわしたものですね)」

 マリアは一度瞳を瞑ってから開いてから答え始めた。

「その件でしたか。もちろん、誰にも何も言っていませんよ。誰にでも隠したい秘密はあるものですし、私にもあるのですから早々と誰かにバラす様なまねはしませんよ」

 マーガレットはマリアの返答に、少し驚いていた。
 それは黙っていた事にではなく昨日接したアリスと少し雰囲気も態度も違っていた事に驚いていたのだった。

「どうしたのですか? マーガレット先輩?」
「いえ。貴方の感じが昨日と違っていたので驚いただけですわ。何と言うか、落ち着いた雰囲気ですわね今日は」

 その言葉にマリアは一瞬黙ってしまうが、怪しまれない様にすぐに口を開いた。

「昨日は初日で浮かれていただけですよ。それに、家族にも会えましたので」
「なるほど。そう言う事でしたのね。変な事を言ってしまいすいません。それでさっきの件は今後も秘密にしてくれるとありがたいのですけど」
「もちろんです」

 マリアは快く答えた後、マーガレットにそこまで隠すような事でもないと伝えると、マーガレットはそっぽを向いた。

「そ、そんな事公に言えるわけないでしょうが! 既に恋人関係にある方を好きなっているなんて」
「そうですね。すいません、マーガレット先輩の気持ちも知らないで、いらない事を言いました」

 そう言ってマリアは頭を下げるとマーガレットは「貴方がそこまで謝る事はないわ」と口にした。
 その後マーガレットはマリアに背を向けた。

「もうこの話は終わりにしましょう。そろそろ試合も始まりますし、私は先に戻りますわ。急に呼び出してしまって申し訳ありませんね」

 するとマーガレットは歩き出し立ち去ろうとした時、小さく呟いた。

「感謝しますわアリス」

 その言葉はマリアにも小さくではあるが聞こえていた。
 そしてマーガレットが立ち去りマリアが1人きりなると軽く息を吐いた。

「(まさか、あのマーガレットから感謝されるとはね。少し意外でしたが、あれが彼女の素の顔なのかしら? まぁ、彼女にも色んな立場がありますしそこまで踏み込みませんが、上に立つ方はどの時代も年齢に関わらず大変ですね)」

 マリアは暫く経ってから控室へと戻って行った。
 そして会場の準備時間も終わり、ルーキーランクの試合が遂に始まった。
 初戦は、男子第1試合のメルト魔法学院・ネアルガ魔法学院戦であり1年生同士が、己が持つ力で全力でぶつかり合った。
 その結果、第1試合はメルト魔法学院が勝利した。
 次の第2戦は、クレイス魔法学院・シリウス魔法学院戦でシリウス魔法学院の強みである戦闘能力で勝利を掴み取った。
 そして第3戦の特別枠・バーグベル魔法学院戦は会場中の誰もが注目していた。
 その理由は、特別枠の選手が遂に登場するからであった。

「おい遂に来たぞ。マジで誰なんだあの白い選手は?」
「凄く強いとか言ってたけど、実際の所どうなんだよ。ただの謳い文句なんじゃねぇか」

 観客たちの中には特別枠で出場する人物の事を疑っている人も少なくなかったが、そのイメージは第3戦の結果で完全に払拭されてしまう。
 結果から言うと、第3戦は特別枠で出場した男子の選手の圧勝であった。
 これは相手の選手が弱かったと言う訳ではなく、相手の代表選手も1年生にしては実力は十分にあったが格が全く違うと言う印象であった。
 特別枠の選手は、相手の魔法や魔力の攻撃、体術も全て防ぎ相手の一瞬の隙を完全につき勝利していたのだ。

 その結果に観客たちは大きく盛り上がっており、学院生たちも驚きの表情をしている者が多く見られた。
 大盛り上がりの中、ルーキーランクの女子側の試合も引き続き行われた。
 そして、第1試合のネアルガ魔法学院・特別枠戦で再び女子側の特別枠の選手が可憐にそして優雅に相手選手を倒した事で会場は再度盛り上がる。
 女性側の特別枠の選手は、男子側とは少し違い圧倒的な力と言うより洗練された魔法や魔力の使い方で戦い、目を奪われる様な戦いであった。
 その後、女子第2試合のクレイス魔法学院・シリウス魔法学院戦では、シリウス魔法学院が勝利し、女子第3試合のメルト魔法学院・バーグベル魔法学院ではメルト魔法学院が勝利しルーキーランクの試合が全て終了した。


 ルーキーランク試合終了時点
  メルト魔法学院   2戦2勝0敗 +20ポイント
  シリウス魔法学院  2戦2勝0敗 +20ポイント
  バーグベル魔法学院 2戦0勝2敗 -10ポイント
  クレイス魔法学院  2戦0勝2敗 -20ポイント
  ネアルガ魔法学院  2戦0勝2敗 -20ポイント
  特別枠選手     2戦2勝0敗
  ※特別枠選手に負けた学院はポイント減少なし


 学院対抗戦2日目 ルーキーランク終了時点の総合順位
  1位 シリウス魔法学院  360点
  2位 王都メルト魔法学院 350点
  3位 バーグべル魔法学院 270点
  4位 クレイス魔法学院  260点
  5位 ネアルガ魔法学院  250点


 私は、会場に表示された順位結果よりも女子の特別枠選手の戦いが頭から離れずにいた。
 凄かった……あんな戦い方もあるんだ。
 私には、いえ、真似しようとして出来る物ではなかったけど、どこかで見たような戦い方だったような気もするんだけど……気のせいかな?
 片手を顎に当てて思い出そうとしたが、全く思い当たるものが出てこなかった為、私の勘違いだったと片付けた。

「何か真剣に見てたね、女子の試合。もしかして好きな子でもいたのクリス?」
「えっ!?」

 突然シンリに話し掛けれて私は驚きの声を出してしまったが、直ぐに違うと否定し特別枠選手が凄くて思い返していたと伝えた。

「あ~あの試合ね。確かに凄かったし、何か戦ってる相手が何か嬉しそうな感じの表情だったのも気になったよね」
「そうだった?」
「うん、そうだったよ。何て言うか、自分の全てをぶつけられて何がダメで何が良いのか実感出来てると言うか、凄く良い体験をしているって感じだったな。僕が見た感じではだけどね」
「良い体験……」
「そんな深く考えないでよ? 僕が見た直感的な物だからさ。ほら、クリスって何かと素直に受け取るからさ、僕の考えは軽く流してくれていいからね」

 シンリは少し焦る様に私にそう言って来たので、とりあえず「分かったよ」と答えた。
 別に深く考えた訳じゃないんだけどな……
 私はそんな事を思っていると、アナウンスが流れた。

『これより15分間の休憩時間を挟んだ後、ミドルランクの試合を開始いたします』
「ここでまた休憩か。おいシンリ、飯買いに行くぞ!」
「えっ、ちょっと」

 そう言って、リーガはシンリを強制的に連れて行きその後をライラックが追って行ってしまう。
 残された私は、何故かふと再び先程の試合の事を思い出して、心の中で自分の全てを出しきり今の自分を改めて知れた彼ら彼女らを、羨ましいと思っていた。
 そして少しの休憩時間を挟んだ後、ミドルランクの試合が始まろとしていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...