とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第180話 アリス・フォークロスとして

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 試合前の選手登場入口前にて私は、ゆっくりと深呼吸をしていた。

「すーはー……すーはー……何か突然衝撃の告白を受けたけど、ひとまず考えない様にしたからさっきよりは緊張はしてないな」

 私は深呼吸を終えて、軽く頬を叩いて改めて準備運動を始めた。
 するとそこにメイナとジェイミがやって来た。

「やぁ、アリス。緊張してるんじゃないかと思って様子見に来たよ」
「思っていたよりガチガチじゃないね」
「メイナ~ジェイミ~」

 私は2人の方へと近付いて行き、メイナに抱きついた。

「ちょっとどうしたのさ、急に」
「何か2人の事見たら、急に抱きついたくなった」

 その後私はメイナに抱きついた後、ジェイミにも抱きついた。

「そう言えばハグって、誰かが言っていたけど幸福感を得られたり、リラックス出来たりするらしいよアリス」

 私はジェイミから離れ、メイナの言葉に「そうなの?」と問い返す。

「それじゃ、あながちアリスの行動は間違ってなかったという事か」
「そうそう。自然とアリスは自分を落ち着ける行動をとってたという事ね。私たちも来た意味があったってわけ」

 そんな2人に私は深々と頭を下げて「ありがとう」と伝え頭を上げると、メイナが腕を組んでジッと私の方を見て来た。

「な、何……メイナ?」
「う~ん。いや、何て言うかここ2日間で、アリスの振る舞いがコロコロと何か変わってる気がしてさ。たぶん気のせいかと思うんだけど、第2学年になってから急に大人っぽくなった雰囲気だったんだけど、昨日からたまに第1学年の頃のおっちょこちょいな部分があると言うか、自然と言うか、そんなのを感じてたんだよね」
「あ~何かメイナの言う事は分かる気がする。今のアリスの方が親しみがある感じだな。別に否定する訳じゃないが、進学してからはちょっと先輩的な感じだったな」
「え……いや、そう? ちょっと進学して雰囲気を変えてみようかな~て思ったけど、まぁ上手く行ったり行かなかったりで、あははは……」

 私は咄嗟にパッと思い付いた事を口に出して、ここ2日でマリアと入れ替わって表面化されてしまった違和感を残さない様にしようとした。
 すると2人は疑う事もなく、私の言葉を受け入れてくれたが私としては嘘を付いたので少し心が痛んだ。
 だが、ここで入れ替わっていた事や男装して他の学院に入学していた事までバレてしまったら、それこそ最大の問題になるので申し訳ないと思いつつも友達の2人には嘘を付いた。
 そして会場にてミドルランクの女子側の試合開始のアナウンスが流れ始めたので、私は2人に背を向けて軽く息を吐き「おしっ!」と声を出して、気合を入れた。
 直後私の背後にいた2人が私の前に分かれて立つと、私に向けて片手を出してきた。

「分かってるかもしれないけど、勝って来い! あんたなら相手が誰だろうと引けは取らないよ!」
「全部出しきってきな。こんな機会は滅多にないんだから、やり過ぎって言われるくらいやって来い!」

 2人の言葉の直後、会場から私の名前が呼ばれたので私は2人が出した片手づつに対して、両手を上げて歩き出しハイタッチをした。

「あぁ! 期待に応えてみせるよ!」

 そのまま私は歩いて行き、会場へと出て行くと大きな歓声を浴びせられた。

『さぁ、両選手が出てきました。ミドルランクの女子第1試合は、王都メルト魔法学院からはジュリル・ハイナンス。クレイス魔法学院からはアリス・フォークロスの対戦です!』

 うわぁっ……想像以上に会場の中心にいると歓声の凄さが分かる。
 少し大運動会の時に似ているけど、その時以上の人がここに居るからその時以上の声圧で少し萎縮しそうになるな……何となくトウマの気持ちが分かったよ。
 私は会場の雰囲気に呑まれないように、一度瞳を閉じで小さく深呼吸しているとジュリルが話し掛けて来た。

「アリス、まさか昨日の話が実現するとわね。少し驚きですわ」
「そうだね、ジュリル」
「……貴方、何か昨日会った時と雰囲気が変わりましたか? 何と言うか、少し親しみやすいと言うか棘がないと言いますか」
「し、試合前にリラックスしてたからじゃないかな?」
「まぁいいですわ。それよりも、昨日の事は覚えていますわよね? 今更無しになんてしませんわよね」

 昨日のマリアが勝手にやったやつの事か……確か私が勝てばルークとの距離はそのままで、負けたら正しい距離感でジュリルの恋の邪魔もしないだったけ? う~ん、私が言ったんだけど私じゃないんだよな……でも、そこは承諾するしかないよね。
 ま、まぁ、私とルークが近付いたとしてもそんな変な事にはならないと思うし、ジュリルの邪魔もするつもりはないから、その辺は大丈夫だよね。
 と考えて私はジュリル問いかけに「えぇ、大丈夫よ」と返答した。
 私はそんな事よりも、ジュリルとこうやって正面からぶつかれる事に心を躍らせ始めていた。

 ジュリルは二代目月の魔女と呼ばれており、こんな形ではあるが今の私が憧れている月の魔女に、どれほど近付いているかをジュリルと戦う事で確認出来ると思い既に力が入り始めていた。
 やばいなこれ、緊張と言うよりワクワクの方が勝ち始めたな。
 こんな機会この先絶対にないだろうし、ここで私がジュリルに勝てれば私も成長しているし、目標へと近付いたと実感出来るよな。
 あ~早く始まらないかな。

「何をそんなにニヤニヤしてますの?」
「へぇ?」

 私は無意識にニヤついた顔をしていたらしく、ジュリルに指摘されて始めて気付き恥ずかしくなり片手で隠した。

「い、いや、その、ちょっとジュリルと戦えるのが楽しみと言うか、今の自分が二代目月の魔女にどこまで通じるかと思っていたので」
「なるほど。さすがは私に喧嘩を売って来た事だけはありますわね。やる気満々と言う事ですわね」
「手加減なんていらないよ。私は今の貴方の全力とぶつかりたいの」
「手加減なんてしませんわよ。約束の事もありますし、二代目月の魔女としても負ける訳にはいきませんからね」

 それを聞いて私はジュリルよりも先に戦闘態勢をとると、やる気満々の私を見たジュリルは小さく笑みを浮かべると遅れて戦闘態勢をとった。
 すると試合開始のカウントダウンが始まった。
 ここまで1日目競技を見て、2日目代表選手たちの試合を見て来て心の中で私も全力で誰かと、何も気にせずにぶつかり合いたいと思いはしていたが、今の私がそんな事をしてもいいのかと言う気持ちがあったので勝手に抑えていた。
 だけど、皆の競技と試合を見た事で、私の抑えつけていた心が刺激されマリアにわがままを言ってしまった。
 しかも相手があのジュリルであり、余計に抑えきれなくなったんだと今なら分かる。
 でも、あのまま抑えつけていたら私は絶対に後悔していたと思う。

 あ~マリアにわがままを言って、ルークにも協力して貰って、メイナやジェイミからは背中を押してもらったりと、私は色んな人から色んなものを貰ってばっかりな気がするな。
 だけども、そのお陰で今私はここに立てている。
 だからこそ、私は悔いのない様にジュリルと全力でぶつかって、自分の現状を改めて知るんだ。
 今だけはクリス・フォークロスではなく、アリス・フォークロスなのだから、憧れである月の魔女の様になるために何が足りないかをジュリルを通じて見つけるんだ! それが、私の夢を叶える為になるなのだから。
 そしてカウントダウンがゼロとなり、私とジュリルの試合が始まった。
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