とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
233 / 564

第232話 卒業生研究発表資料室デート

しおりを挟む
 私たちが卒業生研究発表資料室に向かって歩いている中、通り過ぎる教室ではそろそろ学院祭終了なので片づけを始めている教室もちらほらと目にした。
 だが、まだ学院祭は終了していないので出店などは最後まで売り続けようと生徒たちが声を出して呼び込みをしていた。
 一般人の方たちもまだ校内に沢山おり、最後まで学院祭を楽しんでいた。
 私たちとすれ違う人たちは一瞬だけ私たちの方を見るが、そこまで気にする事無くそのまますれ違って行った。
 そして、卒業生研究発表資料室に向かう途中でグラウンドが視界に入りチラッと見ると、中心に大きな薪を運んでいる生徒たちと教員の姿が目に入る。
 ん? 何の準備をしてるんだろ?
 私は歩きながらその方向へと視線を向けていると、ルークが気付いて答えてくれた。

「あれは後夜祭の準備だよ。ああやって薪を組んで最後に火を付けるんだ」
「へぇ~そんな事するんだ。後夜祭はダンスパーティーってシンリから聞いてたから、てっきり室内だと思ってたよ」
「後夜祭は生徒主導で、例年外でやる事になっているんだ。一応一般の人も参加して一緒に最後まで楽しもうと言う趣旨でやって来ているらしい。だから、人数が多くても問題ない外でやってるんだ」
「そうだったんだ。意外と詳しいね、ルーク」
「例年各寮長たちがリーダーとして動いているから、それを知っていたたけだよ」

 私はその話を聞いて、やはり寮長や副寮長は色々な仕事に追われて忙しんだと勝手に思い、以前私のわがままに付き合ってくれたオービンに申し訳ない気持ちになった。
 その後、私たちは卒業生研究発表資料室近くまでやって来て、入口に男性教員が1人立っているのを目にする。
 そのまま私とルークはその教員に話し掛けて、まだ卒業生研究発表資料室に入れるかを確認するとまだ大丈夫と言ってもらえたので、そのまま部屋へと進んで行った。
 部屋に入るとそこは、寮内にある小さな図書館に似ている作りになっており、様々な棚に卒業生の研究発表資料が収められていた。
 更には、研究時に作ったと思われるレプリカなどの実物品も展示用ケースに飾られていたりもした。
 部屋には私たち以外には誰もおらず、静かな空間になっていた。

「すっごい! こんなになってるんだ!」

 私は目を輝かせながら研究発表資料タイトルと見たり、展示用ケースに近付いて見つめていた。
 そんな私をルークは優しい顔で見ながら、自分も棚にある研究発表タイトルに目を向けていた。

「俺も初めて来たが、こんなに研究発表資料があるとはな。大図書館にもあるのは見た事あるが、そこにあったのは簡易的な物だったんだな」
「それね! 分かるわ~確かに大図書館にある研究発表資料は、すごく分かりやすくまとめられているだけど、私としてはもう少し具体的に知りたいと言う物もあって、大図書館を探したりしたんだよね」
「そ、そうだったのか?」
「そうよ。あ~こんな魅力的な場所だったなんて、何で学院祭の時しか解放してないのかな? 毎日来たいくらいなんだけど」
「(たぶん、そんな事を思うのはお前だけだぞ)」

 と、ルークは心の中で思いつつ、それは口には出さなかった。
 その後ルークは気になった研究発表資料タイトルを手に取って、中身を読み始めた。
 私も気になっていた研究発表資料タイトルを探し出し、中身を熟読し始めたが、これは限られた時間で読みたい物に目を通すのは厳しいと思い、断腸の思いで重要箇所と気になった所だけ目を通して別の物へと移った。
 そのまま私たちは、互いに気になった研究発表資料を読みつつも、互いにおすすめの物を間に話したり、知らない用語などを私はルークに訊いたりして時間を過ごしていた。
 そうだ、もしかしたらここになら卒業生でもある月の魔女の研究発表があるかもしれない。
 私はそう思い、いくつもの棚を探し始めたがどこにも月の魔女と書かれた物はなかった。
 ん~さすがに月の魔女とは書かれてないか。
 もしかしたら、その名前であるんじゃないかと思っていたけどないか。
 そうなると、本名って事になるけど私知らないんだよな~……う~ん、さすがにそれはどうしようもないよね。
 でも、ここまで来たら諦めたくないんだよね、どうにかして知る方法はないかな。
 私は腕を組んで頭を悩ましていると、突然私の前に一冊の研究発表資料が差し出されて来た。
 突然の事に私は驚き、差し出して来た方を見るとそこには表にいた男性教員が立っていた。

「えっ、な、何ですか急に?」
「いえ、お探しの物がある様子でしたので、お持ちしたんですよ」
「え?」

 私は差し出された研究発表資料を手に取って、タイトルの下に書かれている名前を見ると、何故かそこだけ黒いもやが掛かっていた。

「あ、あの、これ作者にもやみたいのがかかっていて誰だか分からない物なんですけど」
「それは月の魔女の本当の名前が書かれていますので、あえて隠しているのですよ」
「えっ!? これって月の魔女の研究発表資料なんですか!?」

 私が少し興奮しながらした問いかけに、男性教員は優しく頷いて来た。
 こ、これが月の魔女の研究発表資料。
 私は生唾を飲み込み、渡された研究発表資料を開こうとしたが、その前に一度止まり本当にこれが月の魔女の研究発表資料なのかと思ってしまった。
 現に、作者は黒いもやで不明で、見知らぬ男性教員が突然私が探していた物を持って来た事に違和感を感じ始めた。
 何でこの人は私が探していた物が分かったのかしら? と言うか、いつの間に近付いて来たの? 全然気づかなかった。
 私は男性教員に対して、この人は本当に教員なのだろうかと言う疑念の目を向けた。

「どうしたんです? 読まないんですか?」
「あの、これは本当に月の魔女の研究発表資料なんですか?」
「えぇそうですよ」
「では何故、私がそれを探していると分かったんですか? 一度も口には出していませんし、そもそも貴方は外に居ませんでしたか?」

 すると男性教員は、そのまま黙り込んでしまう。
 怪しい……この人、本当にこの学院の教員なの? ちょっと前にはタツミ先生の偽物が紛れ込んでた事件もあったし、もしかしたらこの人も教員とかじゃなくてそう言う人なのか?
 私はそう思いつつ、いつ何が起きてもおかしくない様に心の準備と体を直ぐに動かせる様に男性教員から見えない所でかまえた。
 すると男性教員は腕を組み始め、何か考え始めた後ため息をついた。

「やめやめ、こんな茶番するべき事じゃなかった」

 男性教員が腕組みを止めて、片手を振りながらそう話し始めた。
 急にこの人は何を言い出したのかと思い、私は首を傾げた。
 直後、男性教員が軽く指を鳴らすと今まで目の前にいた男性教員の姿が一瞬で変わり、魔女が被っている様な帽子を被った女性へと変わったのだった。
 まさかの出来事に私は「えっ!?」と声が出てしまう。

「いや~昨日振りだね、アリス。覚えているかい? 私の事」

 そう訊ねて来た女性が、被っていた帽子を軽く上に上げて顔を私に見せて来た。

「……あっ! えっ、リリエルさん!?」
「あたり」

 男性教員だと思っていた人物は、昨日初めて出会った人でもあり、母親であるリーリアや学院長のマイナなどが学院生時代の担当教員をしていたリリエルであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

処理中です...