とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第235話 私の心

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 私は思わず変な声が出てしまう。
 その直後、ルークの方から声を掛けられる。

「おいクリス、さっきから変に声を出してるが大丈夫か? 他に誰もいないからって、内容に没頭し過ぎて変な声を出すなよ」
「ちょ、ちょっと驚いただけよ!」
「後、さっきから独り言が多いぞ」
「分かってるわよ!」
「(本当かよ? 独り言って言うより、誰かと話してる様な感じもするが、気のせいか?)」

 そんな事をルークは思いつつ、目を通していた研究発表資料に意識を戻した。
 一方で私はと言うと、リリエルに小声ならがに強めに言い返した。

「急にそんな事訊かないで下さい! と言うか、私があいつの事好きなわけないです! 私とルークは相性は良くないんです!」
「本当? 見た記憶ではそんな風には見えなかったけど?」
「っ!? 何の記憶を見たんですか?」

 私はリリエルに追求するが、リリエルは小さく「う~ん」と言うだけであった。
 この人、さっき私の記憶を見た時、いつどこでどんな事をしている私を見たの?

「リリエルさん!」
「アリスがルークから告白紛いの事をされた時」

 その言葉を聞いて、一気に私は前日祭の時の記憶を思い出す。
 忘れていた訳ではない。
 だって、ルークからもそれ以降その話をしてこないし、当の本人から答えはいらないと言っていたから……
 そう、本当に忘れていた訳ではないのだ。
 ただ私は、それから目を逸らしていただけであり、その直後に誘拐事件が起こったりとそんな事を考える余裕もないと理由を作り、自然と心の底へと押し込んでいたのだ。

「それに、他の奴からも好意を寄せられているわね」
「っ……」
「リーリアとは逆ね。まさか、そんなにモテる女だったのね、アリス」
「わ、私は別に何も」
「はぁ~罪な女ね。アリス、そのままだと嫌われるわよ。それか、愛想を付かされて結局独りぼっちになるわよ」
「なっ」

 私が思わぬ言葉に固まっていると、リリエルは私の額に軽くデコピンをして来た。

「もし、そうなりたくないと思うなら、逃げてないで向き合いなさい。相手に任せないで貴方の選択、決断をしなさい」
「……」
「答えを出す事で、関係性が崩れ何もなくなってしまうのでは思う事が怖い? それとも、答えを出すと言う行為そのものが出来ない?」

 リリエルからの問いかけに、私は何も答える事が出来ず、そのまま顔をそむけて少し俯く。
 するとリリエルは、私に背を向けて話し掛けて来た。

「まぁ、絶対に向き合えとは言わないわ。それも貴方の選択なのだろうから。でも、何にしろ必ず答えは出さなければいけない事は頭にとめておくのよ」
「……リリエルさんは、今までに似た様な選択や決断を迫られた時、どうしたんですか?」

 私の口からは、咄嗟にその言葉が出ていた。
 こんな事誰にも相談出来ないと思い、この場でリリエルからアドバイスだけでも貰おうと思い、口に出していたのだ。
 リリエルは暫く黙って私の方を見てから口を開けた。

「教えん。そう言う事は、簡単に人に訊くな。訊いたら、それに流される事があるだろ? だから、存分に悩め」

 そう答えるとリリエルは、私から離れて行く。
 そして私から少し離れた所で一度止まり、もう一度私の方を振り返って体を向けて来た。

「それじゃ次は、良き未来で会おう」
「え? それはどう言う」

 と、私が言いかけた直後リリエルは目の前から一瞬で姿を消してしまい、私は目を疑った。
 そのまま私は手元に残された研究発表資料に視線を移した。

「私自身と向き合うか……」

 そして私は持っていた研究発表資料に三度目の手をかけた。
 しかし、三度目も今までと同じ様に開く事は出来なかった。
 と言うより、開く事を途中でやめたのだ。
 今の私じゃ、何度やっても同じ結果だろうね……見た気持ちはある。
 だけども、開く勇気がない。
 心のどこかで怖気づいている感じだ……
 今まで人に対して色々と言って来たけど、私もそんな偉そうに言えるような人ではなかったんだね。
 そんな事を思い、私は持っていた研究発表資料を目の前の棚に戻した。

「ん?」

 その時だった、戻した研究発表資料作成者のもやが一部薄くなっていた事に気付いた。

「・ム? 真ん中付近かな? でも、どうして急にもやが薄くなったんだ?」

 私はその場で目を細めて他の文字も見えるかと思ったが、他の文字は一切見えなかった。
 元々、名前には興味がなかったが見えてしまったら、興味が出て来てしまい暫くその場でにらめっこする様に見つめていると、ルークがやって来た。

「何してんだ、アリス?」
「へぇ!? ル、ルーク……いつから見てたの?」
「お前が研究発表資料をじっと見始めた所からだ」

 私はそんな所から見られていた事に恥ずかしくなり、ルークから顔を逸らした。

「そんな事より、そろそろここを締めるらしぞ。さっき教員が俺を見つけて言って来た」
「そう。じゃ、出て行かなきゃね」

 私がそこ答えるとルークは先に出口へと向かって歩き出す。
 私はと言うと、少しだけ先程戻した研究発表資料を見つめてから、ルークの後を追った。
 そして卒業生研究発表資料室を出ると、そこには入る時にいた教員とは別の男性教員が立っていた。

「君たちで最後かな?」
「はい。そうだと思います」

 ルークがそう答えると、そこへアナウンスが流れ始める。

「『現時刻を持って、2日目学院祭が終了となります。そしてこれより、グラウンドにて後夜祭の準備をしていますので、ご参加される方はお集まり下さい』」

 アナウンスが終わると、男性教員が私たちを交互に見て来た。

「後夜祭が行われるから、良かったら参加して行くといいよ」
「ありがとうございます」

 ルークがそう答えると、ルークは私の手をとってそのまま歩き始めた。
 私はルークに握られた手をただ見つめつつ、ルークに付いて行くように歩いていた。
 そして男性教員から少し離れた所で、ルークが私に話し掛けて来た。

「あの様子じゃ、俺たちがこの学院の生徒って気付いてないな。良かったなアリス」
「うん……」

 ルークは私の少し元気のない返事を変に思ったのか、足を止めた。
 そして、握っていた手に私の視線がある事に気付いたルークは、そっと手を離した。

「悪い。急に握ったりして」
「いえ、別に謝らなくていいよ。少し驚いただけ……」

 そのまま少し気まずい雰囲気になったが、そこへ後夜祭に向かう人たちが楽し気な会話をしながら通り抜けて行く。

「……後夜祭、見に行くか?」

 私はルークからの言葉に、少し間を空けてからゆっくりと頷いて答えた。
 そして私は、ルークとほんの少しだけ距離を開けたままルークの後を歩いて行った。
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