とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第270話 第二期期末試験⑯~自分勝手を変える~

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「うっ!? な、何だ……急に体が重い……それに話しづらい感じだ……」
「体も熱い気がするな。それになんかぼやけて見える」
「っ……ガードルか。あいつ、何を使ってやがる……」

 ニックたちはガードルの『ウイルス魔法』により一部体の機能が低下し始めていた。
 効果の現れ方はそれぞれであり、個人差があるのだった。
 ガウェンは身体機能と筋力の低下、ガイルは体温調節機能と視力の低下、ニックは魔力と反応速度の低下が発生していたのだった。

「(どうなっているんだ。体の調子がおかしい……思っている事と行動にズレが出てる。それに魔力も下がっている。他の2人も同じ現象か? いや、反応からして違う症状が出てるのか?)」

 ニックは自分に起こっている状況を冷静に分析・判断し始める。
 そして直ぐに元凶であるガードルへと攻撃をしようとするが、体がズレて動く事と周囲の魔法陣の影響で思い通りに動けずにいた。
 ガイルやガウェンに代わりに伝えようとしても、思っている言葉と口に出す言葉がズレるため訳が分からなくなり、上手く伝わらなった。

「(くそ! 厄介過ぎる! 何なんだ、この魔法は!)」

 一方その頃、ガードルは想像も絶する痛みに右腕をニックたちに向けたまま左手で抑えつけ、悶えていた。

「うっぐぅぅっっ……」

 私とベックスはガードルが何か魔法を使った事が分かり、ニックたちに何かをかけているのは分かったが、何が起こっているのかが全く理解出来ずにいた。
 ガードルが何か使って、ニックたちを足止めとさらにプラスで何かをしているって事は分かるけど、どうしてガードルは苦しんでいるの? 止めるべきなの? どうすればいいの?
 私がどうすればいいかと迷っていると、ベックスがガードルに問いかけた。

「ガードル。話せるなら、簡潔に単語だけでもいいから教えてくれ。俺たちの判断がつかない」

 するとガードルはゆっくりと私たちの方に顔を向けて来た。
 その顔は冷や汗が流れ、顔色も悪くなっていたがゆっくりと口を開き話し始めた。

「今は……能力低下の……魔法をかけている……これは……その使用中の代償」

 その言葉で私とベックスは、やっとそこで状況を完全に理解したのだった。
 能力低下……いや、今はそれは後回しよね。
 ガードルはニックたちの足止めをしてれてる、だからここから一気に逃げる事も出来る。
 それにガードルへの負担が大きいって言う事もあるから、早くしなくちゃ。
 私は直ぐにこの場から逃げれる様に、ゴーレムの創造を始めようとするがそこでガードルが話し掛けて来た。

「これは一度きり……二度目はない……逃げるか……ここで倒すか……改めて決めてくれ……クリス」
「えっ」

 私は思ってもいなかった言葉に動きが止まってしまう。
 私はこの場からいち早く逃げる事だけを考えていたので、ガードルから戦うという提案がされると思ってもいなかったのだ。
 ニックたちは強敵だ。
 さっき少し戦っただけでその強さは、今のうちのチームでは勝てないと分かるほどだ。
 だからこそ逃げると言う選択肢だったのだが、今、この状況だけ見れば私たちのチームにも少しだが勝ち目はあると思ってしまった。
 するとベックスも私に決断を委ねる言葉を掛けて来た。

「クリス。どうする?」
「……どうするって、そんなの」

 私がそこまで言いかけた時に、ガードルは痛みに耐える限界が来てその場で崩れ倒れてしまう。
 その結果、ニックたちを拘束していた魔法陣も消えるのだった。

「ガードル!」

 私とベックスは直ぐにガードルに駆け寄り、ベックスが倒れたガードルを起こした。
 ガードルはまだ意識はあったが、かなりの疲労で少しやつれていた。
 それを見て私は、やはりここは逃げるべきなんじゃと思っているとガードルが口を開くと少し細れた声で話し出した。

「後は頼むよ、クリス。あ~死ぬような事はないから安心して。ちょっと、精神的にボロボロなだけだから」
「……何も言わずに、そんな状態になる様な事をするんじゃねよ」
「ごめん。僕が勝手に、一緒に肩を並べたいと思ったんだ。自分勝手な事して、ごめん」

 私はそこでどうするかの決断を決め、立ち上がりニックたちの方へと歩き始めた。

「自分勝手な事なんかじゃない。チームため、俺たちがニックたちを退けるためだったと、俺が変えるよ!」

 そのまま私は、両手以外にも両脚もゴーレム武装をし『ガスト』を発動し、一気にニックたちとの距離を詰めた。
 ニックたちは動きが鈍くなっていたのか、反応が遅れていた。
 私はそれを見て、1人ずつ対処していく事に決め、最初にガイルの方に方向を切り替え、ガイルの懐に入り込み両腕を腹部に当てた。
 そして『ストーム』を放ち、そのまま魔力創造で吹き飛ばした先の壁から鎖を創り出し、質力を使いガイルの両手・両足を拘束し、そのまま壁へと引き寄せた。
 更にそのまま腹部や首も拘束し、完全に壁に張り付け状態にした。

「くそ! 動けん!」
「まずは1人」

 私はそのまま振り返り、次にガウェンの方を向きガイルと同じ手法を行おうとし近付いた時だった。
 ガウェンは手から離していた剣を直ぐに握り、私に向かって振りかざしていた。
 だが、その速さは先程より遅く何とか持ち上げて振り下ろしている感じであった。
 こっちもゴーレム武装を一部だけだが、そこまで長時間の維持は出来ないから、別の方法で拘束する。
 私は振り下ろされた剣に向けて右拳で殴り掛かり、同時に『バースト』を発動しガウェンの手から弾き飛ばさせた。
 そして、右足を軸とし私は左足回し蹴りをガウェンへと叩き込むが、ガウェンはそれを咄嗟に受けとめた。
 するとガウェンが声を上げた。

「ニック!」
「っ!?」

 私は咄嗟に振り向くとそこにはニックが飛び掛かりながら殴り掛かって来ている姿があった。
 すぐさま私は両脚から『インパクト』を発動し、掴んでいたガウェンを引き離し、右足で『インパクト』の勢いで飛び上がり、そのまま体を捻じりニックへと蹴りを叩き込んだ。
 しかしニックは、それを寸前で腕で防ぎつつ蹴り飛ばされた。
 私はその時ニックの口元が何かを唱える様に動いている事を確認し、その場から『ガスト』を使い瞬時に回避すると、私が先程居た場所に強力な雷が振り落とされるのだった。
 そのまま私は両手を地面に付いていたガウェンに近付き、その状態で両手足を魔力創造で固定し『メタル』で直ぐに破壊されない様に強固にさせた。

「っ、この体勢での拘束は、厳しいな」
「悪いなガウェン」

 私はそう言ってニックの方へと視線を向けて、一気に突っ込んだ。
 第一期期末試験で戦った時や先程の攻撃から私は、ニックとは距離をとる方が不利になると思っていた為、距離を詰めて接近戦に持ち込み一気にかたをつけると考えたのだ。
 しかしニックはそれを予期していたのか、既に罠を仕掛けていた。
 私が踏み出して近付くと、地面から槍の様な物がいくつも私目掛けて飛び出て来たのだ。
 だが私は、それを少し受けつつニックへと近付くと、その間もニックは口元を動かし詠唱魔法を使っていた。
 それを発動はさせまいと、私は一気に飛び掛かる様にニックとの距離を詰め『インパクト』を発動させながら拳を突きだした。
 拳は見事にニックの腹部に届き、突き飛ばしていたが同時にニックが使った詠唱魔法により、私の真下から勢いよく地面がつきあがりそのまま私も腹部に重い一撃を受けてしまう。
 私は倒れずに踏ん張りつつ、仰向けになって倒れているニックの下へと向かった。

「……いってぇ……あんな危ない槍の中、普通突っ込んでこないだろ。命知らずかよ」
「俺も余裕がなかったんだ」
「はぁ~……油断したな」

 ニックのその言葉に私は何も返さずに、ゴーレム武装を解き魔力創造でニックの両手足を拘束し、ガウェン同様に『メタル』で強固にして私はガードルとベックスの元へと向かった。
 するとガードルはベックスに肩を借りて立っていた。
 私は2人と顔を合わせてから「今のうちに行こう」とだけ伝えると、2人はただ頷いてくれた。
 そのまま私たちは、メダルがある方の通路へと少し急ぎ足で進んで行った。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「うっ~~あっはぁ~……まだ寝足りない」

 そう呟いたのは、邪魔者として試験に参加にしているイルダであった。
 イルダは試験開始後、全く動かずにその場で壁にもたれ掛かりウトウトし、暫く眠っていたのだった。

「さすがにやる事やらないと怒られるよな……」

 そう言って、小さくため息をつくと歩き始めるイルダ。
 すると曲がり角付近から、マルロスが偶然現れて声を掛け来た。

「ん、偶然ですねイルダ」
「……」
「イルダ?」

 イルダが黙ったままマルロスの方を見ていると、不思議に思ったマルロスが覗き込む。
 だが全く反応がなかった。

「何だか分からないけど、あっちに今から行くんだが、一緒にどうだ?」
「……うん、いいぞ」

 やっと口を開いたイルダに、少し安心したマルロスはイルダを通り越し先頭を歩き始めるが、イルダはその場から全く動かなかった。
 それに気付いたマルロスは立ち止まり、振り向いた。

「どうしたんだ、イルダ? 何かあったのか?」

 その問いかけに、再びイルダは暫く黙ってからため息をついてから口を開いた。

「お前、誰だ?」
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