とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第273話 第二期期末試験⑲~はい、アウト~

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「これ以上戦って、トウマ君たちに何のメリットがあるんだい? そのまま倒れて、俺が立ち去るのを後ろの2人の様にするべきなんじゃないのか?」

 オービンから出た言葉に、トウマの後ろで倒れ動かずにいたリーガとライラックがドキッとする。

「メリット? そんなの考えてないですよ……」
「なら、どうして立ち上がる? この試験で邪魔者と戦う意味は何にもない。俺ならやられたふりをするか、直ぐに逃げるね。試験で重要なのは、指定された物を持ち帰る事からね」

 トウマはオービンの考えを聞き、小さく笑う。

「そうですよね。普通そう考えますよね。俺もそう思います」
「トウマ君、言っている事とやっている事が矛盾しているよ」
「あ~正確に言えば、考えてましたです」

 そう言うと、チラッと後ろの2人を見てから話し続けた。

「何と言いますか、自分勝手な事なんですが、俺が思うリーダーって言うのはこんな場面でも屈指ず、仲間を最後まで守るイメージなんですよ」

 トウマは突然自分が思い描くリーダー像について話し始める。
 その訳は、3人きりと言う小さい集まりであり、それは試験で勝手に決められたものであるが、そこでリーダーとして頼られた事がきっかけであった。
 始めは2人が誰かに面倒事を決めてもらおうと言い始めただけだと思っていたが、リーダー呼ばれたり頼られたりした事だけで、動機としてはとても単純であるがやりがいに目覚めていたのだった。

「勝手な思いですし、2人からすればいい迷惑かもしれないです。でも、俺は今だけはこのチームのリーダーなんです。だから、ここは俺が思う……いや、俺がリーダーとして仲間を守る為に、オービン先輩に倒される訳にはいかないんです!」

 トウマの思いはオービンだけでなく、リーガとライラックも顔を少し上げて聞いていた。
 2人はトウマの決意に自分たちが今どうするべきか悩んでいると、オービンが嘲笑った。
 思いもしてなかった行動にトウマは少し驚き、リーガとライラックはムッとした表情をした。

「試験を分かっているのかい、トウマ君? これはチーム戦。どうチームとして動けるか見られているんだよ? それなのに、自分勝手な思いで他の2人を巻き込んで、俺に邪魔され続けるのはどうなんだい?」
「っ……」
「リーダーと言うなら、この場は2人に合わせるべきなんじゃないのかい? それがチームの為だろ? 仲間を守るうんぬんより、試験でどう評価してもらうかじゃないのかい?」

 オービンの言葉にトウマは、何も言い返す事が出来なかった。
 トウマはそれを聞き、確かにそうだと思ってしまった為であった。
 オービンが言っている事は間違ってなく、今は試験中であり、自分の私情にリーガとライラックを巻き込んでいると分かりつつ、行動をとっているので明らかにチームとしては協調性がない様に見えているだと思ってしまう。
 そうしてトウマは俯き始めると、オービンは更にそこへ追い打ちをかけるように口を開く。

「リーダーは、君が考える様な単純な事ばかりじゃないんだよ。1人で何もかも背負うなんて無理だし、そんな事出来る人はいないよ。だからこそ、理想の人として物語に出てきたりするんだよ」
「なら、俺がこの頼りないリーダーを支えますよ」
「俺もこの筋肉を、ひ弱なリーダーに預けるぜ」

 そこに割り込んで来たのは、リーガとライラックであった。
 2人は同時にトウマのそれぞれの方に手を乗せてオービンに言い返すのだった。

「っ! お前ら、なんで」
「おいおい、ここはバシッと決める所だろうがトウマ」
「そうだぞ。今の所は、俺たちの顔を見て軽く頷き、決め台詞をガツンとオービン先輩に言う場面だ」
「いや、だって」
「はぁ~さっきまでかっこよかったのに、急に頼りねぇなこのリーダーは」
「全く同意見だ。それと、俺たちががっつりと支えてやるって言ったんだから、俯いてるんじゃねぇ!」

 リーガがそう言うと、トウマの背中を思いっきり叩き曲がっていた背筋を正した。
 そしてトウマが2人の顔を見て「ありがとう」と呟き、オービンの方を力強く見る。

「オービン先輩。俺はリーダーとして、この場からは退きません! 貴方が退くまで、ここから動きません!」

 そう言い切ったトウマとリーガやライラックの迷いのない顔を見て、オービンは小さく優しく笑った。

「と言う事は、俺は君たちを倒さないと他の人の邪魔に行けないと言う訳だ」

 その直後、片腕を上げると魔力を手の平に凝縮しすると、それをトウマたちへと向けた。

「君たちの覚悟、見せてくれ」

 オービンはそう言うと手の平から凝縮した魔力の球を放つ。
 すると、それはたちまち三頭の龍へと変化しトウマたち目掛けて突っ込んで行く。
 トウマは直ぐに両手を前にだし、特異体質の力でシールドを創り出すとリーガとライラックは、トウマの肩と背中に手を当て支える体勢をとる。

「俺たち、全員でこの場を乗り切るんだ!」

 トウマの声と共にリーガとライラックも「おう!」と叫び、無意識に魔力をトウマに流し始めるとトウマの展開していたシールドが厚く大きくなる。
 そこへオービンが放った攻撃が直撃すると、食い破る様に進むオービンの攻撃とそれを通すまいと防御し続けるトウマたちの一進一退の攻防が行われる。
 直後、大きな爆発が起こり一帯が煙に覆われるが、徐々に晴れて行くとトウマたちは爆発の勢いで、後方へと飛ばされていたが直撃はしていなかった。

「防いだ……防いだんだ!」
「おぉー! すげぇ俺たち! あのオービン先輩の攻撃を防いだ!」
「やれば出来るんだぞ、俺たちだって!」

 と、3人は喜んでいるとオービンが煙の奥の方から声を掛ける。

「喜ぶのはまだ早いんじゃないのかな?」

 そう言われ3人がオービンの方を向くと、そこには先程と同様の凝縮された魔力の塊が3つ浮いていた。
 するとトウマたちの目の前で、それを更に合わせて凝縮して1つの塊を創り出した。

「さて、これでさっきの3倍……いや、それ以上の威力が出るね」

 トウマたちはその言葉に、表情が少し強張り冷や汗をかくが、再び3人は先程と同じ体勢をとり始める。

「大丈夫! 俺たちなら出来る!」
「そうだ! やれる! 一度で来た事は、二度目も出来る!」
「1人じゃなく、3人いるんだ! どんと来いだ!」

 そう声を出し自分たちを奮い立たせる。
 そしてオービンが、凝縮した魔力の塊を放とうとした時だった。
 突然、オービンの背後にタツミが現れて前に突き出していた腕を掴み上げるのだった。

「はいオービン、アウト」

 まさかの光景にトウマたちは何かが起こっているのか理解出来ず「……へぇ?」と言う気の抜けた声が出るのだった。
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