とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
284 / 564

第283話 特化への可能性

しおりを挟む
「その辺の話は後にするとして」

 え……後にするって、後で追求とかされるの?
 私がそれに対して少し身を震わせていると、エリスは立ち上がり自由にお使い下さいと書かれたコーナーに向かった。
 そこから置かれた紙とペンをとって、私の所へと戻って来た。
 そして、エリスはおもむろに紙に対して何やら絵を描き始めたのだ。
 何書いているんだろ?
 私はただエリスが書いている所をじっと黙ったまま見つめていると、絵を描き終えて私の方に視線を向けて来た。

「今の貴方は、これね。そして、今出来る事や使える力がこうね」

 エリスはそう言いながら、書いた絵に丸して線でつなぎながら話し出した。
 よくその絵を見ると、私の似顔であり周囲には、私が使ってきた技や魔法などがイメージ絵として描かれていた。
 分かりやすく私の現状が表されてる。

「この中で一番力が強いのは、この全身武装しつつ魔法が使えるこれね。そしてこれは、他の要素から創り上げたものとも言えるわよね?」
「は、はい。確かに、ダンデたちから体術や魔力質量に魔力付与を学んで身につけたからこそ生み出せたと言えます」
「なるほどね。外的要因もあったと。なら、その力はまだ可能性を秘めていると、私は思うよ」
「え……可能性?」

 私はエリスの言葉を受け入れる事が直ぐには出来なかった、
 その訳は、ゴーレム武装とは全てを出し切りそれぞれの力を最大限に使えるようにと、合わせたものであったからだ。
 あれ以上何か手を加えたら、維持も出来なくなり力んなてほとんど使えなくなる。
 それは既に実験済みだからこそ、私はそう言えるのだ。
 私もゴーレム武装を創り出した時に、他にも色々と試したが上手くは行かなかった。
 だからこそ、今のゴーレム武装の状態が限界で完成型であり、これ以上の可能性などないのである。

「どうしたの? 急に黙り込んで。何か問題でもあるの?」
「……問題、と言いますか……その、ゴーレム武装に可能性はない、です」
「そうかな? 私はそう思わないけど」
「根拠なく言ってる訳じゃないです。ゴーレム武装の可能性については俺も、色々と試しました。でも、どうしても形を保てず、力も上手く使えずに終わってるんです」
「ふ~ん。例えば、どんな事をしたの?」

 エリスの問いかけに私は今まで試した事を全て伝えた。
 維持している力のバランス力を上げての威力上昇、追加の魔法能力付与、装備形状の変化、使用時間延長の為の使用魔力調整などなど。
 それら全て異なる結果であったにしろ、結果的には今の状態より劣るものであった。

「なるほど、なるほど。既に思い付くものはやりつくしたと。それじゃ、こういう発想はした?」

 するとエリスはゴーレム武装のイメージ絵から2本の線を伸ばした。

「私から見れば、あなたのそのゴーレム武装状態はマルチタイプ。だから、そのマルチの力を一点へと集中させるの。そう、例えばパワーやスピードと言った特化型タイプへね」
「特化型……確かに全く同じ発想ではないですけど、形状変化に伴って試した事はあります。でもその時は、武装状態がいびつ過ぎて維持できなかったんですよ」
「それは今のマルチタイプを維持しようとしたからじゃないの? そうではなく、完全に振り切るのよ。調整なんて気にしない、形も関係ない、その力を出す事だけに特化した状態。私はそんな可能性が秘められていると思うわ」

 無茶苦茶よ、そんなの。
 例え出来たとしても、使い物になるかすら怪しい。

「まぁ、これはあくまで私の意見だから。どうするかはクリス次第よ」

 私は再びそこから黙りだし、エリスが書いた絵の方を見つめた。
 私が考えて実行したゴーレム武装の可能性。
 それら全て実行した結果もうないと決めていたものを、エリス先輩はまだ可能性があると言って来る。
 確かに一点に極振りした試しはない……ここで否定する事は簡単だ。
 それに現状、私は自分でどうしようか決められずエリス先輩にアドバイスを求めてたんだ。

「……エリス先輩」
「なに?」
「俺の実験に付き合ってくれますか?」
「ん~そうね~。言い出したのは私だけど、タダでって言うのもね~」

 そうよね。
 さすがに何のメリットもなく、時間拘束されてくれる訳ないわよね。
 私はそう予想していたので、交渉材料として思い付いた事を近くの紙に書きだし、それをエリスに見せつけた。

「!? 本気? クリス?」
「本気も本気。嘘偽りなしですよ、エリス先輩」
「ふふ。分かったわ。そんなの出されたら、やらない訳には行かないわね。いいわ、手伝ってあげるわ」

 そして私の交渉は成立したのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「で、兄貴。俺を呼び出したのは何の件なんだ?」
「あぁ。ここならいいだろ」

 オービンはルークを連れてとある教室に入り、窓の方へと歩いて行く。

「兄貴?」
「あ~そのなんだ。夏休みの時は、城に帰って来なかっただろ?」
「そうだな。あの頃はまだ、こんな感じでもなかったし、帰る理由もなかったしな」
「そう、だよな」
「?」

 ルークは、何かオービンの様子が変な事に気付き始める。

「兄貴、何か変だぞ? 本当に用があるのか? ……それとも、兄貴の病気に関する件か?」
「あ、いや、それではないんだ! 本当にその件ではないから」

 そう言われて、ルークは安堵の息をつく。

「悪いルーク。変に言い躊躇ったから誤解させたな。呼び出したのは、冬休みに入ったら一緒に城に帰って来て欲しいんだ」
「城に? 親父や母さんに何かあったのか?」
「いや、父上母上と言うか、お前がいないと困る事なんだよ」
「?」

 ルークはもう何の事だか見当がつかず、首を傾げてしまう。
 するとオービンは小さく息を吐いてからルークに近付き、肩に手を置いた。

「ルーク、お前に見合い話が来たんだ」
「……はぁ?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

9回巻き戻った公爵令嬢ですが、10回目の人生はどうやらご褒美モードのようです

志野田みかん
恋愛
アリーシア・グランツ公爵令嬢は、異世界から落ちてきた聖女ミアに婚約者を奪われ、断罪されて処刑された。殺されるたびに人生が巻き戻り、そのたびに王太子マクシミリアンはミアに心奪われ、アリーシアは処刑、処刑、処刑! 10回目の人生にして、ようやく貧乏男爵令嬢アリーに生まれ変わった。 もう王太子や聖女には関わらない!と心に決めたのに、病弱な弟のために王宮の侍女として働くことに。するとなぜか、王太子マクシミリアンは聖女ミアには目もくれず、男爵令嬢アリーを溺愛し始めて……。 (頭を空っぽにして笑えることを目指したコメディです。2020年に執筆した作品です。本作を読みたいというお声があったため再掲します)

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

処理中です...