とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第282話 女の勘

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「2人共、試験お疲れ様」
「ありがとうございます、オービン先輩」
「それで兄貴は、どうしてここに?」
「ちょっとお前に用があってさ」

 オービンはそう言うってルークに視線を向けた。
 ルークは「俺?」と自分を指さしながら、少し驚いた表情をしていた。

「悪いねクリス君。ルークと楽しい時間を過ごしている所を邪魔して」
「えっ……いやいやいや! ぜっっぜんそんな事ないですから! 楽しい時間なんて過ごしてないですから!」
「そうなのかい?」

 私は少し首を傾げるオービンに対して、大きく首を縦に振って答えた。

「はぁ~兄貴がわざわざ俺を訊ねに来て呼び出されるとはね。ちょっと前まで考えられなかったな……」
「……そうだな。それじゃ、いいかルーク?」
「あぁ。分かった。クリス、そう言う訳だから、またな」

 そう言うとルークはオービンの方へと歩いて行く。
 そしてオービンは私の方に軽く謝る様なジェスチャーをして来て、ルークを連れて立ち去った。
 私は2人を見送った後、小さくため息をついた。
 とりあえず、変に絡んでくるルークから解放されて良かったかな……いや~あれがこれからも続くのかと思うと、ちょっと嫌だな。
 そんな事を考えてしまい、私は再度ため息をついてしまう。
 いや、もうそれを考えるのは止めよう、きりもないし。
 私は軽く首を横に振って、図書館へ向けて歩き出した。
 そもそも、どうして私が図書館へと向かっているのかと言うと、それはルークに次ぎこそ勝つためにどう自分を強化するかヒントを探す為だ。
 今のままでは次の勝負に勝てる気がせず、期末試験ではルークが魔道具を使用しており力の制御が出来ていなかったが、次には必ず制御し更に強くなっていると予想出来る為、私も何か変化しなければ昨日の試験勝負の二の舞だ。
 そして次の勝負までそんなに期間もない事から、私は少し焦ってもいた。

 短期間で強くなるなんて普通に考えれば無理だし、新しい魔法を考えたとしてもそれがルークに通じるかも分からないし、完成させられると断言も出来ない。
 ……そう考えると、意外と私行き詰まりかけてるのかも。
 再告白の答えとか試験勝負とか色々とあるけど、今まで戦って全部負けっぱなし。
 普通にそれが悔しいし、元々はあいつの鼻を折るって息巻いて来てたのにそれが一度も出来ないまま1年が経つと言うのを考えたくないのだ。
 あいつが男だからとか、私が女だからと言うのは勝負には関係ない。
 現にルークは私に対して全力でぶつかってきてくれていると思っている。
 だからこそ、全力で戦って負けるのが悔しいのだ。
 あいつに勝ちたい、あいつに参ったと言わせたい、それが一度だけでもいいから、私はルークに勝ちたいのだ。

 そんなにムキになる必要はないと誰かは言うかもしれないが、私は負けず嫌いなのだ。
 宣言した事や約束した事は絶対に達成したいし、負けたまま終わらせたくない。
 その為だけと思われるかもしれないが、私はその為だからルークに勝ちたいのだ。
 私はそんな事を思っていながら大図書館に到着する。
 この日の大図書館は、いつも以上に静かで全く人気を感じなかった。
 そっか、期末試験も終わったから来る人が減って元に戻ったのね。
 その後私は魔力に関する本や、魔力分類に関する本などを漁り、使えそうな本を持って机で読み始めたが、今の私には時間がかかる物であり途中で読むのを止めた。
 あ~……何かしらヒントになるかと思ったけど、どれも新しく始めないと難しいものばかりで、今求めている物じゃないな。

「はぁ~……どうしよ」
「な~に、試験が終わったのにため息なんかしてるのよ貴方は」

 と、突然真後ろから声をかけれて私はビクッと驚き振り返ると、そこにはエリスが立っていた。

「エリス先輩……驚かさないで下さいよ。急に声をかけれてビックリするじゃないですか」
「それは悪かったわ。でも、クリスこそどうして大図書館に何ているのよ? 今日から実質冬休みなのに、勉強でもしているの?」
「あ~まぁ、勉強と言いますか、対策と言いますか……そんな所です」
「ふ~ん。物好きね、冬休みだって言うのに勉強するなんて」

 そう言うと、エリスは私の隣の席に座り私が読み漁っていた本をぺらぺらとめくりだした。

「魔力に魔力部類に関する本ばかり、勉強と言うより何か新しい魔法でも覚えようとしてるの? それとも強くでもなりたいの?」

 それだけ見ただけでエリスは私が何をしようとしていたのかをさらっと当てて来たのだ。

「そんな本見ただけで、そこまで分かっちゃうんですね」
「別に分かった訳じゃないわ。そうかなってかまかけただけ」
「そうだったんですね……あはは、俺はそれに引っかかったわけですね」

 私が苦笑いしながら答えると、エリスは私へと近付いて来て小声で話し出した。

「貴方自分が女子だと言う認識ある? もしかして、前の学院でもそんな事ばっかりしてたんじゃないでしょうね?」
「っ! ……」
「はぁ~隠せてないわよ、そんなに分かりやすく反応されたら。まぁ、貴方の人生だしあんまり口うるさく言うつもりはないけど、たまには試験後くらいは息抜きしたらどうなのよ」
「そうしたいのは山々ですけど、色々とありまして……」

 私はルークの件など濁らせて答えると、エリスは何かピンと来たのかニヤッと笑う。

「はは~ん、ルークね」
「!? べ、別にルークは関係な」
「だから顔に出てるって言ってるでしょ。全然隠せてないわよ、クリス」

 エリスは私のおでこを人差し指で押して来た。
 私は押されたおでこを片手でさすった後、表情に出ていると言われた事を改善しようと両手で何度か頬を押し続けた。
 それを見たエリスは私の行動がおかしかったのか、声を出して笑い始めた。

「何で笑うんですか、エリス先輩」
「だ、だって、頬を押す姿が面白くって、あははは」
「そ、そんなに笑わなくたっていいじゃないですか……」

 私は笑われた事で恥ずかしくなり、直ぐにその行動を止めた。
 顔が熱く、耳も真っ赤になっているのを私は感じエリスから視線を逸らした。
 エリスはその後私に謝った後、どうして強くなりたいのかを問いかけて来た。
 私は初めはそっぽを向いて「言いません」と答えていたが、笑ったお詫びに相談に乗ってくれると言われ、私は少しなびいてしまう。
 エリスの凄さは知っている為、そんな人にアドバイスをしてもらえるならそんなチャンスを逃す手はないと直感で思った為だ。
 私は暫く考えた後、このまま1人で答えのない道を進むよりも差し出してくれた手を取る事を選び、所々ぼやかしながらエリスに事情を話した。

「なるほどね。そんなに勝ちたいんだ、ルークに」
「だって、悔しいじゃないですか。ずっと負けっぱなしって言うのも……わ、俺だけかもしれないですけど」
「そんな事ないと思うわ。だって、貴方からしたらルークはライバルなんでしょ? まぁ、告白されたとかうんぬんはなしとして」
「は……っ!? 今、何て言いました!?」

 私は聞き間違えかと思い、もう一度エリスに訊き返してしまう。

「え? ライバル?」
「じゃなくてですね、今告白とか言いませんでした?」
「あ~そっち。言ったわよ。それがどうしたの?」
「私、そんな事言ってないですよね?」
「あれ? そうだっけ?」

 私は動揺し過ぎて一人称が私になっている事さえ気づかず、何故エリスがルークからの告白の事について知っているのか気になってしまう。

「ななな、なな、何で知ってるんですか……誰にも言ってないのに……」
「私も知ってた訳じゃないわよ」
「どう言う事ですか?」

 するとエリスは肩肘を机につき、頬に手を置いて私の方を笑顔で見て来た。

「女の勘、かな?」

 ……エリス先輩、こわっ……
 その瞬間、私は背筋に冷たいものが走った。
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