とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第285話 頬への優しい宣言

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 第二期期末試験が終了し、学院は正式に冬休みに入った。
 だが、まだ冬休み初日と言う事もあるのか変わらない日常が続いていた。
 朝起きて食堂兼リビングに行くと、皆が朝食を食べているし、授業がないのでだべっている人たちや街に遊びに行く人たちと様々であった。
 そして私はと言うと、ある場所へと向かっていた。
 そこはグラウンドから見える校舎近くであり、学院生が通る道から少し外れ、木々で人目につかない様になっている場所である。
 私がそこへ辿り着くと、既にシルマが両腕を組んで待っていた。

「早いね、シルマ」
「あんたが遅いだけ。自分が呼び出してる立場なの、忘れてないわよね?」
「忘れてないって。これでも集合時間より早く来たつもりだったけど」
「まぁいいわ。モランにはもう言ってあるし、たぶんあの子の事だから、もう待っているはずよ」
「そうか。ありがとう、シルマ」

 そう、今日は以前シルマを通してモランと改めて話し合う日なのである。
 あれからシルマの方で細かい日付けなどを設定してもらい、試験が終了して冬休みに入った今日になったのだ。

「お礼を言うなら、シルマの告白でも受け入れろ」
「痛い所をつくな……」
「はぁ~いいから、さっさと行け」

 シルマに早く行けとジェスチャーされ、私はモランの元へと走って向かった。

「全く、モランもどうしてあんな奴を好きになったんだよ」

 と小さく愚痴を漏らし、シルマはその場を立ち去り始め茂みを出た所で、急に声を掛けられる。

「シルマ? どうしてそんな所から?」
「えっ、ジュ、ジュリル様!? あ、いや~これはその、何と言いますか……」

 シルマが咄嗟に言い訳を考え答えようとしたが、ジュリルはそんな事には触れずに近寄って行く。

「まぁ、そんな事はいいわ。今時間ある?」
「へぇ……あ、あります、けど」
「なら少し訊きたい事があるのだけど、いいかしら?」
「あたいに訊きたい事?」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


 私は小走りでモランとの約束の場所である、中庭に辿り着く。
 するとそこには、シルマが言った通り既にモランが本をペラペラとめくりながらベンチに1人で座っている姿があった。
 私は息を整えてから、モランの元へと歩き始め声を掛けようと思ったが、どう声を掛けるべきか思い動きが止まる。
 え~と、ここは普通に「よっ、モラン」とか言っていいのかな? だってこうやって会うのは、あの日以来だし、もう少し丁寧な方がいいんじゃない?
 そんな事を思い、私は上げかけた手を下ろし、すっと壁の方へと寄り考え始めた。
 ここは「久しぶり、モラン」の方が……いや「調子はどうだ、モラン」がいいか? でもな、どうなんだそれは。
 もっとこう、下手に行くような「お早いですね、モランさん」……ないな。ないない。
 それなら「何読んでるんだ?」で入るのはどうだろ? う~ん、何か軽い感じがするな。
 私はあ~でもない、こ~でもないと壁に向かってぶつぶつと呟いていると、モランがそんな私を見つけて先に声を掛けて来たのだ。

「クリス君? どうしたの、そんな所で」
「え、あ、あぁ~いや、ちょっとな。あははは……よ、ようモラン」
「うん。久しぶりだね、クリス君」

 私は少し恥ずかしそうに返事をすると、モランは笑顔で返事を返してくれた。
 そのまま私はモランの元へと近付き、そこで座らず立ち止まった。

「え、え~と今日は」
「座って話さない?」
「そう、だよな。あはは、悪い」

 モランにそう言われて、私はそっとベンチに腰を掛けた。
 その後、話をどう切り出していいか分からなくなり、テンパっているとモランが口を開いた。

「クリス君は期末試験どうだった?」
「え、試験? あぁ、俺はそんなに良くなかったかな。前の試験よりも悪くて、悔しかったよ」
「そうなんだ」
「モランはどうだったんだ?」
「私もクリス君と同じ、かな。学科でいい点取れなくて、実力の方もイマイチだったんだよね」

 私はそれを聞いて一瞬、私との事が少し影響しているのではないかと思ってしまう。
 だが直ぐにモランは、私の件は関係ないと少し慌てるように話してくれた。

「あれは私の実力不足の結果。誰のせいでもない。と言うか、試験結果を人のせいにする人なんてこの学院にはいないと、私は思うよ」
「……そう、だな。……モラン、今日は時間とってくれてありがとう。その、今日はあの日の事で話がしたくて」

 するとモランは優しく頷いながら「うん」と返事をしてくれた。

「あの日俺は、お前の問いかけから勝手に好意を持たれていると思ったんだ。いや、そう勝手に解釈したんだ。それで俺はお前の好意には答えられないから、傷つかないようにする為には答えを先に伝えて上げるべきだと思ったんだ……でも、それが結果的にはモランを傷つける事になって……」
「そうだったんだね」
「こんな事言ってもただのいい訳でしかないのは分かってし、あの日の答えも変わる事も、ない」
「……うん」
「俺はお前の気持ちを考えたつもりが、そうじゃなかった事を今謝りたい。あの時は、悪かった……」

 私はあの日思っていた事を全て口に出し、モランに頭を下げた。
 するとモランは持っていた本を軽く私の頭の上に乗せて来た。

「クリス君って、結構酷いよね」
「っ……言い返す事も出来ないな」
「またこうやって、真正面から振りに来てるんだからさ」
「いや、それは! ……っ、そう、とも言えるな」

 私は咄嗟に顔を上げるも、モランの言葉は間違っていない為何も言い返さずに認めたのだ。
 そのまま少し顔を俯けていると、モランが持っていた本をいじりながら話し出した。

「意外とあぁやって勝手に気持ちを察しられて、言われるのって結構つらいんだよ。分からないと思うけど」
「……あぁ」
「でも、あの時は私も悪かったの。好意の気持ちを持ってながら言えずにいたし、それを言う勇気すらなくて、それぽい事を訊いて気持ちを確かめようとしたし。そしたら急に跳ね除けられるような返事が来て、こうグワーッと頭の中がぐちゃぐちゃになって、どうしようもなくあの場に居たくなくなったの」

 その話に、私はただ黙ってモランの方に視線だけ向けて黙って聞き続けた。

「そのまま思った事を口に出して、逃げ出したの。その時私は拒否されたと思い込んで、もう顔も合わせられない合わせたくないんだと、どんどんとマイナスな思考になって行っちゃったの」
「……そう、だったのか。やっぱり原因は俺、だよな」
「そうだけど、全部じゃない。私にも原因はあった。だから、これはおあいこ。平等に悪いってことね」
「平等に悪いか」
「そう。だからもう、謝るのおしまい。クリス君が変に思い込む事もない。これであの日の話は終わり」

 モランはそう言うと、軽く開いていた本を両手でパンと閉めた。

「終わり……終わり、か」
「そう。そして、ここからは新しい話……ううん、私からの宣言」

 するとモランは本をベンチに置き、私との間に両手をついて私の方へと顔を寄せて来た。
 私はそれに気付かずに、組んだ両手をただ少し俯いて見つめていた。
 直後、私の頬にモランの唇が優しく当たるのだった。
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