とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
292 / 564

第291話 全寮生大集合パーティー

しおりを挟む
「はぁ~疲れた」

 オービンは2階の休憩所のソファーに腰かける。
 すると同じくソファーに座ったミカロスがため息をつく。

「それは俺のセリフだ。ひとまずは、何とか変に喧嘩も起こらずにパーティーを継続出来ているのは幸いだ」
「いや、本当に助かったよミカロス」
「オービン、そう思っているなら今度からは、俺に相談する前に行動に移すのだけは止めてくれ」
「はい……反省してます」

 あの後、オービンが皆に状況を説明した後、ミカロスがフォローする様に話を進め、何とかオービン寮の皆を納得させ、他寮の皆も一度落ち着かせたのだ。
 これは2人のおかげだけでなく、事前にオービンから誘われていた各寮長と副寮長たちが察して協力した事で何とかまとまっていたのだった。
 元々はオービンが最後のパーティーくらい、全寮で楽しくやろうと思い付き、他の寮長たちに声を掛けていたのだった。
 しかしこの状況は、去年では考えれない状況であった。

 元々各寮が競争相手であり仲良くする様な事はなかったが、オービンたちの代では競争相手ではあったが先輩たちとは違った考えを持っていた。
 競争相手ではあるが、敵ではなく手を取り合えるような関係である事が一番いいと思っていたのだ。
 互いには全く同じ想いと言う訳ではなかったが、似たような考え方であった。
 だが、その時はまだ彼らは上に立つような立場ではなかったので、周りに合わせて過ごしていたが、寮長になり始めて互いに顔を合わせた時に、オービンが己の意思を口にしたのだった。
 その結果、偶然にも似たような思考を持っていた事で各寮の関係が大きく変わり始めたのだった。
 そしてそれは今年の大運動会にて、後輩たちにも同じ様な流れが生まれ始める。
 学院は変わりつつあり、それを象徴する様に今まさに目の前で各寮全員が集まり、楽しく隔たりもなく皆が騒いでいる。

「にしても、結果的にはオービンの想像通りになったんだな。俺は、難しいと思っていたんだがな」
「予定していた流れじゃないし、ミカや皆のお陰さ」

 するとそこへやって来たのは、ワイズであった。

「すまなかった。うちのダイモンが勝手に突っ走って」
「いや、ワイズが謝る事じゃない。それに、俺もダイモンの性格を甘く見てた」
「それこそ、我輩が制御する所だった。だが、一瞬だけ目を離したら、もう突入してた」
「だけど、その本人はもう楽しんで下で騒いでるからいいんじゃないのか、ワイズ」

 ミカロスはそう言って、ワイズを近くのソファーに座らせる。

「お前も大変なのは知ってる。副寮長の大変さは、副寮長しか分からないからな」
「ミカロス。あはは、お前に言われると妙に納得しちまうな」
「まぁ、今は形式上寮長だがな」
「お~い、俺を仲間外れにするなよミカ」
「たまには副寮長どうして、愚痴りたい時もあるんだよ。それに、こういう場でもあるだろ?」

 ミカは珍しくオービンに言い返すと、オービンは「た、確かに……」と呟き引き下がる。

「何だ、もう始めてるのか」
「いい所に来てくれた、エメル~」
「っ……おい、ミカロス。何だコイツ? 何か変じゃないか?」
「後はよろしくお願いします、エメル寮長」

 ミカロスは笑顔でエメルに返事をすると、エメルは直ぐにミカロスがオービンを擦り付けて来たと察する。

「よし、エメルも座った座った。俺たちも寮長同士で話そうぜ」
「いや、いつもそれはやってるだろ寮長会議」
「あ~そうだった……」

 オービンはそこで落ち込み出し、エメルはその様子にため息をつく。

「(何なんだ今日のコイツは? 何かめんどいな)」

 エメルはチラッとミカロスの方を見るが、既にミカロスはワイズと共に副寮長トークに花を咲かせていた。

「(来るタイミング、ミスったかな。はぁ~仕方ない。相手してやるか)」

 渋々エメルはオービンの相手をし始めると、そこに元気よくやって来たのはイルダであった。

「お~なんだなんだ! 寮長同士で話してるのか? しかも、オービンとエメルと言う組み合わせで」
「イルダ」
「おい、お前も何かテンションおかしくないか?」
「そうか? 確かに今日が楽しみにしてたからテンション高いかもな! てか、僕も混ぜてよ」

 イルダは座ってる2人の肩を組む様に混ざり始め、騒がしくなり始める。
 そして一方でミカロスとワイズの元に、マルロスがやって来る。

「それじゃ、自分はこっちかな?」
「お~マルロス」
「副寮長はこっちで合ってるよ」

 マルロスはミカロスとワイズ近くのソファーに座り、話に混じり始める。

「こうやって、副寮長だけでの話は初めだよね?」
「確かにそうだね」
「そう言えば、スニークの姿がないがどこにいるんだ?」
「スニークなら、ダイモンと同じ様に下で後輩と騒いでるよ」
「ほぉ~珍しいな。こう言う場は苦手だと思っていたが、意外と後輩と交流する奴だったんだな」
「う~ん、自分が見た限り、あれは言い合いと言うかじゃれ合いみたいな感じだったよな……」
「まぁ、あいつもあいつなりに楽しんでるってことで。それにヒビキも後々に顔は出すだろう」
「それは少し雑や捉え方じゃないのか、ミカロス」
「どうせ、あいつらも後で来るだろうし、先にこっちはこっちで始めようぜ。パーティーなんだから、楽しまなきゃ勿体ないだろ?」

 ミカロスの言葉にワイズとマルロスは顔を見合わせると「確かにそうだな」と返し、改めて乾杯し楽し気に話始めるのだった。
 またオービンたちも騒ぎ始め、下の階では全寮の生徒たちが入り混じりパーティーを楽しんでいた。
 ある所では、ダイモンが後輩たちと競争していたり、またある所ではスニークが同僚の後輩と何やらヒートアップしており、それを皆で笑いながら見ていたりしていた。
 更に舞台上では、やけくそになったのかトウマたちが歌を歌い、それを皆が合いの手入れたりノリノリに楽しんでいた。
 そして私はと言うと、何故かダンデとルークの腕相撲の審判役をやらされていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

冷遇されている令嬢に転生したけど図太く生きていたら聖女に成り上がりました

富士山のぼり
恋愛
何処にでもいる普通のOLである私は事故にあって異世界に転生した。 転生先は入り婿の駄目な父親と後妻である母とその娘にいびられている令嬢だった。 でも現代日本育ちの図太い神経で平然と生きていたらいつの間にか聖女と呼ばれるようになっていた。 別にそんな事望んでなかったんだけど……。 「そんな口の利き方を私にしていいと思っている訳? 後悔するわよ。」 「下らない事はいい加減にしなさい。後悔する事になるのはあなたよ。」 強気で物事にあまり動じない系女子の異世界転生話。 ※小説家になろうの方にも掲載しています。あちらが修正版です。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

結婚前夜に婚約破棄されたけど、おかげでポイントがたまって溺愛されて最高に幸せです❤

凪子
恋愛
私はローラ・クイーンズ、16歳。前世は喪女、現世はクイーンズ公爵家の公爵令嬢です。 幼いころからの婚約者・アレックス様との結婚間近……だったのだけど、従妹のアンナにあの手この手で奪われてしまい、婚約破棄になってしまいました。 でも、大丈夫。私には秘密の『ポイント帳』があるのです! ポイントがたまると、『いいこと』がたくさん起こって……?

【完結】ケーキの為にと頑張っていたらこうなりました

すみ 小桜(sumitan)
恋愛
 前世持ちのファビアは、ちょっと変わった子爵令嬢に育っていた。その彼女の望みは、一生ケーキを食べて暮らす事! その為に彼女は魔法学園に通う事にした。  継母の策略を蹴散らし、非常識な義妹に振り回されつつも、ケーキの為に頑張ります!

処理中です...