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第305話 マリア隊の初買い物任務
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私の少し早い誕生会の次の日、私は誕生会で思いっきりはしゃぎ疲れ切っていた。
それを分かってくれたのか、マリアが朝から鬼の様に起こしに来ることはなかった。
その為私は、未だ暖かい布団に包まって夢の中である。
そんな私を扉を少し開けて見ていたのは、お兄ちゃんとマリアであった。
「未だぐっすりか」
「よろしいのですか、起こさなくて」
「あぁ、昨日あんな思いもしてるし今日はゆっくりさせておいてくれ。父上母上も了承している」
「承知いたしました」
マリアはそう答えると、開けていた扉をそっと閉めた。
「そう言えば、今日は年末年始に向けた買い出しに行くそうだね」
「はい。メイド長と執事長から買い物リストを貰い、数名を引き連れて近くの街へと行く予定です。もし何かご所望でしたら、言っていただければ」
「いや、特にはそう言うのはないよ。ただ、せっかく街へと行くのだから、少し皆でゆっくりして来てはと思ってね」
「そのようなことは」
「それじゃ、父上と母上に訊きに行こうか」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「いいんじゃないか」
「別に問題ないわよ。買い物も問題なくしてくれれば」
「だってさ、マリア」
「へぇ? いや、いやいやいや、使用人の身でそのような身勝手事は」
「う~ん、それじゃ君たちはどう思うかね?」
私は突然の事に取り乱していると、エリック様が部屋で待機していたメイド長のクォーラと執事長のレジバルドに訊ねた。
「そうですね。せっかくご主人様方からの許可も出ているので、ゆっくりして来ても問題ないと考えます」
「私も同意見です。マリアは優秀なメイドに成長していますが、何故か休みを取りたがらないのが唯一の問題でしたので」
「レジバルドさんにクォーラさんまで」
「一層のこと、マリア隊全員で行ったらどう? 年末年始は忙しくなるし、今は特に急な仕事もないのだから全員で買い物に行って、少しゆっくりして来たら?」
「リーリア様!?」
するとエリックもその意見に笑顔で首を縦に振った。
「そうだね。クォーラにレジバルド、問題はないかい?」
「はい。マリア隊の11名が抜けた所で元々私たち12名、いや今は11名ですね。屋敷の事を全て任されていましたので問題はありません」
「私たちの技術は衰えていませんので、マリア隊が帰ってくる前に全て終わらせられます」
「と、言う事らしいから。マリア隊全員で買い物をお願いするよ。そして皆で少しゆっくりして帰って来る事、いいね?」
「で、ですが」
「これは命令だよ。いいね?」
エリック様にそう言われてしまっては、逆らう事は出来ない。
なので私は「はい、承知いたしました」と返事をした。
するとリーリアがそこで命令に1つ付け加えて来た。
「あ、後街に行く際は使用人服じゃなくて、私服で行くように」
「いや、リーリア様。私服と言われましても」
「大丈夫よ。ね、クォーラ?」
と、リーリアがクォーラの方を見ると笑顔で頷いた。
もしやこれは、先に打ち合わせをされていたのでは?
私はそう疑問に思いつつも、クォーラとレジバルドと一緒に部屋から出てから訊ねた。
「クォーラさんにレジバルドさん、先程の内容はもしや偶然ではなく、先に決められていた事なのですか?」
「流石はマリア。鋭いね。その通りだよ」
レジバルドの返事に私は「やはりですか」と小さく息をつく。
「と言いますか、マリア隊ってどう言う事ですか? 聞いた事ないんですけど」
「あれはリーリア様が思い付きで作った言葉だよ。それに、今回の一件もリーリア様が提案した事よ」
「リーリア様が?」
「リーリア様は、エリック様同様に尊敬できる人物だ。私たち使用人の事までもしっかりと考えてくれているお方だ。知らないと思うが、マリアが居ない間に私たちも同じ様な事をされたのだ」
「え、クォーラさんにレジバルドさんたちもですか?」
「えぇ。あの時は今と逆で、マリア隊の皆が私たちの代わりに仕事をこなしてくれたのよ。でも、全部は上手く行かなかったけど、各々が全力でやってくれたのよ。その事については、リーリア様もエリック様も怒られる事もしなかったのよ」
「私が居ない間にそんな事があったんですね」
私は改めて凄い人に拾って頂き、そんな人たちに一生を尽くせる事が本当に幸せだと感じていた。
「だから、マリア隊も気兼ねなく行って来ればいい。ただし、買い物だけは忘れずにな」
「……はい。分かりました」
「うん、いい返事だ。それじゃ、早速皆を集めて出発の準備だね」
そして私はクォーラとレジバルド共に皆が朝礼を行う為に集まっている部屋へと向かった。
その後、私の方から皆に全て説明し終わると皆は大きく喜んでいた。
一旦朝礼が終わると、レジバルドが屋敷に残る他の者たちを集め、今日の仕事割り当てをし始めていた。
その一方で、クォーラと買い物組ことマリア隊は、着替える為に別室へと向かった。
そう言えばマリア隊の意味訊くの忘れてた……何となく想像はつくけど、後でクォーラさんに訊いておこう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それじゃ、買い物と例の物も頼んだよマリア」
「屋敷の事は私たちに任せて、気にせずにな」
「はい、クォーラさんとレジバルドさん、ありがとうございます」
「お~いマリア隊長。早くしろ~」
「隊長言うな! ジェーン」
私は場所の中から急かして来たジェーンに声を上げると、クォーラとレジバルドは笑う。
「し、失礼しました」
「そんな事はいいから、ほら早く行っておいで」
「はい! それでは行ってまいります」
私は2人に一礼してから、馬車へと向かった。
そして馬車へと乗り込み扉を閉めると、御者を務めるウィルソンが手綱を揺らす。
そのまま私が乗った馬車と、もう一台の馬車も前の動きを見て、御者のジャックが手綱を揺らし馬を進ませ始めた。
そうして私たち全12名は、近くの街へと向かって出発した。
「いや~まさか元部隊皆で買い物になるとはね。ちょっと予想してなかったわ~」
「そうですね。私も驚きました」
「そうよね。そう言えばマリア、クォーラさんに何を渡されてたの?」
「あぁ、手紙よ」
「手紙? 誰宛ての?」
「レイナさん宛てよ」
と、私がそう答えると同車のジェーン・ジェシカ・イェレナは強く反応したが、唯一1人だけ分からず更には硬い表情であった。
「って、何でそんなに硬い顔してるの? リック?」
「だ、だだだ、だってですね。何で俺だけこっちなんですか!? 男俺だけで後は、先輩方ですし気が気でないですよ」
「何言ってんだ、男なら御者してるウィルソンもいるだろ」
「ウィルソン先輩は、ここの空間には居ないじゃないですか」
「何だ~私たちが怖いのか~リック~」
「いえ、決してそんな事はないですよイェレナ先輩……」
そう言ってリックは目を逸らすと、それを見逃さなかったジェーンとイェレナは、ここぞとばかりにリックをいじり始める。
その光景を見て、私は「こんな関係だったか?」と軽く首を傾げているとジェシカが声を掛けて来た。
「いつもの弟いじりみたいなものですから、放っておいていいですよ。いずれ満足したら、2人も止めますし」
「ジェシカがそう言うならいいが、本当に止めなくていいのか?」
「いいんですよ、放っておけば」
「わ、分かった……」
と、ジェシカに少し強く言い切られた後、ジェシカは話を元に戻してレイナの話を始めた。
レイナと言うのは、私がこの屋敷に来た時から居たメイドの1人であり、私の今の役職でもあるメイド次長の前任者でもある。
メイド長であるクォーラさんの補佐に、完璧で的確な指示や仕事も抜かりなく行うメイド次長に相応しい人だ。
今の私より何倍も凄い人でレイナさんに少しでも近づける様に、私も日々頑張っているのだ。
私とジェシカがレイナの話をしていると、ジェーンとイェレナもリックいじりに飽きたのか、話に加わって来た。
「懐かしいなレイナさん。めちゃめちゃ厳しかったな~」
「私とイェレナさんと一緒に教わる中で、一番ジェーンが叱られてましたものね」
「そうそう、物凄く目を付けられてたもんな」
「あ、あの~さっきからレイナさん? って言う方の話をしてますが、誰ですか?」
リックのその問いかけに私たちは一瞬ポカンとしてしまったが、レイナはジェーンたちの教育係を兼任した後に屋敷を出て行ったので、それ以降に屋敷に来たリックたちは知らないのだ。
そのため今レイナを知っているのは、ここいるリック以外の者たちだけだった。
その後街へと着くまで、リックに対し私たちはレイナの話をし続けた。
「おーし、到着だ」
ウィルソンの言葉を聞き、私たちは馬車から降りた。
ジェーンたちは馬車から降りると背伸びをしたり、近くの街を物珍し目で見つめていたりしていた。
私はここまで御者をしてくれたウィルソンとジャックに「お疲れ様」と声を掛けると、2人は気にするなと言う表情で軽く手を上げた。
そして私は皆を集めた。
「ではこれより、買い物分担を行う。全3班、各班リーダーは私、ジェーン、ジェシカ。残りは3名ずつ別れてもらう」
私はその場で各班メンバーを言い渡し、リーダーの2人には3班分に分けた買い物リストを渡し、買い物を開始させた。
「それじゃ、私たちも行きましょうか。シェラ、ノラ、ヘレン」
「はい、マリアさん」
「マリアさん、早く行きましょう!」
「おいノラ、テンション上がり過ぎだ」
ノラとヘレンの様子をシェラは少し冷たい目で見ていた。
そして私たちも目的地へ向けて歩き始めると、ノラが例の問いかけをして来た。
「そう言えばマリアさん、朝礼の時も聞いておもったんですけどマリア隊って何ですか? マリアさんが言い始めたんですか?」
「うっ……忘れてた」
「それは僕も気になってました」
「シェラも気になったろ?」
「私は別に……」
目的地までまだ距離はあるし、その間に話してしまうか。
そう思い私はクォーラから聞いた事をそのまま3人に伝え、そんなたわいもない話をしている間に目的地に着き買い物を始めたのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「よし、ここで私たちの買い物リストは終了よ」
「いや~結構な量ですね」
「ノラ落とすなよ」
「そう言うヘレンも、落とさないで下さいよ」
「分かってるよ」
するとノラがある掲示物を見つける。
「へぇ~最近変な窃盗とか誘拐事件があるだ。ちょっと怖いな」
私はそれを聞き、ノラが見ていた掲示物を見ると皆も読み始めた。
「私はあまり街に来ませんが、よくあるんですか?」
「全くないわけじゃないけど、治安は悪くない街よ。直ぐにここの警備担当の人たちが対処するから、問題ないと思うわ」
「一応屋敷の方も警戒しておきますか?」
「そうね。クォーラさんたちに一度相談してみるわ」
そう提案して来たヘレンは、そこで何か思い出したかの様に再び口を開いた。
「あ、そう言えばさっき店の人に教えて貰ったのですが、今日はどうやら郵便の締切が早いらしいです。年明けに向け今日は来ている手紙などを整理や振り分けをするらしくて」
「そうなの?」
私はそっと内ポケットからレイナ宛ての手紙を出す。
ここから郵便局へはそう遠くないけど、一度買い物が終わったら馬車の所に集合する予定にしてるのよね。
私がそれを放り出して行く訳にも……
そう思い、シェラに視線を向け頼もうかと思った時だった。
「マリアさんは先に手紙を出して来て下さい。マリアさんもレイナさんに手紙を出したいんじゃないんですか?」
「え、どうしてレイナさんの事を? 話した事あったけ?」
「いいえ。姉から話を聞いた事があったので。マリアさんはレイナさんを尊敬しているって」
「ジェシカね」
それを聞くと、ノラとヘレンが近寄って来て私が持っていた荷物を手に取った。
「荷物は任せて下さいよ! そのレイナさん? は、分からないですけど、頼まれた事があるなら先に行っちゃってくださいマリアさん!」
「そうです。誰も文句は言いませんよ荷物はノラの言う通り、俺たちに任せて下さい」
「私の方からジェーンさんたちに伝えておきます」
「皆、ありがとう。それじゃ、頼むわ。出したら私も直ぐに戻るけども、既に全員集まっていたら自由行動していいと伝えて」
「分かりました」
私はそう言い残し、急ぎ足で郵便局へと向かった。
「さ~てと。俺たちも行こうぜ~」
「そうですね」
と、ノラとシェラは振り向き歩き出すが、ヘレンはそのまま立ち止まっていた。
するとシェラが小声で話し掛けた。
「ずっと見ていても気持ちは伝わりませんよ、ヘレン」
「な、なな、何を言ってるんだよシェラ」
「想っているだけでは、何も変わりませんよ」
「お前には関係ないだろ」
ヘレンは少し動揺しながらも振り返り、急ぎ足でノラの近くまで行く。
シェラはそんなヘレンを見て小さくため息をついた。
「男子ってめんどくさ……」
そうして3人は最初に別れた馬車の所へと向かっていた。
一方で私は、郵便局が見えた所で歩くスピードを落とした。
よし、何とか大丈夫そうね。
そう思って一瞬内ポケットに視線を向け、クォーラから頼まれた手紙以外にもう一通レイナ宛ての手紙を見る。
まさかシェラに言い当てられるとはね。
私もまだまだね。
そして手紙を再び内ポケットに戻そうとした時に、視線を逸らしていたので人とぶつかってしまい、私が書いた手紙を落としてしまう。
すると、相手の人はそれが地面に落ちる前にとって私に渡して来た。
「すいません、慣れてない街できょろきょろとしていて……」
「いえいえ、私の方こそ余所見をしていたのが悪いので」
私も謝り、拾ってもらった手紙を受け取ろうと顔を上げた時だった。
その相手に私は言葉が出なかった。
そしてそれは相手も同じく驚いた表情をしていた。
「な……何で、お前がここに居るんだ……」
「……それは……こっちのセリフなんですけど?」
私の手紙を拾ってくれた人物は、タツミ・カミールであったのだ。
それを分かってくれたのか、マリアが朝から鬼の様に起こしに来ることはなかった。
その為私は、未だ暖かい布団に包まって夢の中である。
そんな私を扉を少し開けて見ていたのは、お兄ちゃんとマリアであった。
「未だぐっすりか」
「よろしいのですか、起こさなくて」
「あぁ、昨日あんな思いもしてるし今日はゆっくりさせておいてくれ。父上母上も了承している」
「承知いたしました」
マリアはそう答えると、開けていた扉をそっと閉めた。
「そう言えば、今日は年末年始に向けた買い出しに行くそうだね」
「はい。メイド長と執事長から買い物リストを貰い、数名を引き連れて近くの街へと行く予定です。もし何かご所望でしたら、言っていただければ」
「いや、特にはそう言うのはないよ。ただ、せっかく街へと行くのだから、少し皆でゆっくりして来てはと思ってね」
「そのようなことは」
「それじゃ、父上と母上に訊きに行こうか」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「いいんじゃないか」
「別に問題ないわよ。買い物も問題なくしてくれれば」
「だってさ、マリア」
「へぇ? いや、いやいやいや、使用人の身でそのような身勝手事は」
「う~ん、それじゃ君たちはどう思うかね?」
私は突然の事に取り乱していると、エリック様が部屋で待機していたメイド長のクォーラと執事長のレジバルドに訊ねた。
「そうですね。せっかくご主人様方からの許可も出ているので、ゆっくりして来ても問題ないと考えます」
「私も同意見です。マリアは優秀なメイドに成長していますが、何故か休みを取りたがらないのが唯一の問題でしたので」
「レジバルドさんにクォーラさんまで」
「一層のこと、マリア隊全員で行ったらどう? 年末年始は忙しくなるし、今は特に急な仕事もないのだから全員で買い物に行って、少しゆっくりして来たら?」
「リーリア様!?」
するとエリックもその意見に笑顔で首を縦に振った。
「そうだね。クォーラにレジバルド、問題はないかい?」
「はい。マリア隊の11名が抜けた所で元々私たち12名、いや今は11名ですね。屋敷の事を全て任されていましたので問題はありません」
「私たちの技術は衰えていませんので、マリア隊が帰ってくる前に全て終わらせられます」
「と、言う事らしいから。マリア隊全員で買い物をお願いするよ。そして皆で少しゆっくりして帰って来る事、いいね?」
「で、ですが」
「これは命令だよ。いいね?」
エリック様にそう言われてしまっては、逆らう事は出来ない。
なので私は「はい、承知いたしました」と返事をした。
するとリーリアがそこで命令に1つ付け加えて来た。
「あ、後街に行く際は使用人服じゃなくて、私服で行くように」
「いや、リーリア様。私服と言われましても」
「大丈夫よ。ね、クォーラ?」
と、リーリアがクォーラの方を見ると笑顔で頷いた。
もしやこれは、先に打ち合わせをされていたのでは?
私はそう疑問に思いつつも、クォーラとレジバルドと一緒に部屋から出てから訊ねた。
「クォーラさんにレジバルドさん、先程の内容はもしや偶然ではなく、先に決められていた事なのですか?」
「流石はマリア。鋭いね。その通りだよ」
レジバルドの返事に私は「やはりですか」と小さく息をつく。
「と言いますか、マリア隊ってどう言う事ですか? 聞いた事ないんですけど」
「あれはリーリア様が思い付きで作った言葉だよ。それに、今回の一件もリーリア様が提案した事よ」
「リーリア様が?」
「リーリア様は、エリック様同様に尊敬できる人物だ。私たち使用人の事までもしっかりと考えてくれているお方だ。知らないと思うが、マリアが居ない間に私たちも同じ様な事をされたのだ」
「え、クォーラさんにレジバルドさんたちもですか?」
「えぇ。あの時は今と逆で、マリア隊の皆が私たちの代わりに仕事をこなしてくれたのよ。でも、全部は上手く行かなかったけど、各々が全力でやってくれたのよ。その事については、リーリア様もエリック様も怒られる事もしなかったのよ」
「私が居ない間にそんな事があったんですね」
私は改めて凄い人に拾って頂き、そんな人たちに一生を尽くせる事が本当に幸せだと感じていた。
「だから、マリア隊も気兼ねなく行って来ればいい。ただし、買い物だけは忘れずにな」
「……はい。分かりました」
「うん、いい返事だ。それじゃ、早速皆を集めて出発の準備だね」
そして私はクォーラとレジバルド共に皆が朝礼を行う為に集まっている部屋へと向かった。
その後、私の方から皆に全て説明し終わると皆は大きく喜んでいた。
一旦朝礼が終わると、レジバルドが屋敷に残る他の者たちを集め、今日の仕事割り当てをし始めていた。
その一方で、クォーラと買い物組ことマリア隊は、着替える為に別室へと向かった。
そう言えばマリア隊の意味訊くの忘れてた……何となく想像はつくけど、後でクォーラさんに訊いておこう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「それじゃ、買い物と例の物も頼んだよマリア」
「屋敷の事は私たちに任せて、気にせずにな」
「はい、クォーラさんとレジバルドさん、ありがとうございます」
「お~いマリア隊長。早くしろ~」
「隊長言うな! ジェーン」
私は場所の中から急かして来たジェーンに声を上げると、クォーラとレジバルドは笑う。
「し、失礼しました」
「そんな事はいいから、ほら早く行っておいで」
「はい! それでは行ってまいります」
私は2人に一礼してから、馬車へと向かった。
そして馬車へと乗り込み扉を閉めると、御者を務めるウィルソンが手綱を揺らす。
そのまま私が乗った馬車と、もう一台の馬車も前の動きを見て、御者のジャックが手綱を揺らし馬を進ませ始めた。
そうして私たち全12名は、近くの街へと向かって出発した。
「いや~まさか元部隊皆で買い物になるとはね。ちょっと予想してなかったわ~」
「そうですね。私も驚きました」
「そうよね。そう言えばマリア、クォーラさんに何を渡されてたの?」
「あぁ、手紙よ」
「手紙? 誰宛ての?」
「レイナさん宛てよ」
と、私がそう答えると同車のジェーン・ジェシカ・イェレナは強く反応したが、唯一1人だけ分からず更には硬い表情であった。
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「だ、だだだ、だってですね。何で俺だけこっちなんですか!? 男俺だけで後は、先輩方ですし気が気でないですよ」
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「何だ~私たちが怖いのか~リック~」
「いえ、決してそんな事はないですよイェレナ先輩……」
そう言ってリックは目を逸らすと、それを見逃さなかったジェーンとイェレナは、ここぞとばかりにリックをいじり始める。
その光景を見て、私は「こんな関係だったか?」と軽く首を傾げているとジェシカが声を掛けて来た。
「いつもの弟いじりみたいなものですから、放っておいていいですよ。いずれ満足したら、2人も止めますし」
「ジェシカがそう言うならいいが、本当に止めなくていいのか?」
「いいんですよ、放っておけば」
「わ、分かった……」
と、ジェシカに少し強く言い切られた後、ジェシカは話を元に戻してレイナの話を始めた。
レイナと言うのは、私がこの屋敷に来た時から居たメイドの1人であり、私の今の役職でもあるメイド次長の前任者でもある。
メイド長であるクォーラさんの補佐に、完璧で的確な指示や仕事も抜かりなく行うメイド次長に相応しい人だ。
今の私より何倍も凄い人でレイナさんに少しでも近づける様に、私も日々頑張っているのだ。
私とジェシカがレイナの話をしていると、ジェーンとイェレナもリックいじりに飽きたのか、話に加わって来た。
「懐かしいなレイナさん。めちゃめちゃ厳しかったな~」
「私とイェレナさんと一緒に教わる中で、一番ジェーンが叱られてましたものね」
「そうそう、物凄く目を付けられてたもんな」
「あ、あの~さっきからレイナさん? って言う方の話をしてますが、誰ですか?」
リックのその問いかけに私たちは一瞬ポカンとしてしまったが、レイナはジェーンたちの教育係を兼任した後に屋敷を出て行ったので、それ以降に屋敷に来たリックたちは知らないのだ。
そのため今レイナを知っているのは、ここいるリック以外の者たちだけだった。
その後街へと着くまで、リックに対し私たちはレイナの話をし続けた。
「おーし、到着だ」
ウィルソンの言葉を聞き、私たちは馬車から降りた。
ジェーンたちは馬車から降りると背伸びをしたり、近くの街を物珍し目で見つめていたりしていた。
私はここまで御者をしてくれたウィルソンとジャックに「お疲れ様」と声を掛けると、2人は気にするなと言う表情で軽く手を上げた。
そして私は皆を集めた。
「ではこれより、買い物分担を行う。全3班、各班リーダーは私、ジェーン、ジェシカ。残りは3名ずつ別れてもらう」
私はその場で各班メンバーを言い渡し、リーダーの2人には3班分に分けた買い物リストを渡し、買い物を開始させた。
「それじゃ、私たちも行きましょうか。シェラ、ノラ、ヘレン」
「はい、マリアさん」
「マリアさん、早く行きましょう!」
「おいノラ、テンション上がり過ぎだ」
ノラとヘレンの様子をシェラは少し冷たい目で見ていた。
そして私たちも目的地へ向けて歩き始めると、ノラが例の問いかけをして来た。
「そう言えばマリアさん、朝礼の時も聞いておもったんですけどマリア隊って何ですか? マリアさんが言い始めたんですか?」
「うっ……忘れてた」
「それは僕も気になってました」
「シェラも気になったろ?」
「私は別に……」
目的地までまだ距離はあるし、その間に話してしまうか。
そう思い私はクォーラから聞いた事をそのまま3人に伝え、そんなたわいもない話をしている間に目的地に着き買い物を始めたのだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「よし、ここで私たちの買い物リストは終了よ」
「いや~結構な量ですね」
「ノラ落とすなよ」
「そう言うヘレンも、落とさないで下さいよ」
「分かってるよ」
するとノラがある掲示物を見つける。
「へぇ~最近変な窃盗とか誘拐事件があるだ。ちょっと怖いな」
私はそれを聞き、ノラが見ていた掲示物を見ると皆も読み始めた。
「私はあまり街に来ませんが、よくあるんですか?」
「全くないわけじゃないけど、治安は悪くない街よ。直ぐにここの警備担当の人たちが対処するから、問題ないと思うわ」
「一応屋敷の方も警戒しておきますか?」
「そうね。クォーラさんたちに一度相談してみるわ」
そう提案して来たヘレンは、そこで何か思い出したかの様に再び口を開いた。
「あ、そう言えばさっき店の人に教えて貰ったのですが、今日はどうやら郵便の締切が早いらしいです。年明けに向け今日は来ている手紙などを整理や振り分けをするらしくて」
「そうなの?」
私はそっと内ポケットからレイナ宛ての手紙を出す。
ここから郵便局へはそう遠くないけど、一度買い物が終わったら馬車の所に集合する予定にしてるのよね。
私がそれを放り出して行く訳にも……
そう思い、シェラに視線を向け頼もうかと思った時だった。
「マリアさんは先に手紙を出して来て下さい。マリアさんもレイナさんに手紙を出したいんじゃないんですか?」
「え、どうしてレイナさんの事を? 話した事あったけ?」
「いいえ。姉から話を聞いた事があったので。マリアさんはレイナさんを尊敬しているって」
「ジェシカね」
それを聞くと、ノラとヘレンが近寄って来て私が持っていた荷物を手に取った。
「荷物は任せて下さいよ! そのレイナさん? は、分からないですけど、頼まれた事があるなら先に行っちゃってくださいマリアさん!」
「そうです。誰も文句は言いませんよ荷物はノラの言う通り、俺たちに任せて下さい」
「私の方からジェーンさんたちに伝えておきます」
「皆、ありがとう。それじゃ、頼むわ。出したら私も直ぐに戻るけども、既に全員集まっていたら自由行動していいと伝えて」
「分かりました」
私はそう言い残し、急ぎ足で郵便局へと向かった。
「さ~てと。俺たちも行こうぜ~」
「そうですね」
と、ノラとシェラは振り向き歩き出すが、ヘレンはそのまま立ち止まっていた。
するとシェラが小声で話し掛けた。
「ずっと見ていても気持ちは伝わりませんよ、ヘレン」
「な、なな、何を言ってるんだよシェラ」
「想っているだけでは、何も変わりませんよ」
「お前には関係ないだろ」
ヘレンは少し動揺しながらも振り返り、急ぎ足でノラの近くまで行く。
シェラはそんなヘレンを見て小さくため息をついた。
「男子ってめんどくさ……」
そうして3人は最初に別れた馬車の所へと向かっていた。
一方で私は、郵便局が見えた所で歩くスピードを落とした。
よし、何とか大丈夫そうね。
そう思って一瞬内ポケットに視線を向け、クォーラから頼まれた手紙以外にもう一通レイナ宛ての手紙を見る。
まさかシェラに言い当てられるとはね。
私もまだまだね。
そして手紙を再び内ポケットに戻そうとした時に、視線を逸らしていたので人とぶつかってしまい、私が書いた手紙を落としてしまう。
すると、相手の人はそれが地面に落ちる前にとって私に渡して来た。
「すいません、慣れてない街できょろきょろとしていて……」
「いえいえ、私の方こそ余所見をしていたのが悪いので」
私も謝り、拾ってもらった手紙を受け取ろうと顔を上げた時だった。
その相手に私は言葉が出なかった。
そしてそれは相手も同じく驚いた表情をしていた。
「な……何で、お前がここに居るんだ……」
「……それは……こっちのセリフなんですけど?」
私の手紙を拾ってくれた人物は、タツミ・カミールであったのだ。
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