とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第376話 文通

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「えー!? タツミ先生もクリスの事知ってたんですか!?」
「声がデカいぞ、トウマ」

 ルークに注意され、咄嗟にトウマは両手で口を塞ぐ。

「奥ではクリスが寝てるんだ。わざわざ起こすような事はするな」
「分かってるよ。悪かったて」

 タツミ、ルーク、トウマは奥で寝ているアリスを気にしながら手前の部屋で三人で集まり座っていた。
 そしてタツミから改めて現状について、トウマに説明がされた。

「記憶……喪失!?」
「驚くのも分かるが、それが真実だ。現状治す手段はない」
「そんな! どうにかならないんですか?」
「余計な事をして、症状を悪化させる訳にはいかない。こればかりは、経過観察としか言えない。何がキッカケで思い出すかも分からないしな」
「マジかよ……」

 タツミの話を聞き、トウマは肩を落とした。

「明日以降の事だが、今日はここで問題ないが、連日となると他の教員たちも心配する。だから、変に疑われない様にクリスには明日から普通に振る舞ってもらうつもりだ」
「出来ると思うのかトウマ?」
「出来るかじゃない、やってもらうしかない。何の為に、お前らがいるんだ。同じ班だろ? ならフォローして、クリスが記憶喪失だと言う事を疑われない様にしろ」
「フォローって言われても、具体的はどうしろって言うんですか?」
「そこはお前らで考えろ。俺が皆の前で肩入れすると、余計に怪しまれるだろ。手助けくらいはしてやるから」

 タツミの言葉を聞き、トウマは隣にいたルークへと視線を向けた。

「どうするルーク? フォローって言っても今のクリスを皆と話させない様な制限は出来ないし、必ずどちらかがクリスの近くにいるって感じか?」
「まぁ、それが妥当だな。庇い過ぎるのも変だし、今のアリスにはクリスとして演じて貰いつつ、普通に修学旅行を楽しんでもらうのが一番いいと思う」
「そっか、今はクリスの事は覚えてないアリスだったな。ひとまず明日は班での自由行動だし、様子を見つつ臨機応変にやるって事だな」
「方向性はまとまった感じだな。そしたら今日は、このまま解散だ。お前らはそろそろ夕飯の時間だろ? とりあえず後の時間は好きに過ごせ」

 タツミは軽く手を叩いて立ち上がると、座っていたルークとトウマも立ち上がらせ、軽く背を押して部屋から押し出し始めた。

「ちょっと、タツミ先生。そんな急がなくても、もう少しくらい居てもいいんじゃないですか?」
「俺がゆっくり出来ないだろ。いいから、早く学院生徒として楽しい時間を過ごして来い」

 そのままルークとトウマを部屋の外へと出すと、タツミはアリスの事に言及した。

「クリスは明日の朝の集合時間には俺が連れて行くから心配するな。後、ここには今日はもう来るな。来ても入れんからな。つうわけで、行って来い」

 そう口にしてタツミは部屋の扉を閉めるのだった。
 ルークとトウマは扉の前で立ち尽くしていると、先にトウマが口を開いた。

「何か、強引に追い出されたな。それに何でタツミ先生が俺がクリスの秘密を知っていたのかも、聞くのも忘れた」
「そうだな……ふー、とりあえず夕飯食べに行くかトウマ」
「あ、ああ。てっきりお前は乗り込むんだと思ってたぞ」
「はぁ? そんな事しねぇよ。それより、明日の事についてもう少し話を詰めておこう。アリスのために」
「そうだな」

 二人はそのままホテルの廊下を歩いて行きながら、アリスの名は出さずに明日の事について話し合い始めて食堂へと向かった。
 その後各々に冬の修学旅行1日目の夜を過ごすのだった。
 ある者は、不安を抱きつつも布団へと包まり寝ようとする。
 ある者は、文献を近くの机に置き眠らずに部屋から夜空の星を眺め続ける。
 またある者は、友人たちと会話をして変に考え過ぎない様に気を紛らす。
 そうして夜が更けて、夜が明けてと時間がすぐに過ぎて行き、冬の修学旅行2日目の朝を迎えるのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「よーし、全員揃っているな。それじゃ、これから『ジュヴェリアヴァーベン城』へと移動する。1時間もしないうちに着くからな」
「「はーい」」

 担当教員の言葉に、皆が返事をすると乗り込んだ魔道車が出発した。
 魔道車内では、昨日とは違って騒がしくはなく落ち着いた雰囲気であった。
 理由は一番騒がしかったリーガとライラックが、現在座って寝てしまっている為であった。
 皆は話をしたり、外の景色を眺めたりと様々であり、そんな中アリスの横にはトウマが座り、その後ろにはルークがシンと共に座っていた。

「と言う事で、改めてよろしくな……クリス」
「う、うん。じゃなくて、ああ。よろしく、トウマ」

 二人はぎこちない感じで話し始めた。

「今日は何かあれば、俺かルークを頼ってくれればいいから。必ず近くにはいるからさ」
「ああ」
「とりあえずは、修学旅行だから楽しんで。うん」
「ああ」
「……」
「……」

 そこで二人の会話は完全に止まってしまう。

「(やばい、何を話していいか分からない。今までのクリスじゃないし、変に何か言って気まずくなるのも辛いからな……)」
「(何か変に気を遣わせている感じがする。って言っても、何も出来ないんだよね。どうしよう)」

 するとそこでアリスはある事を思い付き、旅のしおりの余白に文字を書き始めて、トウマをつついた。
 トウマはアリスの方を向くと、旅のしおりを見せられそこに書いた文字をアリスは指さした。
 そこには「トウマと自分はどういう関係性だったの?」と書かれていた。
 それを目にしたトウマは、直ぐに自分の旅のしおりをとり出して、答えを書き始めた。
 そしてそれをアリスに見せると、またアリスは質問をしてトウマが答えるという真横で文通をし始めるのだった。
 アリスは自分の事を口にする訳には行かないが、このままずっと黙ったままでいるのも辛いと思っていたので、少しでも雰囲気を良くしようと自分の事を知るためにトウマに教えてもらうと考えたのだ。
 その後二人は『ジュヴェリアヴァーベン城』に到着するまで、文通をし続けて互いに気まずい関係性を解消したのだった。
『ジュヴェリアヴァーベン城』の真下に到着し、魔道車から降りると周囲には観光客が多くおり、飲食店やお土産屋なども数件あり賑わっていた。
 そして各寮ごとに、坂の上にある『ジュヴェリアヴァーベン城』を目指して歩き始め、城門近くに辿り着いた所で各寮ごとに集合時間や注意事項などの話をして、各班ごとの自由時間が始まった。

「さぁ! 初めての班行動だ。どうする? このまま城の中に行くか? それとも、一度周辺を見るか? 登って来る途中に、店も何件かあったし」
「このまま城でいいんじゃないかな?」
「私もシンと同意見です」
「なるほど。ルークとクリスはどう?」

 トウマがそう訊ねると、ルークは「俺もこのまま城を見たいかな」と口にし、クリスも「お、俺も」と答えたので、このまま城へと入る事に決まる。
 するとトウマが担当教員から班全員分の入場チケット貰いに行ったので、ルークはたちはトウマの帰りを待っているとそこに声を掛けて来た二人組の人物がいた。

「ルーク」

 名前を呼ばれてルークが振り返ると、そこに居たのは昨日出会ったラーウェンとドウラであった。
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