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第375話 自分が自分でない恐怖
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「タツミ!」
「だ、誰?」
「はぁ~お前らか。息抜きに散歩してたのに、面倒事か?」
タツミはため息をつきながら、問いかけるとルークよりも先にアリスが口を開いた。
「貴方は私たちの事を知っている人ね。なら、話が早いわ」
「(私?)」
「(あーもう、だから直ぐにボロが出るって言ったのに)」
直ぐにタツミはアリスの異変に気付くのだった。
「あ、その前に貴方はわた――じゃなくて、俺とはどう言う関係性の人なんだ?」
タツミはアリスからの問いかけにすぐに答えずに、視線をルークの方へと向けた。
「ルーク、これはどう言う冗談だ?」
「冗談じゃない。クリスとしての記憶が一切ないんだよ」
「ちょっと、俺を無視するな」
アリスの訴えにタツミは一瞬だけ視線を向けるが、何も答えず再びルークへと視線を戻した。
「俺じゃ、どうしていいか分からないんだ。助けてくれ、タツミ」
「……はぁ~何で旅行先で面倒事を引き起こすかね、お前らは。偶然俺だったから良かったものの、俺じゃなかったらどうしてたんだクリス?」
「きゅ、急に向いてこられてビックリした……」
「ルークから話くらいは聞いているんだろ? その上で鵜呑みにしてないのは分かるが、もう少し慎重に行動をしろ。お前の立場は、かなり危ういんだ。バレたら家の名にも傷つき、一大事なんだぞ? その可能性があるくらいは、考えれば分かるだろ?」
タツミの真剣で最もな言葉に、アリスは何も言い返せずに黙ってしまう。
そしてそのままタツミはルークにも話をする。
「ひとまずお前も深呼吸しろ。俺もいるんだ、まずは改めて状況整理だ」
そのままタツミがその場を仕切り、簡易的に状況を訊き出し整理した後、詳しい話はここではなく一度ホテルのタツミの個室で行う事になった。
ホテルへと向かう道中に、アリスに対しても今は何も話さずに男子生徒のふりをするように話て、すれ違う他の生徒からも疑われない様にしていた。
アリスもタツミの話を聞き、反省し指示に従って歩いていると、ホテルへと向かう道中で自分が男装している事が誰にも疑われておらず、それが普通であるかのような光景に驚きつつタツミの後をついて行くのだった。
そしてホテルへと到着すると、ある教員がタツミの元へとやって来た。
「タツミ先生、いい所に帰って来ました。急で申し訳ないんですが、一人の生徒が氷に足を滑らせて転んだ際に、手を強くついてしまったらしく一度診ていただけますか?」
「間の悪い。分かりました、直ぐに行きます。お前らはここで、少し待ってろ」
タツミの言葉にルークは頷き、ラウンジで一時的にアリスと共にソファーに座り待機し始めた。
ラウンジには他の生徒も数人いたが、ルークは少し離れた場所にアリスを誘導してそこで共にタツミの帰りを待った。
「(とりあえず、顔見知りはいなくて助かった。変に声を掛けられたら、困るからな)」
「あの、第二王子……さん」
ルークが周囲を少し警戒していると、アリスが突然話し掛けて来て驚いてしまう。
「お、俺か」
「貴方意外にいないでしょ」
「悪い。あまりその呼ばれ方に慣れてなくてな。と言うより、嫌いなんだその呼ばれ方」
「そうなの? じゃ、貴方の知ってる私はどう呼んでいたの?」
「……ルークだ」
「ルーク、ね。分かったわ」
「それでどうした……クリス」
ルークは一瞬アリスの名を口にしそうになったが、誰が聞いているか分からないのでクリスと口にした。
「いや、ただルークが言っていた事が本当なのだと実感したと言いたかっただけ。皆、今の私の姿に何の違和感も感じずにいるのを目にしたし、私たちに挨拶してくる人もいて、私は私が知らないクリスと言う人物としてこの場に居たんだと実感したの」
「……そうか」
「何か変な気分なの。自分の知らない自分が、皆に受け入れられて過ごして来たのに、今の私はそれを知らない。何を考えてここに居たのか、何がしたかったのか全然分からないの。何て言うか、勝手に時間が進んだ感じで私はその時間を過ごしたはずなのに、その時間を知らなくて何か怖いの。私は、私だったのかとか……ごめん、何言ってるか分からないよね。私もまだ混乱してて、こう口に出さないとおかしくなりそうって言うか」
そう口にしたアリスが少し手が震えていたのを見たルークは、その手を上から優しく握りしめた。
「大丈夫。アリスはアリスだったと、俺はお前を知っているから安心しろ。こんな言葉しか言えないが……俺が、付いている」
「(っ……なんでだろ、不安だったからかな? ルークの言葉で少し落ち着くな)」
アリスはルークの言葉を聞くと、少し俯いて「ありがとう」と小さな声で呟くがルークには聞こえていなかった。
一方でルークは今自分で言った言葉を思い出して、人に聞かれたら恥ずかしい事を口にしたと耳を赤くしてアリスから顔を少し逸らしていた。
だがそれでも被せる様に握った手は離していなかった。
「あれ? クリスにルークじゃないか?」
ルークは突然自分の名前を呼ばれた事に驚き、直ぐにアリスから手を離して声がした方へと視線を向けると、そこに居たのはレオンだった。
「やっぱり。でも、どうしてそんな奥に二人っきりで座ってるんだ?」
「レオンか……ちょっとタツミを待っていてな」
「タツミ先生を? 何か怪我でもしたのかい?」
「あ、ああ。クリスが催し物で氷に滑る所で、トウマたちと滑っていたら人とぶつかってな。そこに偶然タツミがいて、念の為にホテルで診てもらう事になったんだ」
ルークは変に嘘を付かずに、アリスの状態を隠しつつレオンに話すと「大丈夫なのかい?」とクリスを心配する声を掛けて来た。
アリスはレオンと話す事はせずに、軽く俯いた状態で頷いて返事をするのだった。
「?」
「とりあえず外傷はないが、念の為だから心配はないとタツミは言っていたから大丈夫だ」
「それならいいが」
レオンは何故かしゃべらないクリスに変に思い、本当に大丈夫なのかと思い再度訊ねようとした時だった。
「ルーク、クリス。終わったぞ、こっちに来い」
タツミが遠くから二人を呼び掛けると、ルークは立ち上がりクリスを先にタツミの方へと行かせる。
「じゃ、俺たちは行くから。そんなに心配しなくても大丈夫だからな、レオン」
「お、おう」
レオンはその場から立ち去るクリスとルークの後ろ姿を見送ると、入れ替わる様に背後からダンデたちに声を掛けられ、少し気になりつつもダンデへの方へと向かうのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「体を強く打ち付けた感じはあるが、特に体の傷はないな。それといくつか質問した感じだと、記憶喪失だろうな」
「そうか」
「記憶喪失……ですか。治るんですか?」
アリスの問いかけにタツミは暫く黙った後、口を開いた。
「何とも言えない。俺も記憶喪失の患者は初めて見たしな」
「そうですか」
「でも、文献によると急に記憶が戻った例もあると書かれている。その人曰く、何らかの強い刺激で急に思い出したとある。だから、同じ様に何らかの強い刺激で同じ様に戻る可能性はある」
「本当ですか!」
タツミの返答に今まで暗い顔をしていたアリスはぱっと明るい表情をする。
「だが、だからと言って同じ様に頭を打ち付けるなどはダメだぞ。何でもかんでも強ければいいという訳じゃない。それにあくまで一例に過ぎないんだ。記憶が戻る保証は出来ないと言う事を、頭に入れておけ」
「……はい」
再び俯くアリスにルークは何も声を掛けられずにいた。
「とりあえず、今日はこの部屋で泊まれ。教員たちには俺から伝えておく。ルークも他の奴らに聞かれたら、怪我で様子見で別室に泊まると伝えておけ」
「分かった」
「クリス、今日は色々あったからこのままベッドで安静にしていろ。ルーク、それとトウマを連れて来い。あいつもどうせ秘密を知っているんだろ」
「何でそれを……いや、今はそこじゃないか。分かった。それで何処で話すんだ?」
「またこの部屋でしよう。トウマとの認識もあった方が、今後の為だろ」
タツミの言葉にルークは頷き、そのまま二人はアリスを残して部屋を後にした。
残されたアリスはベッドに座り、窓に移る自分の姿を見ていた。
「記憶が戻らないかも、か……戻った方がいいんだろうけど、もし戻らなかったら私は……」
その呟いた後、アリスはそのまま真横にベッドへと倒れるのだった。
「だ、誰?」
「はぁ~お前らか。息抜きに散歩してたのに、面倒事か?」
タツミはため息をつきながら、問いかけるとルークよりも先にアリスが口を開いた。
「貴方は私たちの事を知っている人ね。なら、話が早いわ」
「(私?)」
「(あーもう、だから直ぐにボロが出るって言ったのに)」
直ぐにタツミはアリスの異変に気付くのだった。
「あ、その前に貴方はわた――じゃなくて、俺とはどう言う関係性の人なんだ?」
タツミはアリスからの問いかけにすぐに答えずに、視線をルークの方へと向けた。
「ルーク、これはどう言う冗談だ?」
「冗談じゃない。クリスとしての記憶が一切ないんだよ」
「ちょっと、俺を無視するな」
アリスの訴えにタツミは一瞬だけ視線を向けるが、何も答えず再びルークへと視線を戻した。
「俺じゃ、どうしていいか分からないんだ。助けてくれ、タツミ」
「……はぁ~何で旅行先で面倒事を引き起こすかね、お前らは。偶然俺だったから良かったものの、俺じゃなかったらどうしてたんだクリス?」
「きゅ、急に向いてこられてビックリした……」
「ルークから話くらいは聞いているんだろ? その上で鵜呑みにしてないのは分かるが、もう少し慎重に行動をしろ。お前の立場は、かなり危ういんだ。バレたら家の名にも傷つき、一大事なんだぞ? その可能性があるくらいは、考えれば分かるだろ?」
タツミの真剣で最もな言葉に、アリスは何も言い返せずに黙ってしまう。
そしてそのままタツミはルークにも話をする。
「ひとまずお前も深呼吸しろ。俺もいるんだ、まずは改めて状況整理だ」
そのままタツミがその場を仕切り、簡易的に状況を訊き出し整理した後、詳しい話はここではなく一度ホテルのタツミの個室で行う事になった。
ホテルへと向かう道中に、アリスに対しても今は何も話さずに男子生徒のふりをするように話て、すれ違う他の生徒からも疑われない様にしていた。
アリスもタツミの話を聞き、反省し指示に従って歩いていると、ホテルへと向かう道中で自分が男装している事が誰にも疑われておらず、それが普通であるかのような光景に驚きつつタツミの後をついて行くのだった。
そしてホテルへと到着すると、ある教員がタツミの元へとやって来た。
「タツミ先生、いい所に帰って来ました。急で申し訳ないんですが、一人の生徒が氷に足を滑らせて転んだ際に、手を強くついてしまったらしく一度診ていただけますか?」
「間の悪い。分かりました、直ぐに行きます。お前らはここで、少し待ってろ」
タツミの言葉にルークは頷き、ラウンジで一時的にアリスと共にソファーに座り待機し始めた。
ラウンジには他の生徒も数人いたが、ルークは少し離れた場所にアリスを誘導してそこで共にタツミの帰りを待った。
「(とりあえず、顔見知りはいなくて助かった。変に声を掛けられたら、困るからな)」
「あの、第二王子……さん」
ルークが周囲を少し警戒していると、アリスが突然話し掛けて来て驚いてしまう。
「お、俺か」
「貴方意外にいないでしょ」
「悪い。あまりその呼ばれ方に慣れてなくてな。と言うより、嫌いなんだその呼ばれ方」
「そうなの? じゃ、貴方の知ってる私はどう呼んでいたの?」
「……ルークだ」
「ルーク、ね。分かったわ」
「それでどうした……クリス」
ルークは一瞬アリスの名を口にしそうになったが、誰が聞いているか分からないのでクリスと口にした。
「いや、ただルークが言っていた事が本当なのだと実感したと言いたかっただけ。皆、今の私の姿に何の違和感も感じずにいるのを目にしたし、私たちに挨拶してくる人もいて、私は私が知らないクリスと言う人物としてこの場に居たんだと実感したの」
「……そうか」
「何か変な気分なの。自分の知らない自分が、皆に受け入れられて過ごして来たのに、今の私はそれを知らない。何を考えてここに居たのか、何がしたかったのか全然分からないの。何て言うか、勝手に時間が進んだ感じで私はその時間を過ごしたはずなのに、その時間を知らなくて何か怖いの。私は、私だったのかとか……ごめん、何言ってるか分からないよね。私もまだ混乱してて、こう口に出さないとおかしくなりそうって言うか」
そう口にしたアリスが少し手が震えていたのを見たルークは、その手を上から優しく握りしめた。
「大丈夫。アリスはアリスだったと、俺はお前を知っているから安心しろ。こんな言葉しか言えないが……俺が、付いている」
「(っ……なんでだろ、不安だったからかな? ルークの言葉で少し落ち着くな)」
アリスはルークの言葉を聞くと、少し俯いて「ありがとう」と小さな声で呟くがルークには聞こえていなかった。
一方でルークは今自分で言った言葉を思い出して、人に聞かれたら恥ずかしい事を口にしたと耳を赤くしてアリスから顔を少し逸らしていた。
だがそれでも被せる様に握った手は離していなかった。
「あれ? クリスにルークじゃないか?」
ルークは突然自分の名前を呼ばれた事に驚き、直ぐにアリスから手を離して声がした方へと視線を向けると、そこに居たのはレオンだった。
「やっぱり。でも、どうしてそんな奥に二人っきりで座ってるんだ?」
「レオンか……ちょっとタツミを待っていてな」
「タツミ先生を? 何か怪我でもしたのかい?」
「あ、ああ。クリスが催し物で氷に滑る所で、トウマたちと滑っていたら人とぶつかってな。そこに偶然タツミがいて、念の為にホテルで診てもらう事になったんだ」
ルークは変に嘘を付かずに、アリスの状態を隠しつつレオンに話すと「大丈夫なのかい?」とクリスを心配する声を掛けて来た。
アリスはレオンと話す事はせずに、軽く俯いた状態で頷いて返事をするのだった。
「?」
「とりあえず外傷はないが、念の為だから心配はないとタツミは言っていたから大丈夫だ」
「それならいいが」
レオンは何故かしゃべらないクリスに変に思い、本当に大丈夫なのかと思い再度訊ねようとした時だった。
「ルーク、クリス。終わったぞ、こっちに来い」
タツミが遠くから二人を呼び掛けると、ルークは立ち上がりクリスを先にタツミの方へと行かせる。
「じゃ、俺たちは行くから。そんなに心配しなくても大丈夫だからな、レオン」
「お、おう」
レオンはその場から立ち去るクリスとルークの後ろ姿を見送ると、入れ替わる様に背後からダンデたちに声を掛けられ、少し気になりつつもダンデへの方へと向かうのだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「体を強く打ち付けた感じはあるが、特に体の傷はないな。それといくつか質問した感じだと、記憶喪失だろうな」
「そうか」
「記憶喪失……ですか。治るんですか?」
アリスの問いかけにタツミは暫く黙った後、口を開いた。
「何とも言えない。俺も記憶喪失の患者は初めて見たしな」
「そうですか」
「でも、文献によると急に記憶が戻った例もあると書かれている。その人曰く、何らかの強い刺激で急に思い出したとある。だから、同じ様に何らかの強い刺激で同じ様に戻る可能性はある」
「本当ですか!」
タツミの返答に今まで暗い顔をしていたアリスはぱっと明るい表情をする。
「だが、だからと言って同じ様に頭を打ち付けるなどはダメだぞ。何でもかんでも強ければいいという訳じゃない。それにあくまで一例に過ぎないんだ。記憶が戻る保証は出来ないと言う事を、頭に入れておけ」
「……はい」
再び俯くアリスにルークは何も声を掛けられずにいた。
「とりあえず、今日はこの部屋で泊まれ。教員たちには俺から伝えておく。ルークも他の奴らに聞かれたら、怪我で様子見で別室に泊まると伝えておけ」
「分かった」
「クリス、今日は色々あったからこのままベッドで安静にしていろ。ルーク、それとトウマを連れて来い。あいつもどうせ秘密を知っているんだろ」
「何でそれを……いや、今はそこじゃないか。分かった。それで何処で話すんだ?」
「またこの部屋でしよう。トウマとの認識もあった方が、今後の為だろ」
タツミの言葉にルークは頷き、そのまま二人はアリスを残して部屋を後にした。
残されたアリスはベッドに座り、窓に移る自分の姿を見ていた。
「記憶が戻らないかも、か……戻った方がいいんだろうけど、もし戻らなかったら私は……」
その呟いた後、アリスはそのまま真横にベッドへと倒れるのだった。
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