とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第383話 断片的な記憶

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 魔道車内では今回、クリスはガードルと座り近くにマックスにケビンが座り盛り上がっていた。
 一方で通路を挟み反対側の少し前にルークとトウマが隣同士で座っていた。

「で、急に隣に誘って来た理由は何だよ、ルーク」
「そんなの一つしかないだろ」

 ルークがそう答えるとトウマも理解し、チラッと後方にいるクリスの方を見て視線を戻す。
 そしてそこからトウマはルークに近付いて小声で話し始める。

「何かあったのか?」
「昨日タツミに頼まれてクリスの部屋にシンと戻ったら、部屋からレオンが出て来たんだ」
「はぁー!?」

 そこでトウマが大声を上げ、周囲の皆が何事かと驚く。
 トウマは直ぐに立ち上がって適当に理由を言って、謝るのだった。

「こんな車内で大声で驚くな、トウマ」
「悪い。でも、今のはそれぐらい驚く事だろ?」
「気持ちは分からなくないが、問題はレオンが今のクリスと接触してから、クリスの様子が少し気になるって事だ」
「クリスの様子が?」

 そこでトウマは今日の朝の出来事を思い出していると、ルークに変に呆れられた時を思い出す。
 ルークはその反応を見て、その時自分が見ていた光景と気になっている点を改めてトウマに共有するのだった。

「なるほど。レオンがそんな事を……」

 この時ルークは次期寮長選挙の時にレオンからの宣戦布告の事も、トウマに伝えていた。
 別に隠す事でもないし、その方が現在の状況を理解しやすいとルークが判断した為であった。

「レオンの行動から、俺たちと同じ様にあいつの隠し事は知っているとみていいだろ。だが、全て知っているかは分からない」
「まぁレオンは一応ジュリルの従者だし、ジュリルが何か掴んでいたら知っていると思っていいかもだな。でも、今はそこじゃないもんな」
「ああ。今はレオンが現状のあいつに何を話したかだ。現に、俺から見た感じだと少し余所余所しいというか、親し気な感じで話している」
「う~ん、何と言うかそれだけだと俺は何とも言えないな。ただ単にレオンと仲良くなっただけかもしれないし、話が盛り上がった的な何かとも思えるんだよな」

 トウマからの意見にルークは「確かに俺の考え過ぎかもしれない」と自分に非があるかもしれないと認める。
 だが続けてルークは、仮にの話をし始めた。

「もしもだぞ、レオンが今のあいつはこれまでの関係性を覚えてない事をいい事に、自分のいいように関係性について嘘をついていたらどうする?」
「え? いや、それってよ嘘の関係性を伝えるって事だろ? それに何の――あっ、まさかルーク」

 そこでトウマも同じ考えが思い付き、はっとした顔を向ける。
 そうルークとトウマは、レオンが今のクリスに恋人関係だったという様な事を伝えていたらという考えに至るのだった。

「いや、いやいやいやいやいや。さすがにそれは、レオンでもしないだろ。そんなのバレるだろ」
「普通ならな。だからももしもの話だ。だが、今あいつはこれまでの関係性を完全に知らないし、レオンの話様ではどうにでも出来るだろ」
「そ、それは……」
「何度も言うが、確定した話じゃない。レオンがもしそれをしていたら、褒められる様な事ではない。が、少しでもあいつに近付こうとライバルとの差を縮めようと考えたら、その考えは分からなくはない」

 今のクリスが必ず記憶を思い出せるとも言えない今、もしそうやってレオンが先手を打っていたら今後、必ずクリスとレオンの距離は縮まり関係も深くなるだろう。
 既に時期も時期であり、ルークもトウマもあと少しで今の気持ちに決着をつけると決めている状態。
 互いにこの修学旅行で関係性を進めるつもりだったが、当の本人に予想外の事態が発生しどうしようかと足踏みしているさなか、もう一人のライバルは手段を問わずに攻めた事に、二人は内心少し焦っていた。
 ずるいとかではなく、この戦いは平等ではなく維持しているだけでなく自分から攻めて勝ち取らないといけないものだと改めて実感したのだった。

「なぁルーク。俺たちはライバルだが、ライバルって言ってもたまには協力関係をとる事もあるよな?」
「そうだな。いい事言うな、トウマ」

 そこでトウマがルークに対して手を差し出す。

「とりあえず今はこれまで通り、協力関係で行こうじゃないか。先決なのは、レオンとの関係把握だろ? それが分かって以降は、互いにどうしようが自由って事でどうだ?」
「……分かった。俺も一人じゃ厳しいと思ってた所だ。今日の班の自由行動前に、俺はレオンに探りを入れるからトウマはあいつの方にさりげなく訊いてみてくれ」
「任せとけ」

 そうトウマが答えると、ルークが差し出していたルークの手を軽く握り交渉成立するのだった。
 そしてそれから一時間程すると、魔道車は一旦トイレ休憩という事で近くの街へと立ちより三十分程の休憩となった。
 魔道車から降りる者もいれば、降りずにそのまま寝ている者と様々であった。
 停車した所から近くにお見上げ屋などの売店があった為、そこへそのまま吸い込まれていく学院生たちが多く居た。
 その中にクリスもガードルたちに連れられてお土産屋に入っていた。

「(へぇ~本も結構売ってるんだな)」

 クリスはそこでガードルたちとは離れて、本棚に置いてあった本が気になりそこを見つめていた。
 その中で一冊のタイトルに目が留まり、そのまま手を伸ばして取っていた。
 手に取った本は月の魔女に関する物であった。

「(わぁ~こんな所にも月の魔女に関する本が売ってるんだ)」

 そのままクリスは本をペラペラとめくり始めた。

「(内容的は読んだ事があるけど、書かれ方が少し違うかな。だから、ちょっと見た事ない気がするのかも)」

 クリスは本を流すようにページをめくっていると、名言集的な一覧が出始め「そんなのあったあった」と思いながら見てると、ふとある月の魔女が言ったとされる言葉を見た時に突然頭痛に襲われる。
 そして再び今の自分が知らない記憶が一つではなくいくつも甦る。
 その時思い浮かんで来たのは、誰かと夜に二人っきりで月の魔女について話していたり、言い合いをしたり、全力でぶつかりあっていたり、ドレスコードをして親しく話す姿であった。
 暫くすると頭痛も収まり、クリスは開いていた本を閉じて本棚へと戻して一旦店の外へと出た。
 そのまま近くの壁に軽く寄りかかった。

「(まただ。昨日みたいに、たぶん以前の私の記憶が流れて来た。それに昨日よりも多くの記憶が……)」

 クリスは先程の断片的な記憶を思い出すが、相手の顔が同じ様に靄が掛かっており誰だか分からなかった。
 その直後、ふと口から言葉が出て来た。

「ジュリ……何だろ、こう今の記憶を思い出そうとすると直感的に出て来るこの言葉は? たぶん、この記憶に関係がある言葉何だろうけど、これ以降が出てこない」

 クリスは強く思い出そうとすると、先程よりも強い頭痛に襲われてしまう。
 その為、今はそれ以上変に思い出そうとするのは止めておこうと決め、今思い出した事だけでも忘れない様にとしおりにメモだけ残すのだった。
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