とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
385 / 564

第384話 水の都

しおりを挟む
 一度トイレ休憩をとったのち、魔道車は再び出発しお昼過ぎに目的地であるニンレスへと到着した。
 そのまま魔道車は宿泊するホテルへと向かい、学院生たちは魔道車がホテルに到着すると荷物を持ってホテルへと入って行き広いロビーの端の方で寮ごとに集まる。
 そして寮ごとに担当教員からの話が始まるのだった。

「それじゃこれからの予定だが、まずは各自部屋に荷物を置く事。その後ホテルの食堂にて昼食をとる。今回は好きなメニューから一品選ぶ形式だ。そして昼食が終わり次第各班事に、午後の観光ルートを提出する様に」

 担当教員の言葉にトウマは一瞬ビクッとしていた。
 その訳は、班のリーダーでありつつ事前に観光ルートを決めて出すように言われていたのをここで思い出し、まだ用紙に記入していない事を思い出した為であった。

「(やっべ、忘れてた。だけどルートは既に皆で決めているし、後は書くだけだから大丈夫だろ)」

 と、トウマは昼食前と食べている間にちゃちゃっと書けるだろうと高を括っていたが、後に痛い目を見る事になるとはこの時はまだ知らなかったのだった。
 それから担当教員からの話も終わり、各自荷物を持ち一度部屋へと向かい始める。
 各自部屋に到着すると、荷物を置きそのまま食堂へと向かうが、トウマは荷物を置いた後用紙を取り出し一度書く内容を見ようとしたが、ルークに急かされたので見るのも後回しに部屋を後にした。
 食堂では各自好きなメニューを決めて、それを受け取り昼食をとり始めており、この後の予定もある為、基本的に皆は班のメンバーで食事をとっていた。

「あ、こっちこっち」

 そうトウマとルークに声を掛けたのは、先に食堂へと到着し席をとっていたシンであった。
 シンの他に既にクリスとモーガンも席に座っていた。

「遅れて悪いな」
「謝らなくていいって、ルーク」
「いや~ちょっと探し物してて」

 トウマはそう言ってルークと共にシンたちが座っていた席に座るのだった。
 そして全員揃った所で、全員で手を合わせて昼食をとり始めた。

「で、そのトウマの探し物ってさっき先生が言ってた用紙?」
「え、あ、あ~そうそう。それそれ」
「……トウマお前、何か動揺してないか?」

 ルークがトウマの小さな異変に気付き問いかけるが、トウマは「そんな事ないぞ」と切り返す。
 だがルークは食事の手を止めて、トウマを更に問い詰める。
 すると次第にトウマの言葉が詰まり始め、観念して用紙を書いていない事を白状するのだった。

「悪い皆! ルート決めた時に、それで満足して明日やればいいやってすっかり忘れてたんだ」

 トウマは両手を合わせて皆に正直に謝る。
 その姿を見て、ルークとシンはため息をつくが、モーガンは特にため息もつく事なく話を聞いており、クリスはよく分からないので何となくその雰囲気に合わせて顔を作っていた。

「でも安心してくれ、ルートは既に決めてあるし直ぐ書けば終わる物だろうし大丈夫だ」
「いやトウマ確かそれ、ただルートを書くだけじゃなかったと思うぞ」
「え?」

 シンにそう指摘されてそこで改めて提出する用紙に目を通した。
 その用紙には班で回るルートの記載の他に、選定理由や話し合った際に出た意見などを別枠で記載する所があったのだった。
 想像もしてなかった記載箇所にトウマはあ然としていた。
 その後、班の全員でルートを決めた時の事を思い出しつつトウマと共に提出する用紙を埋めて行く作業を、昼食をとりながら始めるのだった。

 ――ニンレスは別名、水の都と呼ばれており運河を活かした都市の形成や交通手段として役割を果たしている都市である。
 中心部は水の都となっており、そこを中心に外周部へと街が続いており、ホテルなどは外周部の方に多く存在している。
 途中までは魔道車や馬車で行けるが、水の都に入るには徒歩で入るか、ゴンドラに乗って運河から入るかの二つしかないのである。
 観光場所として有名であり、水の都内は人が多く居る為馬車などが走ると危険がある為禁止としているのだ。
 ただし、荷物の搬入など一部例外を除いている。

 街中は運河を中心に作られているので、短い橋が多くあり広い運河の場所だとゴンドラがいくつも通っており、街内での移動手段として沢山の人が使っている。
 また観光客も同じ様にゴンドラを使い別の場所へと移動している。
 ゴンドラでは運河から街を一望出来たり、こぎ手の人によっての街の説明があったりと楽しめる要素がある為、皆よく使っているのである。
 ゴンドラ以外にも普通に船もあり、少し遠くの場所へと移動する際はそちらを利用する様になっている。
 また、歴史的な建造物もいくつか存在しており、教会や塔などと入る事が出来ない建物もあるが、それも観光スポットでもある。
 更には食事も、魚料理が豊富でパスタにソースとして絡めた物や肉料理も少ないが美味しい店が揃っていると事前にピースが力説するのだった。

「よし、とりあえずこんなもんか」

 トウマ班は全員で改めてルートを記載し、話し合った時の事を思い出しながら意見も提出用紙に記載して完成させるのだった。
 だが、既に他の班は用紙の提出を終え班での観光へと出ており、ホテルにまだ残っていたのはトウマ班だけであった。
 するとそこにタツミがやって来て声を掛けた。

「提出用紙は完成したか?」
「ナイスタイミングです! タツミ先生! ちょうど今出来ました!」

 トウマはタツミの声にすぐに反応して立ち上がり、完成した用紙をタツミに姿勢よくお辞儀する様に両手で突きだした。
 タツミは出された用紙を受け取り、内容の確認を終えると口を開く。

「用紙はオーケーだ。全く、お前らの班だけだぞここで一からこの用紙を書く奴らは」
「あははは……すいませんでした。俺のミスです……」
「次期寮長大丈夫かよ」
「うっ……」
「まぁいい。せっかくの観光時間なんだ、早く楽しんでこい」

 タツミは口にして、トウマたちに早く行くようにジェスチャーをし、トウマたちは言われるがままホテルから出て行く。
 その後ろ姿を見送ったタツミは、小さくため息をついた。

「(あーこれから会議か……憂鬱だ。その後は書類チェックに、この後の予定確認に夜の準備とやる事多いな)」

 そんな事を思いつつ、再び小さくため息をついてからホテルの会議室へと向かうのだった。
 一方で、トウマたちは水の都の入口へと辿り着いていた。

「到着~! よっしゃ! で、どうするよ? 橋を渡って行くか、船に乗るか?」
「そりゃここまで来たら一択じゃない?」

 シンの発言にクリスはワクワクした表情で少し強めに縦に首を振っていた。

「やっぱりそうだよな~ルークとモーガンはどうだ?」
「私もせっかくなのでそちらの意見で」
「俺だって、一番楽しめる方を選ぶよ」

 と、全員の意見が船で向かうと一致した為、皆で船着き場へと向かう。
 すると既に船着き場は次の船に乗る人が並んでいたので、トウマたちもその列に並び談笑しながら待っていると、遂に船が到着し乗り込み始める。
 そのままトウマたちは船首甲板へと向かい景色を楽しもうとすると、既にそこに同じ学院生服を着た数人と遭遇すると、そのうちの一人が振り返って来た。

「あれ? クリス?」

 そう声を掛けて来たのは、レオンであった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

悪役令嬢でも素材はいいんだから楽しく生きなきゃ損だよね!

ペトラ
恋愛
   ぼんやりとした意識を覚醒させながら、自分の置かれた状況を考えます。ここは、この世界は、途中まで攻略した乙女ゲームの世界だと思います。たぶん。  戦乙女≪ヴァルキュリア≫を育成する学園での、勉強あり、恋あり、戦いありの恋愛シミュレーションゲーム「ヴァルキュリア デスティニー~恋の最前線~」通称バル恋。戦乙女を育成しているのに、なぜか共学で、男子生徒が目指すのは・・・なんでしたっけ。忘れてしまいました。とにかく、前世の自分が死ぬ直前まではまっていたゲームの世界のようです。  前世は彼氏いない歴イコール年齢の、ややぽっちゃり(自己診断)享年28歳歯科衛生士でした。  悪役令嬢でもナイスバディの美少女に生まれ変わったのだから、人生楽しもう!というお話。  他サイトに連載中の話の改訂版になります。

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

処理中です...