とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第385話 石橋の上で

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「あれ、レオン? って何でレオンがここに? もっと初めの方に出てもう街に着いているはずじゃ?」

 レオンはシンからの言葉に苦笑いを浮かべた。
 するとレオンと同じ班の学院生たちもトウマたちに気付き、挨拶し始めた。
 そのまま船は出発し、トウマ班とレオン班は談笑しながら時間を過ごし、そんな中でレオンはクリスに気さくに話し掛けていた。

「まさかここで会うとはね」
「そ、そうだな……どうしてまだ船着き場に居たんだ?」
「ちょっと班の友人が無くし物をしてね。それを探してて向かうのが遅くなったんだ」
「そうだったんだ。それで無くし物は見つかったのか?」
「ああ、無事に見つかって遅れながら船で向かう途中だったってわけさ。それでクリスたちの方はどうしてあの時間に船着き場に?」

 レオンにそう問われ、クリスがこれまでの状況を話始め、レオンが楽し気に聞いている状況を目の当たりにしたトウマが割り込む様に入って行く。

「何だ何だ? 何の話をしているんだよ~」
「トウマ。いやな、レオンにこうなった経緯を話してたんだ」
「なるほどね~そしたら俺が、どうしてこんな事になってしまったかを説明してやろう!」
「え、いや、そこまでは聞いて――」
「そう遠慮するなって、レオン」

 トウマはそのまま強引に二人っきりの状況を変えるために、話を始めた。
 その話は街へと到着する寸前まで続き、話が終わるとレオンは少し疲れた表情で一度離れて行った。
 トウマは話終わりクリスと話そうと振り返ったが、既にそこにクリスの姿はなく肩を落とすのだった。
 その頃クリスはシンとモーガンと共に近くなって来た街を見て盛り上がっていた。
 そして船が街へと辿り着くと、乗船していた客が降り始めトウマたちも船を降りた。

「着いた。ここがニンレスの中心都市、別名水の都か」

 クリスが降り立った船着き場から少し歩いて行き、賑わう街を見渡して目を輝かせていた。
 そのままトウマ班は、そこでレオンたちと別れて予定通りに観光ルートを進み出すと、途中でルークがトイレに行くと言って立ち止まった。

「ならこの辺で待ってるから――」

 そうトウマがルークに伝えると、ルークはトウマに目配せをする。
 するとトウマは、これはトイレじゃなくて朝に話した例の件の実行だと察し、話を変えた。

「と、思ったけど。お前は俺たちに迷惑かけたくないタイプだよな」
「急にどうしたんだ、トウマ?」
「え? いやだって、ルークの身になって考えたら俺たちを待たせてるって思うとトイレに行きずらいかと思ってさ。それに、ルークもこれからのルートは知ってるし、直ぐに合流出来るし先に行ってて欲しいのかなって思って」
「まぁトウマの意見も分かりますが、置いて行くのもどうかと」

 モーガンの意見にシンも頷いていると、ルークが話し始めた。

「いや、トウマの言う通りだ。俺の事は気にせずに先に行っててくれ。ただでさえ、出発が遅れてるんだ。最後まで回れない方が嫌だろ?」

 ルークの言葉も一理あると、シンたちは顔を見合わせる。

「俺はさっきトウマが言った通り、後からルートを終えるから気にするな。それに、クリスは早く回りたくて仕方ないだろ?」
「なっ、ななな何言ってるんだよ! 別に班のメンバーを置いてまで先に行きたいとは思ってないよ!」

 急に話を振られて動揺するクリスを見て、ルークはクスッと笑う。

「それじゃリーダー、後の事は頼むぜ。直ぐに追いつくから、先に行っててくれ」

 ルークはそう言い残して、トウマたちと別れて離れて行く。
 直ぐにシンが呼び止めようとしたが、もうルークはそのまま人混みへと消えて行ってしまい、小さくため息をついて諦めるのだった。

「全く、こんな時にわざわざはぐれなくてもいいのに」
「そうだね。せっかくの班行動の観光なんだし」

 シンとモーガンが愚痴を漏らしていると、トウマが軽く手を叩いた。

「まあまあ、ルークも追い付くって言ってるし、次の観光場所にとりあえず行こうぜ。な?」
「……何か変だな。いつもなら、トウマが止める様な雰囲気なんだけど、自分から行かせるような事言って」
「確かに。言われてみれば」

 そう二人が呟きゆっくりとトウマの方へと視線を向けると、トウマは「この感じはまずい」と思い、否定しつつ咄嗟に話をすり替え始めた。

「そんな事ねぇって。ただ俺のせいで時間も押してるかなって思って、ルークには悪いと思いつつ、先に進んだ方がいいかなって思っただけ。あ、ほら、見ろよ! こっからでも見えるぞ、ウェンベル塔がさ!」

 トウマは歴史的な建造物の一つであるウェンベル塔を指さして、二人の視線を向けさせた。
 そしてそれにクリスも視線を向けると、少しテンションが上がり早く行きたくてうずうずし始める。
 一方でトウマは苦しい話題転換だったかと少し苦い顔をしていたが、疑って来た二人は小さく息を吐いてウェンベル塔の方へと歩き始めた。

「こんな所で変に話し合ってても仕方ないし、とりあえず行くよ」
「塔のふもとで待っていれば、ルークも直ぐに合流出来るし、ここで待つよりいいかもだし」
「そ、そうだよ。ほらクリスも早く行きたくてうずうずしてるから、早く行こうぜ!」
「ちょ! 俺を理由をするなー!」


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「で、わざわざ僕の所まで来て話って何だいルーク?」
「クリスの事についてだ」

 ルークはトウマたちと別れた後、直ぐにレオンたちを探し始め、レオンを見つけて二人だけで話がしたいと言ってレオンを連れだしていた。
 二人は表通りから少し裏路地へと入り、そこから抜けて表通りよりも人通りが少ない通りにある短い石橋の上で話し始めていた。

「レオン、お前今のクリスが少し違うと気付いているんじゃないのか?」
「違うってどう言う事だい?」
「とぼけるな。分かっているんだろ、レオン」

 レオンはルークから追求に黙ると、そのまま石橋の欄干に両腕を置き下を流れる運河の遠くを見つめる。

「クリス、記憶喪失なんだってね」
「やっぱりな。昨日クリスから訊いたのか?」

 その問いかけにレオンはルークの方へと視線を向けた。

「ああ、その通りさ。でも、まさか記憶喪失だとは思わなかったけどね。驚いたよ」
「で、何をその時にアリスに吹き込んだんだ?」
「吹き込んだ? それこそ何の事だか分からないな。僕はただアリスと話をしただけさ。何か記憶を取り戻せる手伝いが出来ないかと思ってね」
「関係性を知らない今のアリスをいい事に、変に自分との関係性を伝えたんじゃないかと言ってるんだ」
「何でそう思うんだい? 二人っきりで話していた事が、そんなに許せないのか?」
「許せないと言うか嫉妬はしているよ。だが、その八つ当たりでこんな話をしてるんじゃない。朝からのお前とアリスのやり取りや昨日のアリスの行動から、何かあったんじゃないかと思って訊いてるんだ」
「……なるほど」

 レオンはまさかルークが真っすぐに自分の気持ちを伝えて来るとは思わず驚いたのと、ただの勘とかではなくアリスの様子や自分との急な距離感などから怪しんで来ているのだと分かり、このまま白を切り通すのは難しいなと思い観念するのだった。

「レオン、改めてだが昨日アリスと何を話したんだ? ただ、今のお前がアリスと何事もない普通の話をして終わる訳ないだろ?」
「はぁ~全く、こんな直ぐにバレるもんかね? その鋭い観察眼は、第二王子だからか? それとも好きな相手だからか?」
「……やめろ、その呼び方」

 ルークはそこで少し下の方を俯いた。

「悪かった。もう観念するよ。ルークの推理通り、僕は昨日アリスにちょっと含みのある言い方をしたよ」

 そこでレオンはあっさりと、自分がやった事を口にするのだった。
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