とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

文字の大きさ
387 / 564

第386話 カーニバル

しおりを挟む
「え? 何で急にそんな事聞くのトウマ?」
「あ、いや~その~何て言うか、何かレオンと急に仲良さそうにしてたな~って思って」

 ウェンベル塔の周辺を皆で歩きながら、トウマはクリスに対してレオンについて問いかけていた。
 急にそんな事を聞かれて疑問に思うクリスは、首を傾げつつ答え始めた。

「急っちゃ、急に見えるけど、普通に話したら意気投合したって感じなだけだぞ」
「そうなのか」
「何、前の俺はレオンと仲が良くなかったのか?」
「そんな事はなかったと思うが、そこまで物凄く仲がいいって感じでもなかった気がするな。ほら、別の寮って事もあるしな」

 トウマは少し慌てた感じで答えるとクリスは「ふーん」と軽く頷いた。

「でトウマは、そんな何とも言えない様な関係性のレオンと俺が仲良くしてたから、気になったって事だよな」
「え、ま、まぁ、そんな所です……はい」

 何故かトウマがタジタジな感じになっていると、クリスは歩きながら話し続けた。

「なぁトウマ、何か俺に隠している事ある?」
「え? 隠している事」
「ああ、今の俺に何か言ってないとか、そういう事実があるけど今の俺に隠している事」

 この瞬間トウマの頭の中では、自分が以前に告白じみたことをした時の出来事が浮かんでいた。

「(いやいや、言える訳ない。というか、急にクリスの奴どうしたんだ? 隠してる事とかって……とりあえず、変に疑われない様に答えないと)」

 トウマはそう直ぐに切り替えて、クリスに対して「そんなのないぞ」と答えた。
 するとクリスは足を止めて、トウマの方に視線を向けた。

「……本当?」
「あ、ああ。本当だぞ。細かい話とかは別にして、既にルークとかタツミ先生から聞いている通りの話だぞ。隠し事なんてないぞ」
「……そう、だよね。……ごめん、変に疑って」
「いや、気にするなよ。俺も変な事聞いたし、今の状況だと何が本当とか分からなくなるよな」

 その後再びクリスが歩き始め、それをトウマが追う様に歩き始めた。
 そこでクリスが再び口を開く。

「トウマ、レオンとは本当に話が盛り上がって、そのまま話しているだけだぞ。前の俺よりもしレオンとの距離が近いと言うのなら、それはただ単に話に興味があって俺が訊いているだけだ」
「そうか。分かった。変な事聞いて悪かったよクリス。よーし! 切り替えて楽しもう!」
「うん。そうだね」
「お~い、遅れてるよ二人共~」

 そこで少し先を歩くシンから声を掛けられて、二人は急ぎ足でシンとモーガンに合流するのだった。


 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「それは何を言ったんだ、レオン」

 ルークがレオンに対して含みのある言い方という所に、追求をしたがレオンは答えずに黙ったままルークの方を見ていた。

「……それは言えないってか?」
「察しがいいね。ここまで潔く白状したんだ、君なら何となく分かるんじゃないのかな?」

 そのまま互いに黙ったまま相手の見つめていると、ルークが小さくため息をつく。

「もうこれ以上は話さないって感じか」
「僕にも引くわけにはいかない所があるからね。ライバルに全てを明かす訳には行かないのさ。例えそれが、よくない事でもね」

 レオンはそう口にすると、来た道を戻り始めた。

「それじゃ僕はこれで失礼するよ。あまり長時間皆と離れると、彼らも心配するからね。ルークも同じだろ?」

 ルークはその場で振り返りレオンの方を向く。
 するとそこで、レオンは足を止めて背を向けたままルークに問いかけた。

「僕の事を汚くて、最低な男だと君は思うかい?」
「……何とも言えない」
「そうか」

 そしてレオンが再び歩き出すと、ルークが続けて答えた。

「ただ、お前は自分から状況を変えようと動いた。その気持ちの差に、俺は嫉妬してるよ」

 レオンはその言葉に少し驚いた後、小さく微笑んだ後何も言わずにその場から立ち去って行った。
 その後ルークは石橋の上から真下を流れる運河を見つめた後、トウマたちの元へと向かって歩き出した。
 それからルークは、無事にウェンベル塔付近で待っていたトウマたちと合流するのだった。
 そしてそのまま班全員で観光ルートを回り、軽食を買って食べたり、歴史的な建造物の中へと入り内部を回ったりと充実な時間を過ごして行く。

「いや~今の所凄くなかったか?」
「分かる! あの中の造りが何とも言えない感じだった」
「昔の技術職の人を尊敬するよ」

 トウマ、シン、ガードルは先程見た教会内部の話で盛り上がっていた。
 その後ろをルークとクリスが付いて行く様に皆で歩いていた。

「ルーク? 何か難しい顔しているけど、どうした?」
「っぁ、ああ。すまない、ちょっと考え事してて」
「せっかくの修学旅行なんだし、今くらいはそんな考え事しないで楽しんだら? 言い方はあれだけど、考え事なんていつでも出来るんだし。今のこの時間はここだけなんだらさ」
「! そうだな。まさかクリスに、そんな事を言われるとはな」
「なんだよ、その言い方。気になったから声掛けてやったのに」
「気にしてくれたのか?」
「っ! た、ただ! 楽しい雰囲気にそんな顔されてるのが目に入っただけだ! 俺は楽しみたいのにそんな顔してたら楽しさ半減になるからであって、別に気にしてた訳じゃない!」

 ルークはクリスの言葉に小さく笑うと、クリスは「そこ笑う所じゃないから!」と声を出すのだった。
 すると前を歩いていたトウマたちが足を止めて声を掛けて来た。

「おいクリス、ルーク見ろよ。祭り見たいのやってるぞ」

 トウマにそう言われて、二人は前の方へと近付くと周囲の人々も次第に周辺に集まりだしていた。
 そしてそこで目にしたのは、何人もの人が様々な仮面をし豪華な衣装を身に付けてパレードの様に大通りを行進している姿だった。

「何の祭りだろ?」
「さぁ~分かんねぇけど、何か凄い格好の人がいて見てて飽きないな」
「あれは確か、カーニバルじゃなかった?」

 ルークがそう答えると、トウマとクリスが同時にルークの方を向く。

「え、知ってるの?」
「博識だなルーク」
「いや、しおりに書いてあったぞ。端の方にだが」

 そう言われて二人はしおりを取り出して見ると、ルークの言う通りに書かれていた事に「お~」と声を上げる。
 そのまま二人はしおりを見つつ、カーニバルを見始めたのでルークもカーニバルを見ようと視線を前に向けた時に、トウマとクリスのしおりに文章でのやりとりがある所を偶然目にしてしまう。
 が、特に何も口にせずそのままルークは視線を前に向けるのだった。
 その後次々に行進してくる人を見ていると、徐々にそれを見る人が増え始めトウマたちは離れ離れになりそうになるが、何とか互いに離れない様に裾などを咄嗟に掴んでいたので離れずにすんでいた。
 そしてカーニバルの行進も一段落して人が落ち着き始め互いにやっと集まれた時だった。

「え?」
「あれ?」
「?」
「あ、あのー……」

 その場に見ず知らずの女性が一人混じっていたのだ。
 その女性の裾を掴んでいたのはルークであり、ルーク自身も驚いており直ぐに手を離して謝った。
 女性は特に怒る事もなく、そのまま少し顔を赤くして立ち去って行くのだった。

「おいルーク。こんな時にナンパかよ」
「大胆」
「ちょっと驚きだな」
「ちげぇよ! 俺はクリスと離れそうになっ――」

 そう口にしてようやく全員が、この場にクリスが居ない事に気付くのだった。
 一方でクリスは、人混みに流されてトウマたちと離れていた。

「……まずいな。これ迷子じゃない?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。

琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。 ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!! スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。 ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!? 氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。 このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。

男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です

オレンジ方解石
恋愛
 結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。  離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。  異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。  そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。  女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。 ※追記の追記を少し直しました。

枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉

狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。 「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。 フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。 対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。 「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」 聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。 「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」 そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。 イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。 ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼ そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ! イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。 しかし……。 「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」 そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。

異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。

和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……? しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし! 危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。 彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。 頼む騎士様、どうか私を保護してください! あれ、でもこの人なんか怖くない? 心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……? どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ! 人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける! ……うん、詰んだ。 ★「小説家になろう」先行投稿中です★

多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】 23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも! そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。 お願いですから、私に構わないで下さい! ※ 他サイトでも投稿中

転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎

水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。 もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。 振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!! え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!? でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!? と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう! 前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい! だからこっちに熱い眼差しを送らないで! 答えられないんです! これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。 または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。 小説家になろうでも投稿してます。 こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました

たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。

処理中です...