とある令嬢が男装し第二王子がいる全寮制魔法学院へ転入する

春夏秋冬/光逆榮

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第393話 女湯とはロマンそのものなのだ!

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 冬の修学旅行4日目の夜の自由時間にて、ホテルの遊技場の一室にてとある集会が執り行われていた。

「よーし! お前ら準備は出来ているか!」
「「おぉぉー!」」

 ライラックの言葉に、野太い声が遊技場のとある一室中に響き渡る。

「遂に時は満ちた! この日がようやくやって来たのだ、同志諸君!」
「「おぉぉー!」」

 再び壇上の上からライラックは周囲に集まる、男子たちに声を掛けると力強く返事が返って来る。
 ライラックの横には、済ました顔のリーガが腕を組んで立っていた。
 周囲に集まっている男子たちは、オービン寮の一部男子だけではなく、他の寮の男子たちも寮関係なくライラックの元へと集まっていた。
 その集団にはライラックとリーガ以外に、オービン寮からはトウマにシンリ、ノルマ、ケビンの姿があった。

「まさかシンリにノルマも参加しているとはな」
「俺は半ば強制だけど」
「僕は面白そうだから」

 シンリは笑顔で答えるがノルマは気乗りしない顔をしていた。

「で、ケビンはむっつりが抑えきれずに参加か」
「おいちょっと待て、トウマ! 僕だけ理由は不純過ぎるだろ!」
「いやだって、それ以外に何があるんだよ?」
「僕はライラックに誘われてだね――」
「オッケーオッケー、そう言う事にしておいてやるよ」
「おいトウマ! 人の話は最後まで聞け! と言うか、そういうお前はどうなんだよ?」

 そこでケビンから同じ質問を返されるが、トウマはすまし顔で答えた。

「そんなの決まってるだろ。男のロマンのためさ」

 と、トウマが口にしたがシンリたちは何も反応する事無く、聞き流すのだった。
 すると壇上の上に立っていたライラックが皆を一度鎮める。

「ではこれから作戦実行に移す……と言いたいが、その前に残念な報告をしなければならない」

 突然の発言に周囲の皆がざわつきだす。
 そしてライラックは小さくため息をついた後、再び口を開く。

「この中に、教員に我らの作戦を密告した者がいる!」
「「っ!?」」

 皆が動揺する中トウマがライラックに最初に声を掛けた。

「おいおい、何言ってるんだよライラック。そんな奴いる訳ないだろ? 思い過ごしじゃないのか?」
「トウマ……俺もそう思いたかった。だが、真実なんだ! 俺も信じられないが」
「おいマジかよ」
「誰だよ、そんな裏切り者はよ」
「早く教えてくれ、ライラック! お前は知っているんだろ?」

 そう言ったライラックに対する声が強くなると、ライラックは片手を上げグッと握り拳を作ると何故か自然と皆が鎮まる。

「(あれ、ライラックってあんな感じだったけ?)」
「(今のうちに抜けだそうかな)」
「(ライラックの奴、変な所でカリスマ性があったりするよな)」

 ライラックの姿を見てシンリ、ノルマ、トウマはそれぞれの反応をしていると、急にライラックが上げていた片手を下ろして来てとある人物を指さした。
 その人物はトウマであった。

「え? 俺? 何、どう言う事?」
「とぼけるなトウマ。もう分かっているんだ」
「はぁ? 何言ってるんだライラック。俺が密告者? そんな事する訳ないだろ、お前やリーガなら分かるだろ?」

 トウマはそう声を掛けるも、ライラックとリーガは黙ったままトウマを見つめる。
 その反応に周囲もまさかトウマが密告者だとは思っていなかったのか、少しざわつきだす。

「トウマ、俺は見ちまったんだよ。お前がタツミに対して俺が寝ずに数日考えに、考え抜いた作戦を報告している姿をな!」
「っ!?」

 直後リーガが映像投影魔道を取り出し、近くの壁に証拠となる映像を流し始める。
 そこにはライラックが言った通り、トウマがタツミと密会し今宵の作戦概要を話している姿がバッチリ映っていたのだった。
 映像が終わるとリーガがトウマに対して「これで言い逃れは出来ないぞトウマ」と発現すると、トウマの周囲にいた皆が距離をとりトウマを囲う。
 するとトウマは何も言わずにその場から突然走り出して逃走を図る。
 が、ライラックはそれを想定していたのか「出番だ! 捕らえろ!」と声を張ると部屋の入口からトウマに向かってある人物が一瞬で近付き、逃げるトウマを捕まえるとそのまま地面に倒した。
 一瞬何が起きたのか理解出来ずにいたトウマだったが、自分を取り押さえている相手を見て驚く。

「マ、マックス!?」
「ようトウマ、奇遇だなこんな所で会うなんて」
「いやいや、何でお前までこれに参加しているんだよ!?」
「言っとくが、脅しとか強制じゃないぞ」
「それじゃ何で……」
「そりゃ、修学旅行って言ったらこれが定番って先輩たちのこそこそ話を聞いてな。思い出作りにと思って参加したんだよ。まぁ、ただの興味本位ってやつだ」
「(興味本位でこれに参加するか、普通?)」

 その後ライラックとリーガがやって来て、トウマをロープで拘束する。

「ライラック、リーガ。今ならまで許してもらえる。考え直せ!」
「トウマ……俺たちはいつでも一緒だと思っていたのに、残念だよ」
「ああ、本当にな。ほら、俺の筋肉も悲しがっている」
「筋肉は知らんが、もう今日の事は伝え済みなんだ。そんな中、強行するって言うのかよ?」

 トウマの問いかけに他の皆も「確かに」「知られてたら無駄死にじゃ」などと口にし始める。
 ライラックも暫く黙っていたが、トウマに対して答え始めた。

「強行突破? 無駄死に? そんな事する訳ないし、させはしない! 俺はお前が密告者だと分かった時から、念の為に準備しておいた予備の作戦を実行する事を考えてた! そしてそれは、今ここで発表する!」
「おおー!」
「流石だ、流石過ぎるぞライラック!」
「それでこそ、俺たちの希望の星だ」

 直後ライラックコールが起きるが、ライラックは直ぐにそれを止め真なる作戦内容を説明し始めるのだった。
 トウマはそんな真剣なライラックとリーガの姿を見て、ある事を思う。

「(いや、その用意周到さを少しは勉学に回せよお前ら)」

 そして作戦会議が終わると、皆はぞろぞろと部屋を出て行き作戦が開始される。
 トウマは立ち去って行くライラックたちに再び声を掛ける。

「そんな作戦上手く行く訳ないだろ。考え直せライラック!」
「悪いなトウマ。これは男のロマンなんだよ。お前もそう口にしたなら分かるだろ?」
「……」
「じゃあな、トウマ。俺たちは楽園に一足先に行くぜ」

 とてつもない決め顔でライラックは部屋を後にし、その後にリーガやシンリたちも付いて行く。

「悪いねトウマ」
「次期寮長だから色々と言われて動いていたんだろうけど、ライラックに見つかっちゃね」
「(それに関しては何も言い返せない)」
「それじゃ終わるまで、トウマはそこで待っててね。もし捕まっても共犯にしておくからさ」
「何さらっと最悪な事口にしているんだよ、マックス」

 トウマの叫びもむなしく「じゃあねぇ~」と言われ、部屋の扉が閉められてしまうのだった。
 そしてトウマは閉じられた部屋に縛られ身動き出来ないまま放置されてしまう。
 トウマは何とかしてライラックたちを止めるために、もがいたがロープは解けず、声を出しても誰も来ることもないで、完全に打つ手なし状態であった。

「くそー、タツミ先生から極秘で頼まれていた事がこんなにもあっさりとバレるとか、やっぱり俺にはこういうの向いてないんだよ。あーどうするよ、これ。このままじゃ、俺がスパイのスパイ的な感じで捕まったら俺も制裁受けかねない」

 事前に今日のライラックの行動に関しては、タツミが極秘裏に何故か情報を掴んでおり、その阻止を次期寮長であるトウマにお願いしていたのだった。
 トウマもタツミから今回の話を聞き驚き阻止とか無理だと一度は断ったが、教員が取り締まれば制裁は免れないと言われ、穏便に済むならその方がいいだろと説得され、トウマは集会に潜り込み内側から何とか妨害し失敗させようとしていたのだ。

「そもそもあいつ等がやろうとしている事は悪い事だから、制裁を受けるべきなんだが……いや、そこは次期寮長の俺が問題にさせずに解決出来る手腕を見せる時なんだ! 必ず止めさせてやるからな、ライラック!」
「……何してるの、トウマ?」
「へぇ?」

 トウマが全く身動き出来ない状態で何故か強気な宣言をする姿を、偶然部屋の近くを通りかかったのかクリスが部屋の扉を開けてトウマを少し引いた目で見つめていた。

「ク、クリス~」
「……」
「待ってくれ! 引かないでくれ! これには事情があるんだ!」
「……趣味?」
「決して違う! 強く否定する! 縛られたんだよ! とりあえず、ロープ解いてくれないか?」

 クリスは黙ったまま暫く見つめた後、迷いながらもトウマのロープを解くのだった。
 その頃ライラックたちはというと、集団のまま何故か一直線に男湯へと向かっていた。

「(ふふふ、念の為作戦を二つ用意しておいて功を奏した。これなら、何不自然なく楽園を覗けるぞ! さぁ、ロマンを求めていざゆかん!)」
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