419 / 564
第418話 先手
しおりを挟む
王都内で迅速に王国軍の配備が進められ、王都外と内部に王国軍8部隊が配備された。
王都外には、レント隊・ウェックス隊・シレス隊・サスト隊の4部隊が進行してくるとされる北部に各隊長と数名の部隊兵を配置。
それ以外の方角にある王都入口には、各隊の中隊長と小隊長をその4部隊で配置し、全方位で警戒を行っている。
一方で王都内では、グーゲンベル隊・インベル隊・ザべッシュ隊・ポーレスト隊の4部隊が四人一組のチームを組み、各所重要施設や街中の警備を始める。
更には、8部隊の隊長同士で連絡取り合えるように通信用魔道具も渡されており、また各部隊内でも中隊長・小隊長との連絡をとれる通信用魔道具も持たせて直ぐに連絡を取り合える状況となっていた。
――ユンベールからの敵対勢力到着まで、残り四時間。
時刻は昼下がり、王都内では未だユンベールからの侵略がある事が伝えられておらず、人々は賑やかに過ごしていた。
その頃、王都外の北部に配置されている4部隊が、各部隊ごとに定時連絡を隊長が行っていた。
「了解した。ガビル、ペイル班にエス、ユイロン班そしてギーナ、レイヴァン班共に現状問題なしだな。ああ、こちらも今の所敵影は確認出来てない。では、また何かあれば連絡を、次の定時連絡は一時間後。以上」
そうサストが口に通信用魔道具に向かい話終えると、自分の部隊のメンバーへと視線を向ける。
「よし改めて現状確認だ。ここには20名の私の部隊に、他3部隊のメンバーを足して約100名近くはいる。各自作戦は頭に入っているな?」
「「はい!」」
「ではベルヴァティ、作戦概要を」
当然指名されたベルヴァティは、今回の作戦内容を緊張しながらに口にし始める。
今回ユンベールからの侵略に対し、王都外の4部隊に与えられた作戦は三つだ。
一つ目は王都に決して敵対勢力を入れない。二つ目は、降伏宣言を相手に出させる。最後の三つ目は、必要以上な攻撃は絶対にしないという事であった。
現状ユンベールはインクルと名乗る者が乗っ取っている可能性が大きく、相手側の何らかの力で強制的に従わされている人間もいると判断したのである。
その判断をしたのは、ハンスであるが過去に王都襲撃事件があった際にも類似した件が報告されていた事から、その可能性も含めてハンスは判断をしたのであった。
また、こちらの態度としては防衛であり、極力相手の無力化を行う事に重きを置くとも決めたのである。
それが簡単な事ではない事は承知しているが、なるべく捕縛し今回の一件で相手の真意を知る為であり、また裏で糸をまだ引いている相手がいるかもしれないと想定しその様な判断も下したのだった。
ハンスは無茶なお願いだと思いつつも、各部隊長にそう指示をしたのである。
それらの内容から、今回王都外の4部隊が立てた作戦はシンプルであった。
敵対勢力を確認次第、降伏宣言を促し従うのであればそのまま捕縛し、聞かない様であれば各隊長が強力な威嚇攻撃を実施。
その他の兵は力や能力に応じて、防衛専念や隊長たちの補佐役として立ち振る舞う事になっており、もし戦闘になった際には隊長たち筆頭に行われる作戦となっている。
「大まかではすが、作戦概要は以上です!」
「よし。それだけ理解していれば問題はない。が、実戦では何が起こるか分からない。臨機応変に対応出来るように周囲での確認を怠るな。では各自持ち場にて待機」
「「はい!」」
その後サストは離れて行き、他の隊長たちの所へと向かって行く。
サスト隊の王国兵たちは、サストに言われた通りに各自持ち場へと戻り始める。
その中に、アバンの姿もあった。
「アバン」
「ん、どうしたベルヴァティ?」
「どうしたじゃねぇよ。どうして、そんな冷静なんだよお前」
「そうか? 俺も内心ドキドキして気持ち悪いぞ」
「そう見えねぇって! あ~やばい、まさかこんな事になるなんてよ」
「軍に入っていればいつかは直面する事だろ? それに俺たちは以前にも、緊急任務にも同行したろ」
「いや、そうだけどもよ。そん時とはまた違ったって言うか、あーとりあえず、どうすればお前みたいに冷静になれるんだよ?」
「だからお前と同じって言ってるだろ。不安なのは分かるが、考えない様にしているだけだ。俺たちは防衛、相手を王都に入れない様にする事だけを考えればいいんだ」
「ま、まぁ確かにそうだな……スーハ―……よっし! 切り替えろ俺! 俺なら大丈夫、アバンもいるし何てったって隊長が最前線にいるんだ。これだけ頼もしい事はないだろう」
そうベルヴァティは、独り言を呟きながら自分を鼓舞して持ち場へと歩いて行く。
アバンはその姿を見てから、ふと隊長たちへと視線を向ける。
「王国軍トップである4部隊の隊長が最前線で指揮をとり、戦うんだ。油断してる訳じゃないが、よっぽどの事がなければユンベールに勝ち目はない。それに、もうすぐ予定では王都内で国王から王都にいる人々にアナウンスを行う時間だ」
ハンスは王都内にいる人々を混乱させずに、戦いから避けさせる為に事前にアナウンスを行い人々を誘導する事にしていた。
突然ユンベールとの戦いがあると伝えれば混乱が起こるのは目に見えている為、模擬訓練という形で人々には一時的に王国軍の指示に従い、安全な場所に避難してもらう手筈を整えたのである。
が、急な事で必ずしもそれが上手く行くとは思ってはいなかった。
しかしハンスは何もせずに待ち続けるのでは、何かあってからでは遅いと考える人であった為、自分が行える最大限の行動をしようとアナウンスの実施を決めたのであった。
「(現状各門も整備という事で、封鎖している。後は王都内でどれだけの人が国王の言葉に耳を傾け、動いてくれるかだな)」
そしてアバンも持ち場に戻り、王都近くでアナウンスが聞こえるを待っていたが、時間になっても一向にアナウンスが聞こえてこない事に疑問を持ち始める。
それは他の王国兵たちも同じ気持ちであり、何故アナウンスが聞こえてこないのかと近くの兵士に声を掛けたりし始めていた。
「(おかしい。既に予定時刻は過ぎているのに、一向にアナウンスが聞こえない。例え王都外だとしても、この距離でならアナウンスは聞こえるはずだ)」
アバンは直ぐに隊長たちへと視線を向けると、隊長たちも異変に気付き通信用魔道具で王都内にいる隊長と連絡をとっている姿が目に入る。
その直後だった、偵察部隊からの連絡が隊長たちに入りレントが声を上げた。
「どういう事だ! 想定の到着時間よりも四時間も早いぞ! 見間違えとかじゃないのか?」
「レント落ち着け」
「落ち着け? ふざけるなサスト! 敵が目の前まで迫って来ているんだぞ! しかも想定よりも早すぎる速度で! おかしいだろうが! それに王都内のアナウンスもない。何かもう起きていると考えるのが、妥当だろうが!」
「っ……そうかもしれないが、俺たちが焦ったら――」
と、サストが言葉をかけようとした瞬間に、王都内の中心部のみに結界の様な光が突然上がる。
異様な光景に隊長たちは直ぐに気付き、その周辺にいた兵士たちも視線を向けて固まってしまう。
一方で王都近くで待機していた兵士たちは何が起きているのか分からずに、皆が見ている方へと移動し始めてしまう。
ベルヴァティも気になってしまい、皆と同じ様に動くがアバンは皆とは逆に王都内へと入り、状況を確認しようと咄嗟に判断し独断で動く。
そしてアバンが王都に入り目にしたのは、王城付近だけが結界に囲まれている状況であった。
「な、何だあれは?」
アバンはそれを確認し、直ぐに戻ろうとしたが目の前に今目にした王城にされている結界と同じ物が、王都内と外の境界線で発生していたのだった。
すぐさま王都の外側を見回し、結界の光が上空にまで伸びているのを目にし、アバンは完全に王都内外で結界で分断されたと理解する。
王都外にいた隊長たちも結界に気付いたが、既にその時には完全に分断されてしまいもう中へと入る事は不可能になっていた。
魔法や武器など破壊可能かを試すと、どれも失敗してしまう。
「王都内の奴らとも連絡がつかない」
「やられましたね……これは完全に先手をとられましたね。既に相手方は、潜伏していたって事ですよね」
「でも、ここへ向かって来るユンベールの一団がいるのは確かだろ? 何故わざわざ分断させる? 内部の戦力は確実に外側よりも低くなるだろ?」
「分からない。内側との連絡がつかない現状では、内側に敵の戦力がどれだけいるのかも不明だ。こちらに向かってる人数が多いのは確からしいが」
「ちっ! とりあえず今俺たちが出来るのは、ここに向かって来るユンベールの一団の相手をする事だけだ。幸い内側にも半分の王国軍部隊はいる」
「そうだな。それに、何故かアバンも内側にいるし、どうにか一方的な連絡にはなるだろう」
そう言って、各隊長が結界の内側にいるアバンへと視線を向けた。
「(……これは、よかったと捉えるべきか、悪かったと捉えるべきか。状況的には内側との連絡役にはなれるという所かな)」
「アバン、そこにいる理由については後回しだ。現状、こちらの声は正常に聞こえているな?」
「はい、サスト隊長」
「よし。お前にはこれから王都内の状況把握に努めてもらう」
「サストの所の兵か。使えるものは全て使わないとな。他の隊長たちにこちらの状況も伝えろ」
「できれば、王城の様子も知りたいな」
「彼にこんな事を任せて大丈夫なのかサスト? 彼はまだ訓練兵で、正式の配属ではないんだろ。荷が重すぎるんじゃ」
「アバンなら大丈夫だ。私が保証する」
サストのためらいのない発言に、他の隊長たちも反論する事はなかった。
「いいかアバン、訓練兵とか身分は今関係ない。お前はお前にしか出来ない事を今からやるんだ。お前にはそれが出来る力と知恵がある」
「サスト隊長……」
「アバン・フォークロス!」
「っ! はい!」
「王都内の状況把握兼こちらの情報伝達の任を与える。早急に行動開始!」
「はい!」
アバンはサストの言葉を聞いた後、王都内へと向けて走り始めるのだった。
それを見届けたサストは王都に背を向け、ユンベールから向かって来る一団の方へと歩き始める。
その姿に他の隊長たちも歩み始め、最前線で足を止める。
すると、その場から遠くにユンベールからやって来たと思われる多くの人影が見え始める。
「来たな」
「私たちは私たちの任を全うするまで」
「口にしなくとも分かっている」
「さ~てと、一体どんな奴らがいるのやら」
隊長たちは横一列に並び、後ろの兵士たちの意識を切り替えさせ準備を整えさせるのだった。
一方で、王都に迫るユンベールの一団を引き連れて先頭で指揮を執っていたのはインクルであった。
「お、やっと見えたね~王都。それにもう始まっているようだね。それじゃ、こちらも急がないとね」
インクルは一人そう呟きながら、薄笑いを浮かべる。
その背後には、完全武装した兵士たちがただ無言で進行し続けるのだった。
王都外には、レント隊・ウェックス隊・シレス隊・サスト隊の4部隊が進行してくるとされる北部に各隊長と数名の部隊兵を配置。
それ以外の方角にある王都入口には、各隊の中隊長と小隊長をその4部隊で配置し、全方位で警戒を行っている。
一方で王都内では、グーゲンベル隊・インベル隊・ザべッシュ隊・ポーレスト隊の4部隊が四人一組のチームを組み、各所重要施設や街中の警備を始める。
更には、8部隊の隊長同士で連絡取り合えるように通信用魔道具も渡されており、また各部隊内でも中隊長・小隊長との連絡をとれる通信用魔道具も持たせて直ぐに連絡を取り合える状況となっていた。
――ユンベールからの敵対勢力到着まで、残り四時間。
時刻は昼下がり、王都内では未だユンベールからの侵略がある事が伝えられておらず、人々は賑やかに過ごしていた。
その頃、王都外の北部に配置されている4部隊が、各部隊ごとに定時連絡を隊長が行っていた。
「了解した。ガビル、ペイル班にエス、ユイロン班そしてギーナ、レイヴァン班共に現状問題なしだな。ああ、こちらも今の所敵影は確認出来てない。では、また何かあれば連絡を、次の定時連絡は一時間後。以上」
そうサストが口に通信用魔道具に向かい話終えると、自分の部隊のメンバーへと視線を向ける。
「よし改めて現状確認だ。ここには20名の私の部隊に、他3部隊のメンバーを足して約100名近くはいる。各自作戦は頭に入っているな?」
「「はい!」」
「ではベルヴァティ、作戦概要を」
当然指名されたベルヴァティは、今回の作戦内容を緊張しながらに口にし始める。
今回ユンベールからの侵略に対し、王都外の4部隊に与えられた作戦は三つだ。
一つ目は王都に決して敵対勢力を入れない。二つ目は、降伏宣言を相手に出させる。最後の三つ目は、必要以上な攻撃は絶対にしないという事であった。
現状ユンベールはインクルと名乗る者が乗っ取っている可能性が大きく、相手側の何らかの力で強制的に従わされている人間もいると判断したのである。
その判断をしたのは、ハンスであるが過去に王都襲撃事件があった際にも類似した件が報告されていた事から、その可能性も含めてハンスは判断をしたのであった。
また、こちらの態度としては防衛であり、極力相手の無力化を行う事に重きを置くとも決めたのである。
それが簡単な事ではない事は承知しているが、なるべく捕縛し今回の一件で相手の真意を知る為であり、また裏で糸をまだ引いている相手がいるかもしれないと想定しその様な判断も下したのだった。
ハンスは無茶なお願いだと思いつつも、各部隊長にそう指示をしたのである。
それらの内容から、今回王都外の4部隊が立てた作戦はシンプルであった。
敵対勢力を確認次第、降伏宣言を促し従うのであればそのまま捕縛し、聞かない様であれば各隊長が強力な威嚇攻撃を実施。
その他の兵は力や能力に応じて、防衛専念や隊長たちの補佐役として立ち振る舞う事になっており、もし戦闘になった際には隊長たち筆頭に行われる作戦となっている。
「大まかではすが、作戦概要は以上です!」
「よし。それだけ理解していれば問題はない。が、実戦では何が起こるか分からない。臨機応変に対応出来るように周囲での確認を怠るな。では各自持ち場にて待機」
「「はい!」」
その後サストは離れて行き、他の隊長たちの所へと向かって行く。
サスト隊の王国兵たちは、サストに言われた通りに各自持ち場へと戻り始める。
その中に、アバンの姿もあった。
「アバン」
「ん、どうしたベルヴァティ?」
「どうしたじゃねぇよ。どうして、そんな冷静なんだよお前」
「そうか? 俺も内心ドキドキして気持ち悪いぞ」
「そう見えねぇって! あ~やばい、まさかこんな事になるなんてよ」
「軍に入っていればいつかは直面する事だろ? それに俺たちは以前にも、緊急任務にも同行したろ」
「いや、そうだけどもよ。そん時とはまた違ったって言うか、あーとりあえず、どうすればお前みたいに冷静になれるんだよ?」
「だからお前と同じって言ってるだろ。不安なのは分かるが、考えない様にしているだけだ。俺たちは防衛、相手を王都に入れない様にする事だけを考えればいいんだ」
「ま、まぁ確かにそうだな……スーハ―……よっし! 切り替えろ俺! 俺なら大丈夫、アバンもいるし何てったって隊長が最前線にいるんだ。これだけ頼もしい事はないだろう」
そうベルヴァティは、独り言を呟きながら自分を鼓舞して持ち場へと歩いて行く。
アバンはその姿を見てから、ふと隊長たちへと視線を向ける。
「王国軍トップである4部隊の隊長が最前線で指揮をとり、戦うんだ。油断してる訳じゃないが、よっぽどの事がなければユンベールに勝ち目はない。それに、もうすぐ予定では王都内で国王から王都にいる人々にアナウンスを行う時間だ」
ハンスは王都内にいる人々を混乱させずに、戦いから避けさせる為に事前にアナウンスを行い人々を誘導する事にしていた。
突然ユンベールとの戦いがあると伝えれば混乱が起こるのは目に見えている為、模擬訓練という形で人々には一時的に王国軍の指示に従い、安全な場所に避難してもらう手筈を整えたのである。
が、急な事で必ずしもそれが上手く行くとは思ってはいなかった。
しかしハンスは何もせずに待ち続けるのでは、何かあってからでは遅いと考える人であった為、自分が行える最大限の行動をしようとアナウンスの実施を決めたのであった。
「(現状各門も整備という事で、封鎖している。後は王都内でどれだけの人が国王の言葉に耳を傾け、動いてくれるかだな)」
そしてアバンも持ち場に戻り、王都近くでアナウンスが聞こえるを待っていたが、時間になっても一向にアナウンスが聞こえてこない事に疑問を持ち始める。
それは他の王国兵たちも同じ気持ちであり、何故アナウンスが聞こえてこないのかと近くの兵士に声を掛けたりし始めていた。
「(おかしい。既に予定時刻は過ぎているのに、一向にアナウンスが聞こえない。例え王都外だとしても、この距離でならアナウンスは聞こえるはずだ)」
アバンは直ぐに隊長たちへと視線を向けると、隊長たちも異変に気付き通信用魔道具で王都内にいる隊長と連絡をとっている姿が目に入る。
その直後だった、偵察部隊からの連絡が隊長たちに入りレントが声を上げた。
「どういう事だ! 想定の到着時間よりも四時間も早いぞ! 見間違えとかじゃないのか?」
「レント落ち着け」
「落ち着け? ふざけるなサスト! 敵が目の前まで迫って来ているんだぞ! しかも想定よりも早すぎる速度で! おかしいだろうが! それに王都内のアナウンスもない。何かもう起きていると考えるのが、妥当だろうが!」
「っ……そうかもしれないが、俺たちが焦ったら――」
と、サストが言葉をかけようとした瞬間に、王都内の中心部のみに結界の様な光が突然上がる。
異様な光景に隊長たちは直ぐに気付き、その周辺にいた兵士たちも視線を向けて固まってしまう。
一方で王都近くで待機していた兵士たちは何が起きているのか分からずに、皆が見ている方へと移動し始めてしまう。
ベルヴァティも気になってしまい、皆と同じ様に動くがアバンは皆とは逆に王都内へと入り、状況を確認しようと咄嗟に判断し独断で動く。
そしてアバンが王都に入り目にしたのは、王城付近だけが結界に囲まれている状況であった。
「な、何だあれは?」
アバンはそれを確認し、直ぐに戻ろうとしたが目の前に今目にした王城にされている結界と同じ物が、王都内と外の境界線で発生していたのだった。
すぐさま王都の外側を見回し、結界の光が上空にまで伸びているのを目にし、アバンは完全に王都内外で結界で分断されたと理解する。
王都外にいた隊長たちも結界に気付いたが、既にその時には完全に分断されてしまいもう中へと入る事は不可能になっていた。
魔法や武器など破壊可能かを試すと、どれも失敗してしまう。
「王都内の奴らとも連絡がつかない」
「やられましたね……これは完全に先手をとられましたね。既に相手方は、潜伏していたって事ですよね」
「でも、ここへ向かって来るユンベールの一団がいるのは確かだろ? 何故わざわざ分断させる? 内部の戦力は確実に外側よりも低くなるだろ?」
「分からない。内側との連絡がつかない現状では、内側に敵の戦力がどれだけいるのかも不明だ。こちらに向かってる人数が多いのは確からしいが」
「ちっ! とりあえず今俺たちが出来るのは、ここに向かって来るユンベールの一団の相手をする事だけだ。幸い内側にも半分の王国軍部隊はいる」
「そうだな。それに、何故かアバンも内側にいるし、どうにか一方的な連絡にはなるだろう」
そう言って、各隊長が結界の内側にいるアバンへと視線を向けた。
「(……これは、よかったと捉えるべきか、悪かったと捉えるべきか。状況的には内側との連絡役にはなれるという所かな)」
「アバン、そこにいる理由については後回しだ。現状、こちらの声は正常に聞こえているな?」
「はい、サスト隊長」
「よし。お前にはこれから王都内の状況把握に努めてもらう」
「サストの所の兵か。使えるものは全て使わないとな。他の隊長たちにこちらの状況も伝えろ」
「できれば、王城の様子も知りたいな」
「彼にこんな事を任せて大丈夫なのかサスト? 彼はまだ訓練兵で、正式の配属ではないんだろ。荷が重すぎるんじゃ」
「アバンなら大丈夫だ。私が保証する」
サストのためらいのない発言に、他の隊長たちも反論する事はなかった。
「いいかアバン、訓練兵とか身分は今関係ない。お前はお前にしか出来ない事を今からやるんだ。お前にはそれが出来る力と知恵がある」
「サスト隊長……」
「アバン・フォークロス!」
「っ! はい!」
「王都内の状況把握兼こちらの情報伝達の任を与える。早急に行動開始!」
「はい!」
アバンはサストの言葉を聞いた後、王都内へと向けて走り始めるのだった。
それを見届けたサストは王都に背を向け、ユンベールから向かって来る一団の方へと歩き始める。
その姿に他の隊長たちも歩み始め、最前線で足を止める。
すると、その場から遠くにユンベールからやって来たと思われる多くの人影が見え始める。
「来たな」
「私たちは私たちの任を全うするまで」
「口にしなくとも分かっている」
「さ~てと、一体どんな奴らがいるのやら」
隊長たちは横一列に並び、後ろの兵士たちの意識を切り替えさせ準備を整えさせるのだった。
一方で、王都に迫るユンベールの一団を引き連れて先頭で指揮を執っていたのはインクルであった。
「お、やっと見えたね~王都。それにもう始まっているようだね。それじゃ、こちらも急がないとね」
インクルは一人そう呟きながら、薄笑いを浮かべる。
その背後には、完全武装した兵士たちがただ無言で進行し続けるのだった。
0
あなたにおすすめの小説
転生してモブだったから安心してたら最恐王太子に溺愛されました。
琥珀
恋愛
ある日突然小説の世界に転生した事に気づいた主人公、スレイ。
ただのモブだと安心しきって人生を満喫しようとしたら…最恐の王太子が離してくれません!!
スレイの兄は重度のシスコンで、スレイに執着するルルドは兄の友人でもあり、王太子でもある。
ヒロインを取り合う筈の物語が何故かモブの私がヒロインポジに!?
氷の様に無表情で周囲に怖がられている王太子ルルドと親しくなってきた時、小説の物語の中である事件が起こる事を思い出す。ルルドの為に必死にフラグを折りに行く主人公スレイ。
このお話は目立ちたくないモブがヒロインになるまでの物語ーーーー。
男女比8対1の異世界に転移しました、防御力はレベル1です
オレンジ方解石
恋愛
結婚式の最中に、夫に他の女と逃げられた花嫁、水瀬透子。
離婚届けを出す直前に事故で瀕死となった彼女は、異世界の女神から『妾と取り引きするなら、助けてやろう』と持ちかけられる。
異世界の《世界樹》の《種》を宿す《仮枝》となった透子は、女神の世界に連れて行かれ、二年を過ごすこととなった。
そこは男女比が8対1という偏った世界であり、女性が《四気神》と呼ばれる守護者に守られる世界。
女神とはぐれた透子は、そこで美形の青年、紅霞に助けられるが……。
※追記の追記を少し直しました。
枯れ専令嬢、喜び勇んで老紳士に後妻として嫁いだら、待っていたのは二十歳の青年でした。なんでだ~⁉
狭山ひびき
恋愛
ある日、イアナ・アントネッラは父親に言われた。
「来月、フェルナンド・ステファーニ公爵に嫁いでもらう」と。
フェルナンド・ステファーニ公爵は御年六十二歳。息子が一人いるが三十年ほど前に妻を亡くしてからは独り身だ。
対してイアナは二十歳。さすがに年齢が離れすぎているが、父はもっともらしい顔で続けた。
「ジョルジアナが慰謝料を請求された。ステファーニ公爵に嫁げば支度金としてまとまった金が入る。これは当主である私の決定だ」
聞けば、妹のジョルジアナは既婚者と不倫して相手の妻から巨額の慰謝料を請求されたらしい。
「お前のような年頃の娘らしくない人間にはちょうどいい縁談だろう。向こうはどうやらステファーニ公爵の介護要員が欲しいようだからな。お前にはぴったりだ」
そう言って父はステファーニ公爵の肖像画を差し出した。この縁談は公爵自身ではなく息子が持ちかけてきたものらしい。
イオナはその肖像画を見た瞬間、ぴしゃーんと雷に打たれたような衝撃を受けた。
ロマンスグレーの老紳士。なんて素敵なのかしら‼
そう、前世で六十歳まで生きたイオナにとって、若い男は眼中にない。イオナは枯れ専なのだ!
イオナは傷つくと思っていた両親たちの思惑とは裏腹に、喜び勇んでステファーニ公爵家に向かった。
しかし……。
「え? ロマンスグレーの紳士はどこ⁉」
そこでイオナを待ち受けていたのは、どこからどう見ても二十歳くらいにしか見えない年若い紳士だったのだ。
異世界もふもふ死にかけライフ☆異世界転移して毛玉な呪いにかけられたら、凶相騎士団長様に拾われました。
和島逆
恋愛
社会人一年目、休日の山登り中に事故に遭った私は、気づけばひとり見知らぬ森の中にいた。そしてなぜか、姿がもふもふな小動物に変わっていて……?
しかも早速モンスターっぽい何かに襲われて死にかけてるし!
危ういところを助けてくれたのは、大剣をたずさえた無愛想な大男。
彼の緋色の瞳は、どうやらこの世界では凶相と言われるらしい。でもでも、地位は高い騎士団長様。
頼む騎士様、どうか私を保護してください!
あれ、でもこの人なんか怖くない?
心臓がバクバクして止まらないし、なんなら息も苦しいし……?
どうやら私は恐怖耐性のなさすぎる聖獣に変身してしまったらしい。いや恐怖だけで死ぬってどんだけよ!
人間に戻るためには騎士団長の助けを借りるしかない。でも騎士団長の側にいると死にかける!
……うん、詰んだ。
★「小説家になろう」先行投稿中です★
多分悪役令嬢ですが、うっかりヒーローを餌付けして執着されています
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【美味しそう……? こ、これは誰にもあげませんから!】
23歳、ブラック企業で働いている社畜OLの私。この日も帰宅は深夜過ぎ。泥のように眠りに着き、目覚めれば綺羅びやかな部屋にいた。しかも私は意地悪な貴族令嬢のようで使用人たちはビクビクしている。ひょっとして私って……悪役令嬢? テンプレ通りなら、将来破滅してしまうかも!
そこで、細くても長く生きるために、目立たず空気のように生きようと決めた。それなのに、ひょんな出来事からヒーロー? に執着される羽目に……。
お願いですから、私に構わないで下さい!
※ 他サイトでも投稿中
転生しましたが悪役令嬢な気がするんですけど⁉︎
水月華
恋愛
ヘンリエッタ・スタンホープは8歳の時に前世の記憶を思い出す。最初は混乱したが、じきに貴族生活に順応し始める。・・・が、ある時気づく。
もしかして‘’私‘’って悪役令嬢ポジションでは?整った容姿。申し分ない身分。・・・だけなら疑わなかったが、ある時ふと言われたのである。「昔のヘンリエッタは我儘だったのにこんなに立派になって」と。
振り返れば記憶が戻る前は嫌いな食べ物が出ると癇癪を起こし、着たいドレスがないと癇癪を起こし…。私めっちゃ性格悪かった!!
え?記憶戻らなかったらそのままだった=悪役令嬢!?いやいや確かに前世では転生して悪役令嬢とか流行ってたけどまさか自分が!?
でもヘンリエッタ・スタンホープなんて知らないし、私どうすればいいのー!?
と、とにかく攻略対象者候補たちには必要以上に近づかない様にしよう!
前世の記憶のせいで恋愛なんて面倒くさいし、政略結婚じゃないなら出来れば避けたい!
だからこっちに熱い眼差しを送らないで!
答えられないんです!
これは悪役令嬢(?)の侯爵令嬢があるかもしれない破滅フラグを手探りで回避しようとするお話。
または前世の記憶から臆病になっている彼女が再び大切な人を見つけるお話。
小説家になろうでも投稿してます。
こちらは全話投稿してますので、先を読みたいと思ってくださればそちらからもよろしくお願いします。
転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜
矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】
公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。
この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。
小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。
だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。
どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。
それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――?
*異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。
*「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。
虚弱体質?の脇役令嬢に転生したので、食事療法を始めました
たくわん
恋愛
「跡継ぎを産めない貴女とは結婚できない」婚約者である公爵嫡男アレクシスから、冷酷に告げられた婚約破棄。その場で新しい婚約者まで紹介される屈辱。病弱な侯爵令嬢セラフィーナは、社交界の哀れみと嘲笑の的となった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる